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パーティー募集

「魔法銃だったのね。でも、話を聞く限りではしょうがないと言う他無いわね」


「はい」


 アメルが落ち着いてからギルドに顔を出した俺達。受付のジェシカさんへ話をすると、しっかりと聞いてくれた後、こう告げられた。


「元々の魔力量自体は、才能が大きく占めちゃってるから。アメルちゃんが悪いわけじゃないのよ?」


 アメルは俯いていた。試し打ちを経て、やはり自分では扱えないと確認できてしまった所が大きい。でも、アメルから売却の言葉は出て来なかった。


「必要になるかもしれないから、魔法銃は一旦こちらで預かっていいのね?」


「はい、それでお願いします」


 アメルが銃をジェシカさんに渡す。ジェシカさんは大事に受け取ってくれていた。丁寧に処理を終えた後、ジェシカさんはいつもより明るい声色で話してくれた。


「さて。ヤマトに聞いてると思うけど、指名依頼が入ってるわ。今回は個々ではなくて、ウィズテーラス宛よ。その一件だけね」


「パーティー宛の依頼は久し振りですね」


 指名依頼は、本来一度受けると他の依頼を受けることが出来なくなる。ここ一週間は、個々への依頼が入っていたので何件かまとめて受けることが出来ていた。貴方達は失敗していないから、と言ってジェシカさんが融通を利かせてくれたのも大きいところだ。


「内容を先に話すわ。これは、商人からね。ジュエレールまでの護衛を頼みたいそうよ」



 ーー西の都、ジュエレール。


 俺も見たことがないけど、海、という湖をとんでもなく大きくした場所があるらしい。魚や、海で採れる水草、海藻と言うらしいが、領地の特性上、水産系の食べ物が多く採れる。海自体、西側にしかないようだ。


「依頼自体の期限は、どんな感じですか?」


「一応、早いほうが良いみたい。書面には三日以内に返事が欲しいと書いてあるわ。だけど、ウィズテーラス以外には頼まないそうよ」


「そうなんですか?」


「これも書面に書いてあるんだけど、カイル君達との接点を作りたいみたい。セバンタートで、カイル君達は有名だから」


「なるほどです」


 どうする? とジェシカさんは聞いてくる。別に断る理由は無さそうだ。こちらとしても、他の領地にいる商人との接点があれば、何かと都合が良いはず。違う領地へ羽を伸ばしたいなって思ってた所だったし。


「えっと。受けます、けど」


「? けど?」


「その前に、やっておきたいことがあるんです」


「そうなの? なにかしら」


 ジェシカさんは不思議そうにこちらを見ている。俺は、一呼吸置いてからジェシカさんに告げた。


「ーー正式なパーティーメンバーの募集を、一度したいなと思っています」


 その後ジェシカさんとの話し合いで、指名依頼は明後日の午前に。先方へ伝えておくわね、と言ってくれた。


 パーティーメンバーの募集は、詳細を決めてくれれば今日中に掲示板へ貼り出す。今日貼れれば、明日の午後位に指定すれば結構な応募が来ると思うわよ? と教えてくれた。


 一度皆の意見が聞きたかったから、ギルドを後にして飯屋へ。軽食をつまみながら話をする。


「それで、もしパーティーが増えるとしたら、二人の希望、条件みたいなのってーー」


「女は駄目」


「女性は無しでお願いします」


 俺の言葉に被せ、息ぴったりに同じ意見が出た。


「で、でもさ。回復職って女性の方が割合が多くってね」


「回復は、私がします」


 そう言うのはアメル。確かに、回復職は俊敏性に劣る。その点、アメルは足も速いし、外傷ならほぼ一瞬で完治までもっていけるという、とんでもないスキルがある。


「ほ、ほら。支援職みたいな皆の力を向上してくれるのも、女性の割合がね」


「支援なら私がするわ」


 そう言うのはリリ。


「あれ、リリって仲間を支援する様なスキル、何か持ってたっけ?」


「私の存在が、男のヤル気を上げるでしょ?」


 リリがウィンクをする。何も言わずにいたら、なんとか言いなさいよ! と怒り始めたけど、そのまま放っておいた。


 とはいえ、仲間の意見を無視するのはリーダーとしていかがなものか。


「ライムは何かあるか? 一緒に冒険してもいいって人の条件みたいなの」


「うーん、たのしければいいよ!」


 ライムはなんでも大丈夫そうだな。そもそも、ギスギスする雰囲気は嫌だし、ライムの条件はまずクリアしなきゃいけない。


 後、女性は駄目と。


「そもそも、何で急にパーティー募集なんかするのよ。戦力的には今でも充分なんじゃないの?」


 リリが不機嫌そうに言う。俺もそう思ってはいる。けど、やらなきゃいけない理由があった。


「ぶっちゃけて言うと、パーティー募集はおまけだ。目的はあの二人」


「……あぁ。パーティーに入りたいって言ってた奴らの事?」


「そう」


 ほっとけばいいのに、とリリは言ったが……あいつらはアミカさんを、馬鹿にした。それを許す訳にはいかない。


「本当に戦力になってくれる人がいるなら歓迎だけど……まぁ、それはやってみてからだね」


 パーティーの方針は決まったし、軽食を食べ終えギルドへ依頼を出しに行くことにした。



「D級以上の男性、ね。分かったわ、この条件で貼るわよ?」


「お願いします」


 ギルドへ戻り、ジェシカさんへ依頼の用紙を渡す。


「じゃあ、明日の午後にね。開始前三十分にはギルドに来ていて」


「分かりました」


 多分びっくりするわよ? とジェシカさんがニヤッとしていたが、その時は何のことか全く分からなかった。理由は翌日に知ることになる。

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