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百夜語  作者: 田古墨
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江夏の話:肝だめし

 友人と肝試しに行った話する。

 怖いもの見たさというか、若気のいたりといったら良いのか、友人と心霊スポットって噂の公園に行ったんだ。噂になってるっていっても、昼間はそれなりに人がいるとこだから、俺もあいつも本気にしてなくて、かるーい気持ちだったんだよ。

 その公園って、学校のグラウンドみたいなとこがあって、その奥に子供が遊ぶ遊具が設置されてる結構広めなとこなんだけど知ってるか?

……知らないかぁ。

 でさ、梅雨明けしたんだかしてないんだかっていうくらいの時期で、じめーっとした空気だったんだよ。だから、雰囲気でてるなーとか、帰りアイス買っていこうぜーとか盛り上がりながら歩いてた。

 グラウンドの周りを回って遊具のところに向かってる途中で、公衆電話があったんだよ。その電話ボックスの中にさ、もう夜中だってのに女の人が入ってんの。気味悪いなーって思ったけど、そのまんま通りすぎたよ。え?引き返さなかったのかって?そんときは女の人がいるってだけだし、そんなことは考えなかったな。

 しばらく歩いてたら、また電話ボックスがあったんだよ。今は公衆電話を見つける方がレアなのにさ、この中にも女の人がいるわけ。一回目もその時も、後ろ姿しか見えなかったから同一人物かは分からなかったけどさ。気味悪くなって、アイツにも聞いてみたんだよ。

「あの電話ボックスさ、さっきも見なかった?」

 そうしたら、アイツさ、

「ん?ああ、かもな。あのさ、俺ら結構歩いてるよな。そろそろ遊具の場所にたどり着いても良くないか?」

とか言い出すわけ。でも、俺らがいたのはまだグラウンドのところだった。広い公園っていっても、とっくに一週してそうなくらいの時間は経ってたと思う。

 これは変だってなって、でもうっかり道間違えてた可能性もあるからって、遊具のとこまでは行こうってなった。

 今度は周りを気にしながら進んでたらさ、またあるんだよ。

 電話ボックスが。

 今度ははっきり見えたよ。

 ガラスに顔押し付けて、ニタニタ笑ってる女の人。

 そいつの手が、ボックスのドアを開けようと動いてるのも。

「おい、あの電話ボックス……」

 友人が何か言おうとしてたけど、帰るぞって急かして走ったよ。走ったのもあるかも知れないけどさ、行きよりめちゃくちゃ早く出口に着いた。うーん、そうだな、行きが30分かかってたとしたら、帰りは5分くらいに感じたかな。

 公園出たら、もう大丈夫だーって安心してさ、だらだら歩きながら帰ったよ。さすがに、アイス食う気はしなかったな。

 で、公園のアレはなんだったんだろーねって話してるうちに気づいたんだけど、この友人には見えてなかったぽい。女の人。

 アイツには無人の電話ボックスに見えてたらしいんだよ。


 しばらくして、アイツとは突き当たりのT字路で反対方向に帰ったんだけど、漫画返すの忘れててさ、すぐ振り返って声かけたわけ。

「おーい、三春ー。」

 あ、その友人って三春ってやつなんだけど。は?女子?いや、三春って名字だから。男だよ。

「漫画は明日返すよ。」

「ああ、分かった。」

 アイツはこっち見ないで返事だけしてきたんだけど、俺はそのまんま歩いていくアイツの背中見てた。

 振り返った時に気づいたんだけど、俺らが来た方向……つまり公園がある方向から、トットットットって足音がしたんだよね。

 誰か来てるなーってぼんやり思ってたら、曲がり角からひょいって女の人が出てきてさー。

 バッチリ目があっちゃたんだよ。

 目が異様にギョロギョロして、酷い隈のある青白い顔で、無表情でこっち見てた。あっちも俺と目があったのが分かったんだろーね、にったぁ~って笑ってきた。うん、そう。電話ボックスにいたやつと同じやつ。

 そのあとソイツは、ふいっと俺から目を逸らして、何事もなかったみたいに向こうに走っていったよ。

 三春が帰った方向に。

「そのあとどうしたんだよ!」

「女の人はそれから見ていないな。」

「じゃなくて、三春ってやつ。大丈夫だったのかよ。」

「三春なら、昨日一緒に飯食ったけど。別に大丈夫だろ、たぶん。」

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