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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第8章 ダンジョンデビューと体育祭に向けて
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第146話 トラップ訓練施設にリベンジを挑もう


お気に入り12800超、PV10000000超、ジャンル別日刊20位、応援ありがとうございました。


祝、1000万PV突破しました。

まさか、投稿開始1年と経たずに1000万の大台に乗るとは思っても見ませんでした!

これも皆様の応援のおかげです、ありがとうございます!






 土曜日の半日授業を終えた俺達は、食堂で美佳達と待ち合わせをし一緒に昼食をとっていた。因みに、今日は全員カレーを注文している。何の変哲もない業務用レトルトカレーだが、お腹が減っていると言う事もあり皆黙々と食べていく。

 皿の半分ほど食べた所でお腹も一息ついたので、俺はスプーンを持つ手を止め皆にこの後の予定について話しかける。


「で、皆。このあと訓練施設の方に移動するつもりだけど、何か学校でやっておきたい事ってある?」

「うーん、特にこれと言う用事は無いな」

「そうね。ポスターの作成配布は終わっているし、橋本先生にも昨日の段階で今日の部活はお休みだって伝えているものね」


 裕二と柊さんがカレーを食べる手を止め俺の質問に返事をしてくれたけど、何もないとの事だ。入部希望者との面談があるとかの話を期待したが、まぁそうだよな……。

 残念ながら、今日も俺達に入部希望者の人が声をかけてくる事はなかった。やっぱり、何か目立つ実績が無いと募集ポスターを貼っても効果は無いか……。

 

「美佳と沙織ちゃんの方はどう? 入部希望者や、部活内容を説明してほしいって言ってくる様な人は居なかった?」

「うーん、残念ながらそう言う人はいなかったかな? ……沙織ちゃんの方はどうだった?」

「私もいなかったよ。からかい半分で部活の話を振ってくる子はいたけど、入部する事を考えて質問してくる子とかはいなかったかな……」

「そっか……」


 やっぱり新設の部活と言う事もあって、皆まだ様子見の段階って所か……。本格的な勧誘活動をするのは、体育祭で俺達の実力をアピールした後だな。

 まぁこれは、ある程度予想が出来た状況だから良いんだけど。


「じゃぁ残念だけど、皆この後すぐに移動しても問題ないって事?」

「ああ、残念ながらな」

「残念だけど、そうね」

「うん」

「はい」


 俺の質問に返事をしながら、皆少々残念そうな表情を浮かべながら顔を縦に振って頷いた。


「そっか……」


 俺もカレーを掬ったスプーンを口に運びながら、残念気な表情を浮かべる。

 そして全員が食事を終えた後、俺達は校内を軽く歩き回ってから学校を後にした。このまま体育祭が始まるまで下校前の散歩を続ければ、放課後校内に残る生徒達には美佳達が俺達の庇護下にあるって事が認知されるだろう。








 

 バスと徒歩で移動して来た俺達の眼前に、以前屈辱を味わわされた忌々しい建物が鎮座していた。ダンジョン協会が運営する、トラップ訓練施設だ。

  

「うーん。前来た時より、利用客が増えたかな?」

「そうだな。増えたのは多分、美佳ちゃん達みたいな新高校生じゃないか? ダンジョンのトラップに引っかかって、どう対策をとろうかと悩んでいる時にここを知って練習に来たって所だろう」

「この前行ったダンジョンの出張事務所の掲示板にもこの手の施設を紹介する貼り紙も出てたから、多分それを見た人も多いんじゃないかしら?」


 俺達の視線の先には、沢山の制服姿のまま若者達が施設に入っていく姿がみえた。中には、俺達と同じ高校の制服の連中もいる。

 既に俺達が探索者をしている事は学校でオープンにしているが、隠している時だったら少々面倒だったな。


「ねぇ、お兄ちゃん。早く中に行こうよ、何時までもここに立っていても仕方ないよ?」

「ああ、そうだな。行くか」


 美佳に促され俺達がトラップ訓練施設の中に入っていくと、受付の前には既に順番待ちの列が出来ていた。列に並ぶ大半は制服姿の若者が占めているので、まるで購買部に並ぶ列のようだ。

 

「うわぁ、大盛況だね……」 

「そうだな。まぁ、取り敢えず並ぼうか?」

 

 一瞬列の長さに気圧されるが、俺達も気を取り直し列の最後尾に並ぶ。すると直ぐに、俺達の後ろに他校の制服を着た学生達が次々と並んでいく。ホント、大盛況だな……。

 そして並ぶ事、20分。漸く、俺達に受付の順番が回ってきた。


「お待たせしました。何名様でご利用でしょうか?」

「えっと……男2人女3人の5人です」

「5名様ですね。この施設の説明を致しますが、ご利用は初めてでしょうか?」

「いえ。2度目なので説明は結構です」


 説明を聞くかと問われたが、俺達は2度目の利用なので説明は断った。 


「そうですか。では、本日のご利用希望のゾーンはどうなさいますか?」

「初級ゾーンをお願いします」

「初級ゾーンですね? では、探索者カードを提出して下さい」

「はい」


 俺達は予め皆から預かって用意していた探索者カードを、受付係の人に提出する。カードを受け取った係員の人は、素早くカードを読み取り機にかざし本人確認を行う。

 

「結構です。では施設利用料としまして、お一人様1000円いただきます」

 

 返却されるカードを受け取りながら、俺は利用料を5000円札で支払う。

 その際、面倒だろうが1枚1枚レシートを出して貰う。受付の人に一瞬嫌そうな顔をされたが、軽く事情を説明すると直ぐに元に戻り対応してくれた。


「はい、ちょうど頂きます。ではこちらが、更衣室のロッカーキーになります。赤が女性で、青が男性になります」

「はい」

「では、本日のご利用ありがとうございます」


 俺達は軽く頭を下げた後、素早く受付の前を離れた。だって後ろから、終わったのなら早くどけって言う念がビンビン飛んで来ているからな。


「はい。カードとロッカーの鍵。それとレシート」


 俺は受け取ったロッカーの鍵と探索者カード、レシートを皆に配りながら立て替えていたお金を受け取る。千円札が4枚、今回は美佳と沙織ちゃんからも受け取った。

 開業した以上、探索者関連のお金のやりとりはきっちりとしておかないとな。 


「美佳、そのレシートは捨てずに取っておけよ。帳簿上は、雑費として処理すれば良いから」

「こんな事も、帳簿に記載しないといけないんだ……」

「別に書かなくても良いけど、そうするとここの利用料は個人の財布からの持ち出しって事になって、余分に税金取られるからな? 経費で落とせる分は、細かく帳簿に付けとけよ」

「……うん。分かった」

「それとな、美佳。レシートや領収書には保管期限て物があるから、領収書専用の保管ケースとかを作って無くさない様に取っておけよ? 帳簿に数字を記載しているのに、領収書が無いとなると面倒な事になるからな。沙織ちゃんも、無くさない様に気を付けるんだよ?」

「はい」


 俺は美佳と沙織ちゃんにレシートを渡す時、軽く会計上の注意をしておく。実質、これが二人の開業後初めての事業主としての会計だからな。

 因みに、俺が前回支払った2人の施設利用料は接待交際費として記帳している。


「さっ、これでやる事は終わった事だし、さっさと着替えようか?」

「ああ、そうだな」

「そうね、行きましょう」

「うん」

「はい」


 お金のやり取りを終えた俺達は、更衣室へと足を向けた。列の長さから更衣室には人が一杯入っていそうだが、着替えない事にはどうしようもないからな。

 ……密集した人の体温で、更衣室の中が運動部の部室のように蒸し暑くはないよな?











 嫌な予想は外れ、更衣室にはエアコンが掛かっていたので然程熱くはなっていなかった。しかし、今の時期でこの暑さなら、外温がどんどん高くなる真夏はどうなるんだろうな……。

 俺と裕二は更衣室の前で美佳達が出てくるのを待ちながら、これからの予定について話し合っていた。 


「なぁ、裕二。今回は取り敢えず初級ゾーンを美佳達と回る予定だけどさ、帰る前に一度上級ゾーンに挑戦してみないか?」

「上級ゾーン?」

「ああ。ほら俺達ってさ、一応ダンジョンの階層踏破記録では学校一だろ? でもその記録ってさ、学生探索者にとっては身近には無い縁遠い記録じゃないかな?」

「ああ、なる程。確かに、一般的な学生探索者には縁遠い記録だな」


 例えば、富士山を1号目からスタートして1日で往復したと自慢気に言われても、実際に富士山に登った事がない者は実感が湧かず、気のない返事を返してくるのが精々だろう。

 逆に、腕立て伏せを休まず100回連続で出来ると言われた方が、凄いと実感の篭った感想が返ってくるだろう。


「だろ? となると、身近で分り易いアピールポイントが必要だと思うんだ。その点、ここの上級ゾーンをクリアしたって言うのは、分かり易く共感し易い実績だと思うんだ」

「なる程。確かにここの上級ゾーンは、探索者資格を持っていれば誰でも挑戦出来る上、まだ誰もクリアしていないみたいだからな。俺達がクリアすれば、アピールポイントとしては十分だな……」


 俺と裕二は受付傍の掲示板に貼り出してある、今月の上級ゾーン・中級ゾーン・初級ゾーンのクリア者数が記載されているボードを見る。中級は4人、初級は71人とクリア人数が書かれているが、上級の所には0の一文字。

 つまり、今月に入って上級ゾーンは未だ誰にもクリアされていないと言う事を指し示していた。


「だからさ、実績作りの為にも挑戦してみないか?」

「そうだな、挑戦してみるのも良いかもな」


 裕二は俺の提案を検討した結果、上級ゾーン攻略に意気込みを見せる。よし、上手くいった。後で、柊さんにも同じように提案してみよう。

 そして裕二と雑談をしながら待つこと数分、やっと3人が更衣室から出てきた。

 

「待たせたわね、2人とも」

「お待たせ」

「お待たせしました」


 柊さんは悪びれず、美佳は元気と言うか脳天気に、そして沙織ちゃんは少し申し訳なさそうに……3人3様の登場のしかたをする。まぁ、別に良いんだけどさ。

 俺は内心ため息を漏らしながら、3人に声をかける。 


「更衣室は混んでたの?」

「ええ、少しね。以前来た時より、大分人が増えてたわ。男性用ロッカーの方は?」

「こっちも同じ。前に比べて人が増えてたよ」


 軽く柊さんと掛け合いをしながら、俺達は合流する。皆持参したジャージに着替えており、時期が時期なので体育祭の練習の延長線上のように思えてくるな。


「じゃぁ皆揃った事だし、行こうか?」

「ああ、行こう」

「ええ」

「うん! どんなコースか楽しみだね!」

「はい!」


 俺達は案内看板の指示に従い、初級ゾーンがある建物へと移動を始めた。 










 初級ゾーンは体験ゾーンがある建物の隣、外観は体験ゾーンの建物と同じで看板の文字が違うだけだった。入口の近くには、建物に入る順番を待っている利用者らしき人の列が出来ている。


「ここでも皆並んでるな……」

「ああ。だが、受付の列に比べれば十分短いぞ?」


 裕二の言う様に、入口に並んでいる列は受付に比べればだいぶ短い。

 すると突然、美佳が声を上げた。

 

「あっ、あそこ。お兄ちゃん、あの看板を見てみてよ。あれが順番待ちする人の列が短い理由みたい」

「ん? どの看板だ?」

「ほら、あそこの看板」


 美佳が指さす看板を見てみると、それは利用案内と名を打たれた看板だった。目で看板に書かれた文字を読み進めていくと、美佳が声を上げた理由が判明する。


「訓練コース内に設置してあるトラップを半分以上作動させた場合、体験ゾーンで指定されたトラップ訓練機器をクリアしなければ再挑戦出来ないか……」

「なる程。確かにこの規定があるなら、入場待ちしている人数が受付の列に比べて少ないわけだ」


 つまり基本的な技量が足りない者には、体験ゾーンのトラップ訓練機器で対応力を磨き直して出直してこいと言う事か……。確かに、技量が足りない者にダラダラ訓練機器を専有されていたら、他の利用者の迷惑になるからな……足切りラインは必要か。


「と言う事は、今並んでいるあの人達は初挑戦組か、一定以上の技量がある再挑戦組の人達って事ね」

「多分ね……」


 並んでいる者達の雰囲気から、比率は7:3と言った所だろうか? 意外に再挑戦組が少ないな……訓練に時間を使うより、習うより慣れろの精神でダンジョンに挑んでいる連中が多いのだろうか?

 無駄なケガを避ける為にも、ここである程度は訓練しておいた方が良いと思うんだけどな……。


「まぁ、良い。俺達も並ぼうか?」

「そうだな。初挑戦組も多いみたいだし、俺達が並んでも何か言われる事はないだろうしな」


 俺達は利用案内の看板を斜め読みした後、入場待ちの列の最後尾に並ぶ。因みに、案内看板には再利用制限の項目以外に特に目に付く項目は無く、至って普通の事しか書かれていなかった。まぁ、怪我は自己責任と言う一文はデフォルトで入っているけど。

 そして今度は受付の列ほど待つ事なく、5分ほどで建物の中に入る事が出来た。


「へー。外観はダンジョンの入口を模しているんだ。何か、古い遊園地にありそうなアトラクション施設みたいな雰囲気だな……」

 

 俺は建物の中を見渡し、そんな感想を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


前回、苦渋を味合わされたトラップ施設への再チャレンジです。幻夜さんの稽古で培った技術を活かし、リベンジ成功なるか!



活動報告の方に、特典SSの詳しい情報にをアップします。

因みに、今回書き下ろした特典SSは5つあります。よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
リベンジって復讐ですよね? 復讐を挑もうってなに?
[一言] 細かい事だけど、タイトルの「リベンジを挑もう」は文として少々おかしい。
[一言] 訓練場所へ行く為の交通費やその間の飲食代は経費になるの?
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