領主との謁見.2
「またやったら次はねぇぞ? 分かってんのか?」
「ぐっ……わ、分かっているとも」
この男は、拘束を解いた後あの希少種もだ! と言い護衛と遊ばせていたライムを引き戻したらーーまた襲ってきた。
同じくまた組み倒した。そしたら全く同じ事を言ってきた、なにこれ? 今度は目的を言うまで離さないと告げた。
聞けば、今までの行動は全て、アメルと現領主を引き合わせたい一心だったようだ。いや……言えば良いじゃん。拒否されてしまってからなら、今の行動は分からなくも無いけど。全く。
今俺達は、現領主のいる建物へ向かっている道中だ。男は汚れの付いた服を払いながら話をしてきた。
「いいか。君達は今から、ここジュエレールの領主であり、現水の巫女であるルーベル様と謁見してもらう。くれぐれも不敬のないように!」
「お前がそれを言うのか?」
俺はスキルを解除していない。いつまた襲ってくるか分かったもんじゃないからな。
「……非礼は詫びよう。だが、これもルーベル様の為、ひいてはジュエレールの為だと分かって頂かないとな!」
「そっちの事情は知らん。また地面に寝てぇのか?」
「ぐっ……!」
「カ、カイルさん……」
アメルが心配、といった様子でこちらを見てくる。分かってる。どこの領地でも、身分のしっかりしてる人と揉めても良いことは無い……無いんだけどさぁ。俺は深呼吸をして、気持ちを鎮める。
考えている間に、建物へ到着してしまった。男が衛兵に話を通し、中へ。
「広いな……」
「す、凄いですね……」
そうだろう! と男は自慢げに頷く。外観からも大きいことは分かっていたが、中に入ると更に大きい印象を受ける。天井までがとても高い。壁は大きな窓が張られており、ここに来るまでに少し坂道を進んだ形になるから、海を一面に見下ろせる。照り返す光が眩しい位だ。
俺達が気を取られているとこちらだ、早く来てくれ、と男が急かす。
建物の一番奥、突き当りの部屋まで来た。
「いいか? くれぐれも不敬を……ぐっ……! つ、続いて入ってきてくれ」
まだ言うかと男を睨みつける。男はこちらへ注意することを止め、話を進めた。扉をノックする。
「ルーベル様、フィデルです。客人を連れて参りました」
「あぁ、通してくれ」
失礼します、フィデルと呼ばれた男が先に部屋へ。次いで俺達も入っていく。
ベッドには、深い青色をした髪の女性と、あれは、なんだ? 水、とも違う。けど、人の形を成している何かがいた。もしかしてーーーー
「ジュエレールへようこそ。領主のルーベルだ」
この人がルーベルさんか。怪我をしていると聞いていたけど、しっかりとした口調で元気そうに見えるな。俺はスキルを解除し、挨拶を返した。
「ウィズテーラスのカイルです」
「アメルです」
「なっ!? オ、オーガキラー!?」
フィデルさんが驚いていた。オーガキラーってここまで噂になってたりするの? 広まりがおっかないんだけど。
「なんだフィデル。素性も分からずにここまでお連れしたのか? ……まさかお前また、説明もせず粗相をしたんじゃないだろうな?」
ルーベルさんはフィデルさんを睨みつける。いいぞ、もっと言ってやってくれ。
「そ、そんな! 滅相もありません! なぁ、そうだろう君達!?」
「初めは、アメルをさらいに来た悪者かと思いましたけどね。説明も満足にしてくれませんでしたし」
「……フィデル。後で話がある、残りなさい」
「……は」
フィデルさんも、いよいよ大人しくなった。個人的にはしめしめといった所だ。
「さて、うちの者が無礼をすまなかった。噂には聞いているよ。まさか、オーガキラーが率いるパーティーの一員とは思っていなかったけれどね。話に聞いていたが……君だね、アメルさん」
「わ、私ですか?」
「私より澄んだ髪、そして眼の色をしている。私より適性がありそうだ」
アメルに適性がある? 一体なんの話だ? アメルも不思議そうにしている。ルーベルさんは話を続けた。
「明後日になるが、水の祭典開催を予定している。そこでアメルさん。貴女にーー水の巫女候補として、踊ってもらいたい」




