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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第9章 ダンジョン開放後、初の体育祭
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第197話 クッション材の代わりを依頼される

お気に入り16170超、PV33010000超、ジャンル別日刊28位、応援ありがとうございます。






 俺達3人は平坂先生に指示された通り、運動場に向かうクラスの皆と別れ生徒会室へと移動していた。殆どの生徒は運動場に移動し、明日の準備作業をしているので校舎内に人気は無くとても静かだ。

 だがこうも静かだと、生徒会の突然の呼び出しに不安感がわいてくる。 

 

「なぁ? 何で俺達、生徒会に呼ばれるんだ? 何かやったかな?」

「部活動アピールの件でやり過ぎた……って小言を言われる可能性はあるけど、今回は違うんじゃないか? 平坂先生も、体育祭の安全対策の件で呼んでいるって言ってたしな」

「そうよ。多分……200m走の時に走者が派手にコースアウトした件じゃないかしら? 急な呼び出し理由が、体育祭の安全対策だしね」

「……アレか」


 俺は探索者生徒が派手にコースアウトした時の光景を思い出し、確かにアレは何かしらの対策をとらないといけないよな……と思った。アレって、ほぼほぼ交通事故だったしな。

 そんな事を思いながら歩いていると、何時の間にか目的地に到着した。 


「……っと、着いたぞ」


 裕二が生徒会室の扉の前で立ち止まり俺と柊さんに目配せをしてきたので、俺と柊さんはOKの意を込め軽く頷く。すると裕二は、目の前の扉を軽くノックした。  


「はぁーい、どうぞ。開いてますよ」


 ノックに対する反応は良く、中から入室を許可する声が響いてきた。


「失礼します」

 

 裕二が一言断りを入れてから、俺達は扉を開け生徒会室の中に入室する。

 するとそこには、生徒会の面々の他に15,6名の体操服姿の生徒が室内におり、両サイドの壁に沿って2グループに分かれ並んでおり、片方のグループには元クラスメートの野口がいた。


「いらっしゃい。急に呼び出して悪かったわね」

「いえ……」

「じゃぁ、出席者が皆そろった事だし話を始めましょう」


 俺達を迎え入れてくれた後、久松先輩は出席者に目配せをしてから本題を口にする。 


「まずはこの忙しい時に、急に呼び出したりしてごめんなさいね」


 そう言って久松先輩は軽く頭を下げ、他の生徒会の面々も揃って頭を下げる。


「急遽皆さんを呼び出した理由は、今回のリハーサルで発覚した体育祭の安全上の問題を解決する為です。知っての通り、200m走で発生した転倒事故は一歩間違えば観客を巻き込んだ大惨事になっていました。その為、私達は何らかの対策をとらなければなりません」


 柊さんの予想が当たった様だ。心配した、部活動アピールに関する件でのお小言はでは無かったらしい。


「……ですが、体育祭本番を明日に控えた今回はその対策をとる時間がありません。この短時間では、コーナー沿いの保護者席を覆う様な数のクッションマットは用意出来ませんしね」


 久松先輩は苦々し気な表情を浮かべながら、俺達に現状を伝えてくる。まぁ流石に、両サイドのコーナー沿いを覆う様な数のクッションマットは用意出来ないよな。学校の倉庫をひっくり返してもそんな数のクッションマットは無いだろうし、他所から借りようにも近くの学校はウチと同日に体育祭を行うので借りるのは無理だろう。

 そして……。


「ですので、大変申し訳ありませんが皆さんの力を貸して貰いたいのです」

「力……ですか?」

「はい」


 呼び出された出席者の一人の呟きに、久松先輩は返事を返しながら一度深く頷く。

 そして、俺達を一瞥しその言葉を口にした。


「今回私達が呼び出した皆さんは、我々生徒会が把握している限りにおいて、我が校トップクラスの探索者の皆さんです。是非皆さんの力を、体育祭を安全に成し遂げる為に貸して下さい」


 そう言って、久松先輩と生徒会の面々は俺達に頭を下げ助力を頼んでくる。

 しかし、ここにいる連中がウチのトップクラス、ね。俺は呼び出された連中の顔を一瞥し確認する。他の呼び出された連中も同じ事を考えたらしく、俺と同じ様に一瞥していたので不意に視線が交わり苦笑いを浮かべあった。只、野口と目線が合った時に一瞬、視線の中に忌々しげな気配を感じた気が……。

 そんな風に野口の事を考えていると、野口と反対側に立っていたグループの内の1人、3年生らしき男子生徒が小さく手を上げ久松先輩に声を掛ける。 


「えっと、会長? ここに呼び出した連中が、ウチの学校のトップクラス探索者だって言うのは本当か?」

「ええ、そうだけど……何か?」

「疑う様で悪いけど、本当にアイツらはトップクラスの実力を持っているのか? 野口のグループとはダンジョンでも良く会うから、トップクラスの探索者と言われても納得出来るんだけど……」


 質問をした3年生を始め、両グループの者達から俺達は不審の眼差しを向けられる。まぁ、今まで目立たない様にヒッソリと活動してたからな……無理もないか。

 そしてそんな不穏な空気を察した久松先輩は、軽く手を打ち空気を変える。


「はい、そこまで。確かに、いきなり彼らがトップクラスの探索者だって言われても信じられないでしょうけど、事実は事実よ」

「しかしだな、会長……」

「貴方達も、部活動紹介リハーサルで彼らがやった模擬戦は見たでしょ? 少なくとも、そこら辺の探索者には出来ない芸当よ」

「うっ!? ……ま、まぁ確かに」


 リハーサルでの裕二と柊さんが行った模擬戦の模様を思い出したのか、3年生はバツの悪そうな表情を浮かべ俺達から視線を逸らす。

 そして、そんな動揺する彼らに久松先輩はある事実を告げる。


「それに彼ら、25階層まで到達したそうよ?」

「「「はぁ!?」」」」


 両サイドのグループから、驚愕の声が上がる。まぁ、当然か。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 25階層!? それは本当なのか!?」


 3年生の男子生徒が驚愕の表情を貼り付けたまま、俺達に向かって動揺する声で問い掛けてくる。

 俺達3人は顔を見合わせた後、軽く目を伏せ小さく溜息を吐き返事を返す。


「はい。確かに俺達、25階層まで潜りましたよ」

「ほ、本当なのか? 嘘じゃ、無いだろうな?」

「ええ、間違いなく本当ですよ」

「だ、だけどな……」


 はっきり事実だと返事を返した裕二に、質問を投げかけてきた3年生の男子は信じられないと言う表情を浮かべ、他の者達も曖昧な表情を浮かべ混乱していた。

 すると、今まで黙って事の成り行きを見守っていた野口が口を開く。


「えっと、良いか広瀬?」

「ん? 何だ、野口?」

「お前達が25階層まで潜ったって話の真偽は一旦置いておくとして俺、お前等とダンジョンで会った事が一度もないんだけど? さっきの模擬戦を見る限り、それなりの頻度でダンジョンに潜っていたって事は本当だろうけど……どう言う事なんだ?」


 野口の疑問で、再び俺達に視線が集まる。居心地悪いな……。

 だが裕二はそんな視線も意に介さず、野口の愚痴に疑問を投げかける。


「その質問に答える前に……野口」

「何だ?」

「お前が何時も潜っているダンジョンって、近場のダンジョンだよな?」

「ああ、そうだけど……」


 野口は裕二の質問に、何を聞いて来るんだ……?と言う表情を浮かべる。


「俺達が普段使っているダンジョンは、少し離れた山奥のダンジョンなんだよ」

「山奥って……!? もしかして最近30階層がクリアされたって言う、あの山奥のダンジョンの事か!?」

「ああ」

「ああって……。あんな遠い所のダンジョンに通ってたのかよ、お前ら」


 俺達が普段通っているダンジョンの事を教えると、野口を始め室内の皆が驚いた。まぁ近場のダンジョンと比べて、片道3倍近く時間が掛るからな……。

 

「探索者制度が始まってから暫くの間は、どこのダンジョンも入場人員過剰でごった返してかなり混乱状態だったからな。身近な連中と揉め事を起こしてギクシャクしない様にと思って、態と学校関係者が来なさそうな所に潜ってたんだよ。野口もその手の揉め事には、何かしらの経験はあるだろ?」

「……ああ確かに、その手の揉め事には何度か遭遇したよ」

「だろ? だから、お前等と俺達がダンジョンで顔を合わせる事はなかったんだよ」

「そうか…」


 裕二の説明に野口は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていたが、俺達が山奥のダンジョンに潜っていた事に納得してくれたようだ。

 そして、裕二と野口の話が一段落ついたと思った久松先輩が、タイミングを見て声を掛けてきた。


「ねぇ、そろそろ本題に戻っても良いかしら?」

「あっ、はい。すみません、時間を取ってしまって……」


 野口はそう言って、軽く久松先輩に頭を下げた。











 いまだ俺達の実力云々に関しての疑惑は燻ぶっているものの、久松先輩は脱線していた話の流れを引き戻す。

 

「じゃぁ話を戻して改めて、体育祭の安全対策について皆さんにお願いします。体育祭本番、特にリレー系種目を行う時に、皆さんには2つのコーナー外周で待機してもらえませんか?」

「……コーナー外周に待機?」

「はい。皆さんにはコーナー外周に待機して貰い、探索者走者がコーナーで転倒し観客席に突っ込みそうになった時に走者を受け止めて貰いたいのです」

「「「……」」」


 久松会長の発言に、俺達呼びされた者達は顔を見合わせ、マジかよ……といった表情を浮かべる。コースアウトし原付並みのスピードで吹っ飛んでくる、頑丈な探索者走者を観客席に飛び込まないように受け止めると言う事はつまり……俺達に観客の為の肉壁をやれって事だからな。

 そんな俺達の微妙な雰囲気を察し、久松先輩を始めとする生徒会の面々は頭を下げながら更にお願いしてくる。


「これが面倒なお願いだと言う事は、私達も重々に承知しています。ですが、無事に体育祭を行う為にも協力をお願いします」

「「「お願いします!」」」


 こうまで真摯な態度でお願いされると、正面切って嫌とは言いづらいよな……。

 俺達呼び出された者達は頭を下げ続ける生徒会の面々から視線を逸らし、互いの顔を見合わせ一斉に溜息を吐いた。


「……分かったよ。自分達に出来る事なら、協力させて貰いますよ」


 3年生の男子生徒が代表し、協力を承諾する。


「ありがとう」


 久松先輩が俺達を一瞥しながらお礼を言い、俺達は仕方がないなと肩を竦める。

 そして俺達が了承した事を確認した書記の南城さんが、部屋の隅に片付けられていたホワイトボードを久松先輩の後ろに移動させ板を裏返す。するとそこには、体育祭の競技種目一覧が羅列されていた。


「じゃぁ早速だけど、各種目の担当を決めたいと思います。皆さん、体育祭で自分が出場する種目を教えてください」

 

 そして俺達は1人ずつ順番に個人出場種目を申告し、南城さんが黒ペンでホワイトボードに記載していく。こうやって見ると、良い感じにバラけて居るな……。

 

「取り敢えず1種目6人で割り振ってみますので、都合が悪い人は言って下さい」


 そう言って南城さんは、出場種目の前に入らない様に各人に担当種目を割り振っていく。

 そして意見を聞きつつ思案をする事5分程で、担当種目の割り振りが完成した。3グループでローテしながら、個人出場種目の合間に担当するといった感じだ。


「俺の担当は、200m走と学年別対抗リレーか……」


 完成した割り振り表を見ながら、俺は自分の担当する競技を確認していた。200m走とか、絶対調子に乗ってスピードを出しすぎて転倒する奴がいるだろ……。

 絶対に肉壁の出番があるなと思い小さく溜息をついていると、久松先輩が皆に聞こえる様に話を振ってきた。


「じゃぁこれから担当グループ毎に打ち合わせをして、誰がコーナーのどこに待機するとか決めておいて下さい」

 

 そう言って久松先輩は右の壁際、入り口付近、左の壁際を指さしながら、各グループの集合場所を指示した。俺達はその割り振りに従い、移動を開始する。


「じゃあな裕二、野口の相手頑張れよ」

「ああ。それなりに相手しておくよ」


 野口と同じグループになった裕二に一言声をかけた後、俺は自分のグループの集合場所である右の壁側に移動する。

 するとそこには、俺達の実力を疑問視し久松先輩に質問を投げかけていた3年生の男子生徒がいた。


「よし、これで全員揃ったな。じゃぁ、まずは軽く自己紹介をしておこう」


 そう言って、3年生の男子生徒は集まった俺達を一瞥し自己紹介を始めた。


「3年の大林誠彦(おおばやし まさひこ)だ。よろしく頼むな」


 そう言って3年の男子生徒、大林先輩が俺達に爽やかな笑みで笑いかけてきた。
























生徒会から、クッションの変わりをお願いされました。

大型のミットとかが有ると、良いんですけどね……。


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― 新着の感想 ―
[一言] 受け止める側は衝撃を調整できるけど、調整できない受け止められる側の衝撃を殺す為に低反発素材(布団とか)を、双方の間に置きたいよね
[一言] 200mを10秒だと時速72kmってところですもんね。 一般道路では出してはいけない速度……探索者の体の強度がどれだけ上がってるかわかりませんが、自動車が家に突っ込むくらいの衝撃はありますよ…
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