第7章 エピローグ2 レベッカという女
レベッカという女がわからない。
経歴は、なるほど。
武家で生まれ、家出して、商人として数年を過ごして隊商が壊滅した勢いで冒険者に。
剣がそれなりに使えることは(それにしてはひどく実戦向きだが)武家生まれで説明できるし商人崩れが冒険者になる例は多いからいいとして、魔術はいつどこから来た?シモンという師匠がいるらしいし、それが嘘だというわけではなさそうだ。師匠がいないのにここまで魔術が使えるはずもないから。
ただ、魔術師の名門と言われる家系でさえもここまではやらないし、やれないだろう。家族がはっきりしているレベッカ。他人にあそこまで魔術を仕込む奴なんかいるのか?
それにどうもレベッカの言動は半端すぎる。本当に商人をしていたのか?
警戒すべき相手ではなさそうだが、まだ何かを隠しているような気がしてならない。
だがいずれにしても、レベッカが知りたいことと俺の知りたいことは隣り合っているように思える。俺が知りたいことは、レベッカと共にレベッカの知りたいことを探していればいずれ見つかるような気がする。
だから当分の間はレベッカと過ごすことになる。
むやみに不和を生じさせる必要もない。
人として気が合わないわけでもない。楽しくここまで来ている。
レベッカの実力は他に替えが効かないのだから、背中を預ける相手としても申し分ない。
気にしていないふりをしておこう。
まだ、今は。
第7章をご覧いただきありがとうございます。
主人公、いや、レベッカという人物についての清算は不可欠で不可避という回でした。
父親の対応があっさりだとか、こんな簡単にあきらめるのかと思うかもしれません。しかしこの世界での魔術の才能というのは絶対であり覆りません。才能がない場合に後付けで才能を与えることはできませんし、魔術師は聖女にはなれないし聖女も魔術師にはなれません。同一の効果がある魔術があっても(例:怪我を治す治癒魔術)理屈が全く違います。
だから娘が全く違うモノになってしまったという現実を強烈に父親に突きつけることとなったのです。その上、貴族として次女を跡取りと定め5年。今更上の娘に帰ってこられてもうれしいがそれ以上に困るという裏の問題もありました。
レベッカに対する義理を果たした主人公。今後はどんな旅をするのでしょうか。ご期待ください。
次は幕間としてまた三つの前世のエピソードを描く予定です。




