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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第10章 注目株って響きは良いけど
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第227話 呼び出されて……

お気に入り18530超、PV22840000超、ジャンル別日刊35位、応援ありがとうございます。






 水泳の授業が大好評?に終わった放課後、終業のHRの時に渋面を浮かべた先生から、俺達と部活の件で話がしたいと生徒会が呼び出していると伝えられたのだ。恐らく、体育祭関連の事に対しての呼び出しだろう。

 事前に伝えていたとは言え、結構色々とやらかしたからな。


「そう言えば九重君、美佳ちゃんからメールの返事は返ってきたの?」

「いやぁ、それがまだ返ってきてないんだよ。先週までなら、直ぐに返ってきてたのにさ……」


 教室に残り、生徒会からの呼び出しを憂鬱に思い項垂れていると、心配気な表情を浮かべた柊さんがメールについて質問してきたので、俺は軽く目を瞑りながら首を振って否定の返事を返す。

 

「なぁそれって、クラスメートに囲まれて返事を返す暇が無い……って所か?」

「かもしれないな」


 怪訝気な表情を浮かべた裕二の推測に、俺は渋面を作って頷く。

 多分美佳達は今、質問の雨霰って感じでクラスメート達に取り囲まれている所だろう。そうなると、もしかしたら携帯にメールが届いているという事にさえ、気が付けていないかもしれないな。だが、ココで返事が返ってこない事を心配し無遠慮に俺達が美佳達の教室……いや、1年生の教室がある階に直接乗り込むと、俺達の教室に他クラスの生徒が野次馬で集まってきていた感じからして火に油を注ぐ結果になる可能性が高い。要するに、今の俺達は気軽に美佳達の教室に顔を出すのは憚られるのだ。

 まぁ、更に油を注いで騒ぎに火を点けたいのなら話は別だけどね……俺達はしないけど。


「だけどまぁ、とりあえず緊急の面倒事を先に片付けよう」

「……そうだな、行くか」

「ええ。先延ばしにしていても、どうしようも無いものね」


 一先ず美佳達の件は置いておき、俺達は呼び出しを受けた生徒会室へと意気消沈した雰囲気を纏いながら向かう事にした。やり過ぎた感はあるけど、事前通告はしていたし特に悪い事はしてないから、それほど厳しく問い詰められる事は無い……と思いたいな。







 生徒会室の前に到着した俺達は、左右を見渡した後立ち止まり、一緒に呼び出されているかもしれない美佳達の到着を、少し待つ事にした。呼び出しの言付けを受けたHRが終わった後、俺は美佳にメールを送って、2人も生徒会室に呼び出されていないか?と確認のメールを入れていたのだが、未だ美佳から、どちらだとも返事が返ってきていないからだ。美佳達も生徒会に呼び出されていたのなら、俺達と一緒に入室した方が良いからな。

 そして生徒会室の前で5分程待っていると、美佳達が到着する前に生徒会室の扉が内側から開かれ、中から生徒会書記を務める南城さんが顔を出した。


「あっ、貴方達……来てたの?」

「あっ、南城さん。えっと……こんにちは?」

「こんにちは。もう、来ていたのならそんな所に立っていないで、早く中に入ってくれば良かったのに……」

「ええっと、ごめん。実はその……」


 俺は南城さんに、俺達が部屋の前で待っていた事情を簡単に説明する。すると、南城さんは納得したという表情を浮かべた後、少し困った感じで苦笑いを浮かべた。


「えっと、事情は分かったわ。でも……その、ね? 今回、私達が呼び出しを掛けたのは貴方達だけなのよ……」

「「「えっ!? ああぁっ……」」」


 俺達は苦笑いを浮かべながらその事実を告げる南城さんから視線を逸らし、バツの悪い表情を浮かべた。


「で、でも事情はどうであれ、貴方達がちゃんと呼び出しに応えてココに来てくれた事に変わりは無いんだから……さっ、入って入って」

「う、うん。し、失礼します……」

「「失礼します」」


 場を取り繕うような言葉と仕草をする南城さんに促され、俺を先頭にし生徒会室へと足を踏み入れた。

 しかし……はぁ、やっちまった。こんな事になるんだったら、伝言を聞いた時に俺達だけが呼ばれているのかどうかを確認しておくんだったな。


「よく来てくれたわね、九重君、広瀬君、柊さん」

「いえ、此方こそ遅れてすみません」

「気にしなくて良いわよ。南城さんとの話は聞こえていたから、事情は把握しているわ。こっちも、何時までに来て欲しいって時間指定はしていなかったもの」

「ははっ、そう言って貰えると助かります」


 生徒会室に入った俺達は、待っていた久松先輩含めた生徒会メンバーから、特に咎められる事無く普通に声を掛けられた。だけど寧ろこの場合、小言の1つでも貰った方が、まだマシというか何と言うか……妙に居心地が悪い。

 そして軽い挨拶を交わし終えた俺達は、早速今回の呼び出された本題について話し始める。


「で、今回俺達が呼び出されたのは何でですか? まぁ何となく、理由は察しますけど……」

「お察しの通り、今回貴方達を呼び出したのは先日行われた体育祭に関してよ」


 悪い事はしてないですよと言いたげな表情を浮かべた俺の質問に、久松先輩は若干申し訳なさ気な表情を浮かべ首を縦に振る。


「先日行われた体育祭で、貴方達が行った演武が思っていた以上に反響を呼んでいるのよ」

「反響……ですか?」

「ええ。貴方達もある程度は把握しているでしょうけど、結構な騒ぎになっているわ」


 久松先輩は手を頬に当て、困ったと言いた気な表情を浮かべ小さく息を吐く。


「それはもう、朝から自分の身をもって実感していますよ」

「でしょうね。南城さんからも聞いたけど、休み時間毎に他のクラスの生徒達が物見遊山に集まっているんですって?」

「ええ、はい。おかげで、ロクにトイレにも行けませんよ。教室を一歩出たら、取り囲まれて質問攻めに遭いそうでしたからね」


 ホント苦労したよ、アレには。昼休みは隙を突いて何とか教室抜け出せたけど、小休憩の時間は直ぐに人垣が出来て全然逃げられなかったからな。巻き添えを食らったクラスの皆には悪い事をしたと思うよ……朝の取り囲み質問の件で大分チャラだとは思ったけどね。

 

「それは大変だったわね。でも、それのせいで先生達の方から生徒会の方にも苦情が来ているのよ。授業開始までに教室に戻って席に着いていない生徒がいるから困る、ってね」

「ええっと、いや、それは……」


 流石にそれは俺達の責任では無いだろうと主張しようと俺が口を開こうとしていると、久松先輩が手の平を俺に向け待ったをかける。


「勿論、コレはその行動を取った生徒の自業自得だと言う話なだけで、貴方達のせいと言う訳では無いわ。でもまぁ先生達からしたら、今回の騒ぎの原因に小言の1つでも言っておきたいと言った所なのよ」

「は、はぁ……」

「でも、直接先生達が貴方達を呼び出して注意すると、生活指導されたとか何とかって良からぬ噂が広がりかねないから、代わりに私達生徒会の方から部活動に関してと言う体で呼び出して騒ぎを早く収めるように伝えておいてくれって事よ」


 いや、早く騒ぎを収めろって言われてもな……。俺達3人は久松先輩の言葉を聞き、思わず顔を合わせて困惑した表情を浮かべた。

 すると久松先輩が、苦笑を浮かべながら俺達に声を掛けてくる。


「勿論、貴方達だけに騒動の鎮静化を任せたりはしないわよ。私達も貴方達と協力して、騒ぎの早期沈静化に取りかかるわ」

「えっ、本当ですか?」


 思わぬ事態沈静化の協力の申し出に、俺達3人は思わず久松先輩の顔を凝視した。


「ええ。本番が想定以上に派手な演武で驚きはしたけど、事前に貴方達と協力するって約束していたもの。騒動の鎮静化に協力するのは当然よ」

「そ、そうですか……ありがとうございます」

「「あ、ありがとうございます」」


 俺達3人は久松先輩を含め、生徒会メンバーに向け感謝を示すように頭を下げ礼の言葉を口にした。

 

「で、話は変わるけど九重君。体育祭の結果を受けて、例の1年生達が起こしている騒動の方はどうなっているの?」

「ああ、その事ですか。実は……」


 俺は美佳達から聞いた体育祭終了直後の様子と、例の動画を軸に煽られまくるネットの動きを加味した推測を久松先輩達生徒会メンバーに伝える。

 すると、一時は喜びの雰囲気に満ちるも、生徒会室の中に重苦しい雰囲気が漂い始めた。


「……一応、牽制効果は成功はしてはいたのね」

「ええ、はい。まだ美佳達……妹達に今日の様子の確認が取れていないので、推測でしかないですけど多分。でも、誰かからの介入があって彼等が方針転換した可能性は高いと思います」


 俺の推測話を聞き、久松先輩は眉間を右手でもみながら小さく苦悶の声を上げた。

 まぁ、折角解決しそうだった問題が再燃した可能性があると聞かされればそうなるよな。


「……ねぇ、城島君? 貴方は誰かが1年の問題に介入したって話、聞いた事はないかしら?」

「残念ながら、聞いた事は無いですね」

「……南城さんは?」

「私も聞いた事ありませんね。でも、会長? 今上がっている話は、九重君達が推測した物であって、その話の通りに事態が動いている確証はありませんよ?」

「そうね、南城さんの言う事は尤もよ。でも、彼等から聞いた状況を吟味すると、その可能性が無いとは言い切れないわ。それなら無駄になるとしても、先手を打っておきたいわ」


 そう言って久松先輩は席を立ち、生徒会にいる皆を見回してからに口を開く。


「皆、聞いての通りよ。もしかすると折角解決したかもしれない1年生の問題が、上級生の介入によって再燃するかもしれない可能性が出て来たわ。従って、その手の噂が無いか自分の学年にアンテナを張っておいて貰いたいの、それとなくね」

「それとなく、ですか?」

「ええ。あからさまに情報を集めようとすれば、この手の輩は直ぐに身代わりを囮にして姿を消すわ。だから皆、介入の証拠を見付けるまでは表立って動かないでね。代わりに……」


 そう言って、久松先輩は俺達に視線を向ける。


「分かっています。俺達が囮になるんですね?」

「ええ。悪いとは思うけど……お願い出来るかしら?」

「構いませんよ。どうも上級生が介入するとしたら理由は、俺達の存在が影響しているみたいですしね」

「ごめんなさいね」


 俺が代表し目眩ましの囮を了承すると、久松先輩が申し訳なさそうな表情を浮かべながら頭を下げた。

 そして暫く介入対策を話した後、俺達は生徒会室を後にした。








 生徒会室を出た俺達は、先程の生徒会室で行った話について考えを纏めようと部室へと移動する。その道すがら、校舎に残っていた生徒に遭遇し質問や握手などを求められたが、他に集まってくる人もいなかったのでそう手間を取る物では無いけどね。

 そして少々時間を掛け部室に到着した俺達が中に入ると、部屋の中で椅子に座り書類仕事をしながら待っている人がいた。アレは……。


「あれ、橋本先生?」

「えっ? あっ、貴方達……やっと来たわね。生徒会室に呼び出されているとは聞いていたけど、随分時間が掛かったものね?」

「えっ、あっ、はい。……すみません」

「まぁ良いわ、それより椅子に座りなさい。貴方達に報告……と言うか伝えておく事があるのよ」

 

 そう言いながら、橋本先生は机の上に広げていた書類を片付け始めた。俺達は一瞬戸惑った物の、橋本先生に促されるままに椅子に座る。


「じゃぁ先ず、体育祭はお疲れ様」

「「「あっ、ありがとうございます……」」」

「で、早速なんだけど体育祭関連で1つ、貴方達に関して問題が起きたのよ」

「問題、ですか。もしかして、どこからかあの演武はやり過ぎだ!って苦情が出ましたか?」


 裕二が若干不安気な口調で、橋本先生に尋ねた。

 すると橋本先生は頭を左右に振った後、裕二を安心させるような口調で話し掛ける。


「その手の苦情は無かったわ。寧ろ、凄い演武を見せて貰ったって言う声の方が多かったもの。確かあの演武は、広瀬君のお爺さんが監修していたのよね? 周りの評価が気になって不安になる気持ちは分かるけど、自信を持って良い物を作ったんだって胸を張って良いわよ」

「あ、ありがとうございます!」


 橋本先生の話を聞き、裕二は安堵の息を漏らす。

 そしてそんな裕二を横目に見ながら、今度は柊さんが口を開く。


「そうすると橋本先生? 問題って、どんな問題が起きたんですか?」

「問題というのは、ネットに投稿された体育祭の動画の事よ。貴方達の演武動画がネットに流れて、妙な盛り上がり方を見せちゃったの」


 やっぱり、その件か。


「……あの動画の事ですか?」

「……あら? 皆、動画の事を知ってるの? それなら話が早いわ。正直な話、体育祭の動画が流れる事自体は……このネット社会では仕方無いとは思うのよ。皆、スマホなんかのカメラを持っているしね。でも今回問題になったのは、その投稿された動画が原因で妙な騒ぎが起こっている事なのよ。流石にコレは問題だと思ったみたいで、今回学校が投稿サイトに学校名で直ぐに削除依頼を出したのよ。まぁそのお陰か、既に問題の関連動画は削除されているみたいね」


 動画が素早く削除されたのは、俺達の削除依頼より早く学校が削除依頼を出していたからか。


「とは言え、問題の動画が削除されたからと言って妙な騒ぎが直ぐに収束するとは限らないから、貴方達?」

「「「はい?」」」

「暫くは、妙な騒ぎに巻き込まれないように気を付けるのよ?」

「「「はい!」」」


 心配げな表情を浮かべ念押しをしてくる橋本先生に、俺達は姿勢を正し確りとした口調で返事を返した。
















お小言はもらいましたが、生徒会との協力関係は継続です。

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― 新着の感想 ―
「ええ、はい。おかげで、ロクにトイレにも行けませんよ。教室を一歩出たら、取り囲まれて質問攻めに遭いそうでしたからね」 トイレに行くと言って、振り切ればいいだけと思うが、そこを遠慮する必要ないでしょう…
[一言] 生徒会の人たち。今回は先生と相談して、首謀者上級生探しをするのかな。 頑張れ生徒会!
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