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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第9章 ダンジョン開放後、初の体育祭
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第172話 体育祭に向けての注意事項

お気に入り14370超、PV 13330000超、ジャンル別日刊34位、応援ありがとうございます。



活動報告でも書きましたが、昨日で朝ダンが無事連載1周年を迎える事が出来ました。

皆様、本作を応援し頂きありがとうございます!






 学校に到着した俺達は、昇降口で美佳と別れる。


「じゃぁな、美佳。また放課後」

「うん! お兄ちゃん達も、授業頑張ってね!」


 そう言って、美佳は手を振りながら自分の教室へと向かった。 

 

「俺達も行くか?」

「ああ」


 教室を目指して移動していると途中、廊下で話をしている男子生徒2人組のとある話題が聞こえてきた。


「なぁ、知ってるか? トラップ訓練施設で、上級ゾーンをクリアした奴が出たんだってさ!」

「トラップ訓練施設……ああ、ダンジョン協会が運営してるってアレか? で、何をそんなに驚いてるんだ? 上級ゾーンって言葉から察するに、攻略するのが難しいんだろうけど……そんなに驚く様な事なのか?」

「えっ!? お前知らないって言うか、施設を利用した事無いのか!?」

「あっ、ああ。そう言う施設が有るって言うのは知ってるけど、使った事はないな……」

「そっか……。じゃぁ、上級ゾーンクリアがどのくらい凄い事なのか分かんないか」


 興奮気味に話す男子生徒は、若干引き気味の男子生徒にトラップ訓練施設の簡単な説明を行い始めた。


「良いか? 簡単に説明するとトラップ訓練施設っていうのはその名の通り、ダンジョン内に実際に出現するトラップや古今東西の様々なトラップを再現したダンジョン協会が運営する訓練施設だ。数十にも及ぶ各種トラップが組み合わさって、初級中級上級と難易度毎に3つにゾーンが分かれているんだ」

「へー」

「へー、って。まぁ、良い。上級コースはその中でも最難関で、実際施設が稼働してから数百組と挑戦しているみたいだけど、今回のクリアした人達を含めても未だ2組にしかクリアされていないんだよ」 

「えっ!? たった2組!?」

「だから今回、上級ゾーンクリアしたって人達が出た事で皆騒いでいるんだよ。しかも今回上級ゾーンをクリアしたって言うのが、探索者業に専従しているプロじゃなく学生だってのが驚きだ!」

「はぁ!?」


 興奮気味に語る男子生徒の“学生が上級ゾーンをクリアした”と言う言葉を聞き、話半分といった態度で聞いていた男子生徒は驚愕の声を上げる。


「ウチの学校のトップ連中を含めて、学生がクリアしたって話は聞いた事なかったからな。だから今、この話は結構な噂話になっているんだぞ?」

「そっか……まぁ、当然か」

「ああ。だからウチのトップ連中を含めて、攻略組って呼ばれている学生パーティーが斥候役にそいつらをスカウトしようって躍起になってるって噂だ」


 たまたま聞こえてきたその話を聞き、俺と裕二は顔を盛大に引きつらせた。そこまで話が大きくなっているとは……。

 俺達は立ち止まる事無く暫く歩き、立ち話をしていた生徒からある程度離れてから互いの重い口を開いた。


「なぁ、裕二?」

「……何だ?」

「俺達の事って面割れ……バレてると思うか?」

「……さぁ、な。でも、学生って言ってたから面は割れてないと思う……と言うか思っていたい」

「そう、だよな」


 俺と裕二は顔色の悪い顔を見合わせながら、そう自分に言い聞かせる。

 まぁ面が割れていたら、今頃俺達の元にそのスカウトってのが来ていただろうからな。幸か不幸か、上級クリア以降でそのような動きをしたのは協会(多分)が派遣したであろう尾行者だけだったからな……この先は分からないけど。


「でもまぁ……特に隠蔽はしていないから何れはバレるかも知れないな」

「そうだね……」


 トラップ訓練施設が閑散として人が居なかった訳でもないし、施設の職員や協会職員から情報が流出するって事も考えられる。協会や施設側に情報を漏らす気はなくとも、人の口に戸は立てられぬって言うしな。世間話の一環として口にしたことが、何時の間にか広がる……という事はあり得る。

 何れ俺達が上級をクリアした当事者だと言う情報を得て、スカウトの声をかけてくる者が出て来るかもしれないな……。

 

「……どう対応するにしても、早めに他の3人と話しておいた方が良いだろう」

「そうだな。柊さんは教室で話すとして美佳達は……今の内に忠告メール入れておこう」

「その方が良いだろうな。下手に俺達の事を知っていると匂わせる様な事を言えば、スカウトしようと考えている連中に付き纏われる可能性もあるからな」

「了解。じゃぁ、早く教室に行こう」


 方針を決めた俺と裕二は、早歩きで教室を目指す。

 大丈夫だとは思うが、廊下でスマホを弄っている所を教員にでも見られ没収されると面倒だからな。









 到着した教室には、既に少なくない数のクラスメート達が登校していた。軽く挨拶を交わしながら教室に入り俺は早速、自分の席に座り美佳達へのメールを作成する。

 あまり忠告メールを出すのが遅くなると、美佳か沙織ちゃんが話の流れで口にするかも知れないからな。


「おはよう」

「? ああ、柊さん。おはよう」

「……おはよう」


 俺が急いで美佳達に送るメールを作成していると、柊さんと裕二が朝の挨拶をする声が聞こえてきたのでメールを打つ手を止めずに反射的に生返事をする。 


「? 九重君は、何をしているの?」

「美佳ちゃん達に、急ぎのメールを打ってるんだよ」

「美佳ちゃん達?」


 俺がメールを打つ横で、裕二は柊さんに小声で朝あった出来事の説明をおこなう。


「……へぇ、そんな噂話がたってるんだ」

「だから今、大樹が大急ぎで美佳ちゃん達に俺達の事を口にしない様に、って内容の忠告メールを出そうとしているんだよ」

「なるほどね」


 そんな裕二と柊さんの会話を聞きつつ、俺は完成した忠告メールを美佳と沙織ちゃんに送信した。


「これで良し、っと」

「送ったのか?」

「ああ。取り敢えずこれで、どっちかがメールに気付いてくれたら良いんだけど……」


 学校内だからな。2人共スマホはマナーモードにしているだろうから、送ったメールに気が付かないって可能性もなくはない。どっちかからの返事が、ホームルームの前に返ってくれば安心できるんだけど……。


「まぁ、学校だからな。そこは仕方ないと言ったら仕方ないか……」

「そうね。マナーモードだと、ポケットに入れていても気が付かない事ってあるものね」

「しかも、今は授業前だよね? スマホが通学バッグの中……って可能性もあるしさ」


 と、3人でそんな事を心配していると俺のスマホが震える。画面を確認すると、メール着信を知らせていた。

 

「あっ、美佳から返信が来た」

「そうか。で?」

「OKだってさ。沙織ちゃんにも伝えておく、って」


 どうやら無事、メールは届いたらしい。これで少なくとも、美佳達経由で俺達の事がバレる事はないだろう。


「まずは一安心、ってところだな」

「そうだな。まぁ、どのくらい効果があるかは分からないけどな」

「それでも、美佳ちゃん達が変な騒動に巻き込まれる可能性は減るわよ」

「だと、良いんだけどね……」


 俺はスマホをバッグの中に入れながら、教科書類を机にしまい授業の準備をする。

 

「ああ、そう言えば2人共。昨日の人達って、あの後直ぐ帰った?」

「昨日の……ああ、アイツ等な。大樹と柊さんが帰ってからも少し粘ってたけど、10~15分したら撤収したぞ?」

「家も似た様なものね。九重君に送って貰った後、10~15分したら撤収したわ」

「そっか。家は俺が帰宅したら、ものの2~3分で撤収したよ。じゃぁさ、今朝は?」


 ウチの監視者が余り粘らなかったのは、俺が帰宅したのが最後だからかな?


「居なかったな」

「家もよ」

「家もだよ」


 全員の所に監視の目は無し……か。どう言う事情があるかは知らないけど、監視が無かったって事は昨日一日で終わった……って事で良いのかな?まぁ無いと思って失敗するより、監視されていると思って暫く警戒する方が良いだろうけど……。










 暫しの間3人で世間話をしていると、教室の扉が開き疲れ気味の表情を浮かべた平坂先生が入ってきた。


「お~い、ホームルームを始めるぞ。全員、早く自分の席に着け」


 平坂先生に促され、席を離れていた生徒達は急いで自分の席へと戻っていく。

 そして、全員が席に着いた事を確認し平坂先生は話を始める。


「まずは、おはよう」

「「「おはようございます」」」


 平坂先生の挨拶に多少ズレはあるが、声を揃えて俺達は返事を返す。


「さて、今日の連絡事項は……まぁ、今週末に行われる体育祭関連の話だ。今日から体育の授業時間でも、本格的に体育祭の練習が始まる。そして練習が本格化する事によって、例年怪我をする生徒が増える傾向があるので、各員気を付けるように」


 確かに去年、高校初のイベントという事もあり体育祭の練習に熱が入って怪我人続出だったな……スリ傷等が主だったけど。

 でも、今年は探索者をしている者も多いから2,3年生から怪我人はあまり出ないんじゃないかな?と、そんな事を考えているのが顔に浮かんでいたのか、平坂先生は軽く溜息を吐きながら俺達を注意する。


「お前らなぁ……。今、探索者をやっている自分達には余り関係ないって思っただろ? しっかり関係あるからな。ウチより早く体育祭を開いた他所の県の学校では、探索者をやっている生徒とやっていない生徒がリレーを練習している時にバトンパスをミスして衝突、探索者ではない生徒が足の骨を骨折するという事例が報告されているんだぞ」


 平坂先生の話を聞き、教室に小さなざわめきがたつ。


「骨折……ですか」

「ああ」


 生徒の漏らした声を、平坂先生は首を縦に振って肯定しながら状況説明をする。


「探索者として活動している生徒がバトンパスをしようと近付いた所、その生徒の走るスピードが速すぎて受け手がある程度加速する前に到達。2人は衝突して、縺れながら倒れこんだとの事だ」


 なる程……そう言う状況か。

 確かに探索者資格を持つ生徒が本気で走れば、低レベル(レベル10前後)の者でも去年の100m短距離走の世界記録より速く走れるからな。その上、探索者はレベルアップ効果のおかげで生身でも頑丈だ。

 言ってみれば、それなりの速さで走る自転車と衝突した様な物だからな。


「結果。探索者をやっている生徒は無傷で、探索者をやっていない生徒は足を骨折したとの事だ」


 平坂先生が結論を述べると、教室内のざわめきは更に大きくなった。

 そして生徒達を落ち着かせようと平坂先生は軽く手を叩き、生徒達の注目を集め口を開く。


「静かに。幸い骨を折った生徒は、ぶつかった生徒が学校に持ってきていた回復薬を提供した事で事無きを得た。……だがな、その例では足の骨を折るだけで済んだが、一歩間違えれば首の骨を折ったり内臓を圧迫し破裂させる等の重大事故に発展していた可能性もあったんだぞ?」


 ざわめいていた教室が、一気に静まり返る。まぁ、死人が出ていたかもしれないと聞かされれば、無理もないか。

 平坂先生は黙り込む生徒達を軽く一瞥し、重々しく口を開く。


「お前達。俺の話を聞いた時に、自分には関係ないと思っただろう? だがな、気を抜いていると自分が怪我をしなくとも、加害者になる事はあるんだぞ? そんな事が起きないように、練習中でも気を抜かず気をつけるように……良いな?」

「「「「はい!!」」」


 平坂先生の忠告を聞き、俺達は短く真摯に受け止めたことを示す返事を返した。







 朝一で中々重い話題を終えた後、平坂先生は新しい話題を切り出す。


「さて、と。中々重い話の後で悪いが、もう一つ体育祭関連の事で連絡事項がある」


 平坂先生がそう言うと、俺を含め生徒は少しウンザリとした表情を浮かべた。

 まだあるの?と。 


「安心しろ。今度の話は、さっきの話よりは少しはマシだ」


 そう平坂先生は言っているが、先生の表情を見る限りあまり良い話では無いようだ。


「ああ……この中に、今朝報道されていた体育祭関連のニュースを見た者は居るか?」


 そう言って、平坂先生は教室を少々気まずげに見渡す。 

 今朝、ニュース、体育祭関連? それって、もしかして……。


「あの、先生……。それって、体育祭の事で学校を訴えたモンスターペアレントの話ですか?」


 女子生徒の一人が弱々しく手を挙げながら、気不味げな口調でそう聞いた。


「……ああ、そうだ。そのニュースの事だ」


 ああ、やっぱりそうか……。

 平坂先生は若干視線を俺達生徒から逸らしつつ、言いづらそうに話を進める。 


「実はそのニュースを受け、今朝職員会議が開かれてな? 今度の体育祭では、探索者資格を持つ生徒と探索者資格を持たない生徒を分けて、別々に競技を行わせる事になるかもしれん」

「「「ええっ!?!?」」」


 平坂先生の説明を聞き、教室内に俺達生徒の大きなざわめきの声が響き渡る。

 
















注意一秒、怪我一生。

全力で走る探索者と非探索者の衝突事故って……下手をすると死人が出ますよね?



朝ダン好評発売中です。書店等で見掛けたら、是非お手に取ってみてください。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
マラソンとか体育祭とか要らなくない?中止でいいじゃない?
[一言] まぁそうよね。バトンの受け渡し程度で怪我をする可能性があるんだから回避したいよね
[一言] まぁ、レベル0とレベル10がぶつかったら交通事故並みの威力になるとしたら。 そりゃわけないといけないよねぇ(。。 むしろ探索者やってる人たちが無頓着すぎる、のかなぁ。
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