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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第11章 夏休みにむけての準備

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第246話 不安塗れの夜

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 暫くの間、冷めた夕食を眺め下剤などの薬物混入を疑っていたが他に食べるものもなかったので、流石に幻夜さんでもそこまではしないだろうと自分達に言い聞かせつつ夕食に口を付けた。そうそう、念の為に訓練中は使わないつもりでいた“鑑定解析”スキルを使って調べてみたが所、結果は白。配布された食料品に薬は混入されていなかった。

 だけど流石に、最初の一口目を口に入れた時は全員が緊張したけどな。因みに、冷めてはいたが夕食のレトルト食品は美味しかった。


「ふぅ……。ごちそうさま」


 夕食を食べ終えた俺は、無意識に胃のあたりに手を当て数回撫でる仕草をした。スキルで検査し安全だと分かってはいても、一度抱いた不信感とは中々とれないものだよな。

 そして何気なく視線を前に向けてみると、裕二と柊さんも俺と同じ仕草をしていた。


「「「……」」」


 俺達は無言で見つめあった後、頬を軽く引きつらせつつ力のない笑みを浮かべあった。


「……大丈夫だよ。ちゃんと調べて、シロだったんだからさ」

「そ、そうだよな。大丈夫なんだよな……」

「分かっては、いるんだけどね……」


 そう、全員分かってはいるのだ。配布された食料は、安全な食べ物なのだと。

 しかし……。 


「ダンジョン内で泊まり込む時、食料品は自前で用意したものだけを口にした方が良さそうだな。大丈夫だとわかっていても、他人から分けてもらった食料品だと不安が先行するしさ……」


 無いとは思うが、親切そうな顔をした探索者が提供してくれた食料に毒が……何て事もゼロとは言えない。衆人の目が届かないダンジョンの奥深くだ、欲に駆られ他人の成果を横取りしようとする輩が絶対に出ないとは限らないからな。 

 自給自足……じゃないな、活動に必要な物資は自己運搬自己消費出来るようにした方が精神面を含めて安心だ。


「そうだな。ダンジョン内での数少ない楽しみである食事が不安だと、本気で気が休まる時間がないって言うのは……精神的にきつすぎる」

「そうね、賛成よ。幸い私達は、九重君のお陰でその手の制限はかなり緩いもの。各自で最低限の物資は持つ必要はあるでしょうけど、余剰分に関してはあまり気にしなくていいものね」


 頷きながらそう言う柊さんの言葉に、裕二も頭を縦に振って頷いて賛同している。

 ……うん、分かってた。俺が荷物持ちだもんね。と、俺は自分の立ち位置を再認識する。






 夕食を片付け終えた俺達は、夜番の順番を決め早々の休息を取る事にした。特にする事が無い以上、出来るだけ長めに休息を取る方が有意義だろうからな。 


「じゃぁ、夜番は2人組の交代制……って事で良いよな?」

「ああ、基本はこの間のキャンプでした時の要領で良い筈だ。但し、今が夜の21時だから、朝4時半まで休憩を取るとすると……1人だいたい5時間くらい夜番を担当する必要があるな」

「5時間か……」


 裕二は木の枝を使い、地面に21時から6時までの数字を1時間毎に書き、更にその書いた数字の下に横棒を引き、夜番時間の割り振りを記入する。

 結果、21時から2時までを担当する者、0時から4時半時までを担当する者、そして21時から0時と2時から4時半までを担当する者に分かれた。夜番を2人組にしたせいで、大体1人2時間という前回のキャンプで夜番をした時より大分休息時間が短くなっている。 


「休息時間は2時間か……」

「2人体制にしたからな……そこはしょうがないさ」

「幸い、肉体的疲労自体は無いから2時間休息でも……」

  

 皆、休息2時間という数字に苦い表情を浮かべ口籠もる。

 少人数パーティーのデメリットが、ここに来て顕在化した形だ。多ければ良いというわけではないが、少なすぎるのも問題だな。4人……いや、5人組なら余裕を持って2人体制の夜番を組めるんだが、無いものねだりをしても仕方が無い。


「……仕方が無い。順番を決めよう」

「……そうだな」

「……そうね」


 前回のキャンプの時は裕二が貧乏ク……順番を率先して買って出てくれたが、今回はジャンケンで決めることにした。流石に、裕二ばかりに負担を掛けるのもどうかと思うからな。

 そしてジャンケンの結果……。


「俺は21時から2時か……」

「私は0時から4時半ね」


 チョキをだしジャンケンに負けた俺が、21時から0時と2時から4時半までという順番になった。


「じゃぁ私、早めに休ませて貰うわね」

「あっ、うん。お休み、柊さん」

「おやすみなさい」


 交替まで3時間しか無いので、柊さんはそそくさと陣幕を張って作った就寝スペースに姿を消した。

 

「さて、じゃぁ裕二。俺は予定通り陣幕の向こう側に移動して警戒するから、こっち側の警戒頼むな」

「ああ、任せろ。大樹も居眠りをして、襲撃を許したりするなよ?」

「そんなドジはしないよ。じゃぁ、また後でな」

「ああ」


 軽い掛け合いをした後、俺と裕二は陣幕を間に挟んで警戒を始めた。

 さて、襲撃者の痕跡を見逃さないように気を付けないとな。





 星と月の明かりに照らされるだけの暗い山を眺めながら、防寒用のブランケットに包まりつつ襲撃者の警戒していると、微かに枯れ木が折れる乾いた音が響いた。町中のように雑多な音が混じっていない静かな山の中なので、微かな音量でしかなかった枝が折れた音も警戒を強めていた俺の耳に確かに届く。 

 木の上からではなく、地面方向から枝が折れる音が聞こえるという事は……誰かが踏み折ったと言う事だな。


「……」


 俺は無言のまま、枝が折れた音の聞こえた方向に視線だけを向け警戒を強める。すると、今度は落ち葉が踏み締められる音が微かに聞こえてきた。

 おそらく、接近中の敵が落ち葉が重なった場所を踏んだのだろう。


「……そこだな」


 俺は音が聞こえてきた方向にズームライトを向け、口の中で小さく呟きながらスイッチを入れた。すると手元のライトから一直線に光の柱が山の中に伸び、木の陰に隠れながら近づいてきていたらしき人影を照らし出す。

  うん、ドンピシャ。やっぱり居たよ。


「「……」」


 数秒間、照らした俺と照らし出されて人影の視線が混じり合った後、照らし出された人影は少し悔しそうな仕草を見せつつ山の中へと姿を消していく。 

 ご苦労様です、そして残念でした。


「……ふぅ」


 俺は小さく息を吐き出しながら、ズームライトのスイッチを切った。

 やっぱり、夜中だろうが何だろうが関係なく襲ってきたか……コレがあと何時間続くんだ? 


「ん?」


 そんなことを思っていると陣幕の反対側、裕二が警戒している方向から小さな溜息が聞こえてきた。裕二の方にも、襲撃者が出たのかな?


「……先は長いな」


 俺は星空を見上げボヤキながら、真っ暗な山の警戒を続ける。

 そして不定期的に接近してくる襲撃者をライトを使い撃退し続けていると、何時の間にか夜番の交替時間がきていた。


「九重君、交替の時間よ」

「ああ、柊さん。おはよう」


 陣幕の中から、防寒用ブランケットを手に持った柊さんが出て来た。


「おはよう。私がこっち側の夜番を引き継ぐから、九重君も休んでちょうだい」

「あっ、うん。ありがとう。じゃぁ、よろしくね」

「ええ。ゆっくり……とは言えないでしょうけど、確り体を休めておいてね」

「うん」


 俺は包まっていたブランケットを畳みながら立ち上がり、柊さんと交替する。

 俺、割と寝付きは良い方だけど……直ぐ眠れるかな?等と考えていると、ブランケットに包まり座ろうとしていた柊さんが声を掛けてくる。


「あっ、そうだ九重君」

「ん? なに?」

「寝る前に、例の薬を忘れないように飲んでおいたほうがいいよ。丁度、追加分を服用する時間だから」


 そうだそうだ、忘れていた。幻夜さんに、薬は6時間程度の間隔で服用するように言われていたんだ。

 ちょっと前から妙に頭が冴えると思ったら、薬の効能が切れかかってたからか。


「ありがとう柊さん、そうだったね。忘れないように、飲んでおくよ」

「ええ。せっかく頭が冴え掛かってきていたのに残念だけど、薬を飲んでいないと訓練にならないもの」

「……うん。そうだね」


 薬を飲むと、また頭に霞がかかり思考が鈍るって事なんだよな……残念。  

 等と思っていると、柊さんが座り込んで警戒を始めたので、俺もさっさと陣幕に撤収するとしよう。


「じゃぁ、よろしく」

「ええ、おやすみなさい」

「おやすみ」


 俺は陣幕に引っ込み薬を飲んだ後、早々にブランケットを羽織りながら断熱クッションを敷いた地面に横になった。

 ……寝れるかな、俺?






 目覚ましをセットした時計が震えたので目を覚ますと、最初に視界に飛び込んできたのは満天の星空だった。

 そして思い出す。ああ、そうだった。幻夜さんの訓練で、野営してたんだったっけ、と。


「……」

 

 目元を擦りながら、俺はブランケットを開けながら上体を起こす。

 ……一睡したはずなのに、頭が全く冴えない。思考が回っていないのが、自分でも手に取るように分かる。寧ろ寝起きなせいで、寝る前より頭の回転が鈍い。


「……ヤバいな、この状態」


 せめて寝ボケている思考分だけでも何とかしないと、とてもではないが夜番としては役に立たないだろう。目覚まし時計は交替時間の10分前にセットしておいたが、10分でこの鈍りに鈍りきった思考が少しはマシになるのだろうか? 

 そんな心配と不安を抱きながら10分後……。


「おはよう、裕二。交替だぞ」

「ああ、おはよう……って、おいおい大丈夫か?」

「あっ、うん。何とか」


 後ろから声を掛けた俺の声に反応し、振り返って俺の顔を見た裕二の顔に心配げな色が浮かんでいた。

 多少はマシになったつもりで居たけど、思考の鈍り具合が顔に出ていたらしい。残念ながら、10分程度の時間ではこのどうしようもない思考の鈍さは解消出来なかった。


「何とかって……」

「まぁ、コレも訓練の一環って所だろうな……」


 寝起きの最初に比べればマシになってきているので、時間が経てばこの思考の鈍さも多少は解消出来るだろう。時間が経てば、だけどな。

 そしてブランケットに丸まり座ろうとしていると、不安げな表情を浮かべた裕二が声を掛けてくる。


「……もう少し、俺の夜番の時間を延ばした方が良くないか?」

「いや、もう交替の時間なんだし……裕二は休んでくれ」

「でも、な……」


 俺の大丈夫だという答えに、裕二は不安げな表情を消せずに居る。無理もないか。コレが反対の立場だったら、俺だって裕二と同じような反応をするだろうな。

 そんな不安を消しきれない裕二に、俺は乾いた笑みを浮かべながら口を開く。


「多分30分もあれば、裕二と同じくらいには思考も回り出すだろうから大丈夫だよ。それにコレは、寝起きを襲撃された時の対処訓練には丁度良いさ」

「……」

「だから、裕二は予定時間通りに休んでくれ」

「……分かった。じゃぁ、後は頼むな」

「了解」


 不承不承といった感じだが、裕二は俺の説得?に応じ陣幕の中に入っていった。

 さて、と……ここ30分が勝負だな。


「出来れば来るなよ……」


 そう願いながら、俺は鈍い思考を無理矢理動かし襲撃者の警戒を始めた。






 朝日が登り始め、辺りが薄らと明るくなり始める。

 ふぅ、何とか凌ぎきったな。


「おはよう」

「ん? ああ、裕二。おはよう」


 夜番を全うし襲撃を凌ぎ切ったことに安堵していると、裕二が起き出してきていた。


「大樹、あの後は大丈夫だったか?」

「ああ、うん。何とかね」


 正直言って、襲撃がもう少し早かったら危なかったけどな。何とか襲撃者の攻撃寸前に気付いて撃退することが出来たけど、あと10分ほど襲撃が早かったら攻撃されるまで気が付かなかった可能性があった。あの時裕二には夜番の延長を断ったけど、30分程度は交替する夜番と交替される夜番が重なるように交替時間の予定を組んだ方が良さそうだ。

 また負担が増えるけどな。

 

「そっか。じゃぁ陣幕を片付けたら朝食は俺が用意をするから、もう少し警戒を続けてくれ」

「了解」

「頼むな」


 そう言って裕二は柊さんに声を掛けに言った後、陣幕の撤去と朝食の準備を始めた。因みに、朝食もレトルト食品を温めたものだ。……不安再来。

 そして周囲を警戒しつつ交替で朝食を食べ終えた後、地図を見ながら今日最初の目的地を決めようとサイコロを握っていたところ、裾野から頂上に続く山道の方から人が近づいてくる気配を感じた。 


「えっ、まさか真っ正面から?」

「流石に、それはないだろ……」

「そうよね。流石に正面は……」


 そう思いつつ山道に注目していると数十秒後、山道を登ってきた人の姿が見えた。

 って、アレは……。


「あれ? 幻夜さん?」

「室井さんも一緒にいるな……」


 山道から姿を見せたのは、幻夜さんと室井さんだった。

 こんな朝早くから、一体なんなんだろう?

















 回らない頭で夜襲を警戒、少人数パーティー故に警戒要員を増やせば休息時間の確保が困難に……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 休息時間が短くなるのが嫌なら、野営時間を伸ばせばいいだけですよね?
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