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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第9章 ダンジョン開放後、初の体育祭
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第204話 反省会と呼び出し

お気に入り16540超、PV18220000超、ジャンル別日刊27位、応援ありがとうございます。







 閉会式終了後、保護者が帰って行くのを横目で眺めながら、俺達は片付けと清掃を始めた。と言っても、応援スタンド等の大物は設置業者が撤収させるので、俺達が片付けるのはテント等の一昨日用意した物だけどな。

 俺はロープを張っていた杭を片手で引き抜きながら、裕二や重盛と暇潰しの雑談をする。 


「それにしても……随分あっさり終わったよな閉会式。開会式の時みたいに、もう一回くらい荒れるかもって思ってたんだけどな」

「おいおい、そう何回も荒れてたまるかよ」

「そうだぞ、重盛。これ以上の面倒事はいらないぜ」


 重盛が若干詰まらなそうな口調で、不穏な事を呟く。良いじゃ無いか、あっさり終わったって。


「でもさ? 開会式の時にあんな事を言っていたダンジョン協会のお偉いさんの挨拶がさ、怪我も無く無事に体育祭が終わって良かったですね……だぜ? もう少し、何か言ってきても良さそうじゃ無いか? ほら、特にお前等の部活アピール演技とかさ」

「……まぁ、確かにな」


 重盛の疑問も、確かに尤もだろう。開会式であんなスピーチをしたお偉いさんが、俺達の演技を見てあんな無難なスピーチしかしないのは拍子抜け……いや可笑しい。開会式で受けた印象からすると、安全に対する配慮が足りない等の意見をぶつけて来たり、合同競技は無理そうだから分離開催する方が無難だ等の意見を主張してくる方がまだ納得出来る。 

 それが、無事に終わって良かったですね……って。  


「何か別の思惑があったのかな……?」


 俺と裕二が眉を顰めながら来賓席があった辺りを眺めていると、重盛が手を叩きながら思いついた事を口にする。


「もしかしてさあの人、スカウトの下見に来たんじゃ無いか?」

「……スカウト?」


 重盛の意見を聞き俺は一瞬首を捻ったが、直ぐに思い直し納得した。


「ああ、成る程。確かに、それはあり得そうだな」


 基本的に探索者というのは、ダンジョンの中で位しか本気で動きはしない。特に町中では、そうそう全力で動ける場所も無いしね。

 最近になって協会の有料サービスで探索者も自分のレベルが判定出来る様にはなったが、所詮分かるのはステータス上の数字だけだ。ゲームの様なPvPは気軽に出来ないので、所謂プレイヤースキルという物を協会が確認する術は今のところ無い。もう何年かすれば、その手の競技や専用の施設が出来るかもしれないけど。 

 そうすると、協会が安全に探索者の能力をある程度確認出来るのは、今回の体育祭や競技会等だ。特に探索者最低年齢層の高校生が主役の体育祭など、レギュレーションで普通の競技会には出場出来ない生徒が活躍するので青田買い候補を見付けるには最良のイベントだろう。大学生や社会人探索者等の実力者は既に、ダンジョン製品を扱う企業等の紐付きだからな。協会の手駒にしようと、企業からその手の実力者を引き抜くのは報酬などの資金面で一苦労するだろう。それならまだ、高校生と言う事で企業が手を出し辛い層を狙ってスカウトを掛けた方が良い。

 

「もしかしたらその内、お前等声を掛けられるんじゃ無いか?」

「……かもな」


 少し面白気な口調で茶化してくる重盛に若干苛立ちながら、俺は裕二と視線を交わしながら小さく溜息を漏らした。

 面倒事が増えたかもしれないな……と。









 ある程度片付けと清掃を済ませた後、着替えを済ませ俺達は各教室でHRを行った。HRでは特にコレと言って連絡事項は無かったが、代休を含めて日曜月曜と連休になるので、羽目を外して打ち上げ会などで飲酒等の問題行動は起こさない様にと釘を刺された。

 そう言えば去年の文化祭の時、打ち上げをカラオケボックスでやっていた生徒達が悪ノリで飲酒していた所を見回りをしていた先生に見付けられ大問題になっていたな。因みに、その飲酒をしていた生徒達は揃って1週間の停学処分になったと、後の噂で聞いた。


「まぁ色々とゴタゴタはあったが、大きな事故も無く無事体育祭が終わってホッとしたよ。皆、お疲れ様。連休でユックリと体を休ませて、また火曜日に元気に登校してくる様に。以上だ……日直」

「起立、気を付け、礼」

「「「ありがとうございました!」」」


 話を締めた平坂先生は日直に号令の指示を出し、日直の号令に従い生徒は起立し挨拶をする。挨拶終了後、平坂先生はそそくさと教室を後にし、教室に残ったクラスはこの後の予定について喋り始めた。

 その聞こえてくる話題の殆どは、体育祭の打ち上げに何処へ行くかと言うものだったけど。


「おぉい、九重!広瀬! お前等もこの後一緒に、ファミレスで打ち上げをしに行かないか?」


 帰り支度をしていた俺と裕二に、重盛から打ち上げのお誘いが掛かった。だが……。


「ああ、悪い。この後、部の方で弁当を食べながら今日の反省会をする事になってるんだ」

「折角誘ってくれたのに、悪いな重盛」

「そっか……分かった。まぁアレだけ派手にやらかしたんだしな、反省会ぐらいするか。じゃぁ、その内、また誘うわ」

「ああ、その時は頼むな」


 俺達は重盛にそう言って、友達と話している柊さんに一言声を掛けてから教室を後にする。職員室で部室の鍵を借りた後、部室に向かうと途中の廊下でこちらに走り寄ってくる美佳と合流した。 

 

「お兄ちゃん!」

「ん? ああ、美佳。……もしかして、鍵を取りに行こうとしてた?」

「うん! 部室の方に行ったら、まだ鍵が開いてなかったから取りに行こうとしてたの」

「そっか……じゃぁ、沙織ちゃんは?」

「沙織ちゃんなら、部室の前で待ってるよ。お兄ちゃん達がスレ違いで、鍵を取りに行ったら困るからね」


 現に、こうしてスレ違いかけたのだから美佳達の判断は正解だろう。俺達も二人一緒に鍵を取りに行かないで、どっちかが先に部室の方に行ってれば良かったな。


「そうか悪いな、鍵は俺達が持ってるから一緒に部室に行こう」

「うん!」


 美佳を加えた俺達は、3人で部室へと向かう。すると、部室の前で沙織ちゃんと柊さんが話している姿が見えて来た。


「沙織ちゃん、雪乃さん!」

「? あっ、美佳ちゃん。それにお兄さん達も……」


 美佳の呼び声で俺達の接近に気付いた沙織ちゃんに、俺と裕二は軽く右手を挙げ挨拶をする。そして、美佳が沙織ちゃんと柊さんに話しかけている内に、俺と裕二は部室の鍵を開け室内へと入っていった。








 弁当も食べ終わり、俺達は今日のアピール演技についての反省会を始める。


「さて……まずは皆、お疲れ様」

「「「お疲れ(様)(様です)……」」」

「取り敢えず、何とか体育祭は終わったね」

 

 俺はそう言って、軽く皆の顔を見回した。皆の顔には若干気疲れした様子が見て取れるが、大凡安堵している表情が浮かんでいた。

 そこで視線を美佳に向け、俺は今回の件で一番気になっている事を聞いてみる。


「まず初めに確認しておきたい事なんだけど……美佳?」

「後藤君達の動向だよね?」

「ああ。どうだ? 今日の事を受けて、何か変化はあったか?」

「うん、勿論!」


 美佳が沙織ちゃんに顔を向けると、二人嬉しそうに笑みを浮かべた。


「あのね? 実はHRの後、後藤君達が体育祭の打ち上げをするからって、クラスの皆に参加しないかって声を掛けたんだけどね?」

「今までならクラスの大半の人達が流れで参加していたんですけど、今回は違ったんです」

「うん! 後藤君達のグループにドップリ浸かっている人以外、誰も参加するって手を上げなかったんだよ!」

「「「へぇー」」」


 それはそれは……早速牽制効果覿面だな。メンバー以外誰も参加を表明しなかったという事は、クラス内の浮動層が反後藤グループもしくは嫌後藤グループに傾いたって事だ。

 これなら、グループ勢力の拡大は阻止出来そうだし、もう少し時間が経てばグループメンバーの離反も狙えそうだな。


「だから後藤君達、その光景を見た時は苦虫を噛み潰した様な顔して帰って行ったよ」

「それと実はこの後私達、後藤君達とは別に体育祭の打ち上げを行うんですけど、その打ち上げには後藤君達のグループメンバー以外のクラスの人達が皆参加するんです!」

「「「おおっ!」」」


 俺達3人は美佳と沙織ちゃんの話を聞いて、思わず歓喜の声を上げた。今回の体育祭で俺達が目標としていた、“美佳と沙織ちゃんを中心に据えた新グループにより、後藤グループの勢力拡大を阻止する”と言う目標が早くも達成出来そうであるからだ。

 俺達のアピール演技を見た後藤達が警戒し勢力拡大を抑制出来れば良いな……と言う本来の思惑を超えた形になった。


「皆の話を聞いてみると、昨日のリハーサル演技を見た段階で皆迷っていたらしいんだけど、今日のアピール演技を見て決めたんだって」

「最近の後藤君達、前に比べて随分態度が悪くなっていましたからね。グループへの勧誘も以前に比べ、強引になっていたらしく皆迷惑していたそうです」

「そんな感じで、皆迷惑だと感じては居たけど後藤君達の力を見て表立っては何も言えなかった所に、私達が後藤君達と対立したから様子見をしていたら……昨日と今日のアピール演技だよ」

「後藤君達と対立している私達が、お兄さん達と言う強力な後ろ盾を得ているのを明確に示したので一気に形勢がこちらに傾きました」


 美佳と沙織ちゃんは嬉しそうに、俺達に後藤君達が教室を去った後に行われたらしい話し合いの内容を教えてくれた。


「そうか。それは良かったな美佳、沙織ちゃん」

「おめでとう美佳ちゃん、沙織ちゃん」

「おめでとう、二人とも」


 予想以上に好転した状況に、俺達は二人に祝いの言葉を贈った。

 だが……。


「でもそうなると、今度は早急に二人の自衛能力を鍛える必要があるよな?」

「ああ。確かに現状後藤グループの勢力拡大は阻止出来たみたいだけど、次に来るのは組織同士の対立抗争だろうからな。幾ら俺達が後ろ盾になっているとは言え、俺達が駆けつけるまで耐える為にも最低限の自衛能力は必須だろう」

「そうね。二人が彼等に一撃で倒されでもしたら、私達には何の連絡も来なくなるもの。最低でも、確実に第一撃は凌いで私達にSOSを発信出来る様にはなって貰わないと……ね?」

「「「……」」」


 俺達3人は美佳達に聞こえない様に小声で相談をし、無言で視線を交わし頷いた。 









 

 反省会を一通り終え、美佳達もクラスの打ち上げに行くとの事で解散する事にした。

 だがその前に……。 


「ああそうそう、二人とも。明日と明後日、何か用事は入ってるか?」

「「??」」

「体育祭明けだし、今の所は特に予定は無いよ?」

「私も予定はありません」

「そっか、それは良かった。じゃぁ急で悪いんだけど、明日と明後日の2日間、俺達と泊まりでダンジョンにお出かけして見ないか?」

「「えっ!?」」


 美佳と沙織ちゃんは、俺の提案に目を見開き驚いた表情を浮かべた。まぁ確かに、いきなりお泊まりしようと言われたら驚くよな。

 驚く二人に俺達は真剣な表情を浮かべ、泊まりで出かける理由を説明する。


「さっき二人とも話したんだけど、今回の事が思ったより上手くいった……行き過ぎたみたいだから、自衛の為にも二人には探索者として力を早めに付けて貰った方が良いと思うんだ」

「現状後藤達は、ある意味追い詰められた……追い詰められていると思い込んでいる状況かもしれないからな。何かを切っ掛けに、強攻策に出ないとも限らない」

「二人の安全を確保する為にも、彼等が如何出るか態度を決めていない内にある程度は強くなっていた方が良いわ。今回のお泊まり遠征は、その為に行おうと思っているのよ」

「と言う訳だ、如何する二人とも? 行くか? それとも辞めておくか?」

「「……」」


 俺達の話を聞き、美佳と沙織ちゃんは先程まで醸し出していた嬉しそうな雰囲気と笑みを消し二人で顔を一瞬見合わせた後……。


「……行く」

「はい、私も行きます」


 覚悟を決めた表情を浮かべ、二人は頷きながら返事を返してきた。

 

「分かった。じゃぁ泊まるホテルなんかの詳しい予定が決まったら、沙織ちゃんには後でメールするから。美佳は家で教えれば良いよな?」

「うん、それで良いよ」

「よろしく、お願いします」


 二人の同意も得られたので、明日明後日の予定は決まりだ。さて、探索者向けのホテルの予約状況を確認しないとな……普通のビジネスホテルとかだと高校生だけで泊まるとなると親の宿泊同意書が必要だったりして面倒だからな。

 そして、その後一つ二つ確認をした後、美佳と沙織ちゃんがクラスの打ち上げの集合時間が近いと言ったので解散する事になった。






 美佳と沙織ちゃんが部室を去った後、俺達は椅子に座ったまま頭を抱えた。

 何故なら……。


「……“2人を連れて道場に来い”ってさ」

「「……」」


 重蔵さんからの呼び出しメールが、裕二のスマホに届いたからだ。

 はぁ……。やっぱり今日の事、怒ってるのかな?












体育祭での目標はほぼ達成!

しかし、順調すぎたが故に別の問題も……。

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― 新着の感想 ―
いつの間にかダンジョンの規制緩和されてる……? いや、ストーカー(笑)の時点でストーカーもダンジョン入れてたからそこでもう解除されてたのかな
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