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失われた魔術を求めて  作者: ちむる
第14章 久しぶり、私
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第6話 答えを噤む

「レベッカ、ここはどういう場所なんだ?」


 彼らも通常の魔物との戦闘のおかしさに気づいたらしい。

 私達と、光達。ほとんど交互に魔物との戦闘を繰り返していく。しかも私達と戦わない魔物は私達を全く無視するし、エスタが反射的に放った矢も弾かれてしまうのだ。


 要するに、私達が戦う必要がない魔物に私達は干渉できないし、魔物も私達を相手にしない。

 こんな馬鹿な話がまかり通っている迷宮。私にどういうことなのか聞きたくなる気持ちはわかる。

 でもまだ答えるわけにはいかない。


「いずれわかるわ。ほら、次来るわよ」


 坑道の跡地と言うことからやはり土系統の魔物が多い。

 蝙蝠や爬虫類、デーモンといった系統のどこにでもいる魔物は別としても、ゴーレム等も出現し始めて難易度はやや上がりつつある。


 ここのゴーレムはほとんど土でできたものもあればレンガで構成されたものまで幅広い。 前者はともかく後者は硬い。

 だから後者の場合もっとも攻撃力のあるギルが全力でハルバードを振るえるように持っていく必要があった。 

 

 ゴーレムの攻撃は主に拳を振り回す打撃攻撃が中心だ。

 だからカイルが巧みなステップでゴーレムを翻弄し、私の魔術やエスタの弓矢で頭に光る眼を潰してゴーレムの注意をギルから完全に外すのだ。


 そしてゴーレムの死角に回ったギルがハルバードを全力で叩きつけて通常コアがある胸元付近を両断するか背中から正中線をバッサリとやることでようやく沈黙させられる。


「おい!光達はあんなに遠くに行っちまったぞ!」


「急いで!遅れないで!」


「ああもう!俺たちのペースでいかせてくれ!」


 戦闘を終えた私達は光に置いていかれがちだ。その意味で前世パーティーは強すぎた。

 その前の師匠のパーティーに遅れることなくゴーレムだろうが何だろうが薙ぎ倒して行けたのだから。

 

***


 なんとか光達に追い付いてからしばらくして辿り着いた第5層の一番奥。


 ここのボスはかつての勇者パーティーが魔物を倒してくれるはずだ。

 

「レベッカ!今度は何をするんだ?」


 カイルは出現した巨大な蜘蛛のような魔物を相手に剣を構える。


「そいつは無視して!少し迂回して広間の奥へ!」


「え、いいのか?」


「いいの!あれはあの光達に任せて!」


「え……ええ?」


 三人とも困惑顔だ。第4層奥の魔物は私達が倒したのだから当然だろう。

 私としては時間が欲しい。前世ではあの蜘蛛のような魔物相手に戦っている間に師匠のパーティーが奥で何かをしていた。

 その何かがわからないから余裕が欲しかったのだ。


 私たちが魔物に完全に無視されながら半ば一目散に広間奥に到達したとき、前世の私たちが後ろで蜘蛛と戦闘を始めた。


 奥にあったのは…ナニコレ。


 石碑のような横長の長方形の台座に凹みがあって、手のひらサイズほどの石板が縦3横4、計12に配置されている。

 そこにはそれぞれ横書きで1行か2行の古代文字が刻まれているけど、文章として成立していなくてばらばらの意味にしかならない。


「え、何これ?」


 その板はそれぞれ外れるようになっていて場所を変える事が出来るようだ。一枚を手に取ってみる。


「あん?なんて書いてあるんだ?」


「いや、その、例えばこれの板、上の行が”は対の”下の行が”なり。”って書いてあるんだけど、どういうこと?」

 

「つまりパズルだね」


「パズルって何?」


「うん、一部の国で遊ばれているものさ。きちんと組み合わせを作る子供のおもちゃみたいなものだよ。だからこれを上手いことこういう風に…」


 エスタは空白を使うようにパネルを動かす。


「こんな感じで正しい順番に並べていくんだ。だけど僕はこの文字を読めないから…」


「なるほどね、つまり……」


 異なるパネル同士のつながりを意識してみる。エスタが適当に動かしたところが

”存在に非 ずして同一”

”否、光は我 らが眼を”

 と隣り合う板のように解釈できる内容だった。


 縦のつながり、そして横。

 するといくつかの文章が浮かんでくる。


「これをここに、これをこうして……こうか!」


 浮き出てきた文章は、常用語に直すと


”かの者たちは必ずしも悪ならず。光と闇は対の存在に非ずして同一のものなり。否、光は我らが眼を晦ませるもの。その眼を閉じ無を見よ。光の示す先に答え無し。


 ナニコレ……本当にここの古代文字は何が言いたいの?


「本当にこれでいいの?まあいいか。……すぅ、”かの者たちは必ずしも悪ならず。光と闇は対の存在に非ずして同一のものなり。否、光は我らが眼を晦ませるもの。その眼を閉じ無を見よ。光の示す先に答え無し”」


 出来上がった文章を読んでみたが、どうやら正解だったらしい。

奥へ続く通路が開き、私達と光の間の床が陥没し、その先には下に下る階段が現れた。ああ、これが正解なのか。

 ふと視線を魔物の方に向けると、ちょうど光達が魔物を倒したところだった。


「じゃあ行きましょう」


「あ、ああ」


 前世で第4層の最初に見たものは何て書いてあったっけ。

 あれも意味が分からないことが書いてあった気がするけど、この迷宮は何が言いたいのだろう。


「レベッカ、これ、読めるんだね。どうして?」


 エスタのその問いに、私は答えなかった。



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