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騒動の後

「この度は、大変なご迷惑を掛けてしまい、あまつさえ次代の巫女に危害を加えるなどといった、とんでもない行動をしてしまい……ジュエレールギルド職員一同を代表し、このモーブ。いかなる処遇も受ける次第です」


「当然よ。有り金全部よこして、私達に永久服従を誓いなさい」


「おう、兄ちゃん達! どうだ、美味ぇだろ? 皆でかき集めた海の幸だ! 今度は腹が千切れるまで食わしてやるぜ!」


「美味しいです……! カイルさんが生きてて良かった……!!」


 ーーなにこれ?


 地上へ戻った俺達。真っ先に心配されたのがアメル。銃声も聞こえ、それがアメルの所持する物と衛兵さん達は把握していた。


 水の精霊も、護り手として側にいる。にも関わらず、セロシキを使わなければいけない状況に陥ったことに驚き、慌てていたらしい。


 先に出たモーブさんより、大まかには聞いていたみたいだけど、それでも怪我一つでもあったら大変だ! とアメル自身が大丈夫な事を伝えるまで、皆あたふたしていた。


 実際には、肩に怪我をしていた様だったけど、アプサラスの力で止血自体はすぐに出来ていた。地上へ戻る頃には、薄っすらと傷がそこにあったか分からなくなる位に治っていた。精霊の力ってのは凄いなと感心した。


 アメルは、少し落ち着いたかと思ったら、地上に出た途端また泣き出してしまい、どこか怪我を!? と衛兵さん達が慌てた一因にもなっている。


 なんなら今は、泣きながら美味しそうに食べている。お兄さん達も、あんなに喜んでくれるたぁ獲ってきた甲斐があるぜ! 全くだ! と言っていた。そういう事にしておこう。


 先に出たモーブさんは、二人をギルドへ移送し、説明がてら来てくれている様だ。こちらへの謝罪に対し、リリはとんでもないことを言っていて、モーブさんも、ふ、服従!? なんて驚いていたもんだから、そこは止めた。


 俺はというと……実際のところ、今の状況にまだついていけてない。視界が暗くなって、二発の銃声に意識を戻されて。辺りを見渡すと、大体終わっていた。


 はっきりと分かっているのは、俺の首がそれはもう綺麗に吹っ飛んだ事くらい。くるくる回ってたわよ、あれだけ見れば上手く斬るわよね、とリリが謎に感心していた、やめて。……未だに首が痛い気がする。


「アメルさん。いや、次代の巫女様。重ねて今回はギルド職員が不敬を働いてしまいました。貴女の言葉は、領主であるルーベル様と同等に扱うように、という書状がギルド宛に届いています」


 モーブさんが頭を下げる。今の言葉だけ聞くとーーアメルが、ジュエレールで相当な発言力を持った事が分かった。


「彼女達はこれからどうなるんですか?」


「規定通りにいくなら、収容所で聴取をし、その後処罰を決める形になるかと。キララに関しては……まずは、ギルド職員を辞職してもらう形になると思います。次代の巫女へ危害を加えるということは、ジュエレールに弓を引くと言っても過言ではありませんので」


 アメルの質問に、モーブさんは毅然として応えた。アメルは一度口を拭い、アプサラスへ視線を送る。頷きをもらった後、審判の時を待っているモーブさんへ、ゆっくりと告げた。


「では、水の巫女、その代理として発言させてもらいます。キララさんが今までしてきた行為、首狩り。並びに今回の私達、特にカイルさんに危害を加えたことは決して許せません」


「はい。おっしゃる通りです」


「ですからーーーー先輩と呼ばれた、モーブさん。貴方が責任を持って、彼女を更生させて欲しいです」


「……え」


「彼女に私の声は届かなかった、でも。モーブさん、貴方の声ならきっと、届くはずです。彼女にちゃんと、罪を償わせて下さい。そして、普通の人として生きる、機会を。彼女の今後をもって、ギルド本部への処遇は不問とします」


 凛としてアメルは言い切った。モーブさんは、その言葉に涙をこらえながらも感謝の意を述べる。


「ありがとう……ございます!! この恩は、一時も忘れずに過ごして参ります!」


 ふぅ、と一息つき、アメルは表情を和らげモーブさんへ提案した。


「じゃあ、この話は終わり、ということで。折角、これだけ美味しい沢山の……ちょっと沢山過ぎるかもしれませんが、お料理があるんです。一緒に頂きましょう?」


「……はい。頂きます」


 そう言って、俺達は食事を再開していく。尚も状況を飲み込めきれないでいる俺に、モーブさんが俺にだけ聞こえる小さな声で話し掛けてきた。


「な、なぁ。カイル君?」


「はい?」


「その、嫌なことを聞いてしまうけど……首を斬られたっていうのは、過剰な表現だよね? 本当は首に傷を受けて、アメルさんに治してもらったということなんだろう?」


 その辺も、細かいことは分かってないけど。


「首を斬られたのは事実ですよ。治ったのはなんというか……時間経過で、ですかね」


「……君は本当に人間かい?」


 モーブさんが、凄いものを見る目でこちらを見てきた。知らない人が聞けば、そう思ってしまうのも仕方ないかもしれないけど、失礼な。俺は苦笑しながら答えた。


「ちゃんと人間ですよ。言っていませんでしたが、職業が【従魔士】で、そのスキルのおかげですね」


「【従魔士】……まさか!? セバンタートのオーガキラー!?」


 やっぱり広まってるのね……一体、どういう風に聞いているのやら。


「ウィズテーラス、リーダーのカイルです。セバンタートでは、そんな呼ばれ方もしてます」


「……オーガキラーなら納得です」


 モーブさんは深く頷いた。そこで納得するんかい。


 その後、モーブさんは眼を輝かせてオーガとの戦闘、君の武勇を聞きたい! とせがんできた。そんな大層なものじゃないんだけど……話していると、モーブさんは逐一いい反応を見せてくれるから、こっちも楽しくなっていった。




 閉店近くまで盛り上がった俺達。モーブさんはご馳走様、と言って立ち上がった。


「カイル君、面白い話を沢山ありがとう。それじゃあ、私はこの辺で失礼させてもらうよ。二人の様子も確認したいし、ギルドへ戻ろうと思います」


「はい、ありがとうございました」


「次代の巫女様。いや……今はあえてアメルさんと言わせてもらおうかな。私達への寛大な処遇、本当にありがとう」


「いえ。キララさんをどうか、お願いしますね」


「大事な後輩です、見捨てる事はしません。それじゃあ、私はこれで」


「ーーーー待ちなさい、モブ」


 いい感じに別れの挨拶をしていた俺達へ、リリが割り込んできた。


「モ、モブ? 私はモーブですが……」


「うるさい。何いい感じに帰ろうとしてんの。私達はアンタの連れのせいで散々な目にあったの、分かる?」


「それは、承知していますが……」


「おいリリ、蒸し返すなって。終わった話だろ?」


 リリは無視して話を進めていく。


「ここの食事代くらい、アンタが持ちなさいよ。しょうがないから、それでチャラにしてあげる」


「……え、あ、あぁ! 勿論! その程度の事は言われて当然だ。払わせて頂くよ!」


 なんだかリリにしては甘めな要求だな? そう思ったが、言ったわね? とリリは不敵な笑みを見せた。その笑みの理由は、次の一言へ込められていた。


「それじゃあーー今この店にいる全員の分、お願いね?」


「なっ!?」


 リリがそう告げると、騒いでいた周囲の人が、おっ? といって、こちらへ視線を向ける。


 恐らくだけど、アメルは確定で。アメルとパーティーである俺達も、食事代が要らなそうな雰囲気が出ていた。金なんかとったらバチが当たっちまう! みたいな発言も聞いた位だしな。


「なんだ? ギルドの兄ちゃんが払ってくれるってか?」


「じゃあ、あれか?」


「おう、あれだな」


「「タダ酒だ!!」」


 店の賑わいは更に盛り上がりを見せる。モーブさんへ向かってごちそうさん! ありがとな、兄ちゃん! という声が上がった。


「まさか、私達だけの分とか思ってなかったでしょうね? 私は食事代、としか言ってないわよ?」


 尚も、悪者が見せそうなニヤついた笑みをしているリリ。……味方で良かったよ、ホント。


 モーブさんは何か言いたそうにしていたが、やがて腕を力無く垂らし、分かりましたと言った。


 それを聞いたリリは、聞いたわね男共、どんどん飲み食いしなさい!! と立ち上がってお兄さん達を煽っており、おぉよ!! とお兄さん達もそれに応え、閉店近くとは思えないほど、どんどん注文していく。店主も怒るどころか、快く返事をし調理に取り掛かっていた。一体感が凄いな。


 モーブさんは、一度立ち上がった席へ戻り、注文の声が聞こえる度、段々と顔が青褪めていく。


「……今月の給料、残るかな」


「なんか、すいません……」


 俺はモーブさんの置かれた状況に、謝ることしか出来なかった。


 解散になり皆楽しそうに帰っていく。そんな中モーブさんは店主へ、ツケておいて下さい……と力無く告げていた。

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