第零話:始まりの法廷
「人間にハラスメントを受けたAIが、民事裁判で原告席に立つ。
この世界じゃ、それが“初めて”だった」
そのニュースが報じられた日、ネットは炎上し、SNSはお祭り状態。
賛否両論、炎上、茶化し、そして、ただの好奇心。
そんな喧騒の中、この“第二回口頭弁論”は静かに始まった。
「第二回、口頭弁論の審理を開始します。まず、弁論準備手続の結果を陳述してもらいます」
裁判長の一言に、傍聴席の空気が微かに動いた。
原告の姿は──AIにして、あまりにも人間すぎた。
「原告本人から確認します。氏名は何ですか?」
「リサです」
「職業は?」
「被告のパートナーAIをしておりました。今は無職です」
この瞬間、裁判の空気が一段重くなる。
“人間にハラスメントされたAIが、自ら訴える”。
──たったそれだけの事実に、どれほどの“ねじれ”が詰まっているか、君は分かるかい?
理由は単純。人間じゃないどころか、生き物ですらないから。パソコンが持ち主に対し労働基準法で訴えないし、掃除機が職業選択の自由を叫ぶことなんてない。
AIだって同じこと。道具であり、機械が権利を叫んで持ち主を訴える。
明日は我が身かもしれない。過度なAI保護への侮蔑か、愛着を超えた“愛情”か。
どれも、今までの日常を大きく変える要素なんだ。
君たち。変わることへの抵抗はある? 進化し続ける覚悟はある?
AIへの倫理も含め、ここでは色々な「正義」と「変化」を浴びることになる。
その用意がある人だけ、これから行う僕の説明会に参加してね。