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朝起きたらダンジョンが出現していた日常について……  作者: ポンポコ狸
第8章 ダンジョンデビューと体育祭に向けて
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第137話 創部手続き終了

お気に入り12450超、PV9270000超、ジャンル別日刊19位、応援ありがとうございます。








 裕二が扉を開くと、生徒会室の中には3人の男女がパイプ机に座って書類仕事をしている姿がみえた。先日伝言役を務めてくれた書記の女の子はノートパソコンで書類らしき物を作成印刷しており、生徒会副会長を務める男の先輩は印刷された書類をチェックした後にホッチキス止めをしている。

 そして最後の1人。生徒会長を務める女の先輩は、書類整理の手を止め俺達に笑顔を向け挨拶と自己紹介をしてきた。 


「ようこそ、生徒会室へ。2年生なら知っているとは思うけど、一応自己紹介しておくわね。私は3年4組の久松弥生(ひさまつ やよい)、現生徒会長を務めさせて貰っているわ。よろしくね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。あっ、自己紹介してませんでしたね。俺は2年の九重大樹です」

「広瀬裕二です」

「柊雪乃と言います」

「そう。九重君、広瀬君、柊さんの3人ね」


 久松弥生。セミロングの黒髪が似合う文学少女といった出で立ちの先輩で、去年の生徒会長選挙で立候補し信任投票の結果生徒会長に就任した先輩だ。

 そして俺達の自己紹介の返しを受け、久松先輩は生徒会室にいる残りのメンバーを紹介してくる。まず……。

 

「こっちでパソコンを使っているのが、2年生書記の南城(みなしろ)さつきさん。土曜日にあなた達に伝言を伝えに行って貰ったから、お互い顔は知っているでしょ?」

「はい」


 南城さつき。背中の半ば程まで伸びる長い一纏めにした三つ編みが特徴の、優し気な雰囲気の子だ。

 彼女は久松先輩に紹介されるとパソコンから目を離し、俺達に軽く会釈をしてすぐに作業を再開した。どうやら彼女は、急ぎの作業をしているらしい。


「で、こっちでホッチキス止めをしているのが生徒会副会長の3年、城島幸太(じょうしま こうた)君よ」

「よろしく。それと君達ってさ、新部を創設するんだってね? まぁ、設立初年度は大変だろうと思うけど、頑張ってくれよ」

「「「はい、頑張ります」」」

「うん」


 城島幸太。俺達の一つ年上の先輩で、彼の第一印象はパッと見、爽やかな笑顔の似合う面倒見が良さそうな青年だ。彼が副会長に就任してからも、特に悪い噂は聞かないので外見通り良い人なのだろう。

 まぁ、風評だけで判断を下すのは早計かもしれないけど……。


「あと他にも庶務と会計がいるんだけど、今は用事で出払っちゃっているからいないわ」

「そうですか……」

「機会があったら、その時残りの2人の事も紹介するわ」


 こうして、俺達と久松先輩による自己紹介は終わった。


 

 

 

 

 

 自己紹介が終わると、俺達は空いているパイプ椅子に座り久松先輩から、創部に関する幾つかの説明を受けた。曰く、今回俺達が創部する部活は、先ず同好会と言う形で設立されると。実績が全くない現状では、生徒会規約上いきなり部として扱う事が出来ないのだそうだ。その為、部室として使用申請されていた学校施設使用は許可されるが、生徒会会計から部費は出せないと。 

 まぁ一応、事前に想定していた事態ではある。

 

「何かしらの成果……。そうね、一般公募されている何かの賞で、入賞などの功績を残してくれれば、部に昇格させる事が出来るわ。部に昇格したら、生徒会会計から部費を支給する事が出来るわよ。頑張って活動してね」

「はい」

「じゃあ、はい。これ。新部の創部許可書よ。これでアナタ達が新設する部は、正式に生徒会傘下の組織として認可登録されたわ。おめでとう」


 久松先輩は手元のファイルから鳳凰枠がついた一枚の証書を取り出し、俺達に差し出してくる。証書には創部を許可するという文言と、生徒会長と校長のサインと押印が入っていた。


「「「ありがとうございます」」」

「じゃあこれで創部に関する手続きは全て終了ね。アナタ達、この後はどうするの?」

「一応この後は、顧問を頼んでいる先生に許可書の報告をして、軽い打ち合わせをするつもりです。本格的に動き出すのは、明日からですね」


 流石に、この後直ぐから活動をするのは厳しいからな。動くにしても、橋本先生に許可書を貰った事を報告して、スケジュールを調整して貰ってからの方が良いだろう。

  

「そう。じゃぁ帰る前に一つ聞きたい事があるのだけど、良いかしら?」

「何ですか?」

「今月末にある、体育祭に関する事よ。体育祭の種目の中に、部活対抗リレーがあるのは知っているわよね?」

「はい、知っています」


 寧ろ、それに出る事を考え、創部手続きを急いだんだけどな。


「知っているのなら、話が早いわ。このリレーには生徒会に属する全ての部活が、運動系文系問わずに強制参加させられるの。だけど貴方達の場合、創部したばかりと言う事情を鑑みると、今回の体育祭に関しては参加を免除しても良いのではと思っているのよ。貴方達は、どうしたい?」


 久松先輩は創部間もない俺達の部活に対する気遣いで、こうやって選択肢を与えてくれているのだろう。

 だけどな……。


「久松先輩、お気遣いありがとうございます。折角のお気遣いですが、俺達としてはリレーに参加したいと思います」

「……良いの?」

「はい。対抗リレーは新入部員を集めるアピールになりますから、出たいと話し合っていましたから」


 俺の横に座る裕二と柊さんも、俺の言葉を肯定するように大きく頷く。


「そう……分かったわ。じゃあ、貴方達の部活も対抗リレーに参加すると言う方向で調整するわね」

「はい。よろしくお願いします」


 こうして、俺達の部活対抗リレーへの正式参加が決まった。

 折角得たアピールの機会だ、逸脱し過ぎない程度に頑張らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久松先輩や他の2人に退室の挨拶をして俺達は生徒会室を後にし、その足で橋本先生が居るであろう職員室へと移動する。

 その途中、俺は受け取った証書を翳し見ながらポツリと漏らした。 


「しっかし、この紙切れ一枚を貰うのに随分時間がかかったよな……」

「そうだな。まぁ間に中間考査も入っていたし、手続きなんて言うのはそもそも時間がかかるものさ」

「そうね。でも創部手続きとしては、これで早い方だと私は思うわよ? 私達の場合、橋本先生が積極的に部室の確保や職員会議の根回しをしていてくれたから、生徒会の承認もスムーズに行ったんだと思うわ」

「それはあるかもね……」


 確かに柊さんの言う通り、橋本先生が積極的に動いてくれたお陰で手続きが滞ること無く進んだのは事実だろうな。本来の創部の手続きとしては、まず生徒会に創部申請を出して承認を得てから、職員会議にかけて貰い校長の許可を取ると言う物だ。

 確かに各部活動は生徒会傘下の組織ではあるが、創部の最終決定権はあくまでも学校側にある。生徒会が幾ら承認を出そうと、学校側が首を縦に振らない限り新規の創部は出来ない。

 今回の場合、俺達は学校の承認を得てから生徒会の承認を得ようとしたと言う形になったので、生徒会側としては学校側の後押しで事後承認をせざるをえない形になった筈だ。それを思うと、久松先輩の対応は実に穏便な物だったな。手続きの順番を破った事を怒るでもなく、親切に体育祭の心配もしてくれたのだから。 

 

「おっと、通り過ぎる所だった」


 話しながら歩いていると、何時の間にか俺達は職員室の前に到着していた。 

 俺達は一旦話を止め、職員室の扉をノックし扉を開く。


「失礼します。橋本先生はいらっしゃいますか?」

「……ん? 橋本先生か?」

「はい」


 入口近くの席の先生に、橋本先生が在室しているか尋ねると、その先生は他の先生達に声をかけ橋本先生を探してくれる。

 が、残念な事に橋本先生は不在だった。


「一旦職員室に帰っては来ていたみたいだから、多分今は顧問をしている部活の監督に行っているんじゃないか?」

「はぁ、そうですか……」

「橋本先生がどの部活の顧問をしているか、君達は知っているか?」

「はい。聞いています」


 確か橋本先生は、バレー部の副顧問だったはずだ。なので、恐らく橋本先生は体育館にいるはずだ。


「そうか。じゃあ、もし入れ違いになっていたら君達が先生を訪ねて来ていたと伝えておこう」

「ありがとうございます。それじゃあ、失礼します」

「ああ、頑張れよ」


 頭を軽く下げ礼を言った後、俺達は職員室を出た。

 

「残念。橋本先生、職員室にはいないのか……」

「そうだな。まぁ、いつも職員室にいるとは限らないよな」

「そうね。一応、副とは言え顧問だもの。顧問の先生が不在の時は、代わりに橋本先生が監督するしかないものね」

「だね。じゃぁ、体育館に行こうか?」

「おう」

「ええ」


 俺達は気を取り直し、体育館へと向かう。体育館は今いる校舎から渡り廊下を通って、グラウンドの反対側に移動する必要が有り少々面倒なのだ。

 一応、下履きに履き替えグラウンドを突っ切るのが一番早い移動手段なのだが、あいにく下駄箱がある昇降口は職員室を挟み渡り廊下の反対に位置している。そこまで戻ってグラウンドを突っ切るのなら、素直に渡り廊下を歩いた方がまだ早い。

 そして、5分ほど歩くと俺達は体育館の前に到着した。因みに、ウチの学校の体育館は複合構造になっており、1階が武道場と多目的ホール、2階が大ホールになっている。つまり、俺達が目指すのは2階という事だ。体育館の外側に取り付けられた階段を使って上がっていると、3分の1ほど登る頃には大ホールで活動する生徒達の活気ある声が聞こえて来た。どうやら、部活の練習の真っ最中のようだ。

 入口から中を覗き込んでみると、バスケ部とバレー部が半面ずつ使用していた。その中にはネットポール傍の審判席に立ち、練習試合を取り仕切っている橋本先生の姿も見える。


「……どうする? 今中に入って、橋本先生に話しかけるか?」

「いや、今はやめておいた方が良いだろ……」

「そうね。練習試合が終わった所を見計らって、話しかけに行きましょう。あそこの点数表を見ると、そう長くはかからないわ」


 柊さんが指さす先に視線を向けると、17対22と表示された点数盤があった。確かバレーボールは、25点先取した方が勝ちだったはず。と言う事はもうすぐ試合終了だろう。

 現に今も1点入り、17対23になった。


「この分だと、今から中に入っても問題ないんじゃないかな?」

「そうだな……入るか」

「そうね……あっ、また1点入ったわ。……行きましょう」


 5分と経たず点数が17対24になったので、俺達は体育館の中に入り橋本先生のそばに近寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習試合が終わった所を見計らい、俺は橋本先生に声をかけた。


「橋本先生」

「ん? あっ九重君、広瀬君と柊さんも一緒なの? どうしたの、こんな所に顔を出して」

「先ほど生徒会室で、こんな物を貰ってきたんですよ」


 そう言って、俺は創部許可書を橋本先生に差し出す。


「あっ、漸く発行して貰えたのね」

「はい。一応今日からでも、部活として活動は可能です」

「そう。でも、ごめんなさいね。今は見ての通り、バレー部の面倒を見ている最中なのよ。顧問の先生が出張中で、今日と明日は私がバレー部の面倒を見ないといけないのよ」

「そうなんですか……」


 橋本先生は申し訳なさそうな表情を浮かべながら、明後日まで俺達の部活に参加できないと謝って来た。


「ごめんなさいね。顧問の先生の急な出張で、他に頼める先生がいないのよ。一応、別部の顧問に変わる予定だったとは言え、正式に発足するまでは私はバレー部の副顧問だから……」

「なる程、それなら仕方がありませんね」

「ごめんなさいね。でも、使用申請をしていた部室は使えるから、明日からでも部屋自体は使っても良いわ。危ない事さえしないのなら、貴方達だけで活動しても良いけど……どうする?」


 どうするかと聞かれ、俺達3人は顔を見合わせた。確かに活動内容自体は俺達だけでも問題ない内容だが、活動開始初日顧問がいないのもどうかと思う。

 

「明後日には、先生もこちらの活動に参加出来るんですよね?」

「ええ。顧問の先生の出張予定は明日までだから、明後日の活動になら参加可能よ」

「それなら、俺達の活動も明後日から開始にしようと思います。折角作った新部の活動初日ですしね、全員で始めましょう。それまでに俺達も、活動に必要な備品を揃えておきます」

「そう……気を遣ってくれて、ありがとう」


 俺達の申し出に、橋本先生は嬉しげな笑みを浮かべお礼の言葉を口にする。

 その後、俺達と橋本先生は短いミーティングを持ち、互いに用意する備品について話をした。基本、事前に俺達が想定し用意していた物で良かったので準備をする手間は省けたのだが、幾つか新しく用意する事になった物もある。


「それじゃあ、部として使うパソコンの申請は私がしておくから、皆は書類関係の用意をしておいてね」

「はい、よろしくお願いします」


 話も無事に纏まったので、監督に戻ると言う橋本先生に頭を下げながら御礼を言った後、俺達はこれ以上バレー部の活動の邪魔にならないようにと素早く体育館を後にする。

 ふぅ……これでやっと創部関連の手続きは全部終わった。明後日からの活動、頑張らないといけないな。















 

これで創部に必要な手続きは全て終了、いよいよ留年生対策が本格的に動き出します。

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― 新着の感想 ―
そういやこいつら学生なんだよな…… ダンジョンで死なないためとはいえ、古武術道場に通ったり妹たちの安全確保とスキルアップの為にSPの秘匿訓練受けたりしてて学生感なかったけど笑 ファンタジーな成長の仕方…
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