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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第9章 ダンジョン開放後、初の体育祭
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第189話 検証を再開する

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 裕二と柊さんを引き連れ帰宅した俺は、玄関を開け家に居るであろう母さんに帰宅を知らせる声をかける。

 

「ただいま」

「お帰りなさい」


 すると、直ぐに家の奥から母さんの声が返ってきた。やっぱり、家に居たらしい。

 俺は靴を脱いで玄関を上がりながら、裕二と柊さんに早く上がって来なよと手招きをする。


「さっ。遠慮何かしないで入ってよ、2人とも」 

「ああ。お邪魔します」

「お邪魔しまーす」


 裕二と柊さんが靴を脱いで玄関を上がっていると、リビングの扉が開き母さんが顔を出した。 


「あら、大樹? お客さん?」

「うん。裕二と、柊さんだよ。ちょっと今度の体育祭の事で、二人と打ち合わせしたい事があってさ」

「あら、そうなの……」


 俺の説明を聞いた母さんは、玄関に上がった2人に視線を向け声を掛ける。


「いらっしゃい、広瀬君、柊さん。体育祭も目前なのに、大変ね?」

「いいえ、そんな事ありませんよ」

「そう?」


 裕二は母さんの気遣いの言葉に、顔の前に右手を出し軽く振りながら大した事はないと返事をかえした。俺はそんな二人のやり取りを横目で見ながら、何時までも会話が続きそうだったので話の流れを打ち切ろうと口を挟む。

  

「まぁまぁ、母さん。玄関での立ち話ってのもアレだし、その辺にしたら?」

「えっ? ああ、そうね」


 お客を何時までも玄関に立たせるのは拙いんじゃない?と言う俺の指摘に、母さんは少しバツの悪そうな表情を一瞬浮かべた。

 そして、俺はその表情に気付かない振りをしながら裕二と柊さんにも声をかける。


「じゃぁ、二人とも。そろそろ、部屋の方に行こうか?」

「ああそうだな。えっと……お邪魔します」

「お邪魔します」


 俺に促され裕二と柊さんは母さんに一言かけながら軽く会釈をし、母さんの横を通り俺の部屋へ移動し始めた。









 部屋に到着した俺は通学バッグを机の上に置き、クッションをクローゼットから取り出し二人に腰を下ろす様に促す。


「まぁ先ずは座って、ユックリしててよ。下からお茶を取ってくるから」

「ああ」

「ありがとう」


 2人がクッションに腰を下ろしたのを確認し、俺は台所にお茶と茶菓子を取りに行く。ありがたい事だけど、コレから公言しづらい話をするのに、話の途中で母さんが気をきかせてお茶を部屋に持って来て話を聞かれたら面倒な事になるからな。

 そう考えながらリビングに入ると、予想通り母さんがお盆にお茶と茶菓子を載せていた。

 

「あらっ? 大樹、降りて来たの?」

「ああ、うん。お茶を持って上がろうと思ってね」

「そう。私が持って行ってあげようと思ってたんだけど……」


 母さんの視線が、手元に用意してあるお盆に落ちる。


「ええっと、ありがとう母さん。でもそれ、俺が持っていくよ」

「そう? じゃぁ、お願いね?」


 危ない危ないと思いながら、俺は母さんからお茶とお茶菓子が載ったお盆を受け取る。 部屋に着いて直ぐ話を始めていたら、危うく母さんに話を聞かれるところだったよ。

 お茶を載せたお盆を持って部屋に戻ると、裕二と柊さんが部屋の隅に片付けていた検証道具を興味深気に手に取って見ていた。

  

「お待たせ」

「ああ、大樹。ちょっと見せてもらってるぞ」

「ああ、良いよ良いよ」


 テーブルの上にお盆を置き、俺もクッションに腰を下ろす。

 

「はい。先ずは、お茶でも飲んでよ」


 俺は持ってきたお茶を、二人の前に置き飲む様に薦める。俺もお茶を一口飲んで喉を潤し、これから話す事に向けて気持ちを落ち着ける。そんな俺の様子を見て、これから話す話題がかなり重い物だと察した二人も検証道具から手を離しお茶を飲む。

 そして一瞬間が空いた後、裕二が口を開いた。 


「……で、大樹? ここまで改まった態度でする話って、一体なんなんだ?」

「……先ずは、これを見てみて」


 そう言って俺は、空間収納に仕舞っておいた検証結果を書いた用紙を二人に差し出す。


「……コレは?」

「何かの時間を測った結果みたいね。……数字が2列に並んで書いてあるってのは、何かを比較した計測結果よね?」


 用紙に落ちていた裕二と柊さんの視線が俺の顔に移ったので、俺は何を計測した結果かを口にする。


「それは、ダンジョンの内外の時間を比較計測した結果だよ」

「「……えっ!?」」


 俺の答えを聞いた裕二と柊さんは、一瞬間を開け驚きの声を上げた。まぁ、そう言う反応になるよな……。 

「まぁ落ち着いてよ、二人とも。今から、詳しい説明するからさ」


 俺は両手で落ち着く様にとジェスチャーをしながら、目を見開き驚愕の表情を顔に貼り付ける2人を落ち着かせる。

 そして2人は軽く深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせていく。


「……よし。良いぞ大樹、説明してくれ」

「ああ」

 

 2人とも動揺を隠しきれていないが、一先ず話を聞ける様子なので俺は説明を始める。








 一通り説明を聞き終えると、裕二と柊さんは大きく溜息を吐いた。


「……ますます、ダメじゃない。このダンジョンを公開するどころか存在を漏らすだけでも、トンでもない騒動になるわよ」

「そうだな……」


 柊さんと裕二は昨日の俺と同じように、天井に顔を向け途方にくれたような雰囲気を醸し出していた。ですよね……公開なんて出来ませんよね。

 俺はお茶で喉を潤しながら、二人の口から漏れる愚痴に内心同意する。


「まぁ、と言う訳でそう言う訳なんだ」

「何がと言う訳でそう言う訳かは突っ込まないでおくが、取り敢えず大樹が神妙にしていた理由は把握した」


 裕二は天井に向けていた顔を俺の方に戻しそう言ってくれたが、その顔は酷く疲れている。同じように、柊さんも疲れた笑みを浮かべ、苦笑を漏らしていた。

 そして話に一段落着いたのを察した俺は、胸の前で軽く手を打合せる。

 

「さて。昨日調査した計測結果は今見て貰った分だけど……それだけじゃ調査不足だよね?」

「ああ。まぁ、これだけでもかなり衝撃的な調査結果だけど、ダンジョンの中に入ったり机を移動させようとしたら不足だろうな」

「そうね……」

「と言う訳で調査を再開しようと思うんだけど……二人も見ていく?」


 俺の調査再開を提案すると、2人は頭を縦に振り同意した。


「じゃぁ早速、やろうか」


 俺は立ち上がり、部屋の隅に置いておいた検証道具を持って戻ってきた。

 

「さて……まずは何から調べようか?」


 俺はテーブルの上に広げた検証道具を前にし、裕二と柊さんに問いかける。


「大樹、ダンジョン内に設置した時計は、入口を閉じていてもスライムに壊されてなかったんだよな?」

「ああ。部屋の隅に設置していたってのもあるんだろうけど、壊されてはいなかったぞ」

「そうか。じゃぁ、先ずはコレからいってみないか?」


 そう言って裕二はテーブルの上に置かれた、何時もダンジョン探索の時に使っているアクションカムを手に取る。


「入口を閉じた時の、ダンジョン内の様子を確かめよう。外から入口を閉じたら、中から入口を開けられないってなったら大変だからな」

「そうね。中から入口が開けられるか開けられないか確かめておかないと、内部調査なんて出来ないわよね」

「そうだね」


 裕二の提案に、俺と柊さんも同意する。

 そして裕二は、更に数点道具を手に取り提案をしてきた。


「ああ、それと。序でに、コレとコレも仕掛けておかないか? これなら、一緒に検証出来るしな」


 裕二が手に持っているのは、2台1組のトランシーバーとスピーカー内蔵のデジタル音楽プレイヤーだ。

 そして、裕二の意図を察し柊さんは確認を取る。


「トランシーバーの片方をダンジョンの中に入れて一緒に入れた音楽プレイヤーの音が聞こえたら、入口が閉じてもダンジョンの内と外でやり取りが出来るってことね?」

「そう。逆にトランシーバーから音楽プレイヤーの音が聞こえてこなくなったら、入口を閉めたら中と外の繋がりが消えるって事だからね」


 外から入口を閉じたら、中の入口が消えて通信も途切れるか。確かにその可能性も考えて検証の為の道具を用意したけど……そうなっては欲しくないな。

 俺は検証方法について議論し合っている2人を眺めながら、嫌な予測を頭を振って振り払う。


「じゃぁ2人とも、早速やってみようか?」


 俺は立ち上がりながら2人に声を掛けると、二人はカメラと音楽プレイヤーを手に持ったまま頷いた。











 引き出しを開き、ダンジョンの中に鎮座するスライムに塩を振り掛け討伐し調査の準備が完了した。


「さて、これで準備完了っと」

「こっちも準備出来たぞ」


 そう言って裕二は俺に録画を開始しているアクションカメラと、通信スイッチをガムテープで固定し送信状態のトランシーバー、曲が流れる音楽プレイヤー、そして昨日の検証でも使用した多機能置時計を手渡してきた。それらの品を受け取った俺は顔を引き出しの中に突っ込み、念動力を使ってダンジョン内に設置する。念の為、部屋の4隅に別々に仕掛けておく。

 

「良し、設置完了。柊さん、トランシーバーから音楽は聞こえる?」

「大丈夫、聞こえているわよ」


 音楽プレイヤーの音が聞こえるかトランシーバーに耳を寄せ確認していた柊さんに視線を送ると、大丈夫だと言う返事が返ってくる。これで検証を開始できるな。


「じゃぁ、これで準備完了だね。始めようか?」

「おう」

「ええ」

 

 二人の返事を確認した俺は、机の上の置時計をチラ見した後、机の引き出しを閉じた。

 







 

 予想通りといえば予想通り。引き出しを閉じると同時に、柊さんが持っていたトランシーバーから流れていた音楽は聞こえなくなった。スライムに音楽プレイヤーが破壊されたのかもと思ったが、入口との接続が消えダンジョンの内と外とで通信は出来なくなっただけみたいだ。

 そして待つ事、1分。カップ麺の待ち時間より短いが、入口の閉じたダンジョン内の時間は加速するのでこの時間でも十分だ。俺は引き出しの取っ手に手をかけ、裕二と柊さんに視線を送る。

 

「良い? 開けるよ?」

「おう、やってくれ」

「ええ」


 2人が頷くのを確認し、俺は引き出しを開ける。

 そして引き出しを開けると直ぐ中から音楽が聞こえ、柊さんが持つトランシーバーの通信も再開した。どうやら、音楽プレイヤーは壊されていなかったらしい。となるとやはり、入口を閉じた事がトランシーバー間の通信を遮断した原因だな。


「なぁ、大樹? このトランシーバーの通信可能距離って、大体どれ位だ?」

「箱に書かれた説明によると、見通し距離で凡そ2kmって所だな」

「引き出しの板一つで遮られる程、低出力って訳でもないか……」

「この距離で通信が出来なくなるって事はやっぱり、このダンジョンは別の空間にあるんじゃないの? 入口が空いている時だけ、こことダンジョンの空間が接続しているって事でさ」


 柊さんの言うことが正解だろうな……。入口と思っていたこの引き出し、実は某有名なピンクの扉の様に転送ゲートになっているんじゃないか?

 それだったら移動可能なんだけどな……。


「かもしれないね……。でもまぁ、その事は後で検証する事にして、今はまずカメラなんかの機材を回収して確認しよう」

「……そうだな」


 引き出しの中を覗き込むと、スライムがダンジョンの中に鎮座している。俺はスライムの種類を確認し、必要量の塩を振り掛けスライムを手早く討伐した。さてさて、カメラには何が映ってるかな……と。俺は念動力を使い、先程設置した機材を回収していく。 

 回収した機材をテーブルの上に置き、俺はアクションカムに通信ケーブルを差し、パソコンと繋ぐ。


「じゃぁ、再生するよ?」


 俺は、アクションカムのファイルを開き、録画された映像を画面に映し出す。先ず初めに、裕二の顔のアップが映り、次に俺の姿が写る。ダンジョン内設置前の映像だな。

 そして少し間を空け、カメラはダンジョン内に無事設置された。設置角度が悪く少々斜めっていて変だが、映しておきたかった天井の入口と部屋の中央は写っているので、まぁ良いだろう。  


「入口が閉まるぞ」


 映像を見ていた裕二が、閉じていく入口を見ながらポツリと漏らす。

 そして数秒後、俺達は一斉に安堵の息を吐いた。


「取り敢えず、外から入口を閉じても中から入口は開けられる構造みたいだな……」

「そうだな。最悪、外から入口を閉じると同時に、中側の入口は消える構造かもしれないと思っていたからな」

「まぁ、実際に中から入口の開閉を試してみないと分からないけど、入口を閉められたら中からは脱出不可能……と言う事にはならなそうね」


 まだまだ検証作業を続けなければならないが、都合の悪い調査結果が続く中、良い調査結果が出た事に俺達は安堵した。

 そして……。


「あっ、スライムが入口が閉じると同時にリポップしてた」


 入口の動向に注目していた結果、いつの間にかスライムがリポップしていた。

 うん、これは前々からの予想通りの結果だったな。



















検証再開しました。

入口を塞ぐと内外で時間差が発生し、外部との連絡が不可能な事に・・・。救いは、入口が中からでも開ける事が出来ると言う事ぐらいですね?


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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョンから電波が出てきていたとしても時間の流れが違うんだから電波の周波数も変わるはずだしトランシーバーで通信できるはずないでしょ
[気になる点] 空間収納にいれた筈のメモ用紙が何故か机の引き出しから出てきてるよ?
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