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失われた魔術を求めて  作者: ちむる
第15章 魔王城
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第1話 サルステット王国

 サルステット王国は気候としてはやや寒い。夏は暑いけど冬は雪も降るし地域によっては雪で道が閉ざされてしまうこともある。

 そんな気候だから比較的背の高い針葉樹を中心とした木々が多く、道中見てきたような熱帯性の生き物を見かけることはない。

 今は冬が明けて1か月というところだろう。緑の山々が眩しく、そして美しく映る頃。ちょうどいい季節に来る事が出来たと思う。


 そんな長く過ごしたこの地に、帰ってきた。

 先ほど隊商を護衛する仕事をしながら入国のための関所を通過。

 ほどなくして所在していた最初の街の入口で隊商と別れてから、茶店を見つけ食事をとりつつこの国の地図を広げて今後のことを話すことにした。


「さっきの商人から聞いたけどサルステット王国の王都はここ。でも正直ここに用はないわ。魔王城はこの街のあたりのはずよ。クローネっていう街にあるみたい。ここからあと10日ってところね」


 今いるこの辺りも何度か来たことがあるはずだが、あまり印象に残っていない。

 新たな街道が拓かれているせいもあるだろうが、そのおかげか従来もっとかかっていたはずの魔王城の所在する地域まで短縮されている。


「10日か。あと10日でこの700年耳にしてきた魔王城に出会えるんだ……」


 エスタは恍惚ともいえる表情を隠せないでいる。あっちの大陸からしたら世界で一番遠いところでもある。お金もかかる。道中魔物も賊もでる。2000年とも3000年とも生きると言われているエルフであってもここまで来るのは簡単ではないだろうから喜びもひとしおというところか。


 そう考えると、私自身長い旅をしてきたと思う。

 転生してレベッカになったのがレベッカがもうすぐ15になろうかという時だった。

 そして今はもう20歳。カイルは22歳だし、この5年間歩き続けてきたんだなと思うと感慨深くなる。

 あとわずかな道中だ。


「じゃあサルステット入国を祝して酒場でも行かない?次の宿場町までは丸一日かかるらしいし、今日はここで休みましょう?」


「いいけどレベッカ」


「何?」


 カイルがからかうように言った。


「酒に弱いくせして大好きなんだもんなあお前」


「なっ!?」


 そう、レベッカの酒の弱さは多少の慣れで改善した部分はあるが前世と比べたら五分の一も飲めないだろう。2杯で実質的な限界だったのがコンディションが良ければ4、5杯までならなんとかいけるという程度になっただけだ。


「だよなー。酔っぱらって突っ伏したレベッカ運ぶの地味に大変なんだよな」


「ねー。なんだかよくわかんないこと寝言でもにょもにょ言ってるし」


 はい?寝言?


「私、寝言言ってるの?」


 3人は顔を見合わせて爆笑した。


「あははは!今更気づいたのか!この間はなんだったっけ?カーターがどうとかカルラがどうとか言ってたよな!」


「そうそう!誰なんだろうねってみんなで話してたよ」


「後はあれだな、子供に結婚おめでとうなんて言ってたんだっけ」


「1か月くらい前の寝言の話だろ、それ。レベッカに子供がいたなんて知らなかったぜ!」


 そんなもの「レベッカ」にはいないのはみんなわかりきってるから笑い話だろうが、前世では何人も子供がいた立場からすると笑えない。

 

 それ以上はいけない、それはみんな前世の話。


「えっと、それいつから言ってるの?私。最初から?」


「そうだな、最初は酒に潰れたら朝まで起きなかっただけだがこの大陸に来た頃からか?寝言言い始めたの」


「そ……そう」

 

 きっとポートサンセットに辿り着いてから、心の中の何かが緩んだのだろう。お酒、弱いけどやっぱり好きなんだよね。でもせめてみんなに転生者だって告げるまで控えようかなぁ……


 その後ニヤニヤするみんなを横目にやっぱりお酒は飲んだ。そして何とか意識を保ちつつベッドにたどり着いて朝を迎えた。

 この日は寝言はなかった様子。


 目を覚ましてから二日酔い用の解毒魔術でなんとか気持ち悪さをごまかした後、一つ確認したいことがあったからフロントで仕事をしていた宿の店主のところに行った。


「ねえマスター」


「なんだ?」


「聞きたいことがあるんだけど」


 それははっきり存在するであろう”私”の痕跡。

 さああの場所はどうなっているのだろうか。



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