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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第9章 ダンジョン開放後、初の体育祭
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第199話 体育祭開幕

お気に入り16290超、PV33570000超、ジャンル別日刊23位、応援ありがとうございます。



 インフルエンザに掛かってしまいました。

 皆さんは、インフルエンザに掛からないように気を付けて下さい。







 目覚ましアラームを止め寝ぼけ眼を擦りながらリビングへ下りていくと、何時も俺より遅く起きて来る美佳がテンション高めに挨拶をしてる。


「おはよう、お兄ちゃん!」

「……ああ、おはよう」


 珍しく俺より早く起きている美佳の姿に、俺は寝ボケ眼を少し見開く。朝からテンション高いな……と。

 

「珍しいな、美佳が俺より早く起きてるなんて……。何時頃、起きたんだ?」

「うーん、6時位かな? 何か、目が冴えちゃって……」


 俺の質問に、美佳は照れ臭そうな笑みを浮かべながらそう答えた。

 って、遠足前の小学生かよ……。いや、体育祭が楽しみ……不安なんだろうな。


「そうか……。まぁ、余り気負いすぎるなよ」

「……うん」


 俺の気遣う言葉に、美佳は表情を少し固くし小さく頷く。

 やっぱり、不安なんだろうな。


「あら、起きてたの大樹? もう朝ごはんの用意が出来るから、早く顔を洗ってらっしゃい」

「はーい」


 台所から顔を出した母さんに注意され、俺は美佳に小さく手を挙げ断りを入れ洗面所へと向かう。

 さて、今日も一日頑張るか。







 朝食を済ませた俺と美佳は自室に戻り、通学バッグに荷物を詰め登校の準備をする。と言っても今日は体育祭なので、体操服と弁当水筒位しか持って行くものは無いんだけどな。

 そして俺は手早く制服に着替えを済ませ、昨日学校の帰りに寄ったホームセンターで購入したドアロックストッパーを取り付けた引き出しに視線を向ける。


「両面テープ固定だけど、結構しっかり固定出来るよな……」


 俺は軽く引き出しの取っ手を引き、ドアロックストッパーの張り付き具合を確認する。

 箱の説明文に本製品を強固に貼付けるには、貼付け面を脱脂をし貼付け後24時間は負荷を掛けないようにと書かれていたが……一晩でも十分強固な貼付き具合だ。


「心許ない気はするけど、取り敢えず最低限の対策は出来た……と思っておこう」


 俺は引き出しの取っ手から手を離し、着替えを入れた通学バッグを持って部屋を出る。階段を下りリビングへ入ると、美佳が通学バッグに弁当と水筒を入れている姿が見えた。


「あら? 大樹も、もう降りてきたの?」

「うん」


 何時もより早く降りてきた俺に、父さんと一緒にソファーに座って一息ついていた母さんが少し驚いた感じで声を掛けて来る。

 そして母さんは、テーブルの上に置かれた弁当と水筒を指差す。


「大樹、アッチが貴方のお弁当よ」

「ありがとう、母さん」


 俺は母さんに一言礼を言った後、美佳と場所を交替し通学バッグに弁当と水筒を仕舞っていく。

 すると、ソファーの方から美佳と母さんの話し声が聞こえてきた。


「そう言えばお父さん、お母さん。今日の体育祭、一緒に観に来るんだよね?」

「うん? ああ、その予定だよ」

「ええ。貴方達の頑張る姿、楽しみにしてるわよ」

「そっか……。じゃ、頑張らないとだね」


 父さんと母さんの返事に、美佳は照れ臭そうに視線を外しながら頬を指で掻いていた。高校の体育祭に、親が見学に来るのはどことなく気恥ずかしく感じる……って所かな?

 でもまぁ、俺も去年の体育祭の時は今の美佳と同じように気恥ずかしく思っていたけど、実際に来て貰うと嬉しかったのを覚えている。


「よし。準備完了……っと。おおぃ、美佳」

「ん? 何、お兄ちゃん?」


 弁当と水筒を通学バッグに仕舞った俺はTV画面の端に移る時計を確認し、父さん達と話している美佳に声を掛ける。因みにTV画面に表示されている現在時刻は、何時も家を出る時間の15分前だ。


「何時もの時間に家を出ると昨日みたいに更衣室が満杯になってるかもしれないから、今日は早めに家を出ないか?」 

「あぁっ、そうだね。確かに昨日の事を思うと、今日は少し早めに家を出た方が良いかもしれないね」

「だろ?」

「うん。じゃぁ少し早いけど、行こっかお兄ちゃん」


 そう言うと美佳はソファーから立ち上がり、机の上に置いたままにしていた通学バッグを手に取る。


「じゃぁ父さん、母さん。そう言う訳だから俺達、もう学校に行くね」

「行って来まーす」

「ああ、行ってらっしゃい」

「気を付けるのよ。私達も開会式が始まる前には、学校の方に行くから」

「うん。じゃぁ、また後で」


 俺は父さんと母さんに一言声を掛けた後、何時もより早めに美佳と一緒に家を出た。

 さぁて、体育祭……頑張るか。









 何時もより早めに学校に到着したが、皆考える事は一緒なのか結構な数の生徒が既に登校していた。美佳とは昇降口で別れ教室へ向かうと既に体操服に着替え終えている数人のクラスメートがおり、空いている幾つかの机の上にも通学バッグが置かれている。さて、俺も手早く着替えてくるか。俺は通学バッグから体操服を入れた袋を取り出し、足早に更衣室に指定されている視聴覚室へ向かう。 

 そして体操服への着替えを済ませ教室に戻ってくると、席の半分ほどが体操服姿の生徒で埋まっていた。


「よっ、大樹。お前も、早めに来ていたんだな」

「ん? ああ重盛か……おはよう。まぁな、昨日の更衣室の混雑振りを思うと少し早めに来た方が良いと思ってさ」

「まっ、そうだよな。昨日なんて俺、隣の奴と肘をぶつけながら着替えてたし……」


 俺は制服が入った袋を通学バッグに仕舞いながら、更衣室の混雑振りに対する愚痴を混ぜつつ重盛と雑談をする。

 そして暫く雑談をしていると、3年の男子生徒が前方の入り口近くの席に座る女子生徒に声を掛けているのに気付いた。って、アレは生徒会の城島副会長……?


「ああ、すまないが君。九重君か広瀬君、若しくは柊さんはもう登校して来ているかな?」

「えっと……あっ」


 城島先輩に尋ねられた女子生徒は戸惑いながらも教室内を見渡し、重盛と雑談していた俺の姿を見付け声を掛けてくる。


「九重君、お客さんだよ!」

「ん? あっ、はい! 悪いな重盛、ちょっと行ってくる」

「ああ、気にすんな」


 俺は重盛に一言断りを入れた後、前方の入り口で軽く手を上げながら挨拶をしてくる城島先輩の元へと向かう。途中、取り次ぎをしてくれた女子生徒に軽く手を上げ礼を言っておく。

 

「おはようございます、城島先輩。こんな朝早くから、何かご用ですか?」

「ああ、おはよう。ああ実は、昨日の件なんだけど……」

「その件ですか。大丈夫ですよ、任せて下さい。出来るだけの事はやらせて貰いますので」


 俺が任せてくれと言うと、城島先輩はバツの悪そうな表情を浮かべながら若干居心地が悪そうに口を開く。

 ……一体、如何したんだ?


「あっ、いや、その……なんだ? 実は君達に協力を依頼した後、学校からとある連絡が来て……昨日頼んだ件は無用になったんだ」

「……はい?」


 無用になったと聞き、俺が不思議気な表情を浮かべると城島先輩は心底すまなそうな表情と声で謝罪してくる。


「……昨日生徒会が頼んだ件は、学校側で対処するそうだ。君達には急なお願いを聞いて貰ったのに、こんな事になって申し訳ない」

「は、はぁ……」

「すまないね。もう少し確りとウチ(生徒会)と学校側で話を通していれば、君達にこんな面倒を掛けずにすんだんだが……」

「い、いえ。そう言う事でしたら、分かりました」


 俺が戸惑い気味に中止の件を受け入れると、城島先輩は軽く頭を下げた。それにしても、少々気まずい雰囲気が流れているので、俺は場の空気を変えようと軽い口調で話題を振る。


「それにしても城島先輩。学校側で対処するって事は、衝撃吸収用の緩衝機材が手配出来たって事ですかね? 昨日の今日で、良く必要数が手に入った物です」

「……」


 悪い雰囲気を払拭しようと思って振った話題だったのだが、城島先輩は頬を引き攣らせながら沈黙する。あれっ? もしかしてこの反応……。俺は自分の頬が眼前の城島先輩と同様に引き攣っている感覚を感じながら、言葉を交えずアイコンタクトで意思疎通を果たす。つまり、そう言う事なのだろう。

 そして、一瞬俺と城島先輩の間に沈黙が流れた。


「ああ、その……悪いんだけど九重君。広瀬君と柊さんにも、この話を伝えておいて貰えないかな?」

「あっ、はい。良いですよ、分かりました。2人には、俺から確りと話を通しておきます」

「そうか、ありがとう。じゃぁ、よろしく頼むよ」

「はい」


 硬直が解けた俺達は、ギコチナイ笑顔を浮かべながら別れの挨拶をした。

 はぁ……一体どうなるんだろうな今日の体育祭。









 着替えを終え教室に戻ってきた裕二と柊さんに城島先輩から言われた事を伝えた後、グラウンドに集合する時間が近づいてきたので、水筒とタオルを持って皆と一緒に教室を出る。

 グラウンドに出てみると、既に気の早い観客が保護者席に陣取りをしていた。


「へー。開会式までまだ20分ぐらいあるのに、結構な数のお客さんが来てるな」

「そうだな」


 俺と裕二は観客席の自分の席に水筒とタオルを置きながら、本部テントの左右に広がる保護者席の客入りを見ながら感嘆の声を上げる。


「そう言えば裕二、裕二の所は誰か観に来るのか?」

「ん? ああ、一応爺さんが少し観に来るっていってたよ」

「えっ? 重蔵さんが来るのか?」

「ああ。父さんと母さんは今地方に行ってるから、今日は来れないんだよ。だから代わりに、爺さんが様子を観に来るってさ」

「へぇー」


 重蔵さんが来るんだ……。じゃぁ、部活紹介の時の演武は頑張らないとな。

 

「大樹の所は?」

「ウチは父さんと母さんの両方が来るよ、美佳の高校初イベントだしな」

「ああ、成る程な」


 席に荷物を置いた俺達はグラウンドに降り、自分達のクラスの列に並ぶ。だが、まだ整列の号令が掛かっていないと言う事もあり、綺麗な列にはなっておらず皆近くの友達と雑談をしている。

 無論それは、俺と裕二も同じだ。


「それにしても今朝急に昨日の件は無しだって言われたけど……やっぱり緩衝材になりそうな物は何も用意されて無いよな……」

「ああ。それに、外部から協力者を迎え入れ用意している……って雰囲気でも無いしな」


 俺と裕二は用具テントや本部テントの辺りを見回しながら、生徒会が中止を申し出てきた昨日の件について考えを巡らせる。

 そして暫く考えを巡らせていると、俺と裕二はとある考えに行き着いた。


「なぁ、裕二? もしかして、コレって……」

「……ああ、その可能性が高いな」

「だよな……」

 

 俺と裕二は顔を見合わせた後、互いに疲れた様に溜息を吐いた。

 











 開会式を始める時間になり、グラウンドにアナウンス放送で整列を促す号令が響き渡る。雑談していた者は

話すのをやめ、列から逸れていた者は急いで自分の並ぶ位置に着く。

 そしてモノの一分と掛からず、整列は完了した。

 

「ではこれより、第49回体育祭を行いたいと思います」


 朝礼台の横にマイクを持って立つ教頭先生が体育祭の開始を宣言すると、保護者席から拍手が鳴り響く。

 そして教頭先生の進行で開会式のプログラムは進み、学校長挨拶が始まる。  


「皆さん、おはようございます」

「「「おはようございます」」」


 朝礼台に登った校長先生が挨拶をすると、グラウンドに並ぶ生徒達が声を揃えて挨拶を返す。校長は満足そうに軽く頷いた後、話を続ける。


「本日は天候にも恵まれ、無事体育祭を行う事ができ大変喜ばしく思います。また……」


 暫くの間、校長先生のお決まりの挨拶が続く。だが、校長先生は話にある程度区切りが着くと、一瞬表情を歪め間を開ける。

 そして、校長先生は意を決した様子で……。


「皆様、今から今回の体育祭に関する一つ重大なお知らせがあります」 


 校長先生のその言葉を聞き、グラウンド全体にザワメキ声が沸き起こる。生徒からは勿論、応援に来た保護者達からも校長先生に不安気な視線が向けられていた。

 そして校長先生は軽く深呼吸をした後、連絡事項の内容を口にする。


「重大なお知らせ、それは……今体育祭におけるリレー型全種目を中止にすると言う事です」


 校長先生が連絡事項の内容を告げると一瞬、痛い程の沈黙がグラウンドに広がった。

 そして一瞬の沈黙の後、生徒と保護者の双方から驚愕の絶叫が上がる。


「「「……えぇっ!?」」」


 校長先生の言葉に動揺する生徒達を落ち着かせ様とする先生達の声も届かず、突然のリレー種目の中止と言う現実に生徒の間に動揺と困惑の輪が広がっていった。


「はぁ……やっぱりこう言う事か」


 俺は動揺し騒ぎ立てるクラスメート達を尻目に、朝礼台の上で申し訳なさ気な表情を浮かべている校長先生に不憫気な眼差しを向けた。

 













 先手を打って主人公達に依頼していましたが、職員側との報連相がとれておらず中止。結果として、生徒会の先走りになってしまいました。

 リレー種目の中止理由は、次話にて。

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― 新着の感想 ―
[一言] つくづく、職員と生徒会での連絡不足が目立つにゃあ(_’;
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