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第3話 塩無双でレベルアップ

お気に入り400超、PV10000超、ジャンル別日刊ランキング5位、総合日刊ランキング21位!

僅か2話でこの結果、応援ありがとうございます!


 

 

 

 唖然とダンジョン内を見ていると、スライムが消滅した地点に再び光の粒子が集まる。


「……何だアレ? 巻物?」

 

 そこには、1本の金色の紐で綴られた黒い巻物が出現していた。巻物が出現した以外に変化は無いが、どうした物か。


「モンスター討伐報酬のドロップ品といった所か? 回収したいけどこの高さじゃな……。ああ、そう言えば確かアレが……」

 

 俺は引き出しを開けたまま、押入れを物色する。探し物自体は、それほど探さずとも直ぐに見つかった。探していたのは釣り糸と文鎮ペーパーウエイト、そして粘着テープだ。

 文鎮に釣り糸を結び付け、文鎮の底に輪にした粘着テープを取り付ける。即席の巻物回収装置の出来上がりだ。


「よし、出来た。これで上手く行けば良いんだけど……」


 俺は巻物目掛け、釣り糸を伸ばしていく。大体3m程下の地面に転がる、巻物目掛けて真っ直ぐ下ろすのは難しく、前後左右に揺れ、中々上手く狙いが定まらない。巻物の上空10cm程の所まで下ろした所で一旦止めるが、文鎮は大きく揺れていた。


「1・2の3!」


 文鎮が巻物の真上に来るタイミングに合わせ、一気に糸を離す。しかし残念ながら狙いはハズレ、文鎮は巻物から離れた場所に落下した。


「中々難しいな」


 釣り糸を手繰り寄せ、文鎮を回収し、地面に落ち、接着面が汚れた粘着テープを、新しい物に交換する。準備が出来たので、再挑戦。先程の失敗で、ある程度要領を得たので、今度はスムーズに、文鎮を巻物目掛けて下ろしていく。すると、文鎮の揺れは前回より小さく、タイミングはかなり取りやすくなった。


「今度こそ……1・2の3! よし!」

 

 今度は成功。粘着テープが上手い具合に巻物に貼り付き、手繰り寄せる釣り糸に釣られ手元まで登ってくる。

 そして、数秒で釣り上げていた巻物は無事、俺の手の中にたどり着いた。


「ふむ」 


 手に入れた巻物を観察するが特に変わった様子はなく、極普通の巻物の様に見えた。少し躊躇した後、俺は意を決し紐を解き巻物を広げる。

 巻物は白地に黒いインクで、文字ではなく文様の様な図形が一面に描かれていた。


「うわっ!」


 意味の分からない代物に首を傾げていると、黒いインクが発光し始める。咄嗟に巻物を投げ捨てようとしたが間に合わず、巻物は光の粒子に変わり俺の体の中へと入ってきた。

 咄嗟に上着とYシャツを脱ぎ捨て肌着を捲し上げ、光が入り込んで来た胸の辺りを触って確認するが特に異常はない。


「い、今のは一体……」


 やはりダンジョンから出てきた物なんかに、不用意に触れるべきではなかった。そんな今更な後悔をしながら脱いだ服を着直そうと手で触れると、軽いポップ音とともに視界に何かが映し出される。

 

 

 名前:学生服(上着)

 状態:良

 説明:高校指定の制服の上着

 

 名前:Yシャツ

 状態:可

 説明:量販品のYシャツ

 

「はぁ?」


 手が触れた制服とYシャツに重なる様に、半透明のゲームの説明表示枠の様な物が表示された。一瞬唖然とした後、目を閉じ眉間を揉んでもう一度見直すが同様に説明表示枠が浮かんでいる。


「……もしかして、さっきの巻物のせいか?」


 こうなった原因に、思い当たる節は一つしか無かった。先程、光の粒子に変化し俺の体に入り込んだ巻物が、変化の原因だろう。試しに、床に放り出した即席回収装置を手に取ると、制服と同じ様に説明表示枠が浮かんだ。

 と言う事はあの巻物、鑑定スキルか解析スキルの習得アイテムだったのか?ますます、ゲーム染みてきたな。

 

「……もしかして」


 ある疑念が思い浮かんだので、俺は押入れの扉を開き姿見の前に立つ。

 すると、予想通りのモノが表示された。

 

 

 名前:九重大樹

 年齢:15歳

 性別:男

 職業:学生

 レベル:1

 スキル:鑑定解析 1/10

 HP:15/15

 EP:6/10


   

「……出た」


 表示枠には俺の説明、自身のステータスであろう物が表示された。

 そして予想通り、スキルと言う欄に鑑定解析と言う名のスキルが追加されていた。先程から視界に浮かぶ表示枠の原因は、先ず間違いなくコレだろう。と言う事は、スキル名の横の数字はゲーム的考えでいくと熟練度を表す数字なのだろうか?熟練度が最大限まで上がるとランクアップする、と言う仕組みなのだろうか?

 視界に浮かぶ表示枠の原因が判明したので、俺は取り敢えず他の項目も確認していく。


「レベルか……。今まで現実でレベルが存在するなんて聞いた事無いと言う事は、さっきのスライムを倒した時に経験値(EXP)を手に入れたと言う事になるのか?」


 俺は開けっ放しの引き出しを横目で見た後、視線を姿見に映ったステータスに戻す。すると、ステータスのEPの項目が減っていた。 


「さっき見た時は6だったのが5になったと言う事は、鑑定解析スキルを使うにはEPを1消費するって言う事か……」


 EPの数字が最大値の半分になっていると言う事は、俺は何時の間にか5回も鑑定を行ったと言う事になる。使う様に意識した事はないとなるっと常時発動状態……つまりパッシブスキルって言う事になるのか?しっかし、ON/OFFが利かないと成るとこのスキルかなり使い勝手が悪いな。

 確認の為、俺はスキルが働かない様にと念じつつ押入れの中を覗き込んだ。押入れの中は乱雑に詰め込まれた物で溢れていたが、先程まで直ぐに表示されていた表示枠は出てこなかった。俺は押入れの中から座布団を持ち取り出し、スキルを使う様に意識する。すると、今度はすぐに表示枠が視界に浮かぶ。 

 

 

 名前:座布団  

 状態:可

 説明:低反発素材が使用された座布団

 

 

 意識した後に表示枠が現れたと言う事は、俺の意思でON/OFFの切り替えが可能なアクティブスキルという事か。俺はもう一度姿見に映る自分を見る。

 

 

 名前:九重大樹

 年齢:15歳

 性別:男

 職業:学生

 レベル:1 

 スキル:鑑定解析〔A〕 1/10

 HP:15/15

 EP:4/10

 

  

 スキル名の後に、多分アクティブスキルを表すであろうAの文字が追加されていた。つまり、この鑑定解析スキルは所有者の認識又は知識量によって表示される内容が変わると言う事か?このゲーム風ステータス表示も、俺の認識か知識から引っ張り出してきた分かり易い表示方法って所か……。

 あっ、EPの数字も地味に減っていると言う事は、1回使用にEPを1消費すると言う推論も当たっていたみたいだな。


「このスキルを有効活用するなら、最低限知識量は今以上に増やさないといけないと言う事か……」

 

 学生の本分は勉強です……良く聞くこの言葉を実践しなければいけない様だ。幸か不幸か今の時代、ネット上には電子百科事典なる物や専門的な知識を扱うページがあるので、学ぼうと思えば知識量を増やすこと自体は不可能ではない。気は滅入るがヤらないよりは良いだろう。

 俺がステータスを閉じる様に意識すると、視界に浮かんでいた表示枠は消える。何と無く、このスキルの使い方が分かってきた。

 

「はぁ」


 疲れた。スライムの問題が解決したと思ったら、スキル発現と言う、別の問題が噴出するなんて、思ってもみなかった。まぁ、スライムと言う直接的な脅威が消えた分、スキルの方が幾分精神的には楽だけど。

 押し入れを締め机の椅子に座り、開きっ放しにしていたダンジョンに通じる机の引き出しを閉める。 


「一応、一部屋しかないダンジョンのボスっぽいスライムを倒したんだから、これでダンジョンが消えていてくれると良いんだけどな……」


 出現原因は分からないが、自室にダンジョンが存在している等、安全保障面や精神衛生面で言えばこれ以上無い程に最悪と言っても良い状況と言える。ダンジョンには早々に、消滅して貰いたい物だ。

 希望的観測の意味も込め、俺は机の引き出しを開け、中を確認した。そして、中を確認した態勢で、俺は体を固める。

 何故なら、覗き込んだダンジョンの中には先程倒した筈のスライムが元気に存在していたからだ。


「……もしかして、無限湧きか?」


 暫く放心していたが、何時までもそうしている訳にもいかず、回転の鈍い頭で状況把握に勤しんだ。その結果、一つの推測としてモンスターの無限湧きに考えが至る。倒しても倒しても次のモンスターが出現し続ける現象で、机の引き出しを開け閉めする動作がリポップのトリガーになっているのではないのか?と言う疑惑が生まれた。

 

「……確かめてみるか」


 まず初めに、スライムに対して鑑定スキルを行使するが不発。何故かスライムの説明表示枠が表示されない。その結果に首を傾げながら、机の上に置いてある塩の袋を手に取り先程と同様にスライム目掛けて塩をダンジョンに流し込む。塩に触れたスライムは先程のスライムと同様に苦しそうにのたうち回り、徐々に体の体積を減らしていき消滅した。


「コイツも塩で倒せるんだ……」


 前回の戦闘結果がフィードバックされていない。まだ数が少なく確証は持てないが、塩に対する耐性を備えた個体が出現しないと言う事が分かっただけでも大きな収穫と言える。

 ただ、スライムに対して鑑定スキルが使用出来なかったのは気になった。


「……今回はアイテムのドロップは無しか」


 5分程待って見るも、先程のスライム討伐後と違いアイテムはドロップされない。どうやらモンスターを討伐しても、100%アイテムをドロップするという事ではない様だ。 

 少し残念に思いながら、スライムがリポップするか確認の為に引き出しを閉めて開け直す。結果は予想通り、何も居ない筈のダンジョンにスライムは当然の様に存在していた。


「無限湧き……引き出しの開閉をトリガーにしてのリポップはこれで確定かな?」


 俺は溜息を漏らしながら、引き出しを閉じる。

 

「さてと……」


 俺は椅子から立ち上がり、押し入れの姿見の前に移動する。先程と同様に自分に対し、鑑定スキルを使う。

 

 

 名前:九重大樹

 年齢:15歳

 性別:男

 職業:学生

 レベル:2

 スキル:鑑定解析〔A〕 2/10

 HP:25/25

 EP:11/15


 予想通り、スライム討伐によるEXPを手に入れていた。それに伴いレベルが上がり、HPとEPの最大値が上昇している。ただ、EPが最大値まで回復していない所から、レベルアップ時に全回復すると言う仕様ではなさそうだ。回復は現状、自然回復に任せるしかないのだろう。その内、EP回復薬か、EP回復促進系のスキルが出てくるんだろうか?

 そして地味に、解析鑑定スキルの熟練度が上がっていた。何でさっきはスライムに対して鑑定が使えなかったんだ?


「……もしかして」


 俺は押入れの中から先程鑑定した座布団を引っ張り出し、もう一度鑑定スキルを使う。鑑定の結果は先程と同様で変化なし。そして今度は座布団から手を離し、鑑定スキルを使う。結果は予想通り、何も表示されない。今度は姿見に背を向けた状態で、自分に対し鑑定スキルを使う。これも同様に何も表示されない。

 つまり……


「鑑定解析スキルを使うには、鑑定する対象物に接触して視認している必要があると言う事か」


 中々にキツイ制約だ。一番使いたい方法である敵に対しての鑑定解析が行えないとは……まぁ、遠距離鑑定が使えないなら使えないで、それなりの使い方と言う物がある。 

 それに……。


「熟練度を上げれば、スキルもランクアップするかな?」 


 鑑定解析Ⅱとかに派生すれば、遠距離鑑定が出来る様に成るかも知れない。まぁ、あくまで自分に都合の良い予想でしかないので、そうなるとは限らないのだろうが。取り敢えず、鑑定解析の熟練度を最大値まで育ててみよう。

 その為にも……。


「今の内に、追加の塩を買いに行くか」


 装備品を補充しておこう。どうもこのダンジョンは、対処法さえ分かってしまえばボーナスダンジョン化する物だった様だ。比較的安全にレベル上げ出来るんだから、今の内に上げられるだけレベルを上げておこう。

 俺は制服をハンガーに片付けて私服に着替え、財布を持ってスーパーへと向かった。

  

 

 

 

 



完結目指し頑張ります!

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― 新着の感想 ―
[一言] スライム倒して300年状態ですか…
[気になる点] 「さっき見た時は6だったのが5になったと言う事は…」 (EP5) 俺は押入れの中から座布団を持ち取り出し、スキルを使う…(5→4) 俺はもう一度姿見に映る自分を見る。(4→3) …
[良い点] これぞ正しく「塩対応」ってヤツですね~♡ 素敵な小説ありがとうございます♡ 応援してますね♡
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