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毒蜜をなめる  作者: 国語だけ受験したい15歳
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結婚

 いよいよ婚礼の前夜となり、浅井家の屋敷で別れの儀が行われました。

 五人の姉妹が揃うことは実に六年ぶりでありました。父上を上座に据え、素焼き杯で数度酒を酌み交わされました。

 

 そして、立冬の日の早朝、赤松殿よりお迎え役がいらしました。これは出立の儀と呼ばれ、新郎側のお迎え役は新婦の屋敷で用意された酒食を取りながら、新婦が外へ現れるのを待ちました。

 やがて無子が白装束すがたで現れると、顔合わせのときとは比べ物にならないほどの乗物に無子は乗り、それに続いて二十ほどの侍女が嫁入り道具を持って赤松殿の屋敷へ向かいました。

 屋敷に着くと、奥御殿で二番目に大きな部屋を自分の部屋として与えられ、この日は新郎に会うことはなくご休息となりました。無子の与えられた部屋は、通称、「さくらの部屋」と呼ばれました。

 

 翌日、結婚の儀が執り(とり)行われました。俊光様と無子を上座に据え、三三九度さんさんくどと呼ばれる儀を行うと、五十ほどいる侍女たちが皆いっせいに頭を下げて、固めの儀を終えました。ここで無子は、正式に無姫となりますので、私も、ここからは敬いの意を込めて無姫様と呼ぶことといたします。

 この後、無姫様は白装束から美しい刺繍の入ったお色柄の着物に着替えられ、赤松殿一門との宴が催されました。そのとき無姫様が一番驚かれたのは、二度目のお顔合わせで失礼なことを言ってきたあの男が、俊光様のお母上である照姫てるひめ様のすぐ隣に座っていることでありました。

 その男は俊光様のご令弟れいていで、朝光あさみつ様といわれました。

宴が終わると、お床入りの儀として、初夜、夫婦の契りをお結びになりました。

 

 全ての儀式を終えた後も、新婦は三日間部屋の外へ出ることはできませんでした。

 ようやく婚礼の後片付けも済んで、無姫様が部屋の外へ出ると、庭は真っ白で、靴が隠れてしまうほどの雪が積もっておりました。さくらのそばには、渡り廊下があって、それを渡ると寝室と俊光様のお部屋、それから朝光様のお部屋がありました。無姫様と朝光様のお部屋は、庭を挟んで向かいで、互いによく見ることができました。無姫様が庭を眺めていると、朝光様もお部屋から顔を出して、目を合わせてくることもありました。

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