憂い
お待たせしました、第三部開始となります!
貴方が応援してくださることで、作者のやる気はめっちゃ上がります。是非よろしくお願いします!
では、ゆっくりとお楽しみください。
「今年も水の祭典開催が怪しいって本当?」
「そうみたいよ。次代の巫女が見つからないみたい」
「まぁ、探して見つかるものでも無いけど……外の世界を見れてるアイツは、ホント羨ましいわね」
「それこそ、怪我させないように護れたんじゃないのかしら? 現巫女も復帰は難しそうだし、一体何をしていたのやら」
皆さん思い思いの事を話されている。ここは水の間。私達ネレイスがジュエレールの巫女、通称水の巫女と接見する場であり、数十といるネレイス同士の集いの場でもある。私は隅の方で皆さんの話を聞いていた。
「次代の巫女がもし現れたら、今度こそ選んでもらわなきゃ!」
「そうね、精一杯頑張りましょう。選ばれなかったとしても、負け惜しみはナシよ?」
「勿論。……ただ、あの子にだけは何しても勝てそうだけどねぇ」
そう言って、皆さん私の方に視線を向けてくる。私は努めて笑顔を作った。
「私が護り手になれるなんて思っていません。姉様達の誰かが選ばれるのかなと」
「まぁ、当然よね。私達はネレイス。魔力の塊である水の精霊。それなのに自身の魔力を微塵も扱えないなんて、どういう事?」
「ハハ……」
「ーーそこまでだ、レゲイア」
水の間、ジュエレールと繋がる扉を開け、中に入って来られたのはテティス姉様。レゲイア姉様は、一度舌打ちをしてそっぽを向いた。
「アプサラス。少しはお前も言い返して良いんだぞ?」
「……私は姉様達に比べれば、落ちこぼれ当然ですから」
「何を言う。水操作の一点において、お前の右に出る者は居ないではないか」
「ですが、それでは……水の無い所では何も出来ないなんて……口が裂けても護り手になりたいとは、言えません」
自分で言っていて嫌になります。俯いてしまった私の肩に、テティス姉様はそっと手を置いてくれた。
「あまり卑下するな。私だって選ばれたんだ。自分に自信を持て、アプサラス」
顔を上げテティス姉様を見ると、笑顔で頷いてくれた。その後、他の姉様に声を掛ける。
「聞いてくれ。水の祭典の話だが、巫女は開催したいと願っている。皆も、開催ありきの心持ちでいるように」
「それ去年も聞いたわよテティス。巫女様の足は治ったの?」
「現状ではまだだ……だが、巫女は諦めていない」
「気概は買うけどね、現状が追いつかないんじゃ何ともならないじゃない……っと、はいはい。分かりましたよー」
テティス姉様に睨みつけられたレゲイア姉様は、逃げるように返事をした。
「では、私は戻る。他の皆もよろしく頼む」
そう言ってテティス姉様は水の間を後にした。
「……フン。『選んだ理由? 直感だ』なんて、運だけで選ばれた奴が偉そうに」
何様よ。そう言って、レゲイア姉様は閉まった扉へと悪態を吐いていた。
次第に皆さん、いつも通りのお話へと戻っていく。私に話しかけてくれるのは、数十はいる中で、テティス姉様かレゲイア姉様だけ。
ーー私だって選ばれた。自信を持て。
「私にも、可能性があるのでしょうか……」
呟いた言葉は、水の中で泡となり、ゆっくりと消えていった。




