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失われた魔術を求めて  作者: ちむる
第9章 信じた結末
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第2話 これからの方針

 そうこうしている間に城門を通過。追いすがってくる旅人が数名いたけど、彼らは別の兵士たちが阻止。つつがなく入城することができた。


 入城したそこに広がっていたのは大通りの左右に商店や露店が軒を連ね、城壁の外とは打って変わって活気に満ちていた。

 子供達が走り回り、夕方の時間だからか夕食やその材料を求める客でごった返している。

 これだけを見ると、旅人に対してあのような扱いをしている国だとは到底思えない。

 

 私達には街を東西に貫く大通りに面したとある宿屋が宛がわれた。そこまで兵士はついてきていて、宿屋の前で改めて男女別を含めた人数を確認した上で城門方向に戻っていった。

 ここは宿屋街なのか3階建てくらいのレンガ造りの似たような建物が緊密に建ち並び、多くはテラスがあって夕方でもあるせいかそこでくつろいでいる者達も多かった。


 私達は何時また彼らが戻ってくるかわからないから差し当たりその宿に泊まることとし、それぞれが部屋に収まった頃合いでエスタがみんなに声をかけて回った。


「じゃあみんな、いったん僕らの部屋に集まってくれるかな」


 自動的に一番広くていい部屋があてがわれた私達の部屋に偽隊商を組んだみんなを一度集める。


「まずみんな、お疲れ様でした。おかげでつつがなく街に入ることができました。ありがとう」


 頭を下げる。私やカイルも一緒に。


「いや、それはお互い様だって。魔物や賊とも遭遇したがこうしてあんたらといたことで無事に抜けられた。こんな砂漠の真ん中でしっかりと休めるようになったんだ。感謝してるよ」


 と、もう怖い印象があるのは外見だけで心優しいとバレているスモーキー。


「俺らも、魔物も出たし何よりあの賊相手じゃ良くて捕虜だ。助かった。」


 ジェガンの言う通りかもしれないが、みんなで結束できたおかげであの場を乗り切れたのだと思う。


「えっと、私から一言いいですか?」


 声を発した私に視線が集まる。


「私達は一つの隊商という建前でここに入りました。しかしいつ偽のものだとバレるかわかりません。そのためエスタやカイルとも話し合いましたが、長期間ここにいるのはリスクが大きいと考えています」


 見回すと一同頷いてくれた。


「そこで、ここの滞在は最長でも4泊までとしようと思います。どうしても二日は休養と物資調達に必要だと思いますので3泊程度で用意ができたパーティーから順次出立してください。一応建前としては指示書を作りました」


 エスタが書いてくれた紙をそれぞれに手渡す。


「これは針路の先駆けとして先に出発するように指示するものです。もしパーティー単独での出立に形式が必要でしたら使ってください」


「そこまで配慮してくれるのか。ありがたいな」


「ウチはしばらくここで商売するがね。一応ありがたくもらっておくよ。……じゃあここで無事に街に入れた記念に一曲!」


「よっしゃ今晩は宴会だ!」


 この夜は楽しかった。吟遊詩人の皆の奏でる歌と共に皆でお酒を飲んで、料理を食べて、それは真っ暗になっても続いた。


 短い間だったけど、共に過ごした仲間達だ。ここから道は分かれて、二度と道が交わることはないかもしれない。

 それでも最後はこうしてともに笑い合える関係になれたのは嬉しく思う。願わくば彼らの行く先が安全でありますように。


***


 お酒と食事でふわふわになった私達だが、私達としてどうするか、部屋に戻ってから話し合った。


「僕らは一応隊商の長って事になっちゃってるから4泊して行こうか」


「そうね。偽って入った分気持ち悪いし、できれば早くここを出たいけど」


「人には責任ってものがあるからなあ」


「そうね。言いだしっぺのカイルさん」


「あん?仕切ったのはレベッカだろ。あと元凶はエスタだから文句はそっちに言ってくれ」


「あの状況で断れるわけないでしょ。二度とやらないわよもう。あとエスタも!もう変なこと考えちゃだめよ」


「ごめんごめん。だけどレベッカ、レベッカが元々商人だったってことは大きかったよ。でないと他のジェガンさん達もスモーキーさん達も納得しなかったかもしれない」


 それはそうだと思う。見習いでも経験者がいるかどうかは大きな違いだろうから。ある意味レベッカの経験は私にとっては借りものみたいなものだけど本当にうまくいってよかった。

 それから私達3人だけでまた軽く酒盛りをした。自分たちの部屋でしていたこともあって、酔いに任せて遠慮なくゴロゴロしたところまでは記憶にあるが、気づいたときには朝になっていた。

 眠そうなカイルに聞いたら、私は遅くまでカイルを抱き枕にして寝ていたらしい。

 何も覚えていないし、仕方ないね。


 なおカイルはそんな私のせいで少々寝不足だったらしい。街中とはいえ暑いのは変わらないから少し申し訳なく思う。

 魔術を使いながら寝るのは少々難があるが、今夜は涼しい寝室を提供して快適な睡眠を取れるようにしてあげようと決意した。


「ところで物資の補充以外に何か用事はあるかい?」


「いや。特にないが」


「それならちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな?」


 エスタの提案でこの日の予定が決まった。買い物をして墓参りだ。




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