数学教師『伊集院 富一』
---私は、この私立高校で数学教師をしている
『伊集院 富一』
と言う者である
今年で36歳になる
白髪がほんの少し気になる年齢だが
身だしなみには気をつけている
同じ世代の男性と比べると
少し几帳面で、潔癖なところが
あると、自分でも思うときがある
いま、私は
今年の始業式の準備に向けて
3-A組のある生徒と打ち合わせをしている
といっても、私の始業式の準備というのは
"始業式のための準備ではない"
ということになるが…
生徒が私に話しかける
「先生、今年もしっかりお任せしますよ?
なんたって、ボクの段取りでは、先生の
能力がかなめなんですから」
その生徒は、ニヤッと笑いながら言った
その口元からは矯正器具が見える
「わかっている、キミと私の能力ほど
相性のいいものはない。
今年もうまくいくさ、問題ない。
キミは紅茶は好きかね?一杯入れよう…」
いま、私と彼がいるのは
ごく稀にしか使われない応接室
「私はどうも、昔からコーヒーは苦手でね…、紅茶の方が口にあうのだよ」
私は2人分のあったかい紅茶を入れた
生徒が注がれる紅茶を少し見ながら
私に話す
「先生、去年は結局2人だけでしたね、ボクが把握している範囲ですけど」
口元はニヤついている
彼は爽やかではない笑顔を
よく見せる
私は返事をする
「しかたないさ、運次第ということだよ」
「そういえば、君と出会ったのが、ちょうど3年前か」
「君のおかげで私は能力に目覚めた、本当に感謝しているよ。」
彼と私との出会いはいまは
割愛するが
この、始業式の打ち合わせは
彼が入学してきた始業式も含めて
今年で3回目である
彼はまたニヤついて話す
「ボクたちがはじめて"始業式"をしたときは、10人くらいでしたね」
「今年は、どうなるのだろうか楽しみだなぁ」
彼は、大きく微笑んで、紅茶をすすった…
彼との打ち合わせを終え
彼が帰ったあと
私は1人で名簿を眺めていた
---私の担当のクラスは1-B組か
私は、1-B組の担任を
任されることになるらしい
何となく名簿を眺めていた…
(出欠をとるときに、名前を読み間違え
ないように、しないといけないな)
毎年、この時期になると恒例である
時々読みにくい名前の生徒がいる…
ふと、1人の生徒の名前に目がいった
『田中 輝』
「これは、なんと読むのだろうか?
かがやく、と書いて…」
「タナカ テル?」
「あ、わかったぞ、
タナカ アキラ、だな。」
「アキラ…か。」
私はささやかな達成感を
感じながら
また、紅茶をすすった…。
つづく