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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第8章 ダンジョンデビューと体育祭に向けて
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第140話 部員募集ポスター作成

お気に入り12560超、PV 9510000超、ジャンル別日刊17 位、応援ありがとうございます。




 


 部活2日目。

 俺達3人は昼食を手早く済ませ、図書室に移動していた。昨日部室で話していた、募集ポスターを作る為のネタ集めの為だ。何故ここ(図書室)かと言うと、ここには歴代の部活動の活動記録が纏めて保管されているからである。今の所なんのアイディアも浮かんでいないので、取り敢えず何でも良いので作成の参考になるものが欲しいのだ。

 しかし……。


「とは言え、募集ポスターの類は余り残ってないわね」

「ここに残っている記録の大半は純粋に活動記録……部の功績や部費の使い道なんかの記録ばかりだな」

「それに、残っているポスターの写真はシンプルなチラシみたいな物ばかりで、参考にはならないよな」


 俺達は何十冊にも及ぶ歴代の部活の活動記録に目を通したが、残念ながら俺達が欲する類の記録……部員募集ポスターなどは残っていなかった。まぁ確かに部の活動記録とは言っても、流石にポスターの類は残さないか……。 

 しかし、こうなると参考に出来る資料が無いので困った。


「どうする? 期待していた、ポスター作成の参考になる様な物は無いぞ?」

「うーん。こうなると、完全に俺達でオリジナルのポスターを作るしかないな……」

「完全オリジナルのポスターね……でも、広瀬君や九重君はポスターの作り方って分かる?」

「「……さぁ? どうやって作るかなんて、全く知らないな」」

「まぁ、そうよね」

 

 無言で顔を見合わせた後、俺達は揃って溜息を吐く。全く、何とも前途多難だな。 

 俺達3人は取り出していた部活の活動記録を片付け、ポスター作成の参考になりそうな書籍を探す為に図書室を物色し始める。

 そして昼休み時間いっぱいまで探し回った結果、3冊のポスター作成の参考になりそうな書籍を見付けた。それぞれタイトルが、“簡単、宣伝ポスターの作成方法”“心理学から見る効果的な宣伝方法”“宣伝が歴史を動かした”だ。一冊目は兎も角、後の2冊目はプロパガンダの指南書じゃないか?

 しかしまぁ、他に参考になりそうな書籍もなかったので、俺達は貸出手続きを済ませこの3冊の本を借りた。


「取り敢えず、放課後までに軽く目を通しておこう。全部見れなくても、見出し毎に軽く目を通すだけでも参考にはなる筈だからさ」

「まぁ、確かに何も知らない状況で、作るよりはましだな」

「じゃぁ私は、これを借りるわ」


 俺達は借り受けた本を、それぞれ1冊ずつ手に取る。俺が“簡単、宣伝ポスターの作成方法”、裕二が“心理学から見る効果的な宣伝方法”、柊さんが“宣伝が歴史を動かした”だ。

 そして俺達は昼休みが終わる前に教室に戻り、それぞれの席で借りてきた本に目を通し始める。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後の授業も全て終わり、本を読みながらHRが始まるのを待っていると重盛が声をかけてきた。


「なぁ、九重? 午後からずっとその本読んでいるみたいだけど、お前何を読んでるんだ?」

「ん? ああ、これか?」

「ああ。ずっと集中して読んでいる様だから、ちょっと気になってな。邪魔したんなら、悪い」

「別にいいよ。これはほら、ただのポスターの作り方の指南書さ」


 俺は重盛に、表紙カバーを見える様に本を傾けてやる。

 重盛は一瞬表紙カバーを凝視した後、俺に怪訝そうな眼差しを向けてきた。


「ポスターの作り方? 妙なのを読んでるな、お前」

「ちょっと、この手の知識が入用になってな。昼休みに、図書室から借りてきたんだよ」

「へー。図書室って、こんなのも置いてあるんだな……」


 重盛は初めて知ったらしい、図書室のラインナップに感心していた。

 

「すると、広瀬や柊さんが読んでる本も、図書室から借りた同じ系統の本なのか?」

「ああ。内容は違うけど、方向性は同じだな」

「揃って同じ系統の本を読んでるのか……お前ら何かやってるのか?」

「まぁ、な」


 俺が事情を重盛に話そうとした所で平坂先生が教室に入って来たので、重盛は一声かけて話を打ち切り自分の机へと急いで戻って行く。まぁその内、掲示板に募集ポスターを貼り出すんだからその時に重盛も気が付くかと思い、俺は本を机の中に仕舞いHRが始まるのを待った。

 そしてHRは特に連絡事項も無く終わり……。

 

「起立! 気を付け! 礼!」


 日直の号令で一斉に挨拶をし、HRはお開きとなる。挨拶が終わると皆思い思いに動き出し、平坂先生も早々に教室を退出し職員室へ戻っていった。

 さてと、じゃぁ俺も裕二と柊さんに声をかけて部室に行くかな? 俺は机の中の荷物を通学鞄に詰め、席を立つ。すると、丁度裕二も準備が終わったのか立ち上がった所で目が合う。


「行こうか?」

「おう」


 この短い言葉のやりとりだけで、俺達は互いの言いたい事が通じあった。まぁ、慣れだな慣れ。

 次に俺達が揃って柊さんの席に視線を向けると、柊さんがこちらに近づいて来ていた。

 

「お待たせ。さっ、行きましょ?」

「ああ、うん」

「おう」


 こうして俺達3人は活気が残る教室を出て、部室の鍵を取りに職員室へ向かった。部室を利用する度に鍵を一々職員室まで取りに行かないといけないのは面倒なのだが、全部活一律の利用規則として決まっている以上は仕方が無い。ピンシリンダーキータイプなので、いっそ鍵屋で複製鍵でも作ろうかな?と思いもしたが、複製がバレた時が面倒くさい事態になりそうなので、複製しない方が無難だろう。

  










 部室についた俺達は美佳や沙織ちゃん、橋本先生が来るのを借りた本を読みながら待つ事にした。

 その際、互いに本を読んだ内容を語り合う。まずは俺から。


「この本を斜め読みした感じだと、ポスター作成にとって大切な点は凡そ3つあるらしい」


 俺は社会科準備室に置いてある備品の移動キャスター付きの大きなホワイトボードに、マーカーでインパクトと言う文字を書く。


「先ず一つ目は、インパクト。ぱっと見た時の第一印象が重要らしい。インパクトのある写真や目立つキャッチコピーで人目を引いて、読者に興味を持って貰わないとポスターの内容なんて誰も読まないってさ」

「まぁ、正論だな」

「そうね。確かに地味な見た目だと、誰も気に止めたりしないわよね」


 俺の説明に、裕二と柊さんは軽く頷きながら賛同の声を上げる。文字だけのポスターと写真入りのポスターだと、やっぱり写真入りのポスターに目が行くからな。 

 

「2つ目は、入部したらどんな自分になれるかを期待させる事らしい。入部後の自分の姿を期待させる事で、実際に入部してみようかなって言う意欲をわかせるんだってさ」

「なる程。確かに、入部したらどんな事が出来る様になれるのか……皆が関心を持つ部分だな」

「将来像が朧気ながらでも想像出来れば、入部してみようかなって思うものね」


 文字だけだとイメージしづらいので、将来像をイメージし易い写真やイラストを入れると良いと本には書かれている。確かに文字だけのポスターだと、ぱっと見た時には想像しづらいかもな。


「最後に3つ目。ポスターを見た者を、入部まで導く為の情報を厳選し入れるんだってさ」

「……導く為の情報?」

「活動内容の簡単な説明や活動場所、参加方法なんかの情報を入れるらしい。多すぎても少なすぎてもダメだから、ポスターに載せる情報は厳選しろってさ。例えば、部活体験会や見学会なんかの開催日を載せたりして、興味を持った生徒を誘導すると良いらしい」

「ああ、なる程。確かに、イベントの案内ポスター何かにはよくある形式だな」 


 俺の説明に裕二と柊さんが納得した様なので、俺はマーカーを裕二に渡し説明係をバトンタッチする。

 マーカーを受け取った裕二は俺が書いた文字の下に、とある一文を書く。


「俺が読んだ本から今回のポスター作成に必要だと思ったのは、宣伝をするターゲット層を限定して狙い撃つって事だ」

「ターゲット層を限定する?」

「ああ。万人向けに広く薄い宣伝をするよりも、特定層を狙って宣伝した方が場合によっては高い効果が得られるんだってさ。無論、幅広い層に認知して貰う場合なんかには不向きな手法なんだろうけど、俺達の場合はターゲット層は1年生が主体だからな。例えば……」


 裕二はそう言いながら、2つの文章をホワイトボードに書いた。

 “夏に必須! NEWヒヤケナイ!”と“30代女性の夏に必須! NEWヒヤケナイ!”だ。

 確かに、ターゲット層を限定するようなキャッチコピーだな。


「こんな感じで、ターゲット層を限定するようなキャッチコピーを入れると、ターゲット層には受けが良くなるらしい。まぁ、広く薄く宣伝を打つか、狭く深く宣伝を打つかって事だな」

「確かにこの文言だと、ターゲット層以外には響かないかもしれないけど、ターゲット層にはかなり強く商品を印象付ける事が出来るわね」

「確かに、俺達になら問題なく使える宣伝手法みたいだね。2,3年向けの宣伝効果を切り捨てたとしても、1年に宣伝効果が行き渡れば良いんだしさ」

  

 普通の新設部活なら、全学年に向けて部員募集をかけるのだろうが、俺達の創部目的は1年生を主体とした勧誘数の増加による組織拡大だからな。留年生グループに牽制をかける為にも、募集し加入する部員は1年生が多い方が良い。

 なので、裕二が提案する宣伝手法を敢えて拒否する理由は特に無い事になる。


「じゃぁ、次は私ね……って言いたい所だけど、残念ながら私から報告するような事はないわ。この本、本当に宣伝の歴史について書かれているだけね。今回のポスター作成に活用出来そうな物は無かったわ」


 裕二がマーカーを柊さんに渡そうとすると、柊さんは本の表紙を俺達に向けながらそんな事を言ってきた。どうやら柊さんが読んだ本は、今回の目的からはハズレていたらしい。


「そうなんだ。じゃぁ、取り敢えず今ホワイトボードに書き出している条件で、募集ポスターの草案を考えてみようか?」

「ああ。しかしこの条件だと、何かのイベントポスターの様な出来になりそうだな……」

「そうね……写真を背景にして、インパクトのあるキャッチコピーが乗ったポスターか……」

「まんま、イベントポスターだよね」


 どうやら草案を作るだけでも、中々難航しそうな気配がしてきたな。俺達は、ああでもないこうでもないと議論を重ねながら草案を作成していった。












 橋本先生を含めて、全員が部室に揃って議論を重ねた結果、やっと意見が纏まり入部希望者の募集ポスターの草案が出来た。

 1時間ほど長々と議論を重ねた末の、ラフ草案の完成だ。


「取り敢えずラフ画だけど、ポスターの草案はこれで完成かな?」

「そうだな。まぁ、一度この通りに試作品を作ってみよう。悪ければ、手直しをすれば良いだけの事だしな」

「そうね。実際に完成した現物を見ないと、ダメ出しも出来ないわね」

「了解。じゃぁ取り敢えず、これで作ってみるよ」

 

 俺は完成したポスターの草案を、クリアファイルに挟んで通学カバンに仕舞おうとした。何故かと言うと、今回ポスターに使用する背景写真を、俺が保管しているダンジョン攻略の自撮り映像から引っ張ってくる事になったからだ。なので比較的PC操作が得意で、2人に比べ時間がある俺が試作品を作る事になった。

 一応、背景写真の選択は任せられているが、何種類か背景写真を変えた物を作成し明日、皆でどれを採用するか決める事になっている。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん」

「ん? 何だ?」

「本当に、そのポスターのキャッチコピーと構図で良いの?」


 俺はクリアファイルを仕舞う手を止め、ポスター草案を美佳に向ける。

 ポスターの草案に書かれているキャッチコピーは、“ダンジョン探索 会計作業 両立出来てこそ大人の仲間入り”だ。ラフ画には上部に部活の名称、右側にダンジョン探索をする写真と文字、左側に制服姿でパソコンに向かって会計作業をする写真と文字が描かれている。

 

「ああ。まぁ、コレで大丈夫だろう。使う予定の写真とキャッチコピーで、俺達の部活が何を目的として活動するのかは伝わる筈さ」


 因みに使用予定の自撮り写真には、20階層以降に出現するモンスターの姿が映り込んでいる物を選ぶつもりだ。見る者が見れば、どんなモンスターと俺達が普段戦っているのか、正しく認識するだろう。まぁ、留年生グループに対する牽制の一環だな。

 俺は少々懐疑的な視線を向けてくる美佳と沙織ちゃんに、締めの言葉を言う。


「取り敢えず、ポスターの出来を見てから修正した方が良いと思った所があったら意見を出してよ。1年生の校舎を中心に貼り出すからさ」

「……うん」

「……はい」


 2人の返事を聞き、俺は今度こそクリアファイルを通学カバンに仕舞い、橋本先生に一言断りを入れてスマホを取り出す。今から、ポスターの背景写真に使う写真を撮影するからだ。


「じゃぁ2人共、何枚かポスターに使う写真を撮るからPCに向かって操作する振りをしてくれ。まずは美佳から頼む」

「はぁーい」


 俺はスマホを構え、美佳と沙織ちゃんの写真撮影を始める。少々時間は掛かったが中々良い出来の写真が取れたので、良いポスターに仕上がりそうだ。 

 こうして部活2日目は、写真撮影を最後に行って終了した。









 



 

ポスターの図案が決定しました。

よくあるイベントポスター風です。あまり気をてらいすぎると、製作の意図が伝わらず失敗しますからね。

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― 新着の感想 ―
あ〜実際考え方が子供に近い2人に響かなかったから疑問なのかな てか武器持った探索者が税務署と書類に立ち向かう構図のポスターとか作ればウケそう
[一言] 色見本やカラーコーディネートやデザインの本を借りるのも手だったと思う。 大きな色を3色以内くらいにするとセンスが良くなる
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