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なんか。すっごいデカイ顔怖い!!

今日も快調に配達仕事を終えた。

配達件数は43件。回収できたいいねポイントは38ポイントだ。

昨日追加で習得した『配達員』スキルだが非常に有用だった。


【配達ルート最適化】(アクティブ/15ポイント)

最適なルートを表示する。複数の配達先がある場合、自動的に効率の良い順番で道案内してくれる。


【神速の配送】(パッシブ/30ポイント)

全身能力が向上する。(敏捷+10)


地図を持ち歩く必要もなく、専用のウィンドウに表示される矢印が俺を最適ルートへと導いてくれる。一度起動すれば配達が終了するまで維持され、MPの消費もない。

もう一旦『配達員』のスキルはこれでいいかなと思える程だ。


配達を終えた俺は、籠を抱えて再びパン屋を巡る。パン配り作戦を思いついてから今日で3日目。手元にはまだ銀貨3枚分の資金がまるまる残っている。今日も80個の黒パンを籠に詰め込むことにした。

今日はスラムではなくて、直接孤児院のマリアさんのところに向かう。

スラムはまた時間が余れば行こうと思う。

俺は籠からパンが落ちないように注意しながら孤児院へ向かった。



孤児院の前に到着し、俺は軽くドアをノックした。


「こんにちは~失礼します~」


「はーい。あ、ノボルさんこんにちは~」


奥から聞こえてきた声に目を向けると、マリアさんが笑顔で出迎えてくれた。


「すいません。またパンなんですけど受け取ってください」


「パンは日持ちするのでいつでも大歓迎ですよー」


柔らかな笑顔で答える彼女を見て、俺も自然と笑みがこぼれる。


「今日は早いんですね?まだ、お昼前ですよ?」


俺は昨日よりもスムーズに配達を終え、すぐにパンを買ってここに来たのでまだお昼前だ。


「ええ。この後少し予定がありまして。遅くなる前にと届けにきました」


「すいません。気を使ってもらって。ありがとうございます」


マリアさんは深く頭を下げ、感謝の言葉を述べる。ログにいいねポイントが加算される通知が流れた。


彼女は子供たちを呼び、一緒に大量のパンを運び始める。子供たちはどんどん集まってきて、あっという間に賑やかな雰囲気に包まれた。


「今からお昼の時間だから、ここに帰ってきてる子も多いんですよ」


マリアさんが微笑みながら教えてくれる。昨日より少し大きい子たちも混じっているようだ。


「じゃあ、みんな一緒に感謝の気持ちを伝えようね」


そう言うと、マリアさんは子供たちを並ばせ、合図を取った。


「おにいさん、いつもありがとー!」


感謝の声が一斉に響き渡る。揃っているわけではないが、それがまた微笑ましい。俺も笑顔で答えた。


「こちらこそありがとう」


マリアさんが少し申し訳なさそうに言った。


「こんな事でしかお返しできません。申し訳ないですね」


「そんなことないですよ。これで十分です」


実際、この笑顔といいねポイントの回収で十分に報われている。俺はそう心の中で思いながら、丁寧に頭を下げた。


「お昼ご飯の準備もあるでしょうし、そろそろ失礼しますね」


孤児院を後にし、次の目的地へ向かう。


俺が向かったのは冒険者ギルドだ。昼時とあって、ギルドに併設された食堂は冒険者たちで賑わっている。大皿料理が並び、談笑が絶えないその雰囲気は、まさに活気に満ちていた。


「ユフィさん、いるかな」


俺は少し心配しながらカウンターへ向かったが、いつも通りの笑顔で彼女が迎えてくれた。


「相変わらず早いですね~。精算しますか?」


「はい。お願いします。これ、本日分です」


俺は配達所での作業完了届を渡す。ユフィさんは手際よく処理し、報酬を支払ってくれた。


「今日はもう一つお願いがありまして。ダンジョンに行ってみたいんですが、説明をお願いしても大丈夫ですか?」


ユフィさんは驚いた様子を見せながらも、少し茶目っ気のある笑顔を浮かべた。


「え~もう配達依頼やめちゃうんですか?評判いいんですよ~?」


「やめないです。やめないです。ただ、ちょっとダンジョンにも興味が湧いてきたので」


俺がすぐに否定すると、ユフィさんは笑いながら答えた。


「冗談ですよ。ノボルさん、配達大好きですもんね。こちらとしても少しお話がありますので、奥の部屋へどうぞ」


そう言って案内された部屋に向かう。彼女が何を話すのか気になりながら、俺はその後ろをついていった。




俺は促されるままに奥の部屋に進んだ。


扉を開けると、そこには予想以上に豪華な応接室が広がっていた。分厚いカーペットに覆われた床、大理石っぽいテーブル、そしてふかふかのソファ。明らかに俺が今まで経験したことのないような高級感に、思わず足がすくむ。


「こちらにお掛けください」


ユフィさんが柔らかな笑顔でソファを指し示す。俺はその指示に従い、慎重に腰を下ろした。体が沈み込むような座り心地に少し緊張がほぐれる。


「ちょっとそのままお待ちくださいね~」


そう言って、ユフィさんは軽やかな足取りで部屋を出て行った。


「ん?」


一人取り残された俺は首をかしげる。なんだかただならぬ雰囲気だ。


しばらくして、足音が近づいてくる。部屋の扉が再び開かれる音がして、俺はそちらに視線を向けた。


「・・・は?」


目の前に現れたのは、巨人だった。


2メートルを優に超える巨体。全身を覆う筋肉と、顔の半分くらいを覆う刺青。威圧感の塊のような男が、ユフィさんを従えて現れた。


「大丈夫ですよ。この人、この冒険者ギルドのギルド長なので。無体はしないと……思います?」


最後の疑問形が余計に不安を掻き立てる。いや、疑問形にするなよ!


「するわけねぇだろうが。この阿呆が」


巨人は低く響く声でユフィさんを叱責した。刺青がさらに表情を険しく見せていて、本当に怖い。


「・・・ああ、自己紹介がまだだったな」


巨人は俺の視線を受けながら、低い声で言葉を続けた。


「俺はヤルタ・レネガル。この支部のギルド長をしている。巨人族と人間のハーフだ。そうビビるなよ」


ああ、巨人族とのハーフ。なるほどそれでこの圧倒的な風格と筋肉か。


「は、はい。初めまして、天川ノボルです」


俺は慌てて立ち上がり、ぎこちなく挨拶をする。座ったままだと失礼だろうし、首が物理的に飛ぶ可能性すらある。


「いい、いい。座れ。俺もお堅いのは嫌いだ」


ヤルタさんは大きな体をソファに沈ませた。ドスンという音が響く。


俺も彼の言葉に従い、再び腰を下ろす。


ヤルタさんの目が鋭く光り、俺の全身をじろじろと見回してくる。その視線に冷や汗が背中を伝うのが分かる。


「・・・何かお話があるとのことですが?」


なんとか声を絞り出し、話題を切り出した。


「お前、才能持ってるだろ?」


唐突に放たれた言葉に、俺の心臓が跳ねる。


「え?」


いきなり核心を突かれ、思わず目をそらしてしまった。


「もしかして、あれで隠していたつもりだったのか?」


「え?」


「え?」


互いに驚きの声を上げ、なんとも言えない間が生まれる。


「バレバレでしたか?」


俺は一応確認してみたが、ヤルタさんは呆れたように肩をすくめた。


「バレバレもいいところだ。たった十数日で配達件数を伸ばし、あの速度で街中を駆け抜ける。才能持ちだって宣伝してるようなもんだぞ」


「確かに」


俺は頭を抱えた。マジックバックさえ隠せばバレないと思っていたのが甘かった。全速力で街を駆け抜ける俺の姿は、どう考えても常人のそれじゃない。


「配達の才能か?つまりマジックバック持ちだな」


ヤルタさんが鋭い眼光を向けてくる。


「はい、その通りです」


俺は諦めて事実を告げた。


「そうか」


ヤルタさんは重苦しく頷く。


「冒険者ギルドって、才能についても詳しいんですね」


場の空気を少しでも和らげようと、俺は質問を投げかける。


「そりゃあな。冒険者ギルドができてから1000年近く経ってる。その中で、次元の違う能力を持つ奴が山ほどいた。その謎を放っておくほうがおかしいだろ?」


確かにその通りだ。


「ギルドには嫌でも情報が集まるんだ。才能に関するデータも本部が取りまとめている。冒険者の中に才能が開花した奴がいれば、保護するのも俺たちの仕事だ。悪党の手に渡ったら大変だからな」


「大変そうですね」


「まったくだ」


ヤルタさんは深く溜息をつく。


顔怖いけど悪い人じゃなさそうだ。

流石にチートみたいな今の状況をすべて洗いざらい話すことは流石にしないが、少しは話しておかないと後々動くのに不便そうだな。

俺は意を決して『拳闘士』の話をしてみる。


「実は・・・」


「あん?」


「もう一つ才能がありまして」


「あんんん???」

「えええええ??」


ヤルタさんとユフィさんの声が重なり、部屋に響く。あ、これダメなやつだ。

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