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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第8章 ダンジョンデビューと体育祭に向けて
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第142話 生徒会からの呼び出し

お気に入り12620超、PV 9660000超、ジャンル別日刊41位、応援ありがとうございます。




 

 


 橋本先生に試作品のポスターを確認して貰った後、俺達が職員室の印刷機を借りて印刷して1年生の校舎を中心に貼り出した所、その翌日の昼休みに俺達3人……俺、裕二、柊さんは、何故か生徒会室に出頭する様にと呼び出しを受けた。3時限目の後の休み時間に前と同様、南城さんがウチのクラスに生徒会からの呼び出しの言付けを届けに来たのだ。

 結果、俺達は手早く昼食を済ませた後に、心なしか重い足取りで生徒会室へと移動していた。


「なぁ? 一体、何の用で俺達は呼び出されたんだろうな?」

「さぁな……だが、部員募集のポスターを貼り出した翌日にお呼びが掛かったんだ。恐らく、ポスター関連の事だろうさ……」

「そうね。今の所、他に呼び出しを受ける様な心当りは私達には無いものね……」

「だよね……」


 俺達は口々に、呼び出しを受けた理由について推測を語る。正直、まだ本格的に活動は開始していない……新入部員募集の段階なので、いきなり呼び出しを受ける様な謂れはない筈なんだけどな。

 そして俺達は、若干憂鬱な心持ちで生徒会室の扉の前に立った。ひと呼吸間を空けた後、裕二が扉をノックする。


「2年の広瀬です。お呼びとの事なので出頭しました。入室しても良いですか?」

「はぁい、どうぞ。鍵は開いているので、入ってきて下さい」

「失礼します」


 裕二を先頭に、俺と柊さんも生徒会室へ入室する。部屋に入ると中では、5人の生徒が弁当を広げながら書類仕事をしていた。

 

「いらっしゃい。悪いわね、急に呼び出したりして」

「いえ。特に用事もなかったので、大丈夫ですよ」

「そう言ってもらえると、助かるわ」


 裕二と久松先輩が、にこやかな笑みを浮かべながら社交辞令的挨拶を交わす。

 だが正直言って、もう少し余裕がある呼出をして貰いたいものである。幾らなんでも、当日の昼休みに呼び出すとか急ぎ過ぎではないだろうか?と俺は思う。

 

「じゃぁ、あまり時間もない事だし、いきなりで悪いけど本題に入らせて貰うけど良いかしら?」

「はい、大丈夫ですよ。で、急な呼び出しの理由って何なんですか?」

「急いで貴方達を呼び出した理由は、これよ」


 そう言って久松先輩は予想通り、俺達が昨日作成し張り出したポスターを取り出した。


「貴方達に了承を取らなかったのは悪いと思ったのだけど、説明の為に1枚剥がし取らせて貰ったわ」

「それは別に構いませんが……そのポスターが何か?」

「生徒会の立場としては、貴方達が何故このポスターを貼り出したのか、その理由を聞きたいのよ……」

「張り出した理由……ですか」

「ええ。貴方達は知っているかどうか分からないけど、今1年生の間ではとある問題が起きているのよ……」


 問題……つまり留年生が起こしている面倒事については、生徒会もある程度は把握していると言う事か。その俺の推測を裏付ける様に、久松先輩は問題について俺達に説明してくれた。

 そして粗方説明が終わると、久松先輩は軽く溜息を吐いた後……。


「そんな状況の中で、貴方達がこんなポスターを貼り出したと聞いた時は……本当に慌てたわ」


 久松先輩は頭が痛いとでも言いたげに、右手を額に当て頭を左右に振った。そんな久松先輩の様子を見ていた久松先輩以外の4人は、書類整理の手を止めジト目で俺達を見てくる。なに面倒な問題を起こしてくれてんだ、と。

 まぁ、こんな構図のポスターだからな。見方によっては、学内闘争を始める為の前準備をしていると受け取られても仕方がないか。つまり事前の情報共有……根回し不足だったって事だな。

 流石に俺達も、咎める様な視線を受けると些か居心地が悪くなる。

 

「で、これは早急にポスターを貼り出した意図を問い質さないといけないと思って、急で悪いとは思ったけど貴方達をこうして呼び出したのよ」

「は、はぁ……なる程」

「で、貴方達はどういうつもりでこんなポスターを貼りだしたの?」


 久松先輩は真意を問おうと、俺達に厳しい視線をむけてくる。俺達は互いに顔を見合わせた後軽く頷き合い、裕二が代表して説明を行う。

 

「先ず初めに言っておきますが、俺達も1年生の問題について把握しています」

「そう、知っていたのね……。じゃあ、何でこんな事をしたの? こんなポスターを貼り出せば、入部希望の1年生と留年生達の間を刺激して諍いが起きるかも知れない事は、容易に想像出来るはずよ」

「その諍いを起こす為です」

「……はぁ!?」


 裕二の発言に久松先輩は目を見開き、他の生徒会メンバーも目を見開き驚きの表情を浮かべる。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 諍いを起こす事が目的って、貴方達どういうつもりよ!?」


 久松先輩は唖然としたが直ぐに立ち直り、机の天板を叩きながら裕二を問い詰めてきた。他の生徒会メンバーも、先程とは段違いに険の篭った視線を向けてくる。

 まぁ言葉だけ聞けば、かなり危険な発言だからな。久松先輩達の反応も、無理もない。


「言った通りの意味ですよ。と言ってもまぁ、武力衝突を起こしたい訳ではありませんので、先ずは話を聞いて貰えますか?」


 裕二が穏やかな口調で、落ち着くように生徒会メンバーを諭すが、発言の衝撃もあり皆冷静さを欠き口々に俺達を激しく非難してくる。

 幾ら落ち着く様に口で言っても彼女達が落ち着かないので、裕二は軽く溜息を吐きながら体の正面で柏手を打つ。裕二の柏手の音は非常に大きく、爆竹が破裂した様な突発音が生徒会室に響いた。あまりの音の大きさに生徒会メンバーは驚き一瞬身を縮める。 


「……落ち着いて貰えますか? 先ほどの言葉の説明をしますので、質問は説明を聞き終わってからして下さい」

「「「「「……」」」」」


 裕二の柏手の衝撃で冷静さを取り戻した生徒会メンバーは、裕二が両手を広げ2発目を用意している姿を見て大人しく首を縦に振った。


「では、説明をさせて貰います。先程も言いましたが、一年生の留年生が起こしている問題については俺達も把握しています。何故なら、コイツの妹が今1年生としてうちの学校に在学していますから」

「どうも」

 

 裕二は俺の肩を叩きながら、留年生問題の情報提供源を説明する。

 ほんと、美佳が一年生として在学していなかったら、今でも俺達は留年生が起こしている問題を知らなかったろうな。 


「その関係で、俺達は相談を受けたんですよ。留年生達の横暴な振る舞いをどうにか出来ないのか?って」

「4月末……GW前に妹の相談を受けていましたね」


 俺の4月末と言う発言に、生徒会メンバーは声を上げずに目を見開き驚く。

 って、おい。まさか……。


「失礼ですけど、生徒会が留年生の問題を把握したのって何時ですか?」

 

 生徒会メンバーの反応を怪訝に思った裕二は、眉を顰めながら問いかける。

 問いかけられた生徒会メンバーはバツが悪そうに視線を逸らし、久松先輩が気不味げに口を開く。 


「……生徒会がこの問題を把握したのは、5月末よ。中間考査が始まる前に、1年生からタレコミがあって把握したわ」

「……5月末、ですか。割と最近ですね」


 真逆、そんな時期まで事態を把握していなかったとは……後手後手に回ってるな。

 それに5月末と言う事は、GWで稼いだ資金で留年生達が積極的に勢力を拡大し始めた頃か……。


「……言い訳になるけど、今の生徒会には1年生の役員メンバーがいないのよ。だから、1年生の情報は噂話程度しか把握していないの」

「……先生達からは何か聞いていなかったんですか? 俺達が動き出した時には、ある程度学校側でも事態は把握していましたよ?」

「……ほんと?」

「はい。俺達が動き出したのはGW休み明け直ぐでしたけど、互いに話は通じましたよ?」

 

 確か橋本先生も、職員会議の議題に上がったって言ってたしな。恐らく、4月の段階である程度の事情は把握していたはずだ。

 しかし、どういう訳か生徒会側に留年生問題は通達していなかったらしい。


「……何で教えてくれなかったのかしら? 知らせて貰えれば、私達の方でももっと早く対応出来たのに……」


 久松先輩は、悔しげな表情を浮かべる。言ってみれば、この問題に関しては生徒会は頼りにならないと言われたようなものだからな、悔しいのは当然だろう。

 当然、他の生徒会メンバーも苦虫を潰したような表情を浮かべている。 


「……まぁ、その話は置いておくとして、説明を続けても良いですか?」


 生徒会が蚊帳の外に置かれ話が進んでいた事を知り生徒会メンバーは若干不機嫌そうであったが、裕二は素知らぬ顔で説明を再開して良いかと問う。


「……ええ、ごめんなさい。説明を続けて貰えるかしら?」

「はい。では先ず……」


 了承を得た裕二は、美佳から相談を受けた後の創部に至る経緯を淡々と説明し始め、生徒会側も口を挟まず説明に耳を貸す。











 一通りの説明が終わると、久松先輩は悔しげに溜息を吐く。


「つまり、私達が事態を把握する前に貴方達は留年生対策に動いていたのね?」

「はい。と言っても、実際に動き出したのは昨日からですけどね。中間考査を間に挟んだので、事前準備に意外と時間がかかりました。尤も、その中間考査で留年生達がダンジョン探索にかまけ赤点を取ってくれていたら、創部話自体が流れていたんですけどね」


 ほんと、それが一番楽な展開だったのだが……残念。あいつら、ギリギリとは言えメンバー全員、赤点は免れたからな。

 裕二が残念気な表情を浮かべ愚痴を漏らすと、久松先輩も苦笑を漏らし首を縦に振って賛同した。


「貴方達が創部に至る経緯は分かったわ。でも、さっきの発言の説明がまだよ? 諍いを起こすと言うのはどう言う意図があっての事かしら?」

「諍いを起こす……つまり表だって議論を巻き起こす事が目的です。今の1年生は留年生達の力を恐れ、自分達の主張を言い出せない状態に有るみたいですからね。何をやっても誰も何も言わない……それが留年生達が増長する原因になっているんだと思います」

「確かに、何をやっても文句や抗議が聞こえてこないからこそ、彼等はここまで増長しているのかもしれないわね。先生達にしても、校則や法に反する問題行動を生徒が起こしていないのなら、積極的に生徒間の問題に介入する事は出来ないわよね」

「ええ」


 そう、この問題で一番の問題点は1年生の多くが留年生達の力を恐れて、誰も文句や抗議の声を表だって上げないと言う事だ。裏で幾ら誹謗中傷を囁いたとしても、調子に乗っている人間……天狗になっている人間にはまず届かない。誰かが正面から声を上げ、自分達が置かれている現実を認識させない限り。


「留年生達の行為に不満を持っている1年生は、かなりの数居ると思います。それこそ、切っ掛けを与えれば爆発するくらいには。ですが、その爆発の方向性が武力衝突だったら目も当てられません。ですから……」

「貴方達が方向性を与えると?」

「はい。最初に方向性を抗議……俺達や学校側の後ろ盾があるデモと言う形にしておけば、容易に武力衝突には発展しないと思います」


 下手に武力衝突に発展すると、双方で死傷者が出る恐れがあるからな。


「恐らく抗議がデモに発展した段階で、留年生グループは正気に戻った生徒を皮切りに瓦解し始める筈です」

「そうね。軽い気持ちでグループに参加している生徒は、大規模な抗議の声が上がればまず逃げ出すわね」


 留年生グループに組みすれば利を得られると思うからこそ、メンバーの生徒はグループに参加しているのだ。と言う事は、利を得られるどころか損をすると感じれば大半の生徒は離れていくだろう。そうすれば、最後に残るのは留年生本人と引くに引けなくなった極小数の生徒だけだろう。そこまでくれば、今までの様な影響力はほぼ無くなる。

 久松先輩は裕二の説明を聞き、頷きながらこの推測に同意する。


「でも良いの、貴方達? そうなったら、彼等は貴方達の事を恨んで、ケンカを吹っかけてくるかもしれないわよ?」


 久松先輩は心配げな表情を浮かべ、万が一の事態についての事を気にしてくれる。まぁ当然、その可能性について考えるよな。 


「確かに、その可能性はありますね。だからこそ、そのポスターが一種の抑止力になるんですよ」

「……このポスターが?」

「ええ、そのポスターに載っているモンスター……何か分かりますか?」

「えっと……クマ、かしら?」

「名称はビッグべアー。ダンジョンの25階層以降から出現する、クマ型のモンスターです」


 久松先輩は今一ピンと来ていない表情を浮かべているが、南城さんと城島先輩は大口を開け驚いていた。


「……25階層以降?」

「ひ、久松先輩……25階層と言ったら、うちの学校で一番深く潜っていると言われている探索者パーティーより、遥かに下の階層ですよ……」

「そ、そうだよ、久松さん。つまり彼等の話が本当なら、彼等はウチの学校で一番強い探索者と言う事になる……」

「えっ、嘘、本当!?」


 生徒会メンバー全員が、信じられないと言った眼差しを向けてくる。

 まぁ、無理もないか……。

 












生徒会からの呼び出しです。

まぁ、こんな状況の中で事前に打ち合わせをしないであんなポスターを張られたら、生徒会としては意図を聞きたくなりますよね。



活動報告の方に、書報をのせています。

朝ダン、7月22日発売予定です。


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[一言] 先生方。 せめて生徒会には話持ちかけておこうよ(_’;
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