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百夜語  作者: 田古墨
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江夏の話:友人の恋

 今日は友人の恋愛の話をする。

 俺にさ、高校の時からの友人で、秋川って奴がいるんだよ。今は別の大学だけど、よく会って遊んだり飯食ったりしてる。

 結構良い奴なんだけどさ、彼女の話とかには敏感というか妬み?とかそういうの向けてくるんだよ。いや、別にそれが面倒とか嫌とかじゃないんだけど。それに、軽く冗談みたいな感じに絡んでくるくらいだし。

 気になるのは、アイツが惚れやすいってとこかなー。で、すぐ失恋してくるから安心だけど。

 は?いやいや、アイツの恋を応援していないわけではないんだ。ただ、まともな恋愛じゃないからさー。

 うーん、どう説明するかな……。具体例だしたほうが分かりやすいな。


 高校のときなんだけど、アイツ一目惚れしたーって騒いでたんだよ。

 アイツって、自転車通学だったんだけど。帰り道にある家の前でポツンと立ってる年上の女性が、好みドンピシャだったとかで。

 最初は、今日も姿見れたーとか、それくらいだったんだよ。

 で、大雨の日だったかな。アイツ、ずぶ濡れで登校してきたんだよ。大雨だったから、俺も多少は濡れてたと思うよ。でも、アイツは頭から足の先までビッチョビチョでさ。

 傘差さないできたのか?って聞いたら、傘は差してたけど自転車だと意味なかった!とか笑ってるわけ。

 いや、頭おかしい奴ではないんだよ。普段なら小雨でもバスに乗るような奴だしね。

 なんか、例の女性に会えるからーって言ってたんだよ。で、今日は初めて会話できたって喜んでた。

「いつも立ってますよね。今日は雨ですけど、風邪引いちゃいませんか?」

って、声かけたらしい。相手は何も言わなかったけど、顔上げてこっちを見たんだと。そのままハンカチ差し出してきたから、貸してくれるのかと思って、受け取ったってさ。

 普通に考えて気持ち悪いじゃん。雨降ってても毎日同じところに立ってて、無言でハンカチ渡してくるとか。でもアイツ浮かれきってて、明日ハンカチ返しに行くって聞かなくて。やめとけって俺は言ったんだけど。

 で、次の日、くらぁい顔して登校してきて。

「俺、嫌われたかも……」

 なんて言うから、何があったか聞いたんだ。

 なんでも、例の女性にハンカチ返したら、手首をぎゅぅうと握られて、顔をじぃっと覗きこまれたらしい。で、ぶつぶつ呟いてるけど小さすぎて聞き取れなかったから、もう少し大きな声でお願いしますって頼んだって。そうしたら、

「お前じゃなぁああああい!!!」

そう叫んで、いなくなっちゃたんだと。

 手首見せてもらったんだけど、青黒い痣になってたよ。どんだけ強く握られたんだろうね。

 秋川は、もっと優しく声かけたらあんなに怒らなかったかもって落ち込んでたけど、そういうことじゃねえよって思った。

 うーん、こういうことって、軽々しく話して良いことじゃないかもだけど、続き聞く?

 うん、不謹慎な話。

 俺、その家の近くに住んでたから知ってるんだけど。その家の娘さんて、無理心中したんだ。恋人に別れを切り出されて、恋人も道連れに死のうとしたらしい。相手の男は助かったらしいけど、その娘さんはそのまま……。

 たしか、秋川が一目惚れしたしたって言い出す一週間くらい前だったよ。

「江夏ー、またフラれたー。俺の何がダメだって言うんだ!」

「今度はどんなの?」

「山でキャンプした帰りに、ヒッチハイクされてさ、車に乗せて知り合ったんだけどさー。」

「それ、一緒に乗ってた他の奴にも話したか?」

「何言ってるんだ?みたいな反応された。俺みたいなのが、あんな美人とお近づきになれるわけないっていうのか……」


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