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お約束の展開を全力ダッシュで切り抜けるヘタレですが何か?

今日も俺の朝は配達から始まる。

昨日マジックバックを最大強化したことで、自分の配達分の荷物をまとめて収納することができた。そのおかげで、配達所に戻る手間がなくなり、効率が大幅に向上している。朝一番で最適なルートを頭に叩き込むとそのままの勢いで配達をスタートさせた。


結果、開始して1時間程度で全ての荷物を配り終えることができた。

配達45件のいいねポイントは42ポイントを回収。

バルデルさんに配達完了の報告をして、配達所を後にした。


「さて、今日はどうしようか」


冒険者ギルドで報告を済ませようかと思ったが、あまりにも早く行きすぎると目立つ気がしたので、後回しにすることにした。まずは宿に戻り籠を持ち出してパン屋巡りを開始する。今日は籠に限界まで詰め込んで85個の黒パンを購入した。


スラム街に向かうと、昨日のことを覚えているのか、暇そうな子供たちがすぐに俺を見つけて駆け寄ってきた。


「おじさん、ありがと!!」


子供たちからの感謝の言葉が滝のようにログを流していく。いいねポイントが次々に加算されていくのは爽快だ。


すると、背後から聞き慣れない声が飛び込んできた。


「おー、景気よさそうじゃねえか。俺たちにも分けてくれや」


振り返ると、見るからにチンピラ風の男が3人連れでやってきていた。子供たちはそれを見て、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。いや、君たちの判断は正しいよ。


「おい、なんとか言えや」

「パンじゃなくて寄越す物、わかってんだろ?」


どうやら金を要求されているようだが、不思議と危機感は湧いてこなかった。俺の敏捷と耐久なら、最悪逃げ切ることは容易だろう。戦闘力には一切振っていないし、ここで騒ぎを起こすのも得策ではない。


「いや、これは子供たちに配る分なんで。大人は頑張って稼いでくださいね」


俺は毅然とした態度で答えた。


「あん?俺たちもスラムの住人だぞ?平等に扱えよ、オラァ!」


論理破綻も甚だしい言い分に、俺は呆れるしかなかった。こういう輩に付き合っても仕方がない。


子供たちが安全な距離まで散ったのを確認し、俺は無言で全力ダッシュを開始した。


「うわっ、早え!」


後ろでチンピラが叫ぶ声が聞こえたが、3秒もかからずに振り切った。念のため30秒ほど全力で走り続け、ようやく息を整える。背中の籠でパンが暴れるのを気にする余裕もなかったが、久しぶりに全力で走ると、敏捷に割り振ったステータスの効果を改めて実感する。


「やっぱり敏捷は裏切らないな」


そう思いながら背中の残ったパンをどうしようかと思い悩む。そこでこの辺に孤児院があることを思い出した。


15分ほど街を歩き、孤児院にたどり着いた。ここは以前配達で一度訪れたことがある場所だ。


ドアをノックすると、中からシスターさんが現れた。彼女は20代後半くらいだろうか。穏やかな表情に気品を漂わせ、見るからに優しそうな女性だった。


「はい、どうしましたか?」

「すみません。このパンを寄付したいのですが、よろしいでしょうか?」


シスターさんは一瞬驚いた表情を見せた後、柔らかな笑みを浮かべて答えた。


「ありがとうございます。非常に助かります」


彼女は籠の中をのぞき込み、さらに驚いたようだった。


「もしかして・・・昨日スラムでパンを配っていたのもあなたですか?」


どうやら子供たちが持ち帰ったパンの話を聞いたらしい。


「ええ。スラムでパンを配っていたのは僕です。今日は少しトラブルがあって早めに切り上げたので、残ったパンをどうしようかと思いまして」


そう答えると、シスターさんは納得したようにうなずき、優しい笑顔を向けてきた。


「ふふふ、優しい方なんですね」


その言葉に俺は少し照れくさくなり、目をそらした。


「もしよろしければ、中をご覧になりますか?」


時間にも余裕があったので、俺は彼女の誘いを受け、孤児院の中に入ることにした。


孤児院の中は意外と清潔で整然としていた。建物自体は古びているものの、掃除が行き届いているのが分かる。シスターさん、いやマリアさんというらしいが、彼女の気配りが随所に感じられた。


マリアさんがパンを受け取った後、奥の部屋に消えたかと思うと、数分後には大勢の子供たちを連れて戻ってきた。


「お兄さん、ありがとー!」


40人近くの子供たちが一斉に感謝の言葉を口にした瞬間、ログが滝のように流れていいねポイントが加算されていく。


俺が不思議そうな顔をしていると、マリアさんが微笑んで説明してくれた。


「昨日の話を聞いて、感謝の気持ちを伝えるようにと話しておいたんです。迷惑でしたか?」


「いえ、むしろ嬉しいです。感謝されるのが好きでやっているようなものなので」


素直な気持ちを伝えると、彼女はさらに眩しい笑顔を見せた。


「やっぱり、優しい方ですね」


何度も優しいと言われると、さすがに気恥ずかしくなってくる。俺は目をそらして誤魔化すしかなかった。実は下心があってとは言えない。


その後は子供たちと遊び、マリアさんと談笑しながら孤児院の中を見学した。さらにはお昼ご飯までご馳走になり、気づけば日が傾き始めていた。


孤児院を後にすると、冒険者ギルドに立ち寄り、朝の配達分の精算を済ませた。その後、屋台で適当に晩飯を購入し、宿へ帰る。


宿に戻った俺は、今日の収支を計算しながらログを眺めた。


本日の活動結果


配達:いいねポイント42

スラム街:いいねポイント65

孤児院:いいねポイント38

合計:145ポイント


収支


配達報酬:+135銅貨

パン代:-85銅貨

宿代:-10銅貨

朝晩の食事代:-8銅貨

合計:+22銅貨


昨日の残りポイント7ポイントと今日の145ポイントで、合計152ポイントに達していた。これを眺めながら、ふと思う。


「そろそろ戦闘系の職業も視野に入れた方がいいかもな」


今日のチンピラ程度なら逃げられるが、もしも俺より強いやつが現れたらどうするか。マジックバック持ちという事実がどこかで漏れれば、狙われるリスクは高まる。


とはいえ、まずは配達に役立つスキルを優先するべきだ。


取得スキル

【配達ルート最適化】(アクティブ/15ポイント)

最適なルートを表示する。複数の配達先がある場合、自動的に効率の良い順番で道案内してくれる。


【神速の配送】(パッシブ/30ポイント)

全身能力が向上する(敏捷+10)。


スキルを2つ取得し、残り107ポイント。戦闘系の職業を取得するかどうかは一晩考えることにした。



ステータス(スキル追加分)

名前:天川 昇

種族:人間

職業:配達員

レベル:20

次のLVアップまで:いいねポイント41

HP:30 / 30

MP:15 / 15

力:10

知力:10

敏捷:39(+13)

耐久:38(+5)

器用:10

運:10


いいねポイント:107


スキル:

【簡易マジックバック】【荷物整理術】【改良マジックバック】【万能マジックバック】

【配達ルート最適化】【神速の配送】【軽やかな足取り】【疲労軽減術】


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