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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第15章 夏休みは最後まで大忙し
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第324話 予定変更し更に先へ

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 道中で現れる熊討伐をしつつ、俺達は予定より少し遅れ30階層に到達した。と言っても、潜る前に想定していた時間より大幅に短縮しているので、ほぼ誤差のような範囲だけどな。

 そして30階層に到着した俺達は、早速道草を刈る事にした。

 

「それで柊さん、草はどれくらい刈るの?」

「夏休みが終わったら、次に何時取りに来れるか分らないから出来るだけ沢山持ち帰りたいわ。偽装用に簡易式の圧縮袋を持ってきてるから、取り敢えず今回は入るだけお願い」

「了解」


 裕二に周辺警戒をお願いしてから、バッグ類を下ろした俺と柊さんは草刈りを始める。柊さんが魔法で草を刈り、俺が刈られた草を集めていくと言う流れ作業だ。作業は順調に進み、作業中モンスターが襲ってくるも裕二が手早く始末してくれるので作業が止まる事は無い。

 そして10分程作業を続けると、小山と呼べるくらい結構な量の草が集まった。


「これ……全部入るかな?」

「とりあえず、詰められるだけ詰めましょう」


 俺と柊さんは集めすぎたかなと思いつつ、刈り取った草を圧縮袋に入れていく。袋一杯に草を詰め口に封をし、簡易ポンプで中の空気を抜くと元の10分の1程の厚さに平べったくなった。

 

「簡易式とは言え、結構平べったくなるもんだね」

「そうね。この調子でドンドン詰めていきましょう」

「了解」


 それから15分程かけ俺と柊さんは袋詰めを続け、最初入るか心配だった小山も全て綺麗に持ってきた圧縮袋へ詰め終わった。全部で……100kg位はあるかな?

 俺は若干の達成感を感じつつ、柊さんに収集量が十分か確認を取る。


「柊さん、コレで足りる?」

「ええ、コレだけあれば暫くは大丈夫だと思うわ。と言っても備蓄も考えると、もう少し集めておきたいわね。でも、一度にこれ以上持ち帰るのは変になるし……」

「そうだね。まぁ夏休み中にもう何度か来るんだし、次に来た時にまた持って帰れば良いじゃない。今回やってみて分かったけど、コレくらいの作業量なら時間的にも大した負担にもならないしね」


 草の刈り取りから袋詰めまであわせて、正味30分と行った所だからな。それほど疲れる作業ではないので、気分転換の休憩のようなモノだ。まぁ最低限の警戒はしておかないといけないので休憩とは言えないけど、ダンジョンの中で気を抜く事はまぁ無いので問題ない。

 そして収集作業を終えた俺は、一先ず草を詰めた袋を“空間収納”に仕舞った。


「今は邪魔になるから“空間収納”に入れておくよ、帰りにバッグに詰め直して持ち帰ろう」

「ありがとう九重君」


 俺と柊さんは降ろしていたバッグ類を背負い直し、周辺警戒についていてくれた裕二にお礼を言う。


「裕二、周辺警戒してくれて助かった」

「ありがとう、広瀬君」

「いや、別にお礼を言われるような事はしてないよ。それより二人とも、休憩しなくて良いのか?」

「別に疲れてはないし、今は良いよ。予定通り、もう少し進んでから休憩は取ろう。柊さんもそれで良いよね?」

「ええ」

「そうか、了解」


 と言う訳で今回の探索の目的の一つであった草刈りも終わり、俺達は更に下の階層を目指し歩き出した。






 以前の探索で最後に到達した階層である34階層まで降りてきた俺達は、階段前の広場で今回の探索で初めての大休憩を取ることにした。人が少なく予定より大幅に時短でき順調に進んだ為、大きな休憩を取ること無くココまで来たが、そろそろ食事休憩を取っても良いだろう。

 

「さて、じゃぁ予定より大分進んだけど食事休憩をとろうか?」

「ああ、ホント予定より大分進んだよな」

「そうね。本来の予定ならココまで来るのは、もう数時間は後だったわ」


 予定の数時間の前倒しに驚きつつ、俺達は壁沿いに陣取りバッグを置きながら食事の準備を始めた。今回は周りには誰も居ないので、遠慮無く“空間収納”から荷物を取り出せるな。机や椅子、各レトルト食品を取り出していく。

 誰も居ないのでレトルト食品でなくても良いのかもしれないが、火気厳禁の階層なので本格的な調理は流石に無理だけどな。


「なぁ大樹? レトルト食品を出したまでは良いんだけど、お湯はどうするんだ? 火気厳禁のココだと、何時もみたいにコンロでお湯を湧かすって事も難しいと思うんだが……」

「大丈夫大丈夫、その対策も確りしてきてるよ。と言う訳で、これだ!」


 俺は“空間収納”から、草対策として持ってきた新しいアイテムを取り出す。


「IH調理器とポータブル電源だ。コレなら火を使わずにお湯も沸かせるし調理も出来る!」

「「……」」

 

 自信満々に取り出した俺に対し、二人の反応は微妙に悪い。 あれ? 


「ああ、ええっと、何だ? 大樹、それって使えるのか? IH調理器って相当電気を食うって聞くし、バッテリーで動かすのは無理じゃ無いか?」

「そうよ九重君、流石にそれはバッテリーじゃ……」


 二人の話を聞き、反応が微妙な原因が分った。確かにバッテリーでIH調理器を動かすと聞けば、不安になるよな。


「二人の不安は分かるけど大丈夫だよ、持ってくる前に家で試してるからさ。結果は何の問題も無く使用出来たよ」

「……本当か?」

「本当本当。大丈夫だって、まぁ見ててよ」


 俺は疑い深げな二人の眼差しを背に受けながらIH調理器とポータブル電源を繋ぎ、新調したIH対応の鍋を取り出しIH調理器の上に置く。


「柊さん、鍋に水をお願い」

「えっ、ええ……クリエイトウォーター」


 若干戸惑いが残る柊さんに魔法を使ってもらい、鍋に水を張る。


「じゃぁ見ててよ、スイッチオン」


 俺はポータブル電源を起動させてから、IH調理器の電源を入れた。すると、IH調理器は低い唸り声の音を立てながら起動した。

 そして3人で見守りながら暫く待っていると……。


「ほら、沸いた」

「沸いたな……」

「沸いたわね」


 若干信じられ無いと言った眼差しを浮かべる二人の目の前で、鍋に張られた水は蒸気と気泡を立てながら沸騰していた。

 

「じゃぁお湯も沸いた事だし、レトルトを暖めようか」

「あ、ああ」


 俺を疑い少々バツが悪げな表情を浮かべ視線を逸らす二人に一声掛けてから、沸騰するお湯の中にレトルト食品を入れ暖めていく。IH調理器でコレだけ驚いてくれるのなら今度は電子レンジを持ってくるかな?と、俺は二人の反応を見つつイタズラを仕掛けようかと考えていた。

 そして少々微妙になった雰囲気の中で昼食を食べ終えた後、俺達はこの後の予定について話し合う。


「で、どうする? 予定ではドローン偵察して下に降りる階段を見付けた後、最短距離で下の階層に移動するって方針だったけど……」

「当初の予定より、移動時間が大幅に短縮出来たからな……」

「別に最短距離を行かなくても、多少一つの階層を探索して回る時間もあるわね。もしくは……」


 今回の探索の目的は、40階層まで降りることだ。当初の予定では時間的に、40階層に降りるだけで精一杯と思っていたのだが、上層部の移動時間を大幅に短縮出来たので2つの選択肢が取る事が出来るようになった。

 40階層に至るまでの階層を詳しく見て回る、もしくは更に下の階層を目指し突き進むかだ。


「補給物資という面の話なら、俺の“空間収納”にたっぷり備蓄があるから問題は無いよ」

「今現在の俺達は疲労や怪我なんかも特にないから、無理さえしないのであれば先に進むのも問題は無いだろう」

「つまり、どっちの選択肢を選んでも良いって事ね」


 先に進む場合で懸念があるとすれば、40階層以降の情報を協会で事前に調べていないという事だろうか。元々40階層到達が目的だったので、40階層以降の情報は仕入れていなかったのだ。

 何故なら、協会で今回得た情報を仕入れた時に向けられた、係員さんの“何で学生探索者が高いお金出してこんな使いもしない情報を買ってるの? ああ、友達に成果を誇張して自慢する為か……”と言った生暖かい眼差しのせいで、更に追加で40階層以降の情報を聞く気力が無くなったからだ。確かに学生探索者……民間探索者チームで30階層以降に進んでいる所は殆どないからな。俺達の見た目からすると、使う為に情報を仕入れたとは見られにくいけどさ……はぁ。


「……安全策なら40階層までにしておいた方が良いだろうけど、ココまで潜れるのも今が夏休みだからだしなぁ」

「……確かに。夏休みが終わったら、時間的に更に下の階層へとは簡単には行けなくなるだろうな」

「そうね。今日は偶々人が少なかったから早く降りてこられたけど、普通の日になると難しいでしょうね」

「「「……」」」


 つまり、そう言う事である。


「行ける所まで潜ろう。勿論、安全第一だけどさ」

「そうだな、行ける所まで行ってみるのも良いかもしれないな。慎重に進めば」

「ええ、行ける所まで行ってみましょう。十分に安全マージンを取りながら」


 と言う訳で、ドローン偵察を駆使しつつ下の階層へ向かう階段まで最短距離で抜け、40階層以降へ進もうと言う結論に達した。勿論、無理の無い範囲でだ。

 方針も決まったので、俺達はさっそく椅子やテーブル等を片付け出発の準備を進める。


「良し、準備完了。ココ(34階層)の階段の位置は把握してるよな?」

「ああ、前回の偵察飛行で把握している。最短距離で抜けられるぞ」

「でもその分、モンスターが多めに出現するから気を付けてよね」

「「了解」」


 俺達は注意点を確認した後、35階層への階段を目指し歩き出した。






 ドローン偵察で最短距離を見極め進めたお陰で、3時間程掛け40階層へ降りる階段まで辿り着けた。やはり最短距離を進んだことで多数のモンスターと遭遇する事になったが、そこまで厄介なモンスターはいなかったかな。ただし、38階層辺りから出るようになったハードスキンクロコダイルには中々驚いた。

 何故なら、ハードスキンクロコダイルとは、体長4m程の周りの草と同じ緑色をしたワニだったからだ。


「上空偵察しておいたから事前に潜んでいるのは分かってたけど、草むらの中でジッと動かないハードスキンクロコダイルは中々厄介なヤツだったな」

「ああ、まさか至近距離まで近づいても動きを見せないとはな。知らずに近付いていたら、奇襲を受けてたかもしれないぞ」

「そうね。でも、敵意は隠し切れてなかったから違和感は結構前から気付く事は出来たわ」


 俺達は協会から得た情報とドローン偵察で事前に存在を知っていたので問題なく対処出来たが、事前情報無しで初見だと危ない相手かもしれない。デカい口による咬みつきと長い尻尾による広範囲の薙ぎ払い、何よりその巨体に見合わない瞬発力を生かした突撃と堅牢な鱗は厄介だった。

 39階層で複数のハードスキンクロコダイルと遭遇した時、突撃してきたハードスキンクロコダイルに牽制のつもりで放った蹴りが背中の鱗で弾かれたからな。確かに突撃を避ける為にジャンプして放った蹴りだったから腰は入ってなかったけど、熊ぐらいなら普通に有効打に出来ていた蹴りだ。下手な切り方をしたら、刀も弾かれる可能性があった。


「そうだね。でも、流石に40階層近く潜ってくると敵も段々手強くなってくるよ。これから先は、今までよりも更に注意深く慎重に進まないと……」

「そうだな。その上、ココから先の階層は事前情報が無い状態だ。今まで以上の警戒は必要だろう」

「……そうね。気を抜かないように気を付けないといけないわね」


 ココまで怪我を負うこと無く順調に潜って来れてはいるが、どんな強敵と遭遇するか分からない。油断すれば、何時ドコでどんな怪我を負うか分かったものでは無いからな。俺達は40階層へ降りる階段を前にし、気を引き締め直した。

 ゴール……ではないが、今回の探索の当初の目的であった40階層到達を前にした事で少し気が緩んでいたと感じたからだ。


「良し。事前に協会で得た情報によると、40階層からまた階層の環境が変わるみたいだから二人とも気を付けて」

「了解。でもキリ良く30階層、40階層って言った感じで階層の環境が変わるとなると、この先の階層も10階層単位で切り替わるのかもしれないな」

「そうね。ダンジョンの先がどれ程あるかは分からないけど、コレからは階層の環境に合わせた装備を整える事も考えておかないといけないわね」

「環境対応装備か……装備品で対応出来る環境ばかりなら良いんだけどね」


 最悪ゲームで出てくるような、極寒フィールドや溶岩フィールド等の特殊環境フィールドが出現するかもしれない。そうなってくると、装備品だけでどうにかなる気がしてこない。今から耐性スキルを習得し、鍛えておいた方が良いかもしれないな。

 















夏休みを逃すと長期探索が出来ないので無理をしない範囲で先に進む、と言う選択をしました。


コミカライズ版朝ダン、明日「マンガUP!」様にて5-3話が更新され、6-1話が先読み公開されます。よろしければ見てみてください。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公たちはマイダンジョンでユニークスキルだったり魔法だったり取り放題でかつ人脈に恵まれてても40階層にいくまで多少苦労するんですから民間探索者たちは30階層以降に到達するのに一体何年かかる…
[一言] マジックバッグにいくらでも入るなら、お湯を入れたポッドを3個もいれておけばお湯を沸かす必要ないのでは。? マジックバッグ内は時間が進まないのだろうし?
[一言] 無理矢理ランクあげられたのにそんなことされんのか…… 上に抗議やろこれは
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