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真相

 聞こえてきたのは、二発撃ったかのような銃声だった。その音で、意識を取り戻す。


「……ん?」


 あれ、俺? 確か……急に身体が動かなくなって、それで誰かの声を聞いて、視界が回転し始めて段々暗く……。


(カイルー、だいじょぶかー?)


 ライムが声を掛けてくれた。


(ライム、これどういう状況?)


 身体は地面に寝たまま、視線だけ動かす。


 アメルが誰かと戦って? 決着はもうついてるっぽかったけど。地面へ倒れている相手へ、銃を構えている。アメルは余程じゃない限り、そんな事はしない。水の縄みたいなもので、身体を拘束もされているようだ。あれは、アプサラスのスキルだろうな。


 ……って、あれ。ギルド職員のキララさんじゃね?


 更に視線を動かすと、ぐったりしている人を見つける。もしかしなくても、あれはニスイ、か。影踏みで動きを止められた時に、キララさんに斬られたと思うのが、真っ直ぐな予想か。


(アメルとね、アプサラスがね! びゅーんってして、ぐるぐるーっとやって、どかーん! ってしてた!)


(……なるほど)


 分からん。俺は身体をゆっくりと起こし、皆へ話し掛けた。


「こ、これ。どういう状況?」


「っ!? カイルさんっ!!」


 アメルが嬉しそうにしている、今にも泣きそうになっていた。嬉しいのは有り難いけど、状況の説明が欲しいかも。


「なっ……!? これはどういう事ですかっ!?」


 今度はダンジョンの入口側から声がした。そっちから、ギルド職員のモーブさんがやってきた。


 モーブさんは俺を見つけると、形相を変えて、こちらへ駆けてきた。怖いって。俺の肩をがっしりと掴み、大声で訴える。


「カイル君! 貴方の指示ですか!? 一体何故この様な真似を!!」


 わかんないです。俺も聞きたいんですよ? そう思っていると、リリが俺の近くまで来て説明してくれた。


「アンタの連れがね、カイルの首を斬ったから今ボコボコにしてんの。邪魔しないでよ」


 言い方よ。というか……え、俺、首……斬られたの? 確かに意識が飛ぶ前には、視界は回転してたのは覚えてるけど……俺の首、大丈夫だよな? 触っても痛みはないし、斬られた跡もなさそうだけど。


(くっついたよー)


 ライムがのんびりと告げる。その言い方はさ、斬られてるやつじゃん、俺。融合してなきゃ死んじゃってるやつじゃん。……なんか段々と、首が痛い気がしてきた。


「分かる嘘を吐くな! どこが首を斬られただ! 傷一つないし、ピンピンしてるじゃないか! 大体、キララはギルド職員として、貴方達の護衛ないし保護へ来ただけじゃないか!」


 いや、斬られてたみたいです。皆、正直者で俺は嬉しいよ……。リリは苛つきながらも、暴れたりはしなかった。


「じゃあコイツに聞いてみてよ。ほら、説明しなさい」


 ニスイはどこか上の空だった。そのまま、リリの後を付いてきたのは見えてたけど……これ、スキルどっちも使っちゃってるよね? ニスイの奴、リリをどれだけ怒らせたんだが。


「……確かな情報を受け、首狩りであるあの女を誘って【従魔士】を殺しに来た」


「ほらね」


 ニスイは淡々と言う。リリに操られている状態みたいなもんだから、真実しか話せないんだろう。俺を殺しに来た、か。マジで思い当たる節が無いんだよなぁ。


「その男は手配書の……!? いや、今はいい。男の言ってること全て信じるのか君は! 私は信じないぞ、キララが首狩りなんて!」


 そしてキララさんが首狩りの犯人か。どんどん新情報が入ってくるな。


「とにかく彼女の拘束を解け! 話はそれからだ!」


 モーブさんは怒鳴るように告げた。


「なりません。いくらジュエレールの民とはいえ、限度があります。彼女は仮とはいえ、次代の巫女であるアメル様に危害を加えようとしました。護り手として、それを看過する訳にはいかない」


 キララさんには、水が絡みついたままだ。本人も、うまく身動きが取れない様子だった。アプサラスは普段の様子と違い、護り手として役目を果たしていた。


「ぐっ……! キララ! これはどういう事なんだ、話してみてくれ! もし君が無実ならば、私は領主に申し立てを入れる!」


 キララさんは、一度口を動かしたように見えた。言葉は聞こえなかった。そして、皆にも聞こえる声で話し出す。


「せんぱぁい!」


「な、なんだ! やっぱり事実は違うんだな!?」


「私が首狩りでぇす!」


「なっ!?」


「ニスイさんに誘われてぇ! カイルさんの首を斬りましたぁ!」


「キ、キララ! 言わされているなら、今なら大丈夫だ! 私がいる! 真実をーー」


「そんなお人好しだからぁ! 皆にいいように使われるんですよぉ!」


 キララさんの発言に、モーブさんは言葉を詰まらせた。


「ここの床ちょっと湿ってるんで、早く連れてって下さぁい!」


 モーブさんはその場に立ち尽くしていた。が、少しして、決意を固めた様に自身の頬を両手で叩く。


「……では、ギルド職員として。首狩りの実行犯、並びに次代の巫女、そのパーティーを襲った犯人としてキララ。そして手配書にあるニスイ。君達を連れて行く」


「……お願いしまぁす!」


 もう大丈夫です。拘束を解いて下さい。ギルドまで、私が責任を持って連れていきます。後で、改めてお話を。そう告げて、モーブさんはキララさんとニスイ、両名を連れて行った。


 三人を見送った俺達。状況を細かく知りたかった俺は、一番しっかり説明してくれそうなアメルに話を聞いた。


 アメルは説明していく内に、泣き始めてしまう。結局、俺の首が斬られた事しか分からなかった。だから怖いって。


「とにかくカイルさんが無事で私っ……!! 本当に良かったです……! もしあのままだったらと思うと……!!」


「あぁ、アメル様! おいたわしい……」


「アメル、ありがとう。わ、分かったから、一旦落ち着こう? ね?」


「は、はい……!!」


 アメルをしばらく宥めて、落ち着くのを待ってから地上へ戻った。


 地上でも、アメルの銃声が聞こえていたようで、衛兵さんを含めて、結構な騒ぎになっていた。 

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