2 2人の約束
婚約式になった。お互いにしっかり顔も会わせてないから、婚約など実感がわかない。
2 2人の約束
婚約式の時間になった。入浴して、ドレスに着替え、身だしなみを整えて居ると殆ど時間はなかった。マリエールが急いで会場に着く頃には、全員揃っていた。司会が進行し始めた。両国代表の挨拶
両国の貴族らのお祝い。婚約の誓約書の取り交わし。本人同士の挨拶などあれこれあったが、その後は懇親会である。当事者としての意識もなく言われるがまま、サインしたり応えたりして、今は側近が取って来た物を食べたり、挨拶しに来た人々の対応したりしている。側仕えを除き同じ年齢の人間を見る事がなかったマリエールには、ラキウスという存在が珍しい。好ましい存在かどうか分からないが、出来るだけ良い関係で居たいと思う。
挨拶が一段落して何を食べようかと思っていると、頭の中で言葉が聞こえる。
「マリエール、ラキウスだよ。念話で話しているから誰にも聞こえないよ。落ちついてね。心の中で私に話しかければ伝わるから。」
マリエール驚いて叫びそうになったり、キョロキョロ見回しそうになったが、なんとか堪えた。
「何で私達そんな方法で会話が出来るの。」
取り敢えずそれを聞いた。
「まともに会ったのがたった今だろう。しっかり判ったのは今だけどきみの噂を聞くと出来る可能性は高いと思っていた。私はきみに協力出来ると思う。」
何の協力なのか分からない。
「どういう事。」
ラキウスは私の事を見ていない。この国の東の国の派閥の人間と熱心に話ている。
「この国の東の国からの独立さ。私ときみが協力すれば、この国の東の国よりの派閥を一掃出来るし、東の国に対抗出来る力を持ち東の国に痛打を与えられる。後は外交かな。」
何を話しているのか。この念話というのも分からないが、東の国からの独立なんて余計に分からない。
「理解が難しいかも知れないが、このラキウスという人間は兄に毒殺されているんだ。私は生まれ代わり、転生者というものさ。」
転生者という言葉は不思議とピンと来て、やっと落ち付いた。
「なんとなく判ったわ。私は転生者かどうか分からないけど、知らない筈の知識がいろいろ知っているわ。特に医学の知識が多いわね。魔法が得意なのも転生者だからだと思っていたわ。」
こんな話が出来る相手が現れるとは思ってなかった。
「物心が付く前の転生だったのだろうな。私はラキウスが7歳の時の転生だったからラキウスの記憶と前世の記憶がある。軍事の大学を出て少将として軍を率いてた。戦死だ。年齢的なギャプもあり、ラキウスとして上手く生きられなかったが、学問は出来たと思っている。東の国を攻撃するノウハウはあるつもりだ。ただラキウス単独でクーデターを起こすには無理があるから、チャンスを狙っていたのさ。」
転生者同士がこうして出会うなんてあるんだ。マリエールは前世の記憶ではなく知識だけがあるから、どんな前世だったか分からないし、どうして死んだかも分からない。
「協力しあう約束したからね。裏切りらないでよ。」
ラキウスは笑った様だ。
「お互いににな。」
2人の約束は成立した。
ラキウスから念話があった。我が国の東の国からの独立のために協力してくれるという。