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夫婦の日常

夫婦の日常 #5 〜 温度管理は、必須条件。〜

作者:
掲載日:2026/01/28

今日は、恵の誕生日プレゼントを選ぶことにする。


数日前のこと。


いつも通り、恵が思いついたように——


「あのね、考えたんだけど、今年の誕生日は、ペアの腕時計買わない?

私たち、誕生日も近いんだし。」


「腕時計か。」


「私も探すけど、陽ちゃんも探してみて。」


「わかった。」


——というのが始まりで、


恵は鼻歌を歌いながら、ネットで時計を探している。

数日は、続いている気がする。


なのに、まだ一度も” これがいい “とは言って来ない。


……恵は時々、腕時計を欲しがる。


そして、なぜか僕にも腕時計をさせたがる。


まぁでも、欲しいと言っているので、とりあえず探してみるか。

見つからないみたいだし。


検索ワードは、” 腕時計 ペア ”で。


ネット検索。


” 夫婦で一生ものの時計 “か。


とりあえずクリックしてみる。


んん、300万かぁ。結構するな……。


少しずつ、ページをスクロールしていく。


もう少し金額落とすと、119万。


高いなぁ。


でも、恵は買い物するときによく言っている。——


「高いものはね、高いだけの理由があるんだよ。」


「ブランドだからっていう理由じゃない?」


「そういうのもあるかもしれないけど。

でもね、ブランドでも、そうじゃなくても、

大切に使いたいって思えるなら、

少し高くても、私は良いと思うな。」


——んん……。


軽く反応を見てみよう。


「恵?」


「なぁにー?」


「119万て、高いよね。」


「車でも買い替えられそうな値段だね。何か買うの?」


「……いや、買わない。やっぱいいや。」


恵は、ブランド物はほぼ持たないし、やっぱりこういうのじゃないよな。


もう一度だけ、ページを確認して、タブを閉じる。


他にもページをいくつか回遊してみる。


あっ、” 一つ一つ、職人の手作り…… ”


恵の好きそうな感じかな。


ページを開いてみると、デザインも恵が好きそうだ。——-


「やっぱ、時計の盤面が大きいやつがいいな。見やすいし、なんかオシャレ。」


これは、大きそうだ。あと、恵が言ってたのは……。


「数字が入ってるやつがいいよね。見やすいし、一目で時間がわかる。

点とか、線だけだと、冷たい感じするし。」


ん、冷たい……?


いや、今はそこじゃない。


まぁでも、数字が入ってる方が、確かに見やすいかもしれない。


そう考えると、デジタルが一番見やすそうな気はするけど……。


そもそも、恵の中にはデジタル時計という選択肢は、ないよな。


……好みの問題なんだろうな。


このデザインは、少し独特だし、数字が全部入ってる。


盤面は、大きそうではあるけど……引っ掛かりはするんだよな。


そういえば、恵が見せてきたページの画像は、腕につけてる画像だった。

あれは、大きかったのか?


……まぁ、聞くのが早いか。


「恵?」


「どしたのー?」


「腕時計のことだけど、盤面の大きさが大きいって、直径どのくらい?」


「んんー。えっとぉ……直径……。

あぁ、画像見ると、これ盤面大きいなって、すぐわかるよ。」


「……そっか。」


もうこれは、見せる以外は計りようがないな。


あとは、値段か。


恵は、安くていいとは言ってたけど、腕時計の安いってどのくらいだ。


あ、電池はどうだろう。ソーラー?


「恵?」


「はいはーい?」


「腕時計の電池ってさぁ、ソーラー電池のほうがいいよね?」


「ううん、期間がだいたい決まってる、ソーラーじゃないやつの方がいい。」


「え?ソーラー電池なら、交換しなくていいのに?」


「ソーラー電池も交換はするんだよ。普通のより長持ちだけど。


あ、でも交換する前に時計の方が、壊れちゃうかもしれないね。」


「そうなの?」


「ソーラーじゃなくても、多分2〜3年くらいはもつよ。


電池がなくなる頃に、また一緒に別の時計を探して買ってもいいし、

気に入ってたら、電池交換しに行けばいいと思う。


その方が、楽しみが増えるでしょ。」


「……そう。」


この時計は……あ、普通の交換式だ。

値段は5万円弱だから、だいぶ抑えてる方だよな。


これを、見せてみようか。


「恵?」


「ん?」


「ちょっと来て。これ見て?」


恵がニコニコしながら、僕の方に近づいてくる。


「あのさ、この前言ってた腕時計のことだけど、

これどう?」


「あ、やっぱり探してくれてたんだ。見つけちゃったんだね……。」


恵が画面を覗き込む。


見つけちゃった?探してって言ってたよな……?


画像を何枚か確認して、


「いいね!これいいな。なんか、あたたかみある感じ。」


あ、また温度の話が出たな。これは鉄板だ。


恵の目が、キラキラしてる感じするし、声もだいぶ高い、気がする。

これなら決まりだな。


「値段高そうだね。いくら?」


「5万円弱だよ。」


「うっ……。」


「え、高い?」


「んん……高い。から、最低1回は電池交換してもらうまでは、

大切にしないとね。」


「決まり?」


「欲しいーっ。絶対。」


「名前とか、メッセージとか入れてもらえるみたいだけど。」


「いらない。」


「あ、そう。じゃあ、これ注文しようか。」


「うん、これがいい。ふふ、楽しみだなぁ。」


恵が喜んでるので、僕も少しテンションが上がる。


早めの日付指定でいこう。


そして、気になったので、一応聞いてみた。


「恵はさぁ、なんでペアで腕時計が欲しいの?」


「んん……腕時計で、時間を見てる人を、見てるのが好きだから。」


恵は笑ってるし、正解を見つけた。

そういう顔だ。


「そっか。」


僕には、よく分からない。

でも、きっとそれは、何か大切な温度なんだろう。


「恵、次に買うときは、店に見に行って一緒に選ぼうか。」


「うん。

それ、すごくいいな。」




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


夫にとって、妻にプレゼントを選ぶ時間が、楽しい時間であったら。


そんな思いから、この回を書きました。


誰かのことを思って、

プレゼントを考えたり、選んだりする時間。


それは、人生の中で、

幸せを感じられる時間のひとつ。


私は、そんなふうに思っています。

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