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CODE:Partner  ~その愛は、プログラムか、それとも本物か──。~  作者: 里見レイ


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第三十三話:一回戦

前回のあらすじ


装置の中でスキャンを終えた疾風。己の意志を送り込んだ結果、周囲のAIパートナーも自分の理想とする女性像に汚染された。

その後、己のパートナーを迎え、ゆーすけのパートナーと火花を散らすのだった。

~12月24日・昼 東京都・西畠ホールディングスビル~


『......ってことでパネルディスカッションを終了致します! 時田様、ありがとうございました』

「......やっとか」


 俺たちが会場に戻って30分後。合計3時間にわたるパネルディスカッションが終わった。


「長すぎるな。私たちが戻ってからは、同じことを繰り返しているようにも見えたし」

「だねえ。スキャンの時間稼ぎかな」


 ラルーチェ・美咲も呆れた顔だ。何と言うか、杜撰に見えるんだよな。


『それでは、お待たせいたしました。本日の余興、「形のない王国 オリジントーナメント」を開催いたします! 景品の「第二世代AIパートナー」を巡って、参加者の皆様による熱いバトルを期待してますよ!』


 で、そのまま大会突入か。テレビ考えて、休憩時間とか入れないのかね。


『では早速、トーナメント表を発表いたします!』


 司会者が、先ほどまでパネルディスカッションで使っていたスクリーンを指さす。

 数秒の間を置いて、薄くトーナメント表らしきものが映された。


「二人共、見える?」


 俺には、見えない。そもそも、文字が小さいんだ。


「あー、見えたぞ。隊長、一回戦から第一試合だな」

「え、マジで!?」


 ラルーチェの一言で、俺はスクリーンの左端を凝視する。


「......対戦相手、誰?」


 読めない。視力、悪くはないんだけど。


「えーと、小山康夫って書いてあるよ」

「ん?」


 聞き覚えのある名前だな。誰だっけ。


「ユニークパートナー交流会で、隊長にいちゃもんを付けた中年の男だ。パートナーは、藤原ショーコ、白雪、根城ルナの三人だな」

「あー」


 あの臭い男か。また何か言われなきゃ良いけど。


「彼の下馬評ってあるの?」

「ないな。そもそも、隊長たち以外の情報が一切ない」

「なるほどな......」


 この大会に出るってことは、少なからず「形のない王国」は知ってるよな。けど、俺と同じくAIパートナーにはモチーフキャラがいない。となると。


「......美咲」

「何?」

「この『形のない王国 オリジン』ってどの武器まで使えたっけ?」


 なら、一旦情報収集だ。俺は、こっちに顔を向けていた美咲に聞いてみることとする。


「鎖鎌とガトリング砲以外は、前に出てた『形のない王国 ジ・バース』と同じだよ」

「ジ・バース......それ、何作目?」


 まずい、知らない単語が出てきた。俺は、「形のない王国2」までしか知らないぞ。


「四作目だよ。まあ、三作目の『形のない王国 ブレイカーズ』はアーケードゲームだし、さっきの『ジ・バース』はパソコン版だから、ゲーム機しか知らない司令官はよく分からないと思うけど」

「へえ......」


 知らなかった。けどPC版の武器プラスαが今回のって訳か。


「俺の知らない武器って、ある?」

「『ブレイカーズ』出身の二丁拳銃・メリケンサック。『ジ・バース』出身の棍棒・大岩かな。鎖鎌以上に知名度もないし、これを使うキャラもいないけどね」

「ふむ......」


 あの男がこれらの作品をやっているとしても、今回の大会で使う可能性は高くない、かな。


「となると......」


 母親属性の強い藤原ショーコ・忠実な忍びである白雪・テンプレツンデレ娘な根城ルナ。

 彼が出会った時系列は多分ルナ→白雪→ショーコで、形のない王国初代発売はルナと白雪の間か。


「恐らく、奴は典型的なヲタクに部類される。となれば、ツンデレからクーデレの間か。その時にヲタクの間でブームだったのは......分からない」


 世間から見れば、俺も随分と「ヲタク」のはずだ。ただ、些か若くて状況に詳しくない。


「......形のない王国初代発売時に人気だった萌えは『ロリ』らしいぞ」


 今度は、ラルーチェの助言が入る。さっきまでステージの方を見ていたから、会話に入ってくるとは思わなかったな。


「なるほどな......サンキュ。概ね分かった」

「分かったなら何よりだ。で、隊長。早速出番の様だぞ」


 彼女がステージを指さす。スクリーンの色彩も調整され、はっきりと「一回戦第一試合 犬飼疾風VS小山康夫」と見て取れる。

 出番ってことか。


「右端から登壇し、そこの台に座れ。そこでコントローラーを操作するそうだ」

「分かった、ありがとう」


 へえ。大画面に戦闘画面を映すのか。懐かしいな。


『おっと、犬飼選手も来たようですね!』


 雑な司会だな。まあ、別にいいけど。


「宜しくお願いします」


 俺は、目線も確認せず向かいの台に挨拶をした。最低限の礼儀は、必要だし。


「あ、お前はこの前俺の嫁を泣かせたクソ野郎じゃねえか! ここで会ったが千年目! 敵を......」


 気づかれたか。まあ、気にしたら負けだ。無視しよう。


『それでは両選手。操作するキャラを確認してください』

「......ほう」


 俺の目の前の画面には、俺が夢見た姿があった。


 青くて長い、サラサラな髪。誰かを守れそうな程よい背丈と鍛えられた肩幅。

 その目は、俺が見れなかった世界を見ている。

 その手には、俺が持てなかった力がある。


「......まさか、こんな場所で出会えるとはな」


 ユリ・ハヤテ。俺の願いの姿。


『両選手、準備よろしいでしょうか?』


 おっと。時間か。


「いいぜ、ぶっ殺す!」


 目線を向けなくても殺意が分かる。また、叩き潰してやるか。


「いいですよ」


 指の動きは、あの頃と同じ。コマンドは、全部頭に入っている。


『では、レディー・ファイト!』


 慣れてない掛け声で、ゴングが鳴らされた。


「おっしゃー、いっけえリリカたーん!」

「......ふっ」


 バトルと同時に見えた人影。そして聞こえた女の名前。

 勝ったな。

 この瞬間、俺には未来が見えた。奴の動きと、結末がね。


◇◇◇


「三十秒で、片づける」


 範囲。行動予測。コマンド準備。......よし。


「おららららっらら!」


 小山康夫が、キャラを突進させてくる。その肉球。相変わらず気合が抜けるな。


「......」


 鎖を、軽く前へと投げ出す。リーチの差があるし相手は正面。普通はこれがヒットして相手の動きは硬直する。だが。


「甘いわあああ!」


 奴は、スキルを発動した。獣人の特性を生かした跳躍。

 しかも、ノータイムで相手の裏に回り込めるという超高性能。まあ、ワープだよな。

 けどね。


「ん」


 スキル発動「クロステイル」。正直、一問一答だよね。


「な、何!?」

『おーと、犬飼選手のカウンターだ!』


 当たり前の行動をしただけで、周囲がどよめく。おいおい、レベル低いな。


「ん」


 そのまま俺は反転しながら軽く距離を取る。そして、流れるように次のスキル発動「キャスティング・ストライク」。綺麗にヒットだ。


「あ......動けよ動けよ!」

「ああ......それ、スタン効果あるので」


 鎖で相手を捉え、引き寄せ、そのまま膝蹴りを加えるかつての環境技。俺の得意技だ。


『これは、凄いですね!』


 おい実況。もう少し語彙力磨けよ。興覚めだな。

 まあ、いいや。


「ん」


 鎖の先の分銅を相手の頭・両肩・両膝へぶつけ、最後に下から切り上げるように鎖を振るう。

 鎖鎌使いの常套必殺スキル「ブラック・ライトニング」だ。

 

「あああああああ」


 そのまま、画面越しの女キャラが倒れる。ゲームセット。


「ふう」

『試合終了! 犬飼疾風選手、僅か二十秒でKO勝ちだあ!』


 ふむ。まあ、コマンドの具合も悪くなかったし。ブランク明けとしては上等だな。


「ありがとうございました」


 俺は立ち上がり、小山康夫の顔を見る。ゲーマーとして、最後くらいは目線を合わせて握手だよな。


「ふん!」

「あ......」


 けれど、奴はそれを拒否しそのままステージを降りて行った。ふむ......。


「悪ガキだなあ」


 俺は、かなりマイルドに出力した。

 これは、後々メンドクサイかもなあ。

圧勝だねえ。まあ、素人相手なら当然だけどさ。

けれど、困難はこれから。

次々と強敵は来るし、それ以上に厄介ごとが盤外で起きるだろうから。


次回『CODE:Partner』第三十四話『所詮は初戦なのだから』


その愛は、プログラムを超える。

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