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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第14章 夏休みはイベントがいっぱい
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第317話 屋台飯ウマッ!

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 物販ブースを後にした俺達の鼻に、暴力的なまでに空腹中枢を刺激する芳しい匂いが届いてきた。会場に入った時から既に漂ってはいたが、近づくと更に強烈になる。ついに屋台ブースコーナーに突入したと言う事だな。

 ……うん、凄く腹が減ってきた。

 

「……美味しそうな匂いだな」

「コレ、焼きそばかな?」

「ソースの匂いだから、お好み焼きかもしれないよ?」

「たこ焼き……」

「はぁ、お腹空いてきた……」


 漂ってきた匂いにやられた俺達は、物欲しげな表情を浮かべながら若干早歩き気味に屋台へと近付いていく。そして多くの客で賑わう屋台を目にした俺達は、何も言わずに一番近くにあった屋台を覗き込む。

 その屋台で売られていたのは、炭火でコンガリと焼かれているフランクフルトの屋台だった。


「フランクフルトか……お祭り屋台の定番だな」

「そうだね……美味しそうな焦げ目だね」

「炭火で焼かれる肉汁の香りだけでも、御飯が食べられそうです」

「そうだね、でも……」

「うわっ、一本千円もするんだ……」


 炭火の上で焼かれる姿も香ばしいが、売られている値段も中々に香ばしい。普通のお祭りで売られているフランクフルトの、数倍もの値段が設定されている。イベント飯とは言え、これを気軽に買える人っているのかな?

 などと思いながら炭火の上で焼かれているフランクフルトを眺めていると、俺達の姿に気付いた頭に手ぬぐいを巻いた中年の店員さんが声を掛けてきた。


「いらっしゃい、どうだい一本?」

「えっ、ええっと……」


 屋台の一番近くに位置し、店員さんに声を掛けられた美佳は咄嗟に返事を返せず、戸惑いの表情を浮かべながら助けを求めるように俺に視線を送ってきた。その上、それに釣られるように沙織ちゃん達も視線を向けてきたので、何時の間にか俺が返事を返す立場に立ってしまう。

 俺は心を落ち着かせるように一瞬目を閉じた後、期待の眼差しを向けてくる店員さんに声を掛ける。


「えっと、その、こう言った聞き方をするのは失礼かもしれませんが……何で一本千円もするんですか? 普通のお祭りとかだと、フランクフルトって200円位じゃ……」

「ん? ああ、それはコレがオーク肉を使ったフランクフルトだからだな。ほら、看板にも書いてあるだろ、オーク肉使用って?」


 そう言われて、店員さんが指差す看板を見てみると確かにオーク肉使用と書かれていた。フランクフルトの焼かれる姿と値段に衝撃に受けて、ウッカリと見逃していたようだ。

 

「ああ、本当ですね。すみません、見落としていました」

「いいって、それよりもだ。どうだい?」

「じゃぁ、取り敢えず一本だけお願いします」

「あいよ!」

「「「「……」」」」


 フランクフルトが高額な理由は分ったので俺は少し迷った後、物は試しにと一本だけ買ってみる。因みに一本だけ注文した時、美佳達に若干恨みがましげな眼差しで見られた。

 いやいや、欲しかったら自分で注文しなよ?


「はいよ、お待ちど。そこのケチャップとかは好みで使ってくれ」

「ありがとうございます」


 千円札を渡すのと引き換えに、店員さんから紙皿に乗った焼きたてのフランクフルトを受け取った。こうして焼きたてのフランクフルトを目の前にすると、涎が垂れそうに成る程もの凄く旨そうにみえる。

 俺は美佳達の妬ましげな眼差しを受けながら、1口フランクフルトに齧りつき……目を見開いた。


「旨っ! 肉自体が濃厚な味なうえ脂身が甘い! それに肉も粗挽きだから、食感も確り感じられる一品ですね!」

「そうだろ? 普通の肉じゃ、中々こうはいかないんだよ。特にシンプルな料理な分、ストレートに食材の良さが出るから、正にダンジョン食材様々って感じだな」

「確かにコレなら、一本千円は高いと思いましたけど食べる価値がありますね。他のとこじゃ、中々あり付けませんよ」

「だろ?」


 俺が店員さんにフランクフルトの食べた感想を述べていると、美佳達が何やら後ろの方でコソコソと財布を開いて相談していた。

 そして……。


「えっと、フランクフルトを2本下さい」

「あいよ……2本で良いのかい?」

「はい、皆でシェアするんで」

「それじゃぁ、半分に切り目をいれとくかい?」

「あっ、お願い出来ますか?」

「ああ、大丈夫だよ。じゃぁちょいと待ってくれ」


 どうやら美佳達は一本を半分にしてシェアする事にしたらしい。まぁ味見なら、一人で一本食べるよりシェアした方がお腹にもお財布にも優しいだろうからな。

 オジサンは手早く焼き上がったフランクフルトに切り目を入れ、皿にのせて美佳達に渡した。


「お待ちど、取り分けように串はオマケだよ」

「ありがとうございます」


 美佳達は受け取ったフランクフルトを和気藹々としながら分け合い、ケチャップを少し付けて口に入れた。


「「「「美味しい~!」」」」


 美佳達は至福と言った感じで頬を緩ませながら、フランクフルトを頬張っていた。食べる前は普通のモノの数倍の価格設定に不満そうな表情を浮かべていたが、食べた後ではドコか納得したような満足げな表情を浮かべている。

 

「オーク肉は食べた事あるけど、こうやってフランクフルトにするとまた違った味わいがあるね」

「肉汁の香りで燻されてる感じが良いんだよ」

「食べる前は高いと思ったけど、コレなら納得だね」

「ああ、もう食べ終わっちゃう……」


 美佳達は名残惜しげにフランクフルトの最後の1口を食べ、紙皿と串を店前に設置されたゴミ箱に片づけた。

 そして……。


「ごちそうさま。お兄ちゃん、次のお店に行こうよ次のお店!」

「良いけど……余り食べ過ぎるなよ? 食べ過ぎると、お腹にもお財布にもダメージ行くからな」

「分かってる分かってるって、行こ!」

「ああ……」


 フランクフルトで小腹を満たした俺達は、次なるダンジョン屋台飯を求め屋台ブースを探索し始めた。

 イベントが終わって帰る時に、食べ過ぎたって二重の意味で後悔するなよ?






 屋台ブースエリアを回って戦利品を得た俺達は、会場内に用意されているテーブルと椅子が置かれた飲食スペースに腰を下ろしていた。

 何だかんだで、一杯買ったな……。


「……買い過ぎじゃないか?」

「そんな事無いよ!……って言いたいけど、確かに少し買い過ぎたかもしれないね」

「美味しそうなのが一杯あったから、色々目移りしちゃいましたからね……」

「ええ、どれも美味しそうでしたからね……」

「ああ、買い過ぎたかも……」


 テーブル一杯に所狭しと広げられた美味しそうな匂いと湯気を立てる屋台飯の数々に、俺達は美食への期待感と欲望のままに無作為に買い過ぎた事に対する後悔の念に苛まれた。これ食べきれるのか?や、コレ幾らになるんだ?と言った感じだ。

 とは言え、買ってしまった物は仕方が無い。


「とりあえず、温かい内に食べよう。折角買ったのに冷めちゃったら勿体ないしな」

「そう、だね。食べようか?」

「うん」

「そうですね、温かい内に食べましょう」

「はぁい」


 と言う事で、温かい内に食べようとテーブルに広げたパックの蓋を開けていく。開けた瞬間に封じられていた旨そうな匂いが一気に広がり、先程までの悩みなど瞬時に吹き飛ぶ。美味しいモノを前にすれば、些細な悩みなど有って無い様な物だな。

 そして全ての蓋が開き、全員に箸が行き渡ったのを確認し……。


「それじゃぁ、頂きます」

「「「「頂きます」」」」


 頂きますの挨拶をした後、各々お目当ての料理に目掛けて一斉に箸を延ばしていく。俺は先ず屋台料理定番の品、焼きそばに箸を延ばした。

 売っていた屋台の謳い文句によると、この焼きそばにはオーク肉が使われているらしい。


「うん、旨いな」

「ホントだ、美味しいですね!」


 俺と同じく焼きそばに手を付けた日野さんが、満面の笑みを浮かべながら俺の感想に同意してくる。具材として使われているオーク肉は勿論だが、確りと麺の一本一本まで味が染みており濃厚な味わいが口の中に広がる。

 恐らく蒸す時に加えていた液体が、オークの骨から抽出した出汁だったのだろう。柊さんのところで味見させて貰った、豚骨(オーク骨?)スープと風味が似てるしな。


「こっちも美味しいよ!」

「今までに無い風味ですけど美味しいです。出汁にミノ骨スープが使われてるって書いてありましたけど、良い具合に出汁が効いていますね」


 美佳と沙織ちゃんが食べているのはミノ玉、つまりお好み焼きだ。ミノ肉の細切れが具材として乗り、ミノ骨からとった出汁で生地を伸ばしているらしい。豚……オーク玉でも良いんじゃ無いかと思ったが、フランクフルトでオーク肉は食べたからこっちだそうだ。

 オーク玉よりミノ玉のほうが多少高いが、まぁ誤差だな。祭りやイベントだと財布の口が緩くなるものだ、後が怖いけど。


「コレも美味しいですよ。カラッと揚がってるのに、お肉はジューシーです」


 館林さんが食べているのは、レッドボアの肉を使った唐揚げだ。ニンニク醤油で下味が付けられており、カラリと揚げられていて美味しそうだ。

 因みに、オーク肉やミノ肉を使った唐揚げより安めだった。


「調理法自体はそれほど変わったモノは無いけど、逆に素材自体の味の違いが良く分かるな」

「うんうん、普段食べるものがダンジョン食材を使うだけで劇的に美味しくなるもんね」

「だけど、味もそうですけど値段もブランド食材と良い勝負ですよ?」


 沙織ちゃんが言うように、現在のダンジョン食材は国産ブランド食材と良い勝負だからな。もう何年かして供給量が安定してくれば、今よりずっと安くなって庶民の手に届きやすくなるんだろうけど……暫くは高級食材のままだろう。美味しいけど気軽には手が出せない食材、それが今のダンジョン食材だな。

 しかし、だからこそ、こう言ったイベントでダンジョン食材を食べてもらうのは、人々の見聞を広める為にも必要だ。需要が増えれば必然的に供給増が求められるからな。


「まぁね。でも探索者が増えれば、それだけ供給量が増えるから、もっと手頃な値段で食べられるようになるさ。今回のイベントだって、企業が自社所属の探索者を増やそうと、興味を引く為のイベントだよ。この業界にも先があると思わせられたら、探索者になる人が増えるかもしれないからね」


 企業も利益を上げる為に有望な人材を募っているんだろうけど、一般人もその恩恵を受ける事が出来る。ただ、利益を出そうと社員を酷使する企業はダメだけどな。業界にとっても、そんな会社は百害あって一利無しだ。


「そうですね……早くそうなってくれると良いですね」

「そしたら、ダンジョン食材ももっと一杯食べられるもんね」


 お好み焼きを食べ終えた美佳と沙織ちゃんは、焼きそばに手を伸ばしながらそう言った。俺も今度は串焼きに手を伸ばし、オーク肉のタレ焼きに齧り付く。うん、甘辛いタレとオーク肉の脂身の甘みが良い案配だ。






 和気藹々とした雰囲気の中で食事は進み、三十分ほどで机一杯に広がっていた屋台飯を俺達は食べ終えた。


「ごちそうさま」

「はぁ、美味しかった」

「お腹一杯だね」

「どれも美味しかったです」

「美味しかった……」


 皆満足そうな笑みを浮かべながら、パック等を一纏めに片付けていく。

 そして一通り片付けを終わらせ終えた俺達は、会場内で貰ったパンフレットを眺めながら次の行動を決めようとしていた。


「この後どうします?」

「そうだな……二十分後くらいにメインステージでイベントがあるみたいだから、それを見てみようか? それまでは時間潰しに、イベントブースを見て回ったりしながらさ」

「イベントか……どんなイベントなの?」

「このイベントに参加している各企業の所属探索者達が、持ち回りで何かアピールをするんだってさ。多分、この前俺達が体育祭でしたような演武モドキでもやるんじゃ無いか?」


 まぁ流石に演武だけって事はないだろうが、各企業の特色を生かしたアピールをしてくれるんじゃないかと期待している。特に企業ブースに運ゲーを置きまくっていた会社とかな。

 

「アレですか……確かにアレなら一般人の目にも分かり易くて目立ちますね」

「確かに先輩達が体育祭でやったアレは、もの凄く驚きましたね。探索者って、あんなマンガみたいな動きも出来るんだな……って」

「アレは……お兄ちゃん達が凄すぎるだけだよ」

「そうだね。私達じゃちょっと真似出来ないもんね」


 若干褒められてるのか貶されてるのか分らない評価をされたが、アピールという意味ではアレは効果覿面だったからな。とまぁ話し合いの結果、次はイベントブースを見て回った後、メインイベントを見学する事になった。

 さて、どんな企業アピールがあるのか楽しみだ。
















果物系ダンジョン食材とかが出てくると、屋台飯にも幅が広がるんですけどね……でてくれば。



コミカライズ版朝ダン、「マンガUP!」様にて連載中です。明日3-1話が更新され、3-2話が先読み更新されますので、よろしければ見てみてください。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] 勝手にオーク肉とかってバラとかロースとかのメジャーな部位しかドロップしないと思ってたけどフランクフルトみたいにモツもドロップするんだね モツ系の鮮度とか怖いね 食品衛生法的にはモンスター肉の…
[一言] ダンジョン産の食材が世に出れば出るほどそれと同系統の食材の生産者が首を括る可能性が出てくるだろうね
[気になる点] ミノ骨ドロップ有ったのね。 棍棒としても使えそう。
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