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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第9章 ダンジョン開放後、初の体育祭
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第190話 一先ず調査終了

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昨日は更新できず、すみませんでした。

 





 ダンジョンの中に入らないで出来る調査を3人で一通り行った後、俺が新しく持ってきたコーヒーと甘味を摘みながら一服していた。肉体的にはそうでもないのだが、精神的に疲れたので休憩が欲しい。


「……疲れたなぁ」

「そうだな。入口を閉じると内外で時差が発生して、近距離にも関わらず無線の電波が途絶しGPS発信機を使った所在地確認も出来無いとなると……」

「ダンジョンが亜空間や別次元に存在するって言う推測も、あながち間違っていないでしょうね」


 俺達は小さく溜息を吐いた。頭が痛い。検証を行えば行う程、このダンジョンが厄介物になっていく。一時でも、ダンジョンの存在を公開しようと考えていた自分を説教したい。

 こんな物、自分達から進んで公開出来るか! 


「……後は、机を移動しても影響が出ないかどうかに掛かってるな」

「そうだな。机を移動してもダンジョンに影響しないのなら、俺達が取れる手段はいくらでもあるからな。大樹の空間収納に秘匿するとかさ」

「そうね。それが出来れば、それが一番の解決策なのよね」



 裕二の言う通り、空間収納の中身を他人が確認出来ない以上、空間収納にダンジョン付き机を収納し秘匿してしまうのが一番の解決策だ。誰の目にも触れない状態ならば、ダンジョンの存在を誤魔化し切るのは可能だからな。

 ダンジョンの入口が机の引き出しの中にある、それこそが現状での一番の問題なのだ。 


「まぁ兎も角、これ以上の調査は体育祭終了後にしよう。後は、実際にダンジョンの中に入ってみないと分からないしさ」

「そうだな。今日の調査は、ここまでにしておこう。流石に今日は判明した調査結果が衝撃過ぎて、これ以上何かする気になれないしな」

「賛成ね。ダンジョンの中に入って調査するのなら、万全の準備を整えてからにしたいわ。調査結果に動揺している今の状態じゃ、いざと言う時の対応が心配だわ。それに調査に時間をかけたから、そろそろ良い時間だしね」


 そう言って、柊さんは部屋の壁にかかった時計に目をやった後、窓の外の夕焼け空を眺めた。調査に集中していたから気づかなかったけど、確かに中々良い時間帯だな。

 

「そうだな。良し、じゃぁ今日はここでお開きにしよう。邪魔したな大樹。お茶菓子、美味かったぞ」

「おう」

「じゃぁ九重君、私もお暇するわね」


 そう一言言って裕二と柊さんは荷物を持って立ち上がり、帰り支度をする。と言っても、学校帰りなので通学バッグぐらいしか荷物はないけどな。

 そして2人を見送る為、空の食器類を持って俺は2人と一緒に玄関に向かう。


「じゃぁな、大樹。また明日、学校で」

「お邪魔しました」


 玄関先で見送る俺に2人は軽く挨拶をし、帰っていった。

 








 2人を見送った後に空の食器を片付ける為リビングへ入ると、そこには母さんと何時の間にか帰宅していた美佳が一緒にソファーに座ってTVを見ている姿があった。 

 そして、リビングの扉が開く音に反応し振り向いた母さんと目が合う。


「あら? 大樹、飲み物のお代わり?」

「ううん。二人なら、今帰ったよ」

「あら、そうなの? それならそうと声を掛けてくれたら、お見送りしたのに……」

「いいよ母さん、そんな気にしなくても……」


 台所のシンクに使用した食器を置きながら、見送りが出来ず残念そうな母さんに気にしないでと答えておいた。

 

「そう? それで大樹、打合せの方はどうなったの? 随分真剣に話し合っていたみたいだったけど……」

「まぁ、そこそこかな?」


 自分で言っていて、何がそこそこなのだろうと思いながら曖昧な表情を浮かべながら母さんの問を誤魔化す。本当の事は言えないので、突っ込まれて聞かれると面倒だからな。

 俺は美佳が座るソファーの隣に座り、夕方の地元ニュースが流れるTVを眺める。


「そう言えば美佳、随分帰りが早かったみたいだな? 帰りに、沙織ちゃんと遊んで来なかったのか?」

「一応、沙織ちゃんと一緒に近くのショッピングセンターに寄っては来たんだけど……」

「寄って来たんだけど?」


 隣に座る美佳に今日の話を聞いてみると、美佳は少し表情を苦々し気に歪める。


「カラオケやゲームコーナーで遊ぶお金もないし、何か買いたいって物も無かったからお店を一回りして帰ってきたの」

「そ、そうか……」


 美佳の答えに俺は、確かに懐が厳しいと言っていたけど、もっとこう……何かないのだろうか?と思った。

 そして引き攣りそうになる頬を表に出さない様に抑えていると、美佳が俺の方に顔を向け目を若干細めながら質問を投げかけてくる。 


「それよりも、お兄ちゃん? 今日は用事があるから放課後は別行動だと言ってたのに、何で家で裕二さんや雪乃さんと体育祭の話をしていたの? 今日は重蔵さんに相談事があるんじゃなかったの?」


 美佳の顔には、自分達が除け者にされた事に対する不満がありありと浮かんでいた。はぁ、それっぽい言い訳で言いくるめられるかな。


「ああ、その事か。確かに、本当は裕二の家に行って重蔵さんに相談事をするつもりだったんだけど……」

「だったんだけど?」

「休み時間に裕二に重蔵さんの予定を確認してもらったら、重蔵さんの都合が付かなくなって急遽中止になったんだよ。だからと言って、放課後別行動って言ってたのを取り消すのもなんだかな……と思って美佳達には何も言わなかったんだよ」

「……ふーん」


 美佳は若干俺の説明を怪しんでいる様子だが、話の真偽を確認する術もないので渋々といった様子で俺がした説明に納得していた。

 いや、重蔵さんの都合が付かなくなった件は本当だからな? 連絡が取れなかっただけだけどさ。


「それで? お兄ちゃん達は、一体何の話を熱心にしていたの?」

「何って……予定していた相談が出来なくなったから、暇潰しを兼ねて明日のリハーサルの事について話をしていただけだぞ?」

「リハーサルの事?」

「ああ、リハーサルでも部活動紹介の流し練習をするだろうからな。その流れでもし、アピールタイムのリハーサルもやるのなら、どこまでするのかってさ」


 多分リハーサルでやるのは、アピール場所の割り振りだけだろう。だが、もしかしたらと言う事はある。本番でする予定の演武はしないが、リハーサルで何もしなかったとなると本番での注目度が下がるかも知れないからな。

 ……って、あれ? 誤魔化しのつもりで言ったけど、ありえそうな状況だな。明日、リハーサル始まる前に裕二と打合せしておくか……。


「ふーん、そっか。で、どんな事をやるの?」

「軽い組手程度の戯れ合いで、お茶を濁すさ。リハーサルでやり過ぎても、意味がないからな」

 

 俺は美佳にそう言って、テーブルの上に置かれたお茶菓子に手を伸ばした。だが、その手は母さんがかけた声で止まる。


「大樹、もうすぐ夕飯にするから。お菓子を食べるのは止めておきなさい」

「えっ? ああ、うん」

「じゃぁ、少し待ってね。すぐに夕飯の用意するから」


 俺が伸ばした手が引っ込むのを確認し母さんはソファーから立ち上がり台所へと向かい、そんな俺と母さんのやり取りを見て美佳は可笑しそうに笑みを浮かべていた。 

 うーん、なんだか気恥ずかしいな。










 夕食を食べ終え何時もの様に自分の部屋に戻った俺は、ダンジョンの調査で判明した結果のまとめ作業を始めた。最初はPCで結果をまとめようかと思ったがまとめる事が事なので、PCにウイルスが感染しデータが流出する等のリスクを考えると拙いので、最終的に未使用のノートに手書きで書きまとめていく。


「うーん、まぁ、こんな物か。後は、内部調査のデータを加味すれば完成かな?」


 昨日と今日の調査で判明したデータをノートに書き出し終えた俺は、ノートを見て改めて俺達はダンジョンについてあまり知らないのだと再認識した。


・机の引き出し(ダンジョンの入口)を閉じると、ダンジョンの内外で凡そ10倍もの時差が発生する。

・机の引き出し(ダンジョンの入口)を閉じると、ダンジョンの内外での相互電波通信は不可能である。

・机の引き出し(ダンジョンの入口)を閉じると、GPSを用いても所在地の特定は不可能になる。

・机の引き出し(ダンジョンの入口)を閉じた時のダンジョンの内部環境は、温度23度・湿度50%で一定に保たれ、酸素濃度及び有毒ガスの問題もない。

・机の引き出し(ダンジョンの入口)を閉じた時、部屋の中央に各種スライムがリポップする。

・机の引き出し(ダンジョンの入口)を閉じても、内部からも机の引き出し(ダンジョンの入口)の開閉は可能?


 以上が、俺達のダンジョン調査で判明した事柄だ。確かに判明した事実の数は少ないが、どれも貴重なデータである。

 

「内部から閉じた入口の開閉が可能かどうかは分からないけど、念の為に鍵を設置した方が良いかもしれないな」


 俺はノートに書かれた唯一の疑問符がついた項目を見た後、机の引き出しを眺めた。今まで内部から引き出しが開かれた事はないが、これからもないとは限らないからな。内部からも開閉が可能かも知れないと知ったのならば、早急に対処しておかないと……。


「明日、学校帰りにホームセンターに寄って買ってくるか……」


 俺は近所のホームセンターの位置を思い出しながら、明日の体育祭リハーサル後に鍵を買いに行く事にした。机の引き出しなので本格的な鍵は取り付けられないが、掛け金と南京錠なら取り付けられるだろう。

 本気でスライムが引き出しの入口を開けて出てこようとすれば、チャチな鍵では大して役には立たないだろう。だが、多少は安心感は得られる。


「それと後は……」


 俺はPCを起動し、ネット通販サイトを開く。検索するのは、スマホと連動する窓の開閉を知らせる防犯センサーだ。机の引き出しに取り付けておけば、自宅にいない間に引き出しが開閉したかどうかも分かるからな。取り付けておくに越したことはない。


「ああ、そうだ。こっちも買っておかないとな」


 俺は続けて、別の商品を検索する。購入するセンサーを取り付ければ、引き出しが開閉する度にインターネット経由で俺のスマホに通知が届く様に出来るみたいなので、通知が届いた時に引き出しの状態を映像で確認出来る様にホームカメラを設置することにした。こちらも窓センサーと同じく、インターネット経由で撮影した映像が見られるので、外出中でも引き出しの状態が確認可能だからな。


「後は配送を、お急ぎ便指定にして注文は完了っと。取り敢えず、ネット注文する分はコレで良いかな?」


 俺は注文完了のメールを受け取った後、PCをシャットダウンした。調査結果は纏めたし、必要な物品の注文も終わったから、今日は此処までにしよう。


「さてと、風呂にでも入るか」


 体を解す様に軽く背を伸ばした後、俺は着替えを持ち部屋を出て風呂場へと向かった。

 ふぅ。色々あったけど、やっと一日も終わりだな。









 窓から差し込む朝日が顔に当たり、俺は目を覚ました。ベッドから上体を起こし、背伸びをしながら大きく欠伸をする。

 

「もう朝か……」


 目を擦りながらベッドを降り、軽く体を解す。


「今日は体育祭のリハーサルか……。正直、面倒くさっ」


 こんな感想を多くの生徒が持っているからリハーサルの後に決起集会をやる羽目になったんだろうけど、面倒なものは面倒い。いっそ、ぶっつけ本番でやって貰いたいけど、そういう訳にはいかないんだろうな……。

 俺は欠伸を噛み殺しながら部屋を出て、洗面所に移動し冷水で顔を洗う。ふぅ、やっと目が覚めた。


「おはよう」


 顔を洗った後、リビングに顔を出すと母さんが朝食の準備を進めており、父さんも椅子に座り食後のコーヒーを飲んでいた。


「おはよう、大樹」

「おはよう」


 母さんと父さんの朝の挨拶の返事を聞きながら、俺は定位置の椅子に座る。

 そして俺が椅子に座ると、父さんがコーヒーの入ったコップをテーブルに置き話しかけてきた。 


「そう言えば大樹? 今日は体育祭の通しリハーサルなんだって?」

「えっ、ああ、うん。取り敢えず午前中一杯でリハーサルをやって、午後から会場設営なんかの準備をやる予定だよ」

「そうか、まぁ怪我がない様に頑張りなさい」

「う、うん。ありがとう、父さん」


 父さんから激励の言葉を貰っていると、リビングの扉が開き美佳が入ってきた。


「おはよう」

「ああ、おはよう」

「おはよう、美佳」


 若干眠そうな様子の美佳だが、今日は顔を洗って来ているらしく、俺と父さんの挨拶に軽く反応を返しながら俺の隣の椅子に座った。

 

「さて、それじゃぁそろそろ出かけるかな」

「あれ? 父さんもう行くの?」

「ああ。今日は少し早めに出勤しないといけないからな。二人も遅刻しない様に、学校に行くんだぞ」

「「はぁい」」


 俺と美佳の返事を聞き、父さんは母さんに一言断りを入れてからリビングから出て行く。母さんも父さんを見送る為、父さんの後についていった。


「じゃぁ、行ってきます」

「行ってらっしゃい、気を付けてね?」

「ああ」


 玄関の方から父さんと母さんのやり取りが聞こえた後、玄関が開く音と締まる音が聞こえた。相変わらず、仲良さげな様子で結構結構。

 そして見送りを終えた母さんは、リビングに戻って来るなり俺と美佳に声をかける。


「2人とも、急いで朝食の準備をするから、もう少し待っててね」

「あっ、うん。分かった」

「お母さん。まだ時間はあるから、あまり急がなくても大丈夫だよ」


 俺と美佳の声を背に受けながら、母さんは急いで朝食の支度を始めた。

 美佳の言う様に、そんなに急がなくても良いのに……。














内部からも入り口が開閉可能かも知れないと判明したのて、鍵と開閉確認センサーを応急措置として設置します。

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