幕間2 エピローグ 精霊銀と迷宮の仕組み
ご満悦の表情で奥から調達してきた精霊銀鉱石を抱えるアレクと共にダンジョンから引き揚げた私達。多頭龍を倒して出現した階段を昇ったらなんと迷宮第一層への入り口の近くに出たのだ。
視界に入り口を捉え、潜った深さほど階段を上っていないにも拘らず地上に出られたことに驚いているうちにいつの間にか出口が消失。私達はあっけにとられながら帰還を果たしたのだった。
軽く粘りがあって強度のある理想的な精霊銀だけど、子供ほどの大きさもある鉱石は流石に重い。
いいだしっぺのアレクが全部責任をもって持ち帰ることが多数決で決まり、その代わりにアレクに身体強化をかけて抱えられるようにしてあげた。今はカーターを先頭にフェリナが2番手、アレクが続き最後尾は私という形でアレクを守るように街へと戻った。
迷宮を越えて最後に分かったことがある。
こんな迷宮の仕組み、誰も口外するわけがない。
古代文字を解することができなければおよそ完走はできないだろう。
ならば、言う必要など、あるはずもないか。
そしてもう一つ、確認したことがあった。
この”再構築型”の迷宮に対して一つの仮説があったのだ。
”あの迷宮は、前に完走した者が光となって現れるのではないか”と。
精霊銀を剣と人数分のナイフに加工し終えてこの街を立ち去る前、みんなにお願いして迷宮の第4層に立ち寄り、鍾乳石が門を形作る入口に一度だけ足を踏み入れてみた。
すると、また光が出現した。
今度は3つではなく、4つ。赤青緑そして白。
そしてその光達は、身に覚えのある挙動をしながら、奥へと消えた。
私達はもう追わない。その先は確かめなかった。私達がやるべきことではなく、次のパーティがやるべきことだからだ。
目的を達して帰ろうとしたが、私だけはもう来ることはない第4層の入口を振り返り、頭を下げる。
「師匠、ありがとうございました。御恩は、一生忘れません」
こうして、一つの迷宮を踏破した。
私達が魔王を倒す、半年ほど前のことだった。




