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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第15章 夏休みは最後まで大忙し
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第326話 高速戦闘か……

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 裕二達から軽い感じで謝られ“洗浄”でイタチ?の血を落とした後、俺達はイタチの死体が消えた跡に残されたドロップアイテムを回収した。

 どうやらイタチ?の尻尾の部分がドロップしたらしい。


「フワフワしていてて肌触りが良いな……」


 拾い上げ触ってみると中々触り心地の良い毛並みで、このまま首に巻いてよくテレビなどで見る襟巻きみたいに使った方が良いのかな?と思った。


「大樹、俺にもちょっと貸してくれ……おお確かに手触りが良いな、コレ」

「私も触らせてよ……本当だ、フワフワしてるわね」


 どうやらイタチ?の尻尾は二人にも好評のようで、暫く皆で代わりばんこにイタチ?の尻尾を撫で回した。お陰で先程の戦闘で血塗れになり、ささくれていた気分が少し改善した気がする。

 そして撫で回し満足した後、イタチ?の尻尾を収納し俺達は階段探しを再開した。 


「それにしても、やっぱり小型のヤツは大型に比べて的が小さいから相手しづらいな」

「そうだな。と言っても、まだ余裕を持って対応出来る程度の敵だったから良かったけど、一度に相手をする数が増えたらやっかいだな……」

「小さい上に、そこそこ素早かったものね」


 周辺を警戒しながら歩きつつ、3人でイタチ?戦の感想を述べ、どう対応すれば良いのか対策を話し合う。

 スピード特化の小型モンスターが集団で襲ってきた時、先程の戦闘のように足を止め背中合わせの陣形を組んで対応するというのも難しい場面が出てくるだろう。その際は個々で迎撃する必要が出てくるのだが戦闘時の速度が上がる関係上、ますます各々の立ち位置を正確に把握し上手く立ち回らねばならない。そうで無ければ先程の戦いのように、倒した敵の死体が味方に衝突したり、回避する時に味方の攻撃範囲に入り味方の攻撃を妨げ隙を作らせると言った不具合が発生しかねない……等々。結論としては高速戦闘に慣れると同時に、今以上にパーティーとしての連携を重視した方が良いだろうと言う事だ。

 

「となると、そろそろ本格的に高速戦闘の練習もした方が良さそうだな……」

「高速戦闘か……確かに今まで本気で動きながら戦闘ってした事は無かったからな」

「する必要が無かったって事もあるけど、人に見られず練習する場所も無かったしね」

「とは言え、やらない事には慣れないしね」


 流石に裕二の家の道場でそんな(高速戦闘)真似をする訳にもいかないからな、普通に道場が壊れそうだしさ。とは言え、身近で人に見られないからと言ってダンジョン内で練習する訳にもいかない。ダンジョン内で人の目が無い場所と言えば、現状では30階層以降だ。高速戦闘に慣れる為の訓練をするのに、敵がドコに隠れているか分からない場所は流石に不向きだし、万一大怪我をしたら帰還するのも困難になってしまう。治療手段はあるけど精神的に疲弊しそうだ。となると、最低でも、ダンジョン外で出来る場所を見付けないといけない訳で……やっぱりアソコかな?


「幻夜さんに頼んで場所を貸して貰う……しかないかな?」

「ああ、確かにあそこならココとも良く似た環境だから、訓練場所としてはうってつけだな……だけど」

「監督者という名目で、監視はつくでしょうね」


 場所を貸して貰う以上、人目に付かないという条件を満たすのは難しい。それにアソコは普段、幻夜さんのお弟子さん達が訓練に使っている場所だ。間借りする立場としては、秘密の訓練をするから人目を排して欲しいというのもな……何かしらかのリターンが無いと厳しいかもしれない。コレまでは上級回復薬の提供に対する恩義もあるだろうが、俺達という非公式ながら国内トップクラスの探索者相手の模擬戦と言う、お弟子さん達が経験を積めるという利点が幻夜さん達にもあったしな。


「監視か……。吹聴されないなら、ギリギリセーフかな?」 

「まぁ、そうだな。ココまで潜っている時点で、俺達は注目されてるだろうさ。現にこの間も協会に呼び出されて、無理矢理探索者ランクを上げられたしな。吹聴されないなら多少見られても大丈夫、だと思いたい」

「そうね、体育祭でもそこそこ派手にやったし吹聴されなければ大丈夫よ。それに前々から幻夜さんの所の訓練では色々やってるから、何かあるとは思われてるでしょうし……いまさらね」


 まぁ確かに柊さんが言うように、体育祭やダンジョンの攻略階層数と色々とやらかしてるからな俺達。ダンジョン協会経由以外から表立った要請が来ていない以上、幻夜さん達が今までの訓練内容を吹聴していない証拠だ。幻夜さん達が漏らしてたら、政府系からも何かしらかの接触があっただろうしな。

 そう言う面で言えば、幻夜さん達なら見られたとしても大丈夫……だと思う。思うけど……。


「そうだね、でも高速戦闘か……俺達が本気でやったらどれくらい出来るんだろ?」

「さぁ、な。今までやった事は無いから、実際にどれくらいの動きが出来るのか正直自分でもサッパリだ」

「普段の稽古は、技術面を鍛えるのが主だもの。模擬戦でも、全力で動くっていうのはやったこと無いわね」

「「「はぁ……」」」


 と言った感じで、今まで必要に迫られなかった事もあり、自分達自身が自分達がどれくらい動けるのか分からないという情けない有様だ。俺達は溜息を吐きつつ、ふと眼差しを前方に生える木に向け思った。試しに、全力で動いてみるか?と。

 だが俺は慌てて、頭を振ってその考えを振り払った。流石に何時敵が襲ってくるか分からないダンジョン内で、そんな初めての試みをするわけには行かない。


「今は出来ないけど、帰ったら場所を探して試しに一度思いっきり動いてみよう。今の自分達がどれくらい動けるのか確認する為にさ」

「賛成だ。確かに自分達が出来ることを把握しておかないと、訓練するにしても何をやったら良いのか分からないからな」

「そうね。いま自分に出来る事を知らないと、その先は進めないものね」


 俺達は覚悟を決めた表情を浮かべながら軽く頷き、出来るだけ早い内に自分達の全力を試そうと決めた。






 下の階層へ続く階段を探しながら40階層に広がる森の中を進んでいると、イタチ?の襲撃に数度あった。最初の戦闘こそ小型モンスターに慣れておらず手間どったが、数度も経験すると素早い敵とは言え対処も容易になってきた。複数の小型モンスターが一度に襲ってきたら話も変わるのだろうが、今の段階なら迎撃陣形を取らずとも一人で対処可能だ。

 現に今も……。


「えいっ!」

「ギュッ!?」


 周囲を駆け巡り攪乱していたイタチ?が、柊さんの繰り出した槍に胴体を貫かれ一撃で絶命した。確かにイタチ?の動きは素早いが、良く良く観察してみるとその動きは意外に単調だ。少し慣れてしまえば、柊さんがやったように動いてる最中でも一撃で仕留めることが可能だった。

 

「ああ残念、今回はドロップは無しか……」

「まぁまぁ、毎回ドロップするわけじゃないし今回は運が悪かったって事で、ね?」

「そうね……」


 イタチ?を倒し終えドロップ品無しに落ち込む柊さんを励ましつつ、俺達は階段探しを再開する。

 すると戦闘を終え5分程歩いた先に、ポッカリと口を開けた41階層へ続く階段を見付けた。


「やっと見付けた!」

「ああ、やっとだな。ドローンって裏技が使えない分、結構歩き回ったな」

「そうね。でも、本当ならそれが普通だもの。今までが楽が出来すぎてただけよ」

「ははっ、確かに柊さんの言う通りだね」


 下に降りる階段を見付けた事で多少気を緩め軽口を叩きつつ、俺達は階段の側に歩み寄った。

 そして時計を確認し、階段を見付けるまでに掛かった移動時間を確認する。


「凡そ1時間か……やっぱり最短距離で移動出来ない分時間は掛かるな」

「モンスターとの戦闘はどれも短時間で終わったから、ほぼ階段を探すのに掛かった時間だな」

「まぁ、仕方ないわ。でも、何か時短の手段を見付けた方が良いでしょうね」

「「「うーん」」」


 現段階で思いつく手段は無いが、1階層攻略するのに1時間かかっていては1泊2日で40階層以降の攻略は難しい。今回の探索だって、探索者の数が少なく上の階層が空いていたので1日でココまで来れたのだ。何としても、何らかの解決手段を模索しないと……。

 

「まぁ、ココでこうして足踏みしていても仕方ない。取り敢えず41階層に降りよう」

「ああ、降りるか」

「そう、ね」


 時短の手段は一先ず棚上げし、俺達は階段を下り41階層へと移動する。当然、41階層にも鬱蒼と生い茂る木々が立ち並ぶ森が広がっており、ドローンによる偵察飛行は行えそうに無かった。

 つまり……。


「……どうしよう? このまま次の階層に進む? それとも、今日はここまでにしてベースキャンプを張るかな?」

「そうだな……上の階層と同じ時間で攻略出来るのなら、予定時間内に次の階層までギリギリ到達出来る、と思う」

「でも安全を取るなら、この階層を調べた後にベースキャンプを張る方が確実よ」


 進むか留まるか、2つに1つ。到達階層を伸ばし次に繋げようと思うのなら、裕二の案。安全に休息を取る事を優先するのならば、柊さんの案。どちらにも一長一短があり、どちらを選んでも……と言う状態だ。

 だからこそ眉間にしわを寄せつつ、俺達は悩む。


「……ねぇ二人とも? 夏休み期間中、今回と同じ条件でもう一度ココまで来れると思う?」

「……難しいだろうな。今回はたまたまお盆休み後って事で上の階層にいる人達が少なかったけど、次来る時に今と同じ条件ってのはな?」

「……そうね。今回と同じってのは難しいでしょうね。ココまでくるにしても、今より数時間は多く時間が掛かると思うわ」

「そう、だよね」


 偶然とは言え、恐らくココまで好条件が揃った探索の機会は、この後の夏休み期間中にもう一度来るとは思えない。なので、安全策も大事だが今回は……。


「今回の探索に関しては、裕二の提案に乗って先へ進んだ方が良いと思う。いま1階層分でも先に進んでおけば、明日探索を再開した時に到達階層を伸ばせる。今回の探索を逃すと、少なくとも今年の夏休み期間中に到達階層を伸ばす事は難しいと思うし……」

「……確かに今回を逃すと、更に深くの階層まで行くってのは難しいだろうな。俺達の場合、そうそう何日もダンジョンに潜り続けるなんて真似はできないからな」

「そうね……今回を逃すと到達階層を伸ばすのは難しいでしょうね」

「「「……」」」


 俺達は少し迷いが残る表情を浮かべた顔を見合わせた後、小さく頷き決断を下す。

 このまま探索を続行し、もう1階層下に降りるという決断を。


「行こう、こんな無理は今回に限ってだけど」

「ああ、今回は行ける所まで行こうって方針だからな」

「ちょっと、安全に配慮してってのを忘れてるわよ」


 決断を下した俺達は、気合いを入れた表情を浮かべ目の前に広がる鬱蒼とした森を見据えた。

 さぁて、ベースキャンプの安全を確保する為にも出来るだけ早く抜けないとな。

 





 早歩き気味に森の中を進みながら、俺達は42階層への階段を探し回っていた。この階層ではイタチ?がとうとう複数体同時に出現するようになり始め、早く進みたいのに戦闘で少々手間がかかる。

 まぁ代わりに、イタチ?のドロップアイテムが多めに手に入るので悪くは無いのだが……まぁ直ぐには換金出来ないけどな。その上……。


「いやぁ、今回は運が良かった」

「本当だな、まさかこんなに早く見付かるとは思っても見なかったよ」

「そうね、コレならベースキャンプの安全確保に少しは時間をかけられそうだわ」


 予想より短時間で階段を見付けられ安堵の表情を浮かべる俺達の目の前には、ポッカリと口を開ける階段があった。まさか探索を開始してから、30分程で階段を見付けることが出来るとは思っても見なかったよ。

 俺達は早速階段を降り、42階層へと足を踏み入れた。まぁ当然、目の前に広がってるのは森なんだけどな。 


「良し、今日はここまでだな。ベースキャンプを張ろう」

「ああ、それには先ず周辺を軽く探索して安全を確保しよう。幸い30階層帯とは違って、それなりに視界は良いからベースキャンプは守りやすそうだ」

「その代わり素早いモンスターがいるから、発見から迎撃に移るまでの時間が短いのが難点だけどね。足止め用に、簡易的なバリケードを作った方が良いかもしれないわ」

「そうだね。周辺探索と同時に、その辺の木を使って簡易バリケードを作った方が良いかも……」

 

 階段前広場の広さは大凡半径数十メートル、イタチ?のスピードなら数秒で端からベースキャンプ設置予定位置まで到達するだろう。それでは流石に対処時間が短い、安全性を高める為にも簡易的なバリケードは作った方が良いだろうな。
















主人公達って、全力を出す機会が無かったですからね。



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コミカライズ版朝ダンの第一巻が12月7日に販売されます。よろしくお願いします!




挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] モンスターに襲われて大声で呼ぶ…モンスター召喚の罠みたいに いっぱい寄ってくるね。 [一言] 警戒業務は基本ツーマンセルだと思うの
[一言] これは幻夜さん重蔵さんの裏稼業(笑)を継ぐフラグが?w ただでさえ訓練の時の恩(というより柵)があるのに裕二以外もズルズルと行く可能性が… 訓練場を使うというのはそうゆう事だと思うけどなぁ …
[一言] 攻撃魔法の類も半ば死にスキル化してますからね現状……全力で戦う相手が居ないってのも有るでしょうが。
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