ルールは平等
山田 慎太郎は思った
(クソ!クソ!クソ!
こいつ!!相当頭が切れる!
その上、動体視力がいいのか、それか、何らかの能力使いであるにちがいねぇ!!
クソ…!どうすれば、次は負けらんねぇぞ)
「へへへ、流島ぁ、おめーも
なかなかやるなぁ、ちょっと汗をかいちまったぜ」
僕、田中 輝は
流島くんの自信の根拠が
わからないまま
ただ、どれだけ卑怯な手段で
追い詰められても
全く意に介さない姿に
ある種の尊敬を抱いていた
山田くんは少し汗をかいているのが
目に見えてわかる
彼は上着を脱いで
自分の肩にかけた
「へへへ、ちょっと暑いな
上着を脱がさせてもらうぜ」
流島くんが話す
「山田よ、次でお前の負けは決まるぜ、いままで、奪ってきた物を
ちゃんと返すんだぜ」
山田くんは小さく返事をする
「へへへ、しかたねぇよなぁ
それがルールだもんなぁ〜」
「わかってるな、流島ぁ、あとだしも、手を変えることを禁止だぜ」
「さぁ、最後の勝負だ、流島ぁ」
僕と、太一くんは
固唾をのんで見守っていた
『最初は、グー』
『ジャーーンケーーーン』
その一瞬だった
山田くんが上着に手をかけ
流島くんに向かって投げたんだ
バサッ!
黒い学生服が
流島くんの頭にかかる
流島くんは上着に視界を遮られ
虚をつかれた
「?!」
その時山田くんが
言い放つ、
「追加ルールは
とりけしだぁ!!」
僕は思った
(なんてことだ!これじゃ
流島くんは山田くんの手がどう変わるか見えない!
しかも、流島くんが相手の手をみて見極めれない!!)
流島くんは、
『パー』を出している!
山田くんはそれを見て
チョキを出そうと
手を振りかざす
その時だった
上着をかぶされて
何も見えないはずなのに
流島くんの手が
『グー』
に変わった
山田くんが叫ぶ
「なにぃ!?」
流島くんが言い放つ
「このままでも
勝てるぜ、山田よ」
山田くんが
今度はグーを出そうと
振りかざす
流島くんの手が
『パー』
に、変わる
山田くんが叫ぶ
「どうなってやがる?!
クソ!クソ!」
このあと、山田くんが
どんな手を出しても
視界が遮られ
相手の手がわからないはずの
流島くんには勝てなかった
「俺が、勝てない、
だと?」
山田くんがへたり込む
すると、山田くんの手がズボンの
ポケットに伸びる
「おい!やめろ!
俺はまだ負けてねぇぞ!!」
「体が、いうことを
きかないだと?!」
流島くんが言う
「山田よ、どうやら
お前もルールが適用されるみたいだな」
「山田よ、お前が
何かの能力使いだってのは
わかってたぜ」
「どうやら、この勝負
お前の中でお前自身が負けを認めたみたいだな」
山田くんが返事をする
「ク、クソ!」
山田くんはさっき
太一くんから奪ったお金を
握りしめている
手が少し震えている
山田くんは抵抗しながらも
ついに、太一くんにお金を返した
「クソ!まだ言うことを
ききやがらねぇ!」
「も、もう、勘弁してくれぇ!
俺はただ、能力を使って
ちょっと一儲けしたかった
だけなんだよぉ!!」
「クソ!クソーー!!!」
そう言いながら
山田くんは
自転車で帰っていった
おそらく、そのまま
いままで誰かから奪ってきた
物を返してまわることに
なるのだろう
どれだけ時間がかかるのか
わからないけど
まさに、自業自得だ
無事返しきることを祈ろう
山田くんの能力は
ルールを作ってその通りに
執行することだった
横暴にも見えたけど
結局、ルールってのは
みんなに"平等"だったんだ
そう、はじめから
(皮肉なもんだな)
僕は、山田くんのことが
少し心配になったけど
彼自身のまいた種だから
しっかり償うことを願った
流島くんが話始める
「メガネよ、よかったな
お礼はいらねぇぜ
元々、山田には地元の後輩が
金を奪われててよ
俺が取り返してやりたかった
んだぜ」
「あ、あと田中よ、
お前も能力使いなんだな、
俺には見えてたぜ」
僕は驚いた
「え!」
流島くんが話す
「山田とのやりとりも
全部見てたんだぜ」
僕は流島くんに
思い切って聞いてみた
「流島くん、君は一体
何者なんだい??
君も何かの能力使いなんだろ?
心でも読めるのかい?」
僕は、山田くんにジャンケンで
あれだけ手を読んで
視界が見えない中も
勝ち切った理由が
流島くんが
『相手の心を読める』能力使い
だからじゃないか
と考えていた
流島くんが答える
「んー、まあ、ちょっと
違うなぁ、田中よ」
「俺は、生まれつきなんだが
この目を凝らすとだな
物が透けて見えるんだぜ」
僕は驚いた
「なんだって!?」
流島くんが続ける
「まあ、透視能力ってのかな?そういうやつだぜ」
「山田の手を読めたのは
あいつ自身を透視したんだ
透視したっつっても、
"筋肉の動きを見た"んだぜ」
「そうすれば、相手が
次にどんな手を出す
先にわかるって感じなんだぜ」
「まあ、優れた動体視力と
慣れ、コツもいるけどな」
僕はびっくりしていた
「なんてこった……
すごいな、流島くんは」
ここで、太一くんが
口を開いた
「な、流島くん
あ、ありがとう、取り返してくれて
あ、あのさっきから
よくわからないこと話してるけど
お、お、教えてくれないか」
僕と流島くんは
お互いの秘密を話した
太一くんは驚きながら
興奮していた
「な、な、なんだって!!
すごいじゃないか!君たちは!!
超能力を、つ、使える人が
まさかこの世に、いるなんて!!
し、し、しかも身近に!!」
僕は流島くんに聞いてみた
「そういえば、流島くんは
生まれつき能力が使えたって
言ってたけど、きっかけとかは
覚えてないの?」
流島くんが話す
「んー、きっかけというか
生まれつきだからな
お箸で飯を食うみたいな
感覚で使ってきてたぜ
ずっとな」
「俺が知ってる限りでは
この学校だけでもまだ
数十人は能力使いがいてるな
俺には"見える"からな」
そうだ、流島くんは
透視できるから
僕が何かの能力を使ってるのが
見えたんだ
おそらく、太一くんの
ポケットの中で
"鍵を消した"
のも透視してたんだろう
流島くんが話す
「田中よ、お前が
メガネのポケットの鍵を消して
山田のポケットに飛ばしたのを
見たときは、驚いたぜ」
「お前も生まれつきか?」
僕は答えた
「いや、違うんだ
この学校に来てからなんだ」
「始業式の時は
頭がぼーっとしてただけで
何もなかったんだよ
登校2日目からかな、
この能力に気づいたのは」
流島くんが話す
「なるほどな、お前も
始業式からか…」
「あ、いや、なんでもねぇぜ
とにかく、また何か困った事が
あったら言ってくれて
かまわないぜ」
「またな」
そう言うと、流島くんは
足早に帰っていった
僕は、流島くんが言った
『お前も、始業式からか…』
と、いう言葉が
気になっていた
(これから、高校生活
どうなっていくのだろう…)
小さくため息をつきながら
僕は平和な日常をただ願う
普通の高校生とは
少し違った欲望をもった
学生になっている自分に
気が付いた
「帰ろっか」
僕は、秘密を打ち明けて
太一くんと心の距離が
少し縮まった気がした
帰り道、いろいろ話して
今日のことは
2人だけの秘密にしよう
と、約束して帰宅した
山田くんは無事に
帰宅できたのか
そんな心配もしながら
その日僕は疲れきって
お風呂も入らずに眠ってしまった
つづく




