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無作為短編集(またの名を放置部屋)

落ちるる滴は何ゆえに

作者: 神条志人


ぱたりぱたりと哀しくもないのにこの頬を滴は伝うのだ。


其れを見たあの人は微笑む。其れを見据えて艶やかな笑みを綻ばせ僕に告げるのだ。



「ありがとう君だけだねこんな私のために泣いてくれたのは」



嬉しそうに僕に手を伸ばす。だけれどその手は僕を掴むことはできない。


だってこの人はもう死んでいるから。生きているものに触れることはできないから。


独り現し世を彷徨うこの人を僕は哀れに思っていた。


だからだろうか?この人のために泣けたことがこんなにも嬉しいのは。



「名前を教えてくださいどうか教えて」



その言の葉にあの人は口に指をあてた。其れは秘密の合図。


今を生きる僕を死者に留めないための優しい気遣い。


でもこんどはわかる。ぽたりと涙が零れたわけが僕にもわかるのだ。


あの人が生きていたなら傍にいたかった。その想いが哀しくてこれは零れるのだ。


そして朝日は昇る。あの人は煌めくようにして光に溶けた。


僕は泣き笑いででも笑った。もう一度出会えることを信じて。


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