表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第15章 夏休みは最後まで大忙し
379/637

第330話 ふと我に返る瞬間ってあるよね

お気に入り超、PV超、ジャンル別日刊21位、応援ありがとうございます。


コミカライズ版朝ダン、マンガUP!様にて連載中です。よろしければ見てみてください!


小説版朝ダン、ダッシュエックス文庫様より書籍版電子版に発売中です。よろしくお願いします。


コミカライズ版朝ダン、コミックス第一巻が12月7日に発売されました。よろしければお手に取ってみてください。






 ドロップアイテムの回収を終え階段探しを再開すると、もう一度イタチ?リス?混成チームによる襲撃を受けたものの無事、47階層に続く階段を見付けた。

 しかも今回も、探索時間は30分を切っている。


「多少時間を取ったけど、無事見付かったね」

「まぁ時間を食ったと言っても、前の3階層が順調すぎただけだしな」

「そうよ。寧ろ戦闘込みでこの時間なら、十分に早いわ」


 47階層に降りる階段を前にして、俺達はワザ(・・)と46階層の探索評価を行っていた。


「それにしても、まさかモンスターが戦術的行動を取るようになり出すなんてね」

「ああ。今までのモンスターなら、目の前に現れた敵を只倒すのみって感じで攻撃してくるだけだったからな。一度身を晒した上で引き相手の油断を誘う、なんて行動を取られると……」

「これから現れるモンスターも同じなんじゃ無いのか?って、思っちゃうわよ。今まで以上に、相手の行動を警戒する必要があるわね」


 階段を見付け気が抜け話し込んでいる様に見えるように、俺達は少し大きめの声を出しつつ何気なく会話をしている風を装う。


「うん。後は前衛を囮に遠距離攻撃をしてくる敵が潜んでないか、それも気に掛けないとダメだね。前衛の敵との戦いに集中している所に、遠距離から攻撃を仕掛けてこられたら避けられないか、隙を作って前衛の敵の攻撃を受けることになるからね」

「支援型の能力を持った敵か……確かに厄介だよな。それも今回みたいな異種混成部隊だと各々対応が異なるから、正しく相手の特性を把握していないと隙を作る事になっちまう」

「今までは複数の敵との戦いと言っても、基本的に同種のモンスターが複数体集まったものだったモノね。例外と言えば、オーガが召喚した配下の熊だったけど……実質一対一の戦闘だったから援護役とは言えないわ」


 隙だらけと言うわけでは無いが、遠距離攻撃手段を持っていれば一撃入れられるかも?と思える隙を見せつけているが何の反応も無い。

 そしてそのまま5分程会話を続けたが、やっぱり何の反応も無いのを見て俺達は軽く息を吐き出しながら会話を止めた。貴重な時間を使ったが、試しておかないといけない検証だからな。


「……ふぅ、どうやら問答無用で狙撃してくるタイプじゃなかったみたいだね」

「ああ、多分だけどな。確信まではいかないから気は抜くなよ?」

「相対しなければ撃ってこないだけで十分よ。でも、警戒は必要よね。もしかしたら、昨日の野営中に攻撃を受けていたかもしれないんだし……」


 リス?の攻撃がどの程度の射程があるか分からないが、下手をしたら昨夜の野営中に攻撃を打ち込まれていたかもしれない。やっぱりコレからも野営するなら、簡易的でも防護柵を用意しておかないといけないだろうな。

 これは、本格的に防護柵を作らないといけないか?


「そうなってくると、コレからの野営は、遠距離攻撃に対する防御も考えないといけないね。……使えそうな、それ系のスキルあったかな?」

「パッと思いつくのは土塁か? なぁ大樹、土系魔法のスキルスクロールって持ってたか?」


 裕二は地面を軽くつま先で蹴りながら、俺にスキルスクロールの在庫を確認してくる。確かに地面を土魔法で加工し土塁を築けるのなら楽だよな。

 しかし……。


「土魔法? ええっと、確か在庫はあったとは思うけど……今から習得するとなると、習熟度が低いから土ボコが関の山だぞ?」

「土ボコか……」


 土ボコを想像した裕二は、残念そうな表情を浮かべながら軽く頭を振るった。敵の足を引っかけ転ばせるとかには便利そうだが、到底防壁としては使えないからな。

 これまではダンジョンでは他のスキルの方が役に立つと思って、習得してなかったのが今になって悔やまれる。


「この探索が終わって集中的に練習しても、実用レベルで使えるようになるのには時間が掛かりそうね」

「中途半端なヤツだと、防壁として作っても簡単に破られるかもしれないからね。安全に使えると納得出来るまでとなると、どれくらい練習に時間を掛けないといけなくなるか……少なくとも今年の夏休みが終わるまでにってのは難しいんじゃ無いかな?」

「そうね……」


 辺りに俺達の溜息が木霊する。

 そして数瞬の沈黙の後、俺は軽く自分の頬を叩いて落ち込んでいた意識を切り替える。


「とりあえず、下の階に降りよう。リス?の行動検証には十分な時間を使ったし、もうそろそろ大丈夫だと思うよ」

「そ、そうだな。とりあえず下に降りるか」

「え、ええ」


 と言うわけで、俺達は階段を下り47階層へと足を踏み入れる。階段前で待機しているより、47階層の階段前広場の方が休憩中の防御はしやすいからな。

 順調だからと複数の階層を一気に移動してきたが、そろそろ一度休憩を取って心を落ち着かせた方が良いだろう。






 周囲を警戒しつつ、47階層の階段前広場で俺達はお茶を飲みながら小休憩を行っていた。こうやって一服とりながら休憩していると、自分達がかなり焦っていたのだと自覚出来る。

 小さく息をつきながら、俺は視線を裕二と柊さんに向け口を開く。


「……ここら辺で引き上げるのも良いかもしれないな」

「ん? 大樹、いきなり何を言ってんだ? このペースでいけば、50階層に到達出来るかもしれないんだぞ?」

「いや、思えば今回の探索の当初の目的は40階層到達だったじゃ無いか。それが今では47階層……調子は良かったからって、何でこんな所まで来たんだろな?って思ってさ」


 一息ついて思い返してみると、事前情報も事前偵察も無く未探索の階層を複数階層走破……強行軍も良い所だ。その上、遠距離攻撃持ちのモンスターが蠢く森を前に即席防護柵だけでの野営。うん、ホントなんでココまで無茶な探索をやってんだ俺達? せめて階段広場付近で何時でも撤退出来る体勢を整えた上で、事前探索ぐらいしても良かったはずだ。何も初探索で、一発階層走破を行う必要は無かった。

 しかも何故か、タイムアタック染みた制限時間付きで。


「「……」」

「しかも出現するモンスターが異種混合で、襲ってきたら戦術的行動まで取りだしたしな。いや、確かに俺達には特段脅威を感じるような敵ではなかったさ。でも、明らかにコレまでのモンスター達と違う行動を取り始めたのに、進めるからってこのままのペースで攻略をしていくのもどうなんだろうなって……」



 40階層帯に出現するモンスターの事前情報があればまた話も変わるのだろうが、今回は想定外の延長探索のせいで全く情報が無い状態でココまで突き進んで来ている。いやホッント、倒す分には問題ないんだ倒す分には。ただ、リス?の件がある様に未知の敵と遭遇した際に、どう対応したら良いのか事前に想定出来ないのは辛い。

 野営中に未知の攻撃でチーム半壊、とかも普通にあり得た状況だからな。

 

「……まぁ最低限の安全には配慮してるし、今の所出てくる敵も倒せてるから問題は無いといえば問題ないんだけどさ」

「「……」」


 一服し精神的に落ち着いたせいで、止め処なく愚痴にも似た疑問が湧き上がり口から漏れる。そんな俺の口から漏れ出る疑問を耳にし、裕二と柊さんも押し黙り考え込み始めた。

 そして暫しの間、誰も口を開かない沈黙が広がる。 

 

「……ごめん、変な事を言った」

「……いや、確かに大樹の言う通りだ」

「そう、ね。何で私達、こんなに先の階層まで進んでるのかしら……」

「「「……」」」


 嫌なタイミングで冷静になってしまった。目標にしていた50階層目前にして……いや、目前にしたからこそ冷静になってしまったと言えるか。帰還開始予定時間まで2時間程、今のペースで攻略が進めば2時間で3階層を攻略する事も無理では無いと思ってしまったからこそ気が緩んでしまった。

 俺達は何とも言えない表情を浮かべながら、気拙い雰囲気が漂う中でお茶等の片付けを始める。だが流石に、こんな心持ちで探索を再開するわけにはいかない。


「「「ッ!」」」


 俺は自分の両頬を強めに叩いて、腑抜けていた自分に気合いを入れ直す。すると裕二と柊さんも俺にならい、俺と同様に自分達の頬を叩いて気合いを入れ直していた。とりあえず、コレで探索続行出来そうだ。


「良し! あと2時間ちょっと、頑張って進もう!」

「ああ。もう少しで目標到達なんだ、気合入れて進むぞ!」

「ええ、行ける所まで行きましょう!」


 俺達は気合を入れる為に大声を上げ、無理矢理沈み込んでいたテンションを上げ目の前に広がる森へと足を進めた。






 森の中を進むにつれて、一度に遭遇する敵の数が増えてきた。

 そして今回遭遇した敵は、リス?とアナグマ?の混成部隊である。突然木の上から7体のリス?が遠距離攻撃を仕掛けてきたのだが、不思議なことに当初は視界内にリス?しかいなかったのだ。前衛担当のモンスターがいなければ、格上の敵にあったら逃げるリス?がである。不審に思い周囲を警戒していると……。


「チッ! 下からか!?」

「おいおい、地面の下とはまた面倒な所から!」

「リス?は私が相手するから、二人は下の敵をお願い!」

「「了解!」」


 俺達は地面下からの攻撃という想定外の事態に即座に反応し、素早く対応担当を割り振り、迎撃行動を開始する。柊さんは即座に風魔法を使い、遠距離攻撃支援をしてくるリス?を一体一体確実に仕留めていく。俺と裕二は地面から攻撃をしては引く、面倒なヒットアンドアウェイを仕掛けてくるアナグマ?相手にモグラ叩きを行っていく。アナグマ?なのにモグラ叩きと思うが、そうとしか表現のしようがない?


「クソッ、意外と素早いなコイツら!」

「焦るな大樹、一体ずつ確実に仕留めるぞ!」

「分かってるよ!」


 地面の下からと言う慣れない戦法に苦戦を強いられるが、相手をしているうちに何となく迎撃のコツを掴んできた。どうもこのアナグマ?には、地面から飛び出し攻撃を仕掛けてくる前に前兆が幾つかある。1つ目は震動だ。地中を掘り進めながら移動する関係上、どうしても微細な揺れが発生してしまうらしい。2つ目は地面の盛り上がり。攻撃直前になるとこのアナグマ?は、攻撃ポイントに着くと地面を突き破り飛び出す前に、一度動きを止め跳躍の力を溜めるらしい。そのせいで停止した際、僅かに地面が盛り上がるので、攻撃ポイントが飛び出す前に発見出来る。 


「コレで、最後だ!?」

「ギュッ!?」


 合計10体にも上る、面倒なヒットアンドアウェイを仕掛けてきたアナグマ?を、俺と裕二は漸く倒しきる。地中への有効な攻撃手段を持っていないせいで、相手が攻撃を仕掛けてくるタイミングを見極めカウンターで仕留める必要があり時間が掛かってしまった。

 地中にいる敵への有効な攻撃手段か……物理だと鶴嘴でも使うかな?


「ごめん柊さん、少し手間取っちゃった」

「無事に倒せたのならそれで良いわよ。それにしても……地中から仕掛けてくる敵ね」

「こっちが地中の敵に対して有効な攻撃手段を持っていないと、かなり面倒な敵だよ。基本的に、カウンターでしか有効打を与えられないからね」


 土塁の件も含めて、土魔法を習得するかな? 時間は掛かるだろうけど、結構応用の幅が広そうだし、習得しても損はないかな?


「おおい二人とも、ドロップアイテムの回収手伝ってくれ」

「ん? ああ悪い、今行く」


 今回のドロップしたのは、コアクリスタル、アナグマ?の爪、スキルスクロールだった。アナグマの爪って……首飾りとかのアクセサリーに加工すれば良いのか?


「うーん、コレはスキルスクロールだけが当たりかな?」

「何のスクロールなんだ?」

「ちょっと待ってね……“鑑定解析”」


 調べた結果、このスクロールには“硬化”のスキルが仕込まれているらしい。使うと体が堅くなるスキルのようだ。防御力を上げたい、前衛のアタッカーが使う系のスキルかな?

 

「“硬化”だってさ。……使う?」

「いや、遠慮しとくよ。換金に回して良いんじゃ無いか? 柊さんは?」

「私も換金に回して良いと思うわ」

「じゃあコレは換金に回すね」


 使えないスキルと言う訳では無いが、とりあえず俺達には要らないスキルスクロールだったので換金に回すことになった。

 そしてドロップアイテムの回収を終えた俺達は、足下の地面も警戒しつつ階段探しを再開する。結果……。


「良し、階段見っけ」


 捜索開始40分程で、俺達は48階層へ続く階段を見付ける。この時点で帰還開始予定時刻まで2時間を切ったが、本当に50階層まで到達出来そうになってきた。とは言え、先程のアナグマ?の様に、地面の下から攻撃してくるような敵が更に出てくる可能性があるので、一層の警戒は必要だけどな。

 















目標達成マジかで、ふと我に返って冷静になる瞬間てありますよね。


コミカライズ版朝ダン、コミックス第一巻が12月7日に発売されました。是非お手に取って見てみてください!


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
50近く帰るのめんどくさそう
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 悟りを開いてしまったな、こんな状況で(笑)。
[一言] リスの性質がある程度分かっていて良かった展開 気がついてなかったりアナグマ単独だと 誰か負傷してたのかなと
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ