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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第14章 夏休みはイベントがいっぱい
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第316話 物販ブースは静かに見て回ろう

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 少々微妙な雰囲気が漂ってしまったが、俺は彼女達の背中を押し次のブースの方へと足を進めた。

 そして企業紹介ブース隣にあったのは、物販ブースだ。それも会場の外にあったような一般向けの物ではなく、探索者向けの品々が並んでいる。


「おお、色々と面白そうなのが並んでるな」

「武器に防具、探索者向けの装備品が一通り並んでるね」

「テントに寝袋、野営道具も色々売ってますよ」

「うわっ、どれも凄い値段がついてるし……」

「あの寝袋なんて、外で売ってたヤツの倍の値段が書いてあるよ……」


 俺達探索者組は物販ブースの品揃えに感心し、舘林さんと日野さんは並ぶ品々の高額表示に驚愕の表情を浮かべ目を丸くしていた。

 まぁ会場内の物販ブースに並んでいる品々は探索者向け、つまりプロ向けの商品という事もあり中々剛毅な価格設定がされている。俺達探索者組からすると命を預けるモノなので、一般向けの品より高額掲示されていてもさほど驚かないが、非探索者組の舘林さん達には目の飛び出る様な価格だろうな。

 

「どうする、軽く店先のモノを見てみるか?」

「うーん、そうだね。私はちょっと見てみたいかな?」

「私も、どんなのが売っているのか少し興味があります」

「私も興味はありますけど……」

「とてもじゃないけど、私達のお小遣いじゃ手が出せません」


 俺の提案に美佳と沙織ちゃんは乗り気だが、舘林さんと日野さんは居心地悪げに目線を逸らす。


「まぁまぁ舘林さんに日野さん、軽く覗くだけだし別に買う必要はないよ。俺達だって、実際に買おうとは思ってないしさ。なぁ?」

「えっ? あぁ、うん。ちょっと覗いてみるだけで、買ったりはしないよ」

「うん。どんなのが売ってるのかなーって、覗くだけだよ」

「そ、それなら……」

「私達も覗いてみようかな……」


 消極的ながらも二人の同意を得られたので、俺達は物販ブースを少し覗いてみる事にした。

 と言う訳で、まずは防具を売っているお店から覗いてみる。


「うーん、これは初心者向けのエントリークラス一式かな?」


 今俺が見ているのは、店先のマネキンにつけられている防具一式だ。全身の要所を守るように、衝撃吸収素材が裏打ちされた強化プラスチック素材のプロテクターが取り付けられており、最低限の守りは保証されているといった感じだ。価格は一式で約十万円。探索者成りたての初心者向け商品としては少々高価だが、大怪我を避けたいのなら、この辺りクラスの防具は最低限欲しいだろうな。

 まぁ装備品にもレベルアップ補正があるので、本格的に探索者をやると言うのなら、多少無理をしてでも手に入る最上位防具を購入すると言うのも選択肢の一つとしてはある。


「うわっ、新品の防具って結構するんだね……」

「うん。私達は中古で揃えたから出費が抑えられたけど、新品で一式揃えようとしたら……夏休みもバイトしないと買えなかったね」


 美佳と沙織ちゃんは展示されている防具一式の値札を見て、ホッとした様な表情を浮かべていた。2人は運良く、ほぼ開封しただけの状態の防具を安価で手に入れられたからな。正規価格で買おうと思ったら、間違いなく二人の探索者デビューは夏休み以降だっただろう。

 すると、そんな美佳達の様子を不思議そうな眼差しで眺める日野さんは、少し困惑気味な様子で疑問を美佳達に投げかけた。


「? 美佳ちゃん達の防具って、中古なの?」

「うん。お兄ちゃんに教えて貰った協会の中古装備買取サイトで、安く新古品を手に入れたんだ」

「中古と言っても探索者になってすぐ辞めた人達が売りに出した物だから、状態としてはほとんど新品だったよ?」

「へー、そう言う入手方法もあるんだ……」


 日野さんと舘林さんは思わぬ探索者価格に目を回していたが、美佳達の話を聞き感心したように少し驚いたといった表情を浮かべていた。まぁ中古市場と言う裏話を知らなかったら、何かにつけてお金が掛かる業界と言うイメージが先行するだろうからな。

 特に高額になるであろう装備品が安価で手に入るとは、想像もできなかったのだろう。


「と言っても、装備一式揃えたらバイトして稼いだ分は全部とんじゃったんだけどね。中古品と言っても、やっぱりそこそこするよ」

「そうだね。中古品とかで初期投資を抑えはしたけど、良くて半額って所だったもんね」

「うん……ほんとあの頃は資金的にはギリギリだったよね」

「初探索で稼げてなかったら、バイトでダンジョン探索に行く為の資金稼ぎをしないといけないくらいギリギリだったもんね」

「「はははっ……」」


 美佳と沙織ちゃんは初探索の頃の懐具合を思い出したのか、達観した表情で乾いた笑い声をあげていた。

 ほんと、ただの高校生が探索者装備一式を整えるには、スポンサー(親など)の支援がないとかなり厳しい物があるよな。自力で稼ごうと思っても、本格的な探索者装備一式分ともなれば稼ぐのにどれくらいの期間が掛かるか……。


「えっと……探索者をやるのならお金を貯めておいた方が良い、って事かな?」

「……麻美ちゃん達も探索者をやるのなら、それなりに貯めておかないと初期投資だけでお財布がスッカラカンになっちゃうよ?」

「うんうん、資金的に余裕が無いと、探索中も精神的に余裕がなくなるもんね」


 実際問題、初期投資のせいで資金難になった新人パーティーが、稼ごうという焦りから注意力が散漫になって怪我を負うって事例は後を絶たないらしいからな。

 特に夏休みに入ってからは新人高校生探索者パーティーが多く参入したせいで、ダンジョン内の人口密度が上がりモンスターとのエンカウント率が低下しているせいで負傷者が急増している。


「そっか……うん、分かった。考えとくよ」

「私も考えておくね」


 舘林さんと日野さんは微妙に悩ましそうな表情を浮かべながら、視線を防具一式を纏うマネキンに向け頷いていた。

 





 防具屋さんを後にした俺達は次のお店、武器屋さんを覗いてみる事にした。武器屋さんは流石に危険物を扱っているせいか、商品が持ち逃げされない様にショーケースや台にチェーンで繋がれ固定され少々物々しい雰囲気が漂っている。

 流石に探索者向けイベントとは言え、この辺りの安全対策は確りとられているんだな。

 

「へー、色々な種類の武器が置いてあるね」

「剣や槍、アレはモーニングスターかな?」

「「……」」


 美佳と沙織ちゃんは武器屋さんの品揃えに感心し、館林さん達は武器達が発する物々しい無言の圧力に圧倒されている。まぁ一般人がコレだけ武器が並ぶ光景を目にする機会は少ないだろうし、館林さん達の反応も無理は無いだろうな。

 逆に美佳達は既に見慣れているという事もあり、興味津々と言った様子で店先から並ぶ品々を見ている。人間、何事にも慣れるもんだな。


「それにしても、こうやって見てみるとやっぱり武器は高いなぁ……」

「そうだね。剣や槍何かのメインウエポン系は、軒並み十万円超えの値段が付けられてるよ」

「……そんな値段じゃ、流石に私達じゃ買えないよ」

「うんうん」


 店内に並ぶ武器に感心したり驚いたりしていたが、値札に書かれた価格を見て美佳達は表情を顰める。まぁ無理も無い、只の学生や駆け出し探索者が気軽に買える値段では無いよな。

 しかも今並んでいる安価な武器は、新人探索者が使う武器としてはそれほど良い質のモノでは無い。俺の“鑑定解析”によれば、並んでいる武器の殆どが質の悪い品だ。鈍器系の武器なら多少は見逃せるが、刃物系の武器はやめておいた方が良いだろうな。それなりの武術経験がある探索者が使うのならばともかく、素人が無茶な使い方をすればレベルアップ補正がつく前に最悪使用中にへし折れてしまうだろう。命を預ける武器が使用中に折れるとか、最悪だからな。


「ナイフとかなら、まぁ手頃?な値段だけど……」

「ナイフだけ持ってダンジョンに……って訳にはいかないもんね」

「うん。少なくともダンジョン探索に慣れるまでは、それなりに使い勝手が良い長物は持ってた方が良いよね」

「そうだね、モンスターに慣れるまでは近づくのも簡単じゃ無いもんね」


 一万円ほどの値札が下がるサバイバルナイフを見ながら、美佳と沙織ちゃんは自分達のダンジョン探索での経験を思い出し、新人探索者がナイフだけ持って探索に向かうのは無理だと結論付ける。

 それはそうだろうな、俺達だってモンスターと初対峙の時は緊張した。ナイフだけでやり合えって言われてたら……怪我をしていたかもしれない。今なら問題なく熟せるが、ナイフと刀や槍じゃ間合いが違いすぎる。それに……。


「人間相手じゃ無くモンスターを相手にするなら、ナイフよりホームセンターとかでナタを買った方が良いよね?」

「そうそう、ナイフより間合いは広いし肉厚で頑丈だもんね」


 態々高額なナイフを買う必要性は薄い。何ならナタを二刀流で振り回した方が、新人探索者はナイフより勝率は高いだろう。

 と、そんな美佳達の話を聞いた館林さん達は、店先に並ぶ武器達から視線を外し美佳達に話し掛ける。


「うーん、美佳ちゃん達の話を聞いてると、別に探索者専門のお店で武器を買わなくても良いように思えてくるなぁ」

「まぁ大体の学生系探索者は初期投資に回せる資金が少ないから、こうした武器っぽい武器じゃ無く、ホームセンターとかで買える代用品を持ってダンジョンに潜ってるからね」

「スコップとか鉄パイプを持ってくる人が多いよね?」

「そうそう、変わり種の武器だと釘バットとか持ってる人もいたよね」

「アレって、本当に使えるのか?」

「さぁ……?」


 美佳と沙織ちゃんはネタ武器を持ってダンジョンに挑んでいた探索者の事を思い出し首を傾げ、館林さん達はその姿を想像し微妙な表情を浮かべていた。まぁスコップや鉄パイプは、武器っぽい武器を買えない新人探索者のスタンダード武装だからな。

 そして良く良く辺りの武器屋を見てみると、頑丈そうなスコップが店先に置いてあるお店が結構あり、色々探索者が使いやすいようにと材質や形状等が改良されたモノが並んでいた。しかし何だよ、総チタン製のスコップ(円匙)って……しかも数万円もするしさ。






 色々言いたい事を言いながら武器屋を見回った後、俺達は次のブース、野営グッズコーナーに足を伸ばしてみた。ここら辺のお店の品揃えは基本的に会場外の店舗と大して変わらなかった。

 と言っても、やっぱり軽量高強度でコンパクトという探索者品質と言う事もあり、会場外の店のモノより少々割高だけどな。


「防刃繊維で出来たテントか……役に立つのか?」


 俺はブースの前に広げられているテントに触れながら、果たして防刃繊維でモンスターの攻撃を防げるのか?と考えながら、ブース内に並べられた品々を見て回った。

 テントの他にも、チタン素材で作られた折りたたみ式のベッドや椅子等も広げられているが、別にチタン製である必要なくない?とは思った。確かに荷物重量に制限がある以上、軽量である必要はあるが……うん、まぁ機能もだけど気分も大事だよな、うん。


「テント……ねぇ、お兄ちゃん? ダンジョン内でテントっているの?」

「うーん、今の所は別にいらないかな? 要は他人の目を遮れるプライベートスペースを確保出来れば良いだけだからな、無駄に立派なテントだと荷物も嵩張るし。現状だと、目隠し布を張るだけで十分だと思うぞ」

「そっか……」


 テントを怪訝気な眼差しで見ていた美佳の質問に、俺は少し考えてから不要だと答える。俺達が潜った階層までだと、特に雨も降ったりしないのでテントの必要性は感じない。むしろ疲労回復の為に、寝心地が良いベッドに予算を回す方が幾分か有意義だろう。

 まぁモンスターの襲撃を受けたら、回収する暇が無いから消耗品になるだろうけどな。つまり、そこそこの質の安物で十分って事だ。


「お兄さん、調理器具とかはどうなんですか?」

「うーん、本格的な調理器具はいらないかな? お湯が沸かせる装備だけを最低限持っておけば、ダンジョン内での食事はまぁ何とかなるよ」


 沙織ちゃんが本格的なバーベキューセットを指差しながらダンジョン内での食事について聞いてきたので、俺は仰々しい調理装備は必要ないと伝える。少人数のパーティーでは調理する機会など、まぁ無いだろうな。ダンジョン内で食材を調理する……出来る余裕があるのは、バックアップ体制が整った企業系パーティーか自衛隊くらいだろう。もしくは、ダンジョンの奥へと潜行するのを諦めたパーティーくらいかな?

 なので、俺達のような少人数パーティーでは、レトルト食品やフリーズドライ製品での食事が精々と言う事だ。つまり、沙織ちゃんが指差す調理装備は荷物を圧迫する無用の長物って事だな。


「えっと、こっちの寝袋についても聞きたい事が……」


 とまぁそんな感じで皆の質問に答えながら、俺達は物販ブースを軽く見て回りながら次の屋台ブースへと足を進めた。決して、物販ブースの店員さん達の出て行くようにと促す、咎めるような眼差しの圧力に負けて逃げ出したわけじゃ無いからな!
















物販ブースで商品に対する文句を口走ってたら、店員さんに鬼の様に睨まれますよね。



コミカライズ版朝ダン、「マンガUP!」にて連載中です。よろしければ見てみてください。

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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
本当に貴重な現場の声なのか、しったかぶりの適当な見栄っぱりか判断つかないのが難しいところ
いや、さすがにこれは文句言っていいレベルでしょ…… モンスター相手に2.3回振るえばヘタる武器なんて渡して何がしたいんやってなるし。
[一言] 後輩二人の槍って十万円越え処か五十万円越えしてなかったっけ?
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