冬沢の話:電話
これは、俺が本当に体験した話です。なーんちゃって!
待って待って、話聞いてってよー。秋川ちゃんつれないぃ。冬沢泣いちゃうんだからね!
「うっぜ、冬沢まじうっぜ。」
でもちゃんと話聞いてくれる秋川ちゃんが好きー。
「はいはい、それで?」
んとねー、俺んち固定電話ってないんだよね。家族全員ケータイ持ってるからいいじゃんって感じで。あ、親父はガラケーなんだけどね。まじウケる。
だからさ、電話の音が鳴っても、自分の着メロじゃなきゃ動かないんだよねー。家族全員そんな感じ。
あの時は夕飯食べてるときだったかな。誰かの携帯が鳴ってたんだよー。しばらく鳴ってたから、たぶん着信なんだけど、誰も動かないんだよね。しかも、何回かかけ直してきたみたいで、5分くらいずっと鳴ってるの。
「なんだそれ、うるさくないか?」
そーそー、親父も怒ってさー、誰の携帯だーって。でも、全員自分のじゃないって。もちろん俺のでもないよー。
「その場に居なかったやつのじゃなくてか?」
それもないかな。全員その場にいたし。
そのときは、着信音うるせーって話してる間に鳴りやんだから、そのまま終わったんだよ。
「そのあと何かあったのか?」
うん。昼間に俺が一人で家にいたときに、その着信音が鳴ったんだよね。でぇ、正体見つけてやろーって思って、探したわけ。
そしたら、俺の机の引き出しから聞こえるわけ!原因俺かよ!みたいな。しかも、鳴ってたのって俺の前のケータイだったしー。
「お前のかよ。つか、機種変したばっかだったっけ?」
んーと、機種変したのは高校卒業の時だったかなー。あれから引き出しにしまって、そのまま忘れてた。
「……それ、どうしたんだ?」
着信みたら元カノの名前だったらさー。
「殴る。」
やめてやめて!別れたし!自分がこの間フラれたからって僻むのよくないいやぁあああああ!
うぅ、秋川ちゃんやつあたり良くない。
「うるせえ。で、その後どうしたんだよ。」
んーとねー、元カノからっぽかったから電話とったんだよね。今さら何の用だろーって思って。そしたら、電話越しに元カノの声聞こえて、『なんで別れたの?』って。その後は、ユルサナイってエンドレスリピート!
心のひろーい冬沢君でも、さすがにプッチーンときちゃいましたね!
高校卒業前に、別れようとか言い出したのソッチじゃん?みたいな。
で、言ってやったんよ、うるせぇ!って。そしたら、向こう黙っちゃって、すぐ電話切ってきたんだよ。もう本当に、何がしたかったのか意味不明すぎてー。
それからかかってこなくなったけどぉ、なんかムカつくー。
「そのケータイって、まだ使えるやつだったのか?」
えー?便器に落としちゃって、溺死したケータイだからなー。たぶん、もう使えないんじゃない?
「まじ、元カノむかつくー。」
「お前、それより気にすることあるだろ。使えないケータイからの着信とか。」
「えー、誰もいない部屋から話し声がするよりは普通じゃない?」
「」