41話 またもや溢れ話 復讐者とガリアの姫君。
読まれたい。やはり最初の文章や構成が下手すぎて嫌煙されるものなのですかね。
ガリアの姫君十七の歳の偉業であるから、夜会ドレスの件の前年の事だ。
この時期に冒険者組合に対して、反旗を翻したとされる一人の上級冒険者がいた。
その名は双剣のキリト。またの名を、復讐者【アベンジャー】キリトという。
彼はこの年二十六歳。パーティメンバーと共に学園在籍中である十代にして、大異界天空城グランアインを攻略し、その時の仲間達と共に上級登録された猛者だった。
腕は確かで、双剣という扱いの難しい武器を巧みに用い、隠密術式と軽装からの高い回避能力、素早く手数の多い斬撃による戦闘能力が高く評価されていた。
ただしこの男、あまり誉められた人物ではなかった。
一見すれば容姿は悪くない。
顔付きは中性的で細身であった。身長も平均よりも少し高いくらいである。
ロウム近郊の農村の出だが教養があるのか、口も上手いし威勢も良い。ただし酷く女癖が悪かった。それも、実のないかたちで。
組合の調査によれば、元は拾われ子であったらしい。
娘一人で男手の足りない豪農の妻が生後間もないらしき彼を拾い、夫婦で養子としたと記録にある。
娘はこの時一才で、乳離れをしていたが妻はまだ乳が出ていたので彼を育てる事に支障はなかった。
後一年程して、妻はもう一人の娘を産んだ。
この夫婦。実に良く出来た人物で、拾い子の彼を実子である娘達と分け隔てなく育てた。
彼等は将来的に娘のどちらかと娶せようとしていた節がある。
妻は長女を産んだ際、胎の中に腫瘍が見つかり、これ以上の子は望めないだろうと医師により宣告されていた。
だからこそ彼を養子としたのだが、思いがけずにその後の懐妊、出産となった。
夫婦は養子とした子が幸運を運んで来てくれたと考えて、養子であると事ある毎に告げてはいたものの大切に育てた。誠に好人物達であった。
長じて彼等はロウムの学園へ通う事となる。勉学優秀であったが為だ。
夫婦は喜んだ。身体は充分に働いたし、子供達が研鑽を積み、可能性を広げる事がとても嬉しかったようだった。
子供達が幸福に生きられるならば、農家は自分の代で終わらせても良い。との手紙が遺っている。
夫婦の見るところ姉妹とキリトの仲は非常に良く、どちらと結ばれたとしても、幸福な未来が夢想出来ていた。
だがこの仲の良さ。幼少時より長らくキリトがそれぞれに隠れて愛の言葉を囁いていたからだった。
腕が立ち、利発で容姿が良く、自分だけに愛の言葉を囁いてくる身近な異性。
これで恋に落ちぬ乙女はあまりない。
案の定。姉妹は揃って一人の男に恋をした。
また同様にして幼馴染の少女も一人堕ちている。
尤も、彼女達は揃って身持ちが堅かった為に間違いは起こらなかった。
またキリトはある時期まで、養母にまで隠れて愛の言葉を囁いていた。だが、こちらは子供の戯言として笑い飛ばされている。
そして彼等は学園にて勉学に励むのだが、キリトの悪癖は治らなかった。寧ろ、悪化した。
男女比の均衡するビタロサでは学園のほぼ半数は女性である。
彼は目を付けた女性へ、他に隠れて愛を囁き回った。これを助けたのは彼の独自術式だ。
それは言霊と精神感応に隠密術の複合術式で、秘密だよ。と伝えた相手がそれを守りたくなるというものだ。
強力な術式や拷問などの極端な手法には抗いがたいが、自主的な感情に訴える為に抵抗しにくい。
恵まれた才と独自術式を操り、彼は目を付けた女性達を次々と口説き落としていった。
二年という歳月を掛け天空城を攻略したメンバーは、そうして彼へと心を寄せた少女達である。
なお、キリトはその二年でよ課題を怠ったが為に学園を留年している。
二年という歳月だ。当然変化はあった。
姉は学園を優秀な成績で卒業したが学府へとは進まず、冒険者組合に勤めた。
妹も学園の最上級生となったが、彼女も学府へ進むつもりはなく、組合に勤めるつもりであった。
幼馴染は両親の反対を押し切って、キリトを追ってロウムへ来ている。苦学生であった。彼女は学府へ進むか迷いがあるようだった。だが、学費を工面出来れば進むつもりでいた。
彼女達はキリトと離れている間に恋の呪縛が解け、それぞれ良い仲の異性まで作っている。
そのお相手がそれぞれ組合の職員と職員志望者、進学希望者であった。
彼女たちの就職や進路志望には、そういった人間関係が影響している。実にありふれた話である。
異界攻略に置いていかれた姉妹と幼馴染の三人であるが、彼女達は勤勉で成績優秀であるものの戦闘力は人並だった。
三人共、富裕な農家の娘である。元より戦闘力を磨く必要がない。
だからこそ、危険を伴う天空城グランアイン攻略メンバーから漏れたのだが、キリト達が異界攻略申請をしたその当時、彼女達は嘆き悲しんだ。
恋をしていたのだから当然だろう。
しかも、同行するパーティメンバーが揃って見目麗しい女性ばかりなのだから不安と嫉妬で狂わんばかりでさえあった。
それでも無事な帰りを待つと笑顔で告げて、恋する男を見送った。
この当時。ドラマ番組では耐え忍ぶ貞女を描いた物語が放送されていて、女性達に受けている。
彼女達も同じで、我が身を重ねた。
若い恋心に酔っていたともいう。同じような女性は他に何人もいたのだが、それぞれ心に秘めた為、公になる事はなかった。
最初こそ打ちひしがれていた女性達であったが、やがて落ち着きを取り戻すと、ごく自然に青春という日常を楽しんだ。
半年も経つと不思議なことに、身を焦さんばかりの恋心は抜け落ちていた。
どころか彼女達自身さえ。キリトを何故あんなにも想っていたのか解らないでいる程だった。
どこの学園においても、名簿作成や行事の際に写真を撮って貰う習慣があった。
それらは複製され、生徒達に配られる。
彼女達は身を焦がしていた恋心を思い出そうとキリトの写真を眺めるのだが、どうにもしっくりとこない。
思い返せば口が回り威勢は良いものの、その実、口にするのは綺麗事ばかりで懸命さがない。
誰かの為にと言いつつも、手を差し伸べる事もなく、安全圏からの傍観者であり続けていた記憶しかなかった。冷静に見れば、とても軽薄に思えた。
背丈は高めで、無駄な肉はない。
ないのだが、無駄な肉がない事は充分に鍛えられている事と同義ではないのだ。
術式による身体能力強化がある為「単純な筋肉量だけでは運動性能を測る事は出来ない。
だが、鍛錬や研鑽は無駄にはならない。普段の姿勢や動作に現れるからだ。
写真の中のキリトは肉が薄く猫背だ。日頃から鍛錬を積んだ男の肉体とは程遠かった。有り体に言ってしまえば、貧相でさえあった。
顔付きも、中性的で整っているのだと言えば聞こえは良いが、実際に写真で見ると不細工ではないが特徴に薄く、特に秀でたものもない。
しかも写りが悪いのか、眼は陰気で唇も皮肉に歪めている。
後ろで結んだ長髪も、あまり似合ってはいなかった。というよりも、長髪が似合う男性はそれ程多くない。
こうなれば、何故あんなにも恋心を抱いていたのか、益々もって判らない。
恋は落ちるモノだと言うが、あまりに不自然に感じられた。
思い悩んだ女性達が親しい者に相談するのは自然な流れであった。
そうなると、キリトに秘密だよ。と言われた事や言葉は漏れる。
直接的に伝えなくとも察せる事もあった。自分だけに囁いてると思っていた愛の言葉が、誰にでも囁かれる軽薄な言葉だと気付いた女性達の心はやがて、嫌悪感でいっぱいとなった。
そして二年の間には密やかな相談事は明らかな噂となり、噂が噂を呼び、やがて尾鰭を付けて拡がった。
彼が言い寄った少女の中には操を捧げた者迄いるのだという噂など、誰にとっても到底看過出来ない醜聞であった。
事実や真実とは無関係ながら、学園関係者の女性達にとってキリトは正しく女の敵となった。
余談であるが、多くの男性陣のキリト評は根暗な格好付けだが、それなりに腕があり、闘り合うとなれば厳しい相手というものだ。
中には、女の尻ばかりを追いかけ回すのは頂けないが、そう悪い奴でもないんじゃないか。と言う者もいて、特に嫌われてはいなかった。
大異界天空城グランアインを攻略し、学園に戻ったキリトを迎えたのは彼の期待したような賞賛の声でなく、女性達による冷たい視線であった。
その視線はパーティメンバーにも向けられていて、苦心惨憺の末、大異界攻略を果たしたというのに彼等は非常に居心地が悪い思いをしていた。
そこに冒険者組合より職員達が訪れる。
時の冒険者組合ロウム支所長である男性と、彼に随行するキリトの姉であった。
所長はキリト達の偉業を讃え、その場にて上級登録を行った。組合は異界攻略申請者の動向を把握しており、こういった場合では報酬の支払いや位階の授与などの各種手続きが速やかに完了する。それらは全て、極めて事務的に行われた。
続いて現れたのが学園責任者である学園長と、彼等の二年前までの担任だ。
彼等もまた偉業を讃えると、課題の提出を求めた。パーティメンバー達は提出したが、キリトには出来ない事だった。
なにせ、課題をやっていない。
攻略の負担とならないよう、それ程大変な課題でもないので、他のメンバー達は時間を見つけてコツコツと仕上げていたのだが、彼はまったく手を付けていなかった。
彼には時間が足りなかった。
何故なら、パーティメンバーの総数は十名、彼を除けば九名の女性達全員に、彼の持つ先天術式。そして異能でもある偽恋を掛け続けなくてはならなかったからだ。
この対人異能。対象となんらかの接触をする事により恋心を抱かせるというものである。
発動条件は三つ。
対象が異性である事。対象に嫌悪されていない事。対象と二人きりである事だ。
これらを満たした上で術式を発顕させると、対象は彼に対し、恋心を抱きやすい精神状態となる。
恋は盲目とは良く言ったもので、痘痕も靨といった具合に欠点も美点となるのであった。
対象者の主観においても魅力的に映るようにもなるので、重ね掛けも容易である。
そしてその強度は接触内容と時間、そして頻度によって上昇していく。
とはいえ、それだけではただ単純にモテ易くなるだけだ。だが、これに人類種の特性が加わると話は少々異なってくる。
人類種の持つ特性の一つにあるのが、他者の想いを力に変える能力だ。
例えば期待。期待をかけられた側は、それに応えようとし、本来の力以上を発揮する。
これは単純な精神論ではなく、僅かではあるが、期待を掛けた側の力が想いを託した相手に乗せられるからであった。
反対に、憎しみなどの負の感情も力となるが、これらは代償として様々な不利益を受ける事もある。
例えば身を焼くような痛みに苛まれる事や、人格を軽視される事等だ。
大抵の場合、著しい損害を被った。
これらの現象を利用、発展させたモノが呪術などに代表される思念術式であった。
これらの特性により人類種の個体は有名となり、愛される事こそが自己研鑽にも繋った。
認められれば一層力を増すのである。
そして何よりも、これらの力は減衰し難い。
筋力や技術は研鑽を怠れば容易く衰えるが、この向けられる感情による強化。例えその想いが消えようとも血肉となって培われ、無に帰する事がない。
肉体も得た力に順応する為に成長するからだ。
強者に人格者が多いのは、決してこの特性と無関係ではなかった。
そして恋は複雑で、非常に強い感情だ。当然のように力となった。
それを自由に操る事が可能であれば、強い力を得る事は決して難しい事ではない。
体質や才能によっては勉強や鍛錬などよりもずっと、効率的に力が得られた。
それを上手に利用したのがキリトである。
女性達に愛の言葉を囁いたのは力を得る為であった。
偽恋は時間経過と共にその効果が衰え消え去るのだが、得た力は簡単には衰えない。
強い感情である程、特性による効果も増す。効率を考えれば恋心を煽る為、彼には女性達との小まめな逢瀬が必要だった。
課題を熟す時間がなかったのはこの為である。
如何に彼が要領良く立ち回ろうとも、対象は九人もいる。
力を効率的に得る為に、強い力を持っている異性でパーティメンバーを固めたのだ。見目麗しい女性であるのはただの嗜好であるが。
とはいえ、時間は誰にとっても平等である。
無理をしなければ、強い恋心を維持する事など出来なかった。
留年が決定し、打ちひしがれたキリトであったが更なる試練が彼を襲う。
かつて彼が言い寄った女性達からの詰問である。
偽恋の効果が解け、女の敵への嫌悪感に満たされた彼女達は容赦がなかった。
最初はパーティメンバーも烈火の如く怒り、キリトの事を庇ったが、様々な実例を挙げられれば鎮火もしよう。
その内容はつい先日迄彼女達が聴かされていた甘い言葉であったし、愛の囁きだ。
抵抗虚しく彼女達の恋の炎も悄然としていった。
流石に姉妹と幼馴染はそれに加わらなかったものの、止める事なく冷めた眼で見ていた。
かろうじて、家族としての情や重ねた月日による親しみは残されていたものの、彼女達とて彼を許した訳ではない。お灸の一つも据えられねば為にならぬという想いがあった。
その余裕には、彼女達には自然な感情の流れによって心許した者がいる事も一助となっている。
長く偽恋を掛けられ続けていた彼女達には解除後の喪失感が重く、体調まで崩す程だった。
見かねた者達が陰日向に世話を焼いた。
それらの者達こそが、今は憎からず想い合う良い仲となった男性達であった。
喪失感を誠心で埋められて、心動かぬ女性などあまりいない。彼女達はごく普通の女性達だった。
その後キリトは学園を退学し、行方を眩ませている。
彼の所業は学園内で広く公となっており、偽恋の展開はもはや不可能だと見切った為である。
上級冒険者となったものの、ほぼ全ての女性達を敵に回した彼にとっては学園は針の筵であった。
自業自得でこそあるが、友人と呼べる同性も皆無であったが為に、引き留める者も後ろ髪を引かれるモノも存在しなかった。
ただ、姉妹と幼馴染だけは彼の行く末を心配していたし、彼にとってもその三人だけは特別であったのだろう。丁寧な謝罪と別れの手紙を残している。
後にキリトが再び消息を現すまでの間。最後の足取りとして判明しているのは養父母の住む家だ。
目的は謝罪と感謝であったらしい。
事のあらましを伝え聞いていたらしい養父母は、暇になったのなら農家を継がないか。と誘いをかけた。他の誰が後ろ指を刺そうとも、彼等にとってはキリトは可愛い息子であった。
だがキリトは、これ以上迷惑をかけられない。自分が関われば、良い目で見られないだろう。とそれを断り、その後約四年間、消息を絶つ。
本来。こういった力持つ人間を野放しにしない為の上級登録であるのだが、キリトは隠密術の達者である。
簡易な位置情報検索では引っ掛かりはしない。
組合もそれ程に彼を危険視していなかった為、敢えて捜索する必要などなかった。それが後の悲劇を産む事になる。
歳月が過ぎ、人の想いは流れ、ゆっくりとだが確かに社会は移ろっていった。
ごく自然の成り行きとして、キリトの姉は良い仲の男性と想いを育み合い、やがて婚姻を結ぶ約束をした。お相手は組合の支所長である。
彼は真面目な男であった。何年もかけて想い人の心の傷を癒やし、やがて愛情を打ち明けた。
すっかり彼に絆されていた姉が、求愛を受け入れるのは自然な流れであった。
ごく当たり前の日常と結婚の準備の為に忙しない日々を送る二人の前に、一人の男が現れる。
数年の間行方を眩ませていたキリトであった。
彼等は互いの無事を喜び合い、打ち解けあった。
姉はすっかり立ち直っていたし、家族である弟の事だ。聞きはしなかったものの、この数年の間で弟はすっかり窶れていた。
経緯が事である為に、随分と辛い想いをしたのであろうとも想像できた。
恋情などとっくになくとも、家族としての情はある。許し、癒す事が自らの務めであるとさえ考えた。
そして所長であるが、未来の義弟となるキリトを見込んでいた。
想い人を傷つけた事こそ許しは出来なかったものの、若くして上級登録された手練である。
将来有望で、女性絡み以外では特に悪い話も聞かない。
自身による初の上級登録者という思い入れもあった。彼等未来の夫婦は弟を歓迎し、新居となる家へと迎え入れた。
そこで実際にどのような話し合いが行われ、どのような経緯を辿って、後の惨劇に繋がったのかは判らない。
関係者全ては証言出来る状態になかったし、裁判は開かれなかった。ただ確実なのは、キリトが冒険者組合ロウム支所長を斬殺し、姉の心が壊れたいう事実だけである。
支所長はキリトの双剣により切り裂かれて以後、事切れるその瞬間まで交信により、組合へ情報を送り続けた。
自身が斬られた事に気付いた支所長は、反射的に何故だと漏らしている。キリトは復讐だと小さく返していた。この言葉が一人歩きして、その後。復讐者と呼ばれることとなる。
官憲と手空きの冒険者達は即座に出動し、現場へと駆けつけたが全ては遅かった。
姉は衣服を肌けたまま白痴のように呆然と佇み、支所長は既に事切れていた。
キリトの姿はどこにもなかった。
殺人はどこの国においても重罪であるが、この事件においてはそれ以上の意味を持っていた。
殺害されたのは冒険者組合の職員である。
それも、手を掛けたのは冒険者だ。それが意味する所は組合への反逆。敵対であった。
日常の中では忘れられている事であるが、冒険者組合が当然の様に成り立っているのは公共の利益に適うからという綺麗事などではない。
実際は、強力な暴力機構であるからだ。
彼等の存在が容認されいているのも、国家、それも複数の国家よりも尚野蛮な、暴力そのままの存在であるからでしかない。
だからこそ、思想、宗教、民族、利害などを超えて存在し得ているのだ。その面子に掛けて、敵対者に容赦する事はないのである。
当然ながら国家は、この場合はビタロサ王国であるが。広域指名手配を行い、軍部まで動かして探索に当たった。
仮に組合による報酬に釣られた上級冒険者達が集団で暴れでもしたら、国体が崩れかねないからだ。
彼等は忠誠を捧げる国家の為に必死の捜索を行った。だが、彼等にしてもキリトを見つけ出す事が出来なかった。
それでは緊急依頼として冒険者組合ロウム支所長殺害事件の犯人を、生死を問わず標的とした組合はどうかといえば、驚くべき事にこちらも補足出来ていない。
高額な報酬であるにも関わらずにだ。これは異常事態であった。
後に判明した事であるが、この奇妙な現象にはあの人類種の特性が深く関わっている。それも、不利益のある方向で。
一概に不利益というものの、それは主観的、そして相対的なものであって、現在では明白に不利益として定義されてはいない。
それを証明したこの事案は、後世にとっては大きな意義あるものだった。
結論から言うならば、キリトに齎された不利益は彼にとっては利益でしかなかったという事だ。
彼が被った不利益は無関心。それも強者からのものである。
僅かに時を遡る。




