優しいハナ先生
とある、学校の広場の砂場
「シント、お前って泥団子も作れないんだな!」
「こいつ、生まれた時から能力なしだもん。仕方ないよ。」
「そうだそうだ。次の泥団合戦もでるのやめたらどうだ??」
「そんなことないよ?僕だって泥団子ぐらい自力でできるよ!ほら!土に水を少し垂らして手で握る。出来たでしょ?」
ベチャッ…
シントの頬に泥団子が当たった。
「お前がひとつの団子を作ってる間に俺たちはこんなにたくさんの団子を作っちまったぜぇ。」
「土の国で生まれたのに土の能力がないなんてなぁ。まっ、せいぜい頑張れ。」
そう言いながら、3人の少年は自分達で作った泥団子をシントの座っている周りに投げつけて笑いながら校舎に入っていってしまった。
シントという少年は一人砂場で顔についた泥を軽く拭い自分のドロドロになった手をみて俯き涙を流して呟いた。
「なんで、僕は土の力がないんだろ…みんなは地面に手を触れなくても砂を自由に動かして絵を書いたり、砂場で簡単に大きなお城を作ったりでできるのに…
それなのに僕は土を触ってひとつのお団子をやっと作れるぐらいしか…」
「土に触れる…とても大事なことですよ?」
びっくりして慌てて涙をふくシント。
「ハナせんせぃ!?…でっ、でも、僕の手や顔は泥だらけだよぉ…?土に触ったら汚れちゃうのに...」
また、涙がこぼれそうになるネイトをみて
ハナはニコッと笑いネイトの頭をなでた。
「さっ!まずは顔と手を洗いましょうね?
洗ったあと先生のお手伝いしてくれる?」
「うっ、うん…。」
「シントくん、ありがとう!さっ行こう!」
シントはホントのことを言えば、そんな気分ではなかったが、いつも、優しいハナのことは大好きで誰よりも慕っていたため、先ほど泣いていたことの恥ずかしさで顔を赤くしながらもハナの言うことは聞いてしまった。
そして、校舎の前にある水道でシントは顔と手を洗いハナのあとを俯きながらトボトボついて行った。
シントは歩いている時、ふと、胸にかけてある透明な結晶がついたネックレスに目がいく。
(結晶…僕のは透明な色…みんなは土の力がある証拠に、結晶は黄緑だったり緑に薄く染まっている…
先生のあのステッキの先についているのも結晶…濃い緑をしていて綺麗な葉っぱの色をしてる…先生もすごい力をもってるんだ...羨ましいよ...)
「シントくん!!」
ビクッ!!
「さぁ着いたよ!」
「えっ…」
シントが前を向き直したときみた光景...
そこには、いつもの学校の広場ではなく
緑で生い茂り、かすかに木漏れ日が入る森が広がっていた。そして、ハナが立つ場所は後ろには大きな岩がひとつあり、その周りには少し低めの木が生えているおかげでそこの空間だけ太陽の日差しがしっかりと射し込み、岩が神聖なものに見えるとても幻想的なところであった。
「どうかしら?」
「ハナ先生、ここすごく素敵なところ!とても、綺麗…」
先ほどのことも忘れ、シントはその光景に目を輝かせていた。
「ここは学校の裏にある森の中、みんな学校の広場が大好きみたいで来ないけど、こんなところもあるのよ。いつも、泥団子合戦も広場でやってたけど今年は違うところでしようと思ってね!ここにしようって!」
森みて笑顔になっていたシントだったが、泥団子合戦という言葉を聞き顔が暗くなる。
「僕は泥団子合戦でないよ…みんなみたいに簡単に泥団子作れないしすぐに当てられちゃうもん」
「シントくん…」
俯くシントを突然ハナは抱き、大きな岩の上に座らし自分も横に座った。そして、優しい声でハナは聞いた
「シントくん、簡単な質問よ。シントくんはいつも泥団子を作るときどうやって作るの?」
「泥団子の作り方?土にお水を少したらして手で握るだけだよ?でも、こんな作り方みんなバカにするんだ」
「みんなは、その作り方をバカにしたようですが、私はその作り方をバカにはしませんよ?」
そういうと、ハナは岩を降りて地面に触れた。
「私やみんなは、今、地面に触れなくても土の力を使って砂、石、粘土を利用して自分がしたいように使う事ができます。そして、成長するにつれて結晶の色が濃くなり力が増え、大地を変化させ、木を生やし、森をも作ることができるようになります。
このことも授業で一緒に教えたことがありますが、昔、闇がこの世界を包んでいた頃、一筋の光がさし、すべての自然を操ることのできる光の神が現れました。
それと同時に、火、水、土、風のひとつを操る神、四神様が生まれ、四神のうちの一人の玄武様がこの世界の大地をお創になられました。」
ハナは、立ち上がり近くの小川で水をくみ、その水に触れてもう一度、シントに質問をした。
「シントくん、私はこの水を操ることができますか?
」
「うーん、先生は土の力があるけど、水の力がないから操れないよぉ。水の力が操れるのは水の国の人だけだ」
「そうです。私は、水を操ることはできません。水を使う時は私も水に触れなければならないのです。貴方が土の力がなく地面に触れなければならないと同じように...」
シントは困ったようにハナを見つめ、また、俯いてしまった。
「ハナ先生?僕...先生の言ってることわかんないよぉ...僕に土の力がないことは変わらないでしょ?」
俯くシントの近くに寄り、ハナはシントの手を握りながら、また、話を始めた。
「土の国に生きる人だけでなく、この世界にいるすべての人は自然に生かされている。自然に頼らなければ生きてゆけないのです。そして、この世界に生まれた人は生まれた土地の力を得る。生まれたときから力があるが故にその力にすがり生きていくしかない。
私が操れない水に触れたとき、水の冷たさ、柔らかさを体で感じることができました。
貴方は、土の能力がないこと、結晶が透明であることが故に、いつも泥団子を作るとき、土を使うだけでなく水を自ら触り、土と水を2つの力を体で感じることができているのです。他の子達は二つの自然を同時に感じるということはしていないでしょうね。」
ハナは、握ていたシントの手を強く握り締めたあと、シントを優しく抱き寄せた。
「貴方は、この国で一番、すべての自然を感じ、すべての自然から学び、すべての自然を愛することができるすごい人なんですよ。」
シントは、今まで言われたことがない言葉に最初は困惑していたが、涙が溢れこぼれ落ちそうになっている自分の目でハナの目をじっと見つめた。
「ハナ先生...僕は今まで力がないことをバカにされて悔しかった...でも、今、先生のお話を聞いて...
僕、もっと土に触れたい...泥んこだらけになっても恥ずかしくない!僕、泥団子合戦でるよ!みんなに泥団子当てて泥だらけにしてやるんだ!」
ハナにしゃべりながら、シントの目からは溢れていた涙が流れ落ちていたが、顔は笑顔に戻り、希望に満ちた目をしていた。
ハナもそんなシントに、ニッコリと優しい笑顔で返し
、シントの髪の毛をぐしゃぐしゃにして隠れていたおでこが出たと思うと、そこにそっとキスをした。
まっ、シントが顔を真っ赤にしたのをハナは知っていたが、
岩をピョンと降り、シントに背を向けたまま背伸びをした。
「さて、シントくんも元気が出たみたいだし
会場作り、お手伝いしてくれる?」
「うん!!!」
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そして、この出来事によって
一人の幼い少年シントの心が変化したと同時に
シントの歯車と世界の歯車がかみ合い
動き始めたきっかけとなったのであった......
ここまで
呼んで頂きありがとうございますm(_ _)m
文章書くのは下手くそですが
頭に浮かんだ物語を少しずつ
文章にしていこうと思いますので
よろしくお願いいたします(`・ω・)!