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揺籠の島で揺蕩う少女達。  作者: カズあっと
4章 日常と学びに。
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42話 またもや溢れ話 ガリア王家の家庭事情。


 ––と——つて、どっちが正しいダッシュ記号なのか益々判らない。筆者は後者を採用しております。なお、ーーは書き始めの何も知らなかった頃のミスです。


 キリトが偽恋を用いて天空城を攻略した前後であるが、彼の事績や所業を知った本物の強者や超越者達は、あまり強い興味を示さなかった。

 それは人類種の特性による強化を知っていたからでもあるが、何よりも個体としての力を重視している為だ。

 学園の最上位に食い込もうとも、彼等にとっては取るに足らない存在だ。

 尊くとも、借り物の力だけでは愉しめない。それを知るからこそ、彼等はキリトの存在に関心を持たなかった。

 そして噂は尾鰭が付いて羽ばたいて、キリトは学園の大多数の女性達にとっても唾棄すべき存在であり、視界に入る事すら不快な存在となっていた。

 そしてそれは、噂にでも彼を知る者にも同様だった。

 これらの負の感情により、齎された特性による不利益は無関心。

 尋常な者からは、例えどのような善行や偉業を為そうとも歯牙にも掛けられず、尋常ならざる者からすれば、例えどのような非道を働こうとも、虫ケラ程の価値しかない。

 仮に噛みつかれでもすれば潰すにしても、関わりがなければ、まったく関心を持たなくなる呪い。

 それは特性による不利益であったが、彼にとっては齎された福音でもあった。

 このお陰で四年の間追われる事も無かったし、組合が特に危険視していなかった理由でもあった。


 通常。無関心など、人に対する最も悪い感情であるが、この場合においてはキリトの安全にとって、他者から向けられる最善の感情であった。

 これらの要因により、組合でも報酬に釣られた中堅以下の者しか動かない。

 当時の軍部では力が足りず、彼の隠密術を超えて補足する者も出なかった。それが更なる悲劇を呼んだ。

 キリトが指名手配されてから二年の後に、妹の相棒が殺された。双剣による斬撃によって。

 この頃、妹とその相棒も、組合に勤めている。

 被害者は、学園生時代に組合職員を志望していた青年で、姉や兄の事もあって婚姻を結ぶのは難しいだろうから、これからは家で一緒に住まないかと妹を誘っていた。

 世間体もあり、事件解決までは結婚は難しいだろうとの判断からの妥協案でもあった。

 この頃二十三となっていた彼女はこれを受け入れる。当時のビタロサでは結婚適齢期であった。

 そして組合職員の男性であるが、戦闘能力がなくとも彼も立派な男であった。

 同棲を誘った食事での帰り道、彼は死ぬ。通り魔に襲われて。だが彼は、事切れるその瞬間迄組合へと情報を送った。

 姉同様に凌辱され続ける想い人を前にして、己の責務を果たす為に。この事件により、妹もまた心を壊した。

 その後、彼女達とキリトの両親も世を儚んで自ら命を絶った。唯一神教においては自殺は殺人に匹敵する大罪とされていてもだ。

 とはいえこの事件により、組合も活路を得た。あまりにも非道な行いにより、何名かの上級冒険者達がとても見過ごせぬと立ち上がった為である。

 彼女達はアノ光景を見せられていたのだ。

 奇しくもその日に組合による勉強会が催されていた事によって。

 彼女達は、天空城グランアイン攻略者達である。キリトに想いを寄せた乙女達であった。その想いは既になくとも、戦友が堕ちてゆく姿など望む筈もない。青春が汚される事など、許せる事ではなかった。

 これまでの経験則により、次に狙われるのは幼馴染であろうとの予測が立った。

 丁寧な別れの手紙も残されており、元パーティメンバー達も、自分達はそこまで執着される関係ではないという感覚があった。恋心を抱いていた頃では認められなかったが、明らかに三人は違った。

 そう割り切って見れば、どれ程の時間が経とうとも、次に狙われるのは必ず幼馴染であるという予測が立つ。

 もしもそうでないのならば、彼の獲物は無差別となるだろう。そうなれば捕縛は不可能であった。

 組合に所属する万年処女婆が、必ず大陸を焦土にする。彼女は女神ヘカテの眷属を自称しており、それを汚そうとする者には容赦がない。

 その頃講師として招かれていた彼女を制止する為に、組合は多大な犠牲を払っていた。己の所業による報いは受けるしかないのだ。

 そして更に二年間の月日が経った。

 この年にはガリアの姫君がロウムの学府を目指す為、同じくビタロサがシシリアにある女学園へと編入していた。

 姫君は母国の学園に飽いて、どうせ行くのだからとシシリアの女学園に通う事を決めたのだった。

 同じ時期。キリトの幼馴染は同じく学府を出て教職を志した想い人と共に、カターニアの女学園へ赴任している。

 奇しくも姫君の編入先と一致していた。

 キリトの幼馴染は彼と同年で、この年二十六。

 これは後年で別にそんな事はないと否定された通説であるが、二十五を超えると子供を産むのに差し障りがあるのだとされていた。

 その為か、教員となった男性はこれまで別の学園へ赴任していた彼女に求婚している。在職中の教室で。気持ちは別としても、親族程の遠慮はない。

 これを受けた時、キリトはその傍に控えていた。

 妹の件があってからずっと、そうしていたのである。いずれこのような機会が巡って来るのだと想定して。

 当然ながら時の女生徒達は湧き上がる。

 生プロポーズなど見た事もないのだ。

 指名手配犯に興味などなく、ただ単純に師を祝った。そして囃し立てた。彼女達にとってはただの楽しいイベントでしかない。知り合いが目の前で婚約することなど、事件でしかなかった。


 そこに眠い眼をこすりながら現れたのがガリアの姫君であった。

 彼女の名誉の為に言うならば、ガリア王都と都市カターニアの間にある時差は大凡二時間。

 それに順応する為には慣れが必要であった。普通の娘ならばせいぜい七日もあれば慣れるのだが、幼い頃より時間によって事細かなスケジュールを組んでいた彼女にとってはなかなか難しい。

 染みついた習慣は抜けないのだ。なかなか慣れずに、この日を迎えていた。

 侍女を伴って、あくびをしながら登校したガリアの姫君であるが、どうにも学園の様子がおかしい。

 級友達は謎に盛り上がっているし、まったく見た事もない男性が担任を抱き抱えている。

 しかもその両手は、彼女の乳を揉んでいた。姫君この時十七歳。

 当然ながら貞操観念は強いし、なんなら男が苦手であった。この学園を含め、ずっと女学園であった為だ。

 彼女の主観においてでしかないが、ビタロサの王族の心を射止めよとの父からの王命により、ここに来ている。

 この時、ビタロサの王族はカターニアの学園には一人しか在籍していなかった。男子校にだ。

 尤も、ロウムの学府にも王族が二人おり、もしかしたらその内のいずれかを堕とせと命じられたのかもしれない。と、彼女は考えていた。

 男子校と女学園の両校には交流があって、勉強会や親睦会が学園側主催で開かれている。

 とはいえ、在学中の王族は最高学年で登校機会も既に少ない。顔を合わせる機会など稀である。

 どちらにせよ、堕とす為には学府へと進学するのが効率的であった。

 姫君の成績は中の上といった所だ。これから先もしっかりと勉強をしていれば、学府進学は問題ないだろうと思われた。

 彼女は王命に燃えていた。誠に篤い忠誠心である。王である父からの頼み事など、滅多にある事ではないからだ。臣下としての忠義と、娘としての親孝行を同時に遂行出来るなど、姫君としては最高の任務であった。

 勘違いである。

 彼女の両親である当時のガリア王夫妻は、娘と近い年周りにはビタロサの王族が二人しかいない事など承知であったし、特に彼等と縁戚となる必要がある政情でもなかった。

 王族同士なので、交流する機会もあるだろうから別に恋仲となっても構わんぞ。と、冗談で伝えていただけだ。

 娘に比べて彼等は尋常な性格の男達なので、お転婆な娘の情操教育に役立ってくれれば。という軽い気持ちであった。

 学府で教鞭を取るもう一人の王族は高齢で、男寡でもあった。

 他にいる多くの王族も既婚者か、またはまだ子供である。

 似合いの年頃の異性が二人しかいないからこそ、彼等は娘を送ったのだ。

 その王族達は王太子と王弟なのだが、とても姫君の興味を引くような男達ではない。だからこそ、そこそこの安心をして。

 だがその想いは、残念ながら娘へときちんと届く事はなかった。


 末娘くらいは政略による結婚によって手放さなくとも良いだろう。

 という両親や国民の複雑な想いと、姉達や兄達のように、両親や祖国の役に立ちたいと願う姫君の想いは、滑稽な迄にすれ違っていた。

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