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アメルの武器.3

「そうか」


 事の一部始終をティアジャールさんへ伝えた。一言返ってきただけだった。


 アメルは浮かない顔をしており、口数も減っていた。


「ま、チビ助が言ってるのがホラかもしれないし、一回試してみれば?」


 珍しくリリがフォローを入れてくれた。この銃はアメルには使えないと告げた後、ランクスは終始おどおどしていたが、アメルは教えてくれてありがとね、と微笑み掛けていた。


 それである程度ランクスは調子を取り戻したが、今度はアメルが落ち込んでいた。


「そう、だね」


 リリへの返事も元気がないアメル。


「とりあえず裏に来い」


 ティアジャールさんは、お構い無しに裏へと向かって行ってしまった。


「アメル、俺達も行こう」


「は、はい……」


 店の裏へ来た俺達。変わらず綺麗に整地されており、何体か土人形も置かれていた。


「ちょっと待ってろ」


 ティアジャールさんは、土人形の配置を変え後ろに森が来るようにした。アメルに弾倉を渡し、使い方を説明する。


「はめる位置はここだ、そう、いいぞ。その後安全装置を外せ、これだ。そう」


 いつもより丁寧、だな? ティアジャールさんなりに気遣ってくれてるのか。アメルも聞き漏らす事なく、手順に沿って装備を進めていく。


「よし、後は引き金を引くだけだ。音だけ注意しろ」


「……はいっ!」


 アメルが引き金を引く。すると、その場で小規模な爆発が起こったかの様な音が鳴り響く。弾は土人形を容易く貫通し、そのまま森へと消え去っていく。森にいたであろう鳥達は、音に驚いたのか一斉に空へと飛び立った。


「うっさ!」


 耳をふさぎながら、リリが声を荒げる。


「相変わらず正確だな。耳は大丈夫か?」


「だ、大丈夫です。少しだけキーンとしますけど……」


「慣れろ」


 えぇ……と思わず口に出そうになった。威力も音も、クロスボウとは段違いだ。ティアジャールさんは説明を続ける。


「弾倉には六発入る。三セット分渡しておく。だが、クロスボウの時みたいには出来ん。ちゃんとした武器だからな。弾を追加する時には金がいる。ギルドを通してくれればいいが。カイル」


「それは大丈夫です。安全に金は惜しみません」


「嬢ちゃんもいいか」


「はい」


「よし。言い忘れていたが、セロシキには通常の銃と違う特徴が、後二つある」


「特徴、ですか? 音が大きい、というような?」


「一つは、銃身自体が硬い。意図して無いが、剣を受けたとしても傷は殆どつかん」


 普通の銃では、剣撃を受けようもんなら、何らかの損傷は出るはずだ。赤のオーガ、その特性を色濃く反映したみたいだ。


「それと、貸してみろ。ここを一度スライドすると、弾が同時に二発出る。何度やっても変わらんから動作は一度だけでいい。発射するかスライドを戻せば通常に戻る」


 やってみろとアメルへ渡し、アメルも同じ動作を取る。簡単にスライド出来ていて、ティアジャールさんも頷いていた。


「銃はホルダーに必ず入れておけ。都市は銃の扱いには特に厳しいからな」


 使えと言って、ティアジャールさんはアメルにホルダーを渡してくれた。ピッタリとセロシキが収まる。


「あ、ありがとうございます!」


 アメルも嬉しそうに一礼した。



 さて、ここからが問題だ。アメルは、背に装備した魔法銃を取り出した。


「魔力を流すと、得意な属性に色が変わるんだったな?」


「はい、フルーラさんが実演してくれました」


「よし、嬢ちゃん。見せてみろ」


「はいっ!」


 アメルは、俺の拙い指導ではあったが、初期魔法を習得出来ていた。それは火ではなく、水。火の魔法は何度やっても成功しなかったから、試しにと水の魔法をやってみたら、案外すんなりといけた。


 魔力を感じるのが大変でしたとアメルが言っていたから、その辺もランクスが言ってた事と関係してるんだろうか。


 アメルが集中する。すると、純白の長銃が、ほんのりと淡い水色へと変化する。


「嬢ちゃん、意識はそのままだ。構えろ」


「……っ! はい!」


 アメルは、集中を切らさず長銃を土人形へ向けて構える。一度ティアジャールさんに教わっただけなのに、構えは様になっていた。


「よし、撃て」


「……っ!」


 アメルが引き金を引く。発射音はなく、銃口からはーーーー水がチョロチョロと下へ向かって垂れた。アメルはそれを見て、地面へへたり込む。


「アメル!?」


 駆け寄ると、アメルは息を切らしていた。


「だ、大丈夫です……少し、疲れました」


「……嬢ちゃんに、この武器は合わんな」


 ランクス、そしてティアジャールさん。二人からアメルにこの武器は使えない、そう烙印を押されてしまった。

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