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揺籠の島で揺蕩う少女達。  作者: カズあっと
4章 日常と学びに。
50/74

45話 海辺のアレコレと。


 すみません。前回の後書きは愚痴っぽくなってしまいましたね。

 読んでくれる方がいます。書き溜めはあるし、自分の好きで書き続けますので、一人にでもお読み頂けたら。


 伝承でしかないので眉唾であるが、古代の昔。

 海沿いの村々には様々な海獣達の声を聴き、意思疎通の取れる幼い巫女が良く現れたものだという。

 彼女達は海と、海による恵みを、人類種と繋いだとされている。

 それらは多彩で、食用、滋養となる海産物の判別方法から、海水を基にした製塩方法や、果ては荒れる海よりの災いを緩和する為の土木設計、海上、海中を行く船などの設計思想までなどと、類を挙げれば枚挙に暇がない。

 彼女達の知識は到底その年頃の者が持てる筈もない物なので、海の巫女として大切に扱われた。

 海の巫女を輩出した家々は大層栄え、長者となったとされている。

 だがこれら、幼少期限定のものであり、一定の年齢となると段々と失われるものであった。

 彼女達はその力が完全に失われる前に、家族を始めとする周囲の制止など振り切って、母なる海へ還りますなどと告げ、海へ身を投げ入れたそうである。

 その折々に海上へ現れては彼女達の命を救うのが、ク・ルッフであった。同時に海神たる大鯨が大潮を噴き上げる。

 海の巫女達は晴れやかに笑い、ク・ルッフに寄り添われて海の果てへと去って行く。

 触手を一本、陸地へ残して。それはいつの時も、どこの海であってもだった。

 故に、精神に安寧を齎された陸地に住む人類種は巫女の幸せを祈り嫁入りと称した。

 実の所、これらの現象に対しては現代では諸説あるのだが、巫女が顕現していたのは太古の時代である。

 期間限定で時代の常識を超えた知恵や知識を行使する巫女達は、現在では超越者であったのではないかとされ、顕現の言葉を用いられている。

 既にそのような存在が発生しなくなって久しい。だが歴史の中で、これらの事績は形を変えて残った。

 儀式、祭祀としてであった。

 人類種の歴史である。当然血生臭い時代もあって、そのような時代には幼い少女を生贄とし、海とク・ルッフに捧げて知恵や力を得る事を試みるような事もあったとされている。

 流石に時代が下ると共にそのような行為がされる事もなくなったのだが、これらは祭祀として、現代にまで残っている。

 それが、沿岸部で催される夏祭りであった。

 この祭りで巫女役、花嫁役として舞を捧げる少女達はその夏、海へ立ち入る事を禁じられる。

 だがこの役目。大変な名誉であって、志す者が後を絶たない。

 彼女達が海へ入るとク・ルッフと鯨が現れ、海へ連れ去ってしまうという危険があってもだ。

 実際は海沿いの権力者達の箔付けに利用されているのだが、祝い金の額も大きいし、巫女役に選ばれるのは選りすぐった見目麗しく利発な少女達である。

 長じて多くは一角の人物に育つ先例があるのだからク・ルッフの花嫁役に選ばれる事は伝統としても、大変な栄誉であった。


「そういえば、人魚族なんかは海へ還った巫女とク・ルッフの末裔だなんて言われる事もあるけど、どうなんだろう」

「その説ってば、学園の教科書とか学説では否定されてるよねー。人魚族は、巫女達みたいに海へ行った人類種達の末裔や深き者達が環境適応した種族だ。ってなってるし、まぁ、蛸烏賊との間で子供が産まれるなんて、普通は考えられないし?」


 クーナの漏らした疑問に即座に返したのはレベッカであった。

 知識をひけらかす事の少ない彼女だが、一般的な知識の範疇においては反応が早い。

 言動はそうも見えぬが彼女は大変な努力家である。

 見識は高く、持っている知識量ではリーナやノエミに劣るものではない。

 彼女が議論の場で常に一歩引いているのは、劣勢になった方にすぐ様加勢する為である。

 集団思考であるブレインストーミングの場では、議論の活発化を狙って異なる意見が出る事こそが望ましい。

 だがそれよりも、意見を否定される事で劣勢側が傷付く事を恐れる性格でもあった。

 レベッカは、とても優しい女の子である。

 彼女は理論の正当性よりも傷付けられる側を心配するのだ。そのせいで、曖昧な言葉を用いる事が多い。


「ええ。学会ではその説は否定されているわ。だけども、自ら海へ還った巫女がク・ルッフと結ばれて、人魚族の祖になったと言えれば、浪漫があるとは思わない?」

「やめてくれ。私はあーいったヌメヌメしたモノが苦手なんだ。幼い子が、あんな気持ち悪い奴らに孕まされたなんて、考えただけでも背筋が震える」


 リーナは中庸な意見であるが、ノエミは必死で否定する。

 リーナは筋道立った理論や浪漫のある仮説を好む。

 普段はノエミもリーナに近い思想を持つのだが、今回は別のようである。

 何せ、ノエミはそういった生物が苦手であった。

 蛸や烏賊などの海洋生物や、ナメクジやカタツムリなどという種族が苦手なのだ。ウミウシなど、見ただけで卒倒した。

 梅雨とも呼ばれる六月の雨季ではノエミというこの女。大変に大人しい。そういった生物がよく現れる時期だからだ。

 特に理由がある訳ではないが、生理的苦手意識は覆し難いものだった。


「うーん。それじゃ、根拠とかは弱いよね? じゃあなんで、彼女達は祖先の思い出深い土地だって言って、割譲なんて求めたんだろう?」

「クーナ」「様「さん「ちゃん「お姉様」」」」」


 それぞれ敬称だけが異なる言葉で返す。

 クーナの言葉、聞き捨てならない。こと領地問題に関わる情報には緘口令が敷かれる。

 これは無用な憶測による混乱を生まぬ為の措置でもあるし、余計な情報から、相手方の活路を開かせぬ為でもあった。

 国法により、守秘義務を課される。これは破れば、相応の処罰が下るものであった。

 冒険者といえど、不利益は甚だしい。

 まず、国内の依頼が停止するせいである。そして守秘義務違反者の、信用というモノが下落する。

 これは無形の財産で、信用があるだけで依頼を受けるには不自由しない。

 依頼には信用を前提としたモノが幾つも有り、中級以上の冒険者には、これを得る事が飯の種としては必須であった。それが、地に落ちる。

 大変な不利益であった。上級もこれを前提としている為に異論を唱える事もない。

 個人事業主である冒険者には勤め人以上に、繊細な感覚が必要であった。しがみつこうとしなければ、労働者程、気楽な身分はないのである。


「あー。ごめん。気、使わせちゃったね。でも、大丈夫。これ、来月には国民投票になるから、緘口令解かれてるの」

「「「「は?」」」」


 そしてまた、異口同音が重なった。そんな情報、一学生では入手するのは難しい。そして四人のうち誰も、そんな情報は持っていなかった。


「割譲とは、どのような範囲なのですか?」

「岩一個」

「「「は?」」」


 再びの疑問符。


「なんでも、人魚族のお姫様が、大層お気に入りらしくてさ。岩一個渡すだけで、お姫様が輿入れなさってもいいってくらいにご執心なのよ。だから、うちの王家もいいかなーってなったみたいなの。ほら、元王子様ってアレじゃない? 元王妃様が、偉く乗り気でね……」


 ビタロサの元王太子は、ガリアの王妹に婚約破棄された男であった。

 先王の時代であったので、その頃彼は王太子だ。ガリア王妹とは学府の同窓となる予定でもあった。歳周りなども丁度良く、学園在籍時にも多少の交流はあり、仲も別に悪くはなかったという。

 とはいえ、復讐者の制圧という偉業を成し遂げた彼女を放っておく事など出来ず、両王家により少しは大人しくしてくれと、首輪を嵌める為の婚約なのが実情だった。

 恋愛事ではない。ところが、彼女は自分より強い男でなければ結婚などしないと言い、マリアよりも一歳上だというのに、いまだに独身だ。

 彼女より強い男がそう簡単に出て来る事は無いと誰もが思っているので、その信念を捨て去らなければこのままでは、生涯独身である事が約束されている。

 この暴挙は双王家に深い傷痕を残した。

 婚約破棄など貴族、それも王族にとって醜聞でしかない。

 先王はこの少し後の時期に現王によるクーデターから退位している。

 彼は政治的には無能であったので誰も困らなかった。寧ろ周囲は喜んだ。どころか本人が最も喜んでいて、隠居の身となった今では売れっ子成人向け絵物語作家となっていた。

 とはいえ、醜聞である。

 婚約破棄をした方のガリア王妹は暴力によって周囲を黙らせる事も可能であろう。

 だが、された方のビタロサ元王太子は良くも悪くも常識的な人類種である。彼にとってこの経歴、不味いものでしかなかった。


「いやね。元王子も別に気にしてなさそーなんだけど、先代の王妃様がね」


 この元王子、クーナのパーティメンバーにして、彼女の同胞でもあった。

 彼もシシリアの孤児院で過ごしている。

 好色な先代王に孕まされた元王妃が、産まれたばかりの息子を孤児院に入れたからだった。当時、元王妃は春を鬻ぐ、売れっ子娼婦であった。

 先代王妃は努力家で、素晴らしい女性であるものの、その素養だけで王妃として立ち回れる程、現実は甘くない。

 息子を私生児としない為に、彼女には身に付けるべきモノが山程あった。

 子育てと王妃修行の両立など困難であり、泣く泣く彼女は実家である孤児院に生後数年の間、息子の養育を任せている。

 王族には転移陣の使用が無制限で認められている為、物理的な距離は無意味であった。彼女が妥協の末、息子を実家に任せたのには打算もある。

 そういった経緯もあり、元王太子にとっても孤児院は実家であった。

 彼は気の良い男で、孤児達を弟妹として可愛がっていた。また孤児達も、出掛ければお土産を沢山持ってきてくれる彼を、兄として大層慕った。

 なんのかんの言いながらも元王妃も実家には良く顔を出していた為、彼女も孤児達に大人気であった。

 情が深い経験豊富な大人の女性である。母が恋しい年頃の子供達にとって、彼女は育ての母であった。

 なお、現在ではこの元王妃。実家である孤児院を切り盛りしていて、名実共に母親代わりとなっている。


「どうしても、息子にはそれなりの身分のお嫁さんが欲しいってさ。それに、今の王様は独身でしょ? 義兄さんも王太子に戻されるかもしれないからって、内務卿もさ。で、人魚族のお姫様が、そうなってくれるならって……」


 ちなみに、そういった関係性から、クーナも元王太子の事は義兄さん呼びである。元王妃の事はお義母さん、あるいはママだ。これは、孤児院の出である者全てがそうだった。


「ですが、箔付けが目的ならば人魚族の姫君では、少々弱いのではありませんか?」

「弱くはないよ。寧ろ、戦力過剰じゃない?」

「いえ。戦力的な意味でなく、政治力学的な意味での弱さなのですが」

「アンナちゃんって、小さいのに、難しい事考えてるのねぇ……。やっぱり、大臣さんの娘さんって、教養あるわね」


 小さくないもん。と、頬を膨らませて拗ねたアンナであるが、実際小さい。これは事実である。

 だが、クーナは大きな勘違いをしている。大臣であるサルバトーレ経由では、決して教養が身に付く事はないのだ。


「うーん。確かに政治的な後ろ盾としては、弱いのかも? でも義兄さんも、もういい歳だしなぁ。贅沢は言ってられないと思うよ」


 国家間とのしがらみの薄い人魚族の戦力は強大で、格式こそ高いが殆どの人類種の近代国家にとって、あまり利益を齎さない。

 海で自由気儘に暮らす彼女達は生産活動を行わない為だ。戦争を嫌う当世では、戦力的な強さと政治的な強さは、必ずしも等式で結ばれるものではない。

 彼女達は海水と陽光さえあれば食事を必要としないし、身に纏う物は海の泡である。

 愉しむ娯楽は遊泳と唄くらいであり、大海原を揺籠とする為、陸地に上がらなければ住居さえも必要としなかった。

 陽光を浴びる為の岩場には拘りがあるものの、それも不可欠なものではない。

 とても浮世離れしているのだ。

 美しく賢い種族であるのだが、他の種族とはあまりにも価値観が異なる為に他人類種との摩擦も少なく、競争による発展などもなかった。

 温厚な彼女達が必死になるのは同胞の危機か、恋愛事くらいである。

 彼女達は女性しかいない種族であるが、ごく普通に生殖行為を行った。当然、別の人類種とだ。産まれてくるのは必ず、男児の場合は父方の種族であり、女児の場合は人魚族であった。


「でも、人魚族のお姫様って確か……」

「貴女達の一つ上ね。旧成人よ。年齢だけは」


 件の人魚族の姫君であるが、発育不良だと言われていた。

 女のみの種族である彼女達は、他人類種の種を貰わなければ孕めないので、身体の成長に早熟の気があった。

 十二ともなれば、精神と肉体が子を産める程度に成熟するのが普通だが、この姫君、十五になっても両方があまり成熟しておらず、子供のような性格で、起伏の少ない小柄な身体であった。


「あに見てんのよ。アンタ達」


 丁度、レベッカとノエミの見詰めるリーナのような。


「いや、なんでもないさ。だが、クーナさん。元王子と人魚姫とでは、少々歳が離れ過ぎてはいないか? 並ばせたら、見た目はまるで親子だぞ」

「うーん。私もそう思うんだけどね。まぁ、なるようになるでしょ。多分ね。頭の良い人達が考えている事だし。で、黄金の左を受けたお爺ちゃんの事だったかしらね。……あれ?」


 クーナの顔全体に疑問符が浮かぶ。彼女は首を傾げている。

 ちょっと心配になったアンナが、どうかしましたか? クーナおねーちゃんと尋ねた。

 クーナもまた、おねーちゃん呼びが良いと言い出した為である。

 彼女は孤児院へ来る子供達にもそう呼ばれているので、様付けなどより余程座りが良いと言っていた。


「黄金の左やドレスのトレンドとか、みんなのお母さん達の話なんかは面白くて良かったんだけど、どうしてノエミちゃんが私の事気付かなかったのか、まだ説明して貰ってなくない?」

「そういえば、そうでしたね」

「あちゃー。またいつもの脱線かー。反省しなよ。ノエミ」

「私がか?」

「アンタがクーナお姉様の事を、お臍と太腿でしか判別していなかったからでしょ。反省するのよ。ノエミ」

「はい?」


 問い返してしまうクーナであった。衝撃の事実である。


「すまない。クーナさん。今までは、あの日の貴女の姿があまりにも衝撃的過ぎて、眩しいお臍と太腿にしか、目がいかなかったんです。今日顔も覚えたから、もう間違えたりはしないでしょう。多分。……これでいいのか?」

「赤点ギリギリかなぁ。態々、私達に聞くのは良く無いし、多分じゃ反省が伝わらないよね。世の中には、事実陳列罪って概念もあるからさ。正直に言うだけじゃなくて、ちゃんと反省の態度を示さないとダメだと思うな。ノエミだって、仕立てた服を他人の物だと思われたら、面白くないでしょ? 貴女は、そのくらい失礼な事をしてたのよ」

「む。そうだな。忠告感謝する」


 そう言うと、ノエミは髪を高く括って席を立つ。そして優美な所作で床へ膝を付き、両手を握り合わせた。

 その姿勢のまま、え? え? などと狼狽えるクーナを、上目遣いで見上げる。ノエミの頬は上気し、瞳も潤んでいた。


「職人と商人の裔、ノエミ・ルツ=マルテ。いと尊き先達であられる、クーナ=シシリアーナ様への数々の非礼、心より、ここに深謝いたします。我が手、我が誇りにかけて、以後、違える事はないと誓います。父と子と、精霊の御名において。そうあれかし」


 そして彼女は頭を垂れた。白いうなじを晒している。この膝を付き、うなじを晒す姿勢は古来より首を差し出す服従の姿勢であり、転じては生殺与奪を貴君に委ねるという、最上級の誠意を示す行為である。

 主や主君に捧げる最上礼と、同じような姿勢であった。


「ぅぇぇぇぇ?」


 クーナの形の佳い桜色の唇から、意味不明な悲鳴が漏れる。

 近頃彼女が愛用しているリップクリームは、ヴィッティのエルポラレ化粧品社の新作で、レベッカによって試供品として渡されたものだ。

 ノエミは静かに俯いている。この女、見た目だけは佳いので、こうしていると、まるで赦しを乞う聖女像のような深く美しい趣きがあった。

 アンナなど感激して、綺麗……。などと呟きながら見惚れているし、レベッカは、またもやアチャーと頭を抑えている。

 リーナは歯軋りして、グヌヌと唸っていた。純粋に感動しているのは幼いアンナだけであった。

 クーナは四人へ忙しなく視線を巡らせながら、やはり謎の悲鳴をあげていた。


「ほらほら、クーナちゃん。遠吠えなんてしていないで、ノエミに何か言ってあげてよ。この子なりに、しっかりと反省してるんだから」

「そうよ。クーナお姉様。この馬鹿、馬鹿なりに本気で、ごめんなさいしてるわよ」

「クーナおねーちゃん……」


 三者三様に迫られて、クーナも我を取り戻す。

 ノエミに顔でなく、お臍と太腿で自分という存在が認識されていたというのはショックだが、何もそれで怒ったり、気分を害している訳ではない。

 第一顔を覚えていなかった件については、既に謝罪を受け入れている。改めてここまで深刻な謝罪をされる謂れはなかった。

 理解が追いついていないだけで、説明をして貰えれば充分だったのだ。とはいえ、相手の真剣には、こちらも真剣に応えねばならない。

 それは、矜持や尊厳の問題だった。


「美しく優しき島。シシリアに辿り着いた、行く当てもなく彷徨いし者達の娘、クーナ=シシリアーナ。愛しき友人であるノエミ・ルツ=マルテ嬢の真心からの謝罪を受け入れ、赦します。我が父母の名、我が心にかけて、以後も変わらぬ友情を誓いましょう。父と子と、精霊の御名において。そうあれかし」

「「「「「そうあれかし」」」」」


 五人での唱和。これにてノエミは赦されて、クーナは徳を一つ積んだ。


「いや。本当に申し訳ない。しかし、こうやって認識してみれば、大変な美人さんじゃないか。やはり今からでも、ミラコレに殴り込みませんか? 大注目間違いなしですよ」

「無茶言いなさんなって。あーいう催しには、沢山の人達の想いが詰まってんの。邪魔しちゃ失礼でしょ。ちゃんと正当な手続き踏んで、参加しないと駄ぁ〜目っ!」

「ああ。そうだったな。まずは私が世間に認められないといけないな」


 レベッカに叱られて、シュンと肩を落とすノエミであった。彼女も再び席についていて、生姜湯を啜っている。

 彼女が乱入を誘ったのは、ミラーノコレクション。

 四季折々に開催される、大規模な服飾展覧会であった。そしてアンナはウズウズとしている。

 何もミラーノコレクションに興味を持っての事ではない。彼女の服などはマリアが用意したものだ。

 少し歳上のお姉様方と交流を持つようになり、多少のお洒落心が芽生え始めたものの、まだまだそういった感覚は育っていない。

 彼女が高揚しているのは、これから謎解きタイムであるからだ。

 赦しを与え、大団円を迎えたとはいえ、クーナは未だ釈然としていない様子だし、レベッカだって名探偵衣装のままだ。

 アンナのお愉しみはまさにこれからだった。

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