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ジュエレールからの書状

 ちょっと長いです。

 セバンタートへ戻った俺達。そこからすぐに活動を再開するわけではなく、休息を十分にとってからと決めて、ゆっくりとしていた。


 指名依頼は、パーティー募集の後何件か来ていたそうだが、ギルドの計らいで一度止めてくれているらしい。帰ったその足でギルドへ顔を出し、ジェシカさんへ護衛達成の書類を渡した時に教えてもらった。


 そんな俺達だが、改めてギルド本部から直接呼び出しが掛かっていた。


 朝、久し振りにコココンッ、という小気味の良い音で眼が覚めた俺。


「ヤマトです。カイル君、今いいかな?」


「はい」


 お邪魔します、と入ってきたヤマトさんは、珍しく疲れた顔をしていた。


「久し振りって感じになりますね。それにしても、大丈夫ですか? なんだか、疲れているように見えますけど……」


 あ、あぁ、ごめんよとい言いヤマトさんは笑顔を作り出す。いや、無理しないで。


「最近、忙しくってね」


「そうは言っても、元から忙しかったじゃないですか」


「……そのレベルじゃなくなっているんだよ」


 話を聞いていくと、事の発端はアルクから始まったらしい。リョウさんの使い。伝言通り、ヤマトさんはアルクの店に取りに行った様だ。その時のアルクの発言から、今の忙しさへ発展したとのこと。


 次代の巫女に無茶をさせないようにね、と言ったらしい。それを不思議に思ったヤマトさんが本部へ報告。そんな話は知らない、とギルド本部は、慌ててジュエレールの現状を把握するために動いた。主にヤマトさんを用いて。ジュエレールが、いつもと違い活気が溢れていることにヤマトさんは驚きながらも、住民から情報収集していった。


 水の祭典が開かれていないことは、セバンタートでも把握していた。本部では今年も難しいという見解だったが、怪我をしていた領主が完治し既に開催されていたと。そこには次代の巫女も居たと。次代の巫女が領主の傷をスキルで治した。セバンタートから来ていた冒険者で、ジュエレールでも噂を聞く、オーガキラーが率いるパーティーの一人だったという事だった。 


「アルク君の発言、その裏取りをする為にジュエレールと往復だよ……荷運びもあるから、おいそれと休めなくてね」


「す、すいません……」


「いや、良いんだ。本部にも護衛の人にも、荷運びは休めと言われているし。荷運びに関しては僕の勝手なエゴだから」


 達成感があるんだよね、とそこはいつものヤマトさんだった。


「ということは、ヤマトさんが今日来てくれたのって、俺達に事情を聞くような感じ、ですかね? 指名依頼はまだ止めてくれていますし」


 ジェシカさんが、カイル君達のいい時まで指名依頼は止めておくわ。どうせまた大量に来るんだし、と苦笑していた。


「そんな感じになるかな。一番はジュエレールから届いた書状になるね」


 あ、ルーベルさんが言ってたやつかな。


「書状はまだ、開封できてないみたいなんだ。ギルマスが眼を通してくれているんだけど、開封前の物に『カイル君パーティー、特にアメルさん同席の上、開封を願う』と書かれている様でね。それで呼びに来たんだ」


 その後聞いた話では、ギルドだけでなくセバンタート領主宅にも、書状が送られているらしい。こ、これ、なんか凄い話になってきてないか……?


「そんな訳だから、準備が出来たら一度ギルドへ顔を出してくれるかい?」


「わ、分かりました」


 じゃあ失礼するよ、そう言ってヤマトさんは扉を閉めた。頭の中で色々考えたが、結局纏まらず、俺は急いで準備を始めた。



 ギルドへ顔を出すと、皆の視線を集める。これも何か久し振りだな。そのまま受付のジェシカさんへ声を掛けた。


「ジェシカさん来ました。おはようございます」


 ジェシカさんはいつもとは違い、真剣な表情で返事をしてきた。


「……おはよう。ヤマトから聞いてる?」


「はい、大筋は」


「よし、そうしたらこっちへ来て。あ! 受付お願い!」


 すぐさま奥から職員が出てくる。動きを決めてあったみたいだ。さ、こっちよ。そう言って通されたのは、アメルとジェシカさん、俺とライムで話し合った個人面談室だ。


「皆、席について」


 ジェシカさんは真剣な様子のままだった。俺は腰を掛けてから、ジェシカさんへ尋ねた。


「あの、ジェシカさん。俺達、なんかマズいことしちゃいましたかね……?」


「……それが分からないから、私も緊張しっぱなしよ。これを見て」


 そう言って、ジェシカさんは一枚の手紙を取り出した。開封場所には、キッチリとした刻印が押されている。


「ヤマトから伝言がきたの。『ジェシカ、ギルマスから伝言。これを預かってほしい。カイル君達と一緒に開封を頼む。開封したものは改めて、僕からギルマスに渡すから』てな感じでね。誤って折ったり濡らしたりしないか、そりゃもうヒヤヒヤしていたわよ……」


 そう言って額を拭うジェシカさん。


「セバンタート領主の方は、もう開封したそうで本部に連絡が来ていたわ。『可能な限り、次代の巫女候補を援助して欲しい。そうしてくれれば、こちらも援助は惜しまない』と書いてあったそうよ。領主からギルドへこれは誰の事だ! とお達しがね」


 そう言って苦笑するジェシカさん。


「ヤマトから、私も大まかに聞いてはいるけど……アメルちゃんが次代の巫女、って事でいいのよね?」


「……ルーベルさんは、仮でいい、と言ってくれていました」


「ところが、そうもいかなくなるかもしれないのよ。領地を巻き込んでの話だから。それこそアメルちゃん。私は貴女のスキルの方が驚きだったわ。回復系、それも領主の傷は古傷なはず。それを跡形も無く治せる程のスキルなんてね、隠したくなるのも分かるわ」


「……はい」


「私達の対応は変わらない、けど医療班から声は掛かると思っていて」


「医療班? 私達を治療してくれた……?」


「そうそう、ギルドはどこの部署も人手不足だから。まぁ、アメルちゃんを怖がらせない様に、私から強く言っておくわ。そこは安心して」


「わ、分かりました……」


「一旦その話は置いておきましょう。先ずはこれを開けて見ないとね。カイル君、それに今回の中心にいるアメルちゃんが、この場にいて開封を見てくれている。全員が証人よ、開けてもいいかしら?」


 アメルを見る。事の大きさに眼が泳いでいる様だったが、俺と眼が合うとゆっくり頷いてくれた。


「お願いします」


 返事を聞いたジェシカさんは、慎重に開封していく。中から、数枚の書状が出て来た。ジェシカさんは一枚一枚、しっかりと眼を通していく。そして、読み終えたジェシカさんは溜息をついた。


「ジ、ジェシカさん?」


「……書いてある内容は、想定内に収まっていたわ。今話すわね」



 書状の内容はこう。


 一つ。次代の水の巫女、その候補であるアメルを可能な限りギルドでも支援して欲しい。

 二つ。アメルの意思の尊重。くれぐれも本人の意思とは無関係の圧力を掛けないように。

 三つ。アメルの発言は、領主ルーベルの発言と同義と捉えて構わない。

 四つ。言ってくれれば、ジュエレールからは何時でも支援が可能。


 この四つが軸となっていた。


「こ、これで私はどの様にしていけば良いんでしょうか……?」


 アメルは腑に落ちないといった様子で、ジェシカさんに尋ねる。


「アメルちゃんはいつも通りでいいわ。良いんだけど……正直、難しいかも」


「む、難しい? というのは?」


「こちらでは、この内容を拡散するような事はしないわ。しないんだけど、どこからか情報を嗅ぎつけるのよね……ジュエレールと何らかの繋がりを持ちたい人達。そういう人達からすれば、アメルちゃんはとても()()()()()()に見えると思うの」


 それこそ良い人も、悪い人もね、とジェシカさんは告げた。これから、この情報を知った人達がアメルに言い寄ってくる可能性があるって事か。


「勿論、ギルドから護衛を付けることは可能よ? でも、四六時中となると中々ね」


「ーー護衛の必要はありません。アメル様は私がお護りします」


 そう言ったのは、アプサラスだった。ジェシカさんはアメルの肩に乗っているアプサラスへ視線を向ける。特に言及はしていなかったが、喋り始めた事に眼を見開いていた。


「え……ちょ、今。あえて何も言わないようにしてたんだけど、もしかして……その水鳥が、喋った、の?」


 アプサラスが失礼しました、と言ってスキル顕現を発動する。みるみる人型へ姿を変えていくのを、ジェシカさんは口を大きく開けながら眺めていた。


「初めまして。ジェシカ様、で宜しいでしょうか。私はジュエレール、水の精霊ネレイスが一人、アプサラスと申します。アメル様の護り手をさせて頂いております。以後、お見知りおきを」


 頭を下げるアプサラスに、ジェシカさんはますます困惑する。


「え、水の精霊? ここ、水無いのに……なんで、え?」


「ジェシカさん、その辺は俺から」


 ジェシカさんに、ジュエレールで何があったかかいつまんで報告した。


「ジュエレールからの書状だけで、とんでもないことなのに、水の精霊を従魔にしたっていうの……? カイル君貴方、相変わらずとんでもないことしかしないのね……」


 とんでもないことしかって。思わず心の中で突っ込んでしまう。


「そんなこと言われましても」


 まぁ、いいわ。今に始まった事じゃないし、とジェシカさんは話を切り替えてしまった。ひどい。


「じゃあ、アプサラスさんが護り手として付いているから、護衛は不要という事でいいのね?」


「はい。一時も離れませんのでご安心を」


 そう告げて、アプサラスは水鳥の姿へと戻った。その辺は大丈夫そうね、とジェシカさんは話を進めていく。


「そしたら次は、アメルちゃんの装備関連の話ね。その銃は、ティアジャールさんが造ったで良かったわよね?」


「はい」


「じゃあ、弾代はこちらで持ちます。ティアジャールさんにも通達しておくから、補充は気軽にね。その他、身の周りで要りようがあれば遠慮なく言って」


「え! そ、それは」


「これは私個人じゃなく、ギルド全体からよ。一応話は通すけど、反対意見は出ないと思う。遠慮しないで、もらえるだけ貰っちゃいなさい」


 そう言って、どこかニヤッとするジェシカさん。


「わ、分かりました。宜しくお願いします」


 そう言って、アメルは深々と頭を下げた。


「よろしい。そしたら、これで一旦手紙の件は終わりね。アメルちゃんへ後日また、細かい経緯を聞くことになるかもしれないけど、大丈夫?」


「はい」


「ありがとう。じゃあ私は一度ヤマトへこの書状を渡してくるわ。もうちょっと話したいことがあるし、ゆっくりしていて。あ、そうそう」


 ジェシカさんは、書状の一つをアメルに手渡した。


「ジェシカさん? あの、これは」


「それは領主から、アメルちゃん宛だったわ。渡しても問題ないでしょう、それじゃあ少し待っててね」


 手を振りながら、ジェシカさんは部屋を後にした。一先ずゆっくり出来るな、少なからず緊張していたようで肩の力を抜いていく。


 アメルは手紙を開き、少し読み進めていたかと思ったら、顔を赤くして慌てて折り畳んでしまった。


「アメル? ルーベルさんはなんて?」


「ひ、秘密ですっ!」


 気になるな、そのうち教えてくれることを期待しながら、俺達はジェシカさんの帰りを待った。

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