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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第10章 注目株って響きは良いけど
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第229話 入部希望者に説明

お気に入り18680超、PV23190000超、ジャンル別日刊50位、応援ありがとうございます。






 部屋の中に俺達が揃って座っているのに気が付いた美佳と沙織ちゃんは、軽く頭を下げながら口を開く。


「お疲れ様です」

「遅くなりました」


 そんな美佳と沙織ちゃんの挨拶に俺は軽く手を上げ答えながら、後ろに隠れるように控えている女の子2人の事について尋ねる。

 後、俺達も今日は生徒会に呼び出されて遅れてきたから、別に部室に遅れてきた事自体は気にしなくてもいいんだけどな。


「おう、お疲れ。……で、後ろのお2人さんは?」

「ええっと……入部希望者」

「体育祭での私達の活躍を見て、ウチの部に興味を持ったそうです」


 美佳と沙織ちゃんに紹介された女の子2人は、緊張した面持ちで俺達に向かって頭を下げる。いや、緊張しなくても良いからね?

 俺は2人の緊張を解そうと、優しく声を掛ける。


「そっか。じゃぁとりあえず、自己紹介の前に座って貰おうか。立ったままだと、アレだしな。裕二、椅子ってまだ収納庫にあったよな?」

「おう、あるぞ。直ぐとってくるわ」


 そう言って裕二が席を立ち椅子を取り出しに向かおうとすると、女の子2人は若干慌てたようすで“自分でとってきます”と主張したが、裕二は軽く手を振りながら遠慮するなと言い残しとりに向かう。

 女の子2人は恐縮したような様子で裕二にお礼の言葉を口にし、気まず気な表情を浮かべ美佳と沙織ちゃんに向けていた。そんな顔を向けられた美佳と沙織ちゃんは、対応に困ったように苦笑を浮かべてたけどな。


「良し。じゃぁまず、自己紹介からして貰おうか。名前が分からないと、何て呼んで良いか分からないからな。そっちのショートカットの子から頼むよ」


 全員が席に着いたので、女の子2人に自己紹介をして貰う事にした。

 因みに席順は橋本先生、柊さん、俺、裕二と横並びで座り、長机の対面に女の子2人、美佳、沙織ちゃんと並んでいる。一応女の子2人の対面には橋本先生と柊さんが来るように配慮して座ってみたのだが……並び終えた後で気付いた。

 これって、一種の圧迫面接とかにならないよな? チラリと様子を観察してみると、女の子2人は緊張でガチガチに体が硬直しているしさ。


「あ、あのっ、ええっと……」


 ショートカットの女の子は、緊張で声が中々出ないようだ。すると柊さんは、ショートカットの女の子の様子を見かねたようで優しい口調で落ち着くようにと声を掛ける。


「落ち着いて。別に面接とかしているわけじゃないのだから、緊張しなくて良いのよ。ほら、深呼吸でもして落ち着きなさい」


 ショートカットの女の子は柊さんの指示に従い、浅く深呼吸を繰り返す。すると次第に、女の子の表情から緊張の色が抜けていった。

 ついでに、隣のもう1人の女の子も同じように深呼吸をしている。まぁ、良いんだけどね。


「落ち着いた?」

「あっ、はい」

「じゃぁ、自己紹介御願いね?」

「はい!」


 柊さんのアドバイスで落ち着きを取り戻したショートカットの女の子は、俺達に向かって軽く頭を下げてから自己紹介を始めた。


「えっと私、館林 麻美(たてばやし あさみ)と言います。美佳ちゃん達と同じクラスに所属してます」


 ショートカットの女の子は、館林さんと言う美佳達と同じクラスの子らしい。先程入り口で見た彼女の身長は美佳達より少し高く、柊さんと同じぐらいだった。顔立ちも、カワイイ系と言うよりカッコいい系の女の子だ。先程の緊張した様子とは打って変わって、落ち着いた今の雰囲気は同性からモテそうなタイプ……と言えば良いのかな?


「よろしく、館林さん。それと貴方の入部希望理由を聞く前に、もう1人の子の自己紹介を聞いても良いかしら?」

「はい、構いません」

「じゃぁ、自己紹介をお願いね」

「は、はい!」


 話を振られたもう一人の女の子は、緊張で上ずった声を上げてしまい恥ずかしそうに頬を赤く染めた。


「えっと私、日野 涼音(ひの すずね)と言います。麻美ちゃんと同じクラスです……」


 カールの掛かったセミロングヘアで身長は美佳や沙織ちゃんより頭1つ低く、顔立ちも館林さんと反対に幼さが残ったカワイイ保護したくなる系だ。

 

「館林さんと日野さんね。よろしく」

「「こ、此方こそ、よろしく御願いします」」


 とりあえず2人の名前は分かったので、二人の入部希望理由を聞いてみるか。 

 俺は柊さんに視線を送った後、館林さんと日野さんに声を掛ける。


「で、二人はどう言う理由でウチに入りたいと思ったの?」

「あっ、えっと……」

「ああ、ごめんごめん。そう言えば俺達の事を教えてなかったね」


 俺は苦笑いを浮かべ後頭部を掻きながら、自分達がまだ名乗っていなかった事を思い出し謝罪した。

 体育祭で活躍?した上、今朝からの人気者騒動もあり、入部を希望してくるのだから自分達の事を知っていて当たり前だと思い込んでいたようだ。うん、チョット自意識過剰で傲慢になっていたみたいだな。


「俺は九重大樹、そこにいる美佳の兄貴だ」

「広瀬裕二。よろしく館林さん、日野さん」

「柊雪乃よ」

「そして私が、この部の顧問をしている橋本よ」

「「よろしく御願いします」」


 今度こそ自己紹介は終わった。なので、改めて館林さんと日野さんに入部理由を尋ねる。


「ええっと、体育祭で先輩方が行われた演武を見て憧れたって言うのが理由の1つなんですが……」

「それとは別に、打算的な理由があるんです……」


 入部希望理由を述べる館林さんと日野さんは、目線を俺達からずらし言い辛そうに言葉尻を濁す。

 だが俺達には、館林さんと日野さんが言葉尻を濁す理由を知っていた。


「その理由って……君達のクラスで起こっている後藤君達の件かな?」

「「!?」」


 館林さんと日野さんは、俺の言葉に驚いた様に表情を浮かべ凝視してきた。


「その件なら知ってるよ。何と言っても、俺は美佳の兄貴だからね。大分前からその件については、美佳と沙織ちゃんから相談を受けてたよ。同じクラスに、困った連中がいるってさ。なぁ?」

「うん。お兄ちゃん達には、後藤君達が強引な勧誘をしてきて困ってるって前々から相談してたよ」

「「……」」


 俺と美佳の返事に館林さんと日野さんは、呆気に取られたように溜息を漏らし表情と体から力が抜けた。館林さんも日野さんも後藤達の件を理由に入部しようとしていた事が、どうやら2人にはかなり心理的な負担がかかっていたようだ。2人とも、他人を自分の都合で利用する様な事に気掛りを覚える性格の良い子らしい。

 まぁコレが、他人を利用する事に躊躇が無い性格の子だったら入部拒否している所だよな。


「と言うわけで、君達が後藤達の事で気を病む事は無いから。と言うか、この部の裏事情が裏事情だからさ。なぁ裕二、柊さん?」

「ああ、気にする事は無いぞ」

「そうね。2人とも、気にしなくて良いわよ」


 俺達3人が気にするなと伝えると、館林さんと日野さんはどう反応すれば良いのか困惑した笑みを浮かべ、美佳と沙織ちゃんに助けを求めるような眼差しを送った。

 そして暫く居心地が悪そうな表情を浮かべていたが、気掛りがあったらしく館林さんが控え気味な口調で俺に質問を投げ掛けてきた。


「あの、すみません。裏事情……って何ですか?」

「ん? ああ、そうだな……言って良いかな?」


 俺は館林さんの質問に答えようと思ったが、すんでの所で思いとどまる。2人がまだ正式に入部していない事を思い出し、部の裏事情を開示して良いかと5人に開示許可を求める。


「俺は別に良いと思うぞ。この2人が周りに言い触らしさえしないと言うならな」

「そうね。言い触らされないのなら言っても良いんじゃ無いかしら?」

「私は最初に伝えて置いた方が良いと思うよ」

「私もそう思います」

「そうね。2人とも、コレから聞く事は表立って言い触らしたらダメよ?」

「「は、はい」」


 とりあえず全会一致で開示許可が下りたので、館林さんと日野さんにウチの部の創部に関する裏事情の説明を始める……のだが。


「じゃぁ裏事情について説明するから……と言っても、2人が警戒しているような後ろ暗い事情じゃないから、そう警戒しないで良いからね?」

「「は、はい……」」


 念押しが過ぎたのか、館林さんも日野さんも若干怯えた眼差しをしている。


「えっと簡単に言うと、ウチの部が創設された理由には、君達が気にしていた後藤達の件が絡んでいるんだよ」

「後藤君達の件が、ですか?」

「そう。事の始まりは、美佳達に後藤達の事を相談された事なんだ。どうにかして、後藤達の強引な勧誘を止められ無いか、ってね。それで色々考えた結果、ウチの部を作る事になったんだ」

「? あの……部活を作る事と後藤君達の勧誘を辞めさせる事の間に、どう言う関係性があるんですか?」


 館林さんと日野さんは俺の言っている事の意味が分からず、首を傾げ疑問符を浮かべていた。まぁ、いきなり関係性について解れって方が難しいよな。


「それがあるんだよ。美佳達にこの件に関して相談された時、まず初めに思いついた辞めさせる方法は、俺達が乗り込んで後藤達を説得(・・)するってものだったんだけど……」

「端から見ると、上級生が入学早々ヤンチャした下級生をシメてる光景だよな」

「流石にソレは、ね?」

「「……ハハッ」」


 館林さんと日野さんはその光景を想像したのか、盛大に頬を引き攣らせ乾いた笑い声を上げた。 

 

「次の案は、教員に報告して学校側に対応して貰うって案だったんだけど……」

「学校側の立場からして見てみると、後藤君達がやっているのは、学校での友達作りと放課後友達と遊んでいたって事になるのよ。学校での授業態度や生活態度は真面目だったし、放課後に何かしらかの暴力行為や問題行動に及んでいたって訳では無いから、教員が生徒指導を出来る正当な理由も無かったのよ……」

「「……」」


 頭に手を当てた橋本先生が溜息を漏らしながら学校側の立場を説明すると、館林さんと日野さんは理解はするが納得は出来ないと言った表情を浮かべ橋本先生に非難めいた眼差しを送っていた。


「となると、俺達に打てる手が極端に少なくなる訳だ。だけど、だからと言って放って置くわけにも行かない。そこで捻り出したのが、この部の創設って方法だ」

「「?」」

「俺達が直接問題に介入出来ない以上は同じ立場の者が対処する……つまり、美佳達が問題の矢面に立ったんだ」

「「!?」」

「「……」」


 館林さんと日野さんは驚愕の表情を浮かべ、隣に座る美佳と沙織ちゃんに振り向いた。まぁ、そう言う反応になるよな。逆に美佳と沙織ちゃんは口を開かず、ただ苦笑いを浮かべるだけだった。

 

「……勿論、俺達も美佳達を何のバックアップも無しに矢面に立たせる気は無かったよ。直接的な支援が出来ない以上、裏側からや間接的に出来るだけのバックアップ体制を整えようってね」

「その結果が、この部の創部だよ。俺達が美佳ちゃん達の後ろ盾になっている事を、目に見える形で誇示出来るからな」

「他にも職員側や生徒会側にも協力要請の根回しをしているから、それなりのサポートが期待出来るわ」


 俺達3人の説明を聞き、館林さんと日野さんは埒外の裏事情に唖然とした表情を浮かべ、頭を何度も右往左往させ俺達の顔を見回していた。









 暫く唖然としていた館林さんと日野さんも落ち着きを取り戻したので、話しの続きをする事にした。


「と言う事は、この間の体育祭で先輩達が行ったアノ演武は……」

「所謂、示威行動かな? 美佳達に手を出せば、こんな事が出来る俺達が出張るぞ……ってね? 効果あっただろ?」

「えっ、ああ、はい。確かに体育祭のリハーサルと本番の後、何時も勧誘の声を掛ける後藤君達が静かにして何もしてきませんでした。ねっ、涼音」

「うん。あの時の後藤君達、何かに怯えるように暗い雰囲気だったよね」


 美佳達からも聞いたけど、その時点までは牽制も成功していたんだよな。

 日野さんの言う、暗い雰囲気って言うのも美佳を旗頭にしたクラスメート達から報復されないか気にしての事だろう。


「でも……」

「今日学校に来てみたら、暗い雰囲気なんて無くなってた……かな?」

「えっ! ああ、はい。先輩、美佳ちゃん達から聞いて知ってたんですか?」

「いや。そう言う訳じゃないんだけど……」


 どうやら、嫌な予感が当たっていたらしい。

 俺は思わず天井を仰ぎみ、裕二は溜息を吐きながら頭を左右に振り、柊さんは額に手を当て沈黙、美佳と沙織ちゃんはウンザリとした表情を浮かべ肩を落とす。

 そんな俺達の反応に橋本先生と館林さん、日野さんは揃って疑問符を浮かべながら首を傾げた。


「……牽制が無意味になって、事態が更に厄介な方に向かった、って所かな?」


 俺が疲れた様に吐き出したその言葉に橋本先生と館林さん、日野さんは目を見開き驚愕した。

 ホント、悪い予感ばかり当たるよな。
















演武効果のおかげで、入部希望者出現しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] まず教師に相談する。 教師が問題を把握しているのなら根回ししてからなるべく多くのPTAから抗議文を出させる。 要は口実が有れば良いだけなのでこれで教師の介入出来ると。 ベテラン教師に相談すれ…
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