このオレ様が?
「このオレ様がなぜ…」
高校までなに不自由なく生きてきたオレ様、橘聖也。
運動は何をやっても人以上にでき、勉学では全国2位、見た目も悪くない、街ゆく人々を見下す事は当たり前だった。
「ッゲ橘の奴来やがった…」
「せなちゃんっ橘くん来たからテスト隠しな!」
(フン今日も虫ケラどもは騒がしいな…)
人に干渉せず常に見下して生きているオレ様にも人間ぐらいには見ている奴も居る、そう、音波聖奈だ。奴の名は中学の頃から知っている、全国模試でオレ様が一度も勝ったことがない女、だが好都合な事に同じ高校、ひいては同じクラスになったのだ…。
(この一年でオレ様がお前の上に立つ人間だとわからせてやる音波聖奈)
「明日から休日だからって羽を伸ばしすぎるなよ!」
「やっと終わった〜今日どこ行く?」
「カラオケでも行くっしょ!皆んなこれからカラオケ行くけど来る人いる〜?」
(ッフ…アホか猿どもが精々今のうちが人生のピークだ、はしゃいでいろ。)
今日は待ちに待った全国模試、今日までこのオレ様がわざわざ復習を重ね時間を割いてきたんだ、猿どもの会話にうつつを抜かしてる場合では無い。
聖也は模試へ向かうのだが…その道中前を歩く音波聖奈の姿が。
「いやぁ〜こんな美味しいクレープに巡り合えるなんて〜」
(呑気な奴だ、今日が敗北記念日だとも知らず…)
「おい!そこの子!トラックが突っ込んでくるぞ!」
人助けなど皆無だった聖也はその場の危機を瞬時に判断し何故か音波聖奈のもとへ足を進めるのだった…
***
目の前が真っ白だ、それにやけに温かい…
柄にもなく人助けなんてオレ様らしく無かったな。まぁあいつに死なれたらオレ様が勝ち逃げされる事になるからな…
「貴方!目を開けたわよ!」
「おぉ〜俺に似て男前だ!」
満面の笑みで笑う2人の姿。
(何だこいつら、やけに馴れ馴れしいな、)
(病院ではなさそだな、どこだここは?)
「バブゥ〜バババブゥ〜(おい!ここはどこだ?)」
「貴方っ!ギヌスが喋ったわ〜」
(おい、考えないようにしていたが、やっぱり…赤子になってんじゃねぇーか)
聖也、いやギヌスが異世界転生したと理解するのに時間はかからなかった。
***
それから月日は流れ5年後、ギヌスは身の危険を考慮し、転生者だと言う事を胸の中にしまい、新たな人生をスタートしていたのだが…
(そう言えば、前世の猿どもがよく異世界などの話をしていたが…)
「日本の方がマシじゃねぇーか!」
「それになんだこの何もない田舎町は!もっと発展した街はないのか?」
「そうカリカリするなギヌス、全く誰に似たんだか、、」
異世界転生しても相変わらずオレ様っぷりは健在のギヌス。
「父さん学校に行きたいのだが」
「学校?ない事はないが試験もあるしあんな所に行くのは貴族のお坊ちゃん達だぞ?お前みたいなのが行ったら大問題だ(笑)」
(フン貴族の坊ちゃんだと?生まれながらの地位に満足している虫ケラどもなど造作も無い)
「父さん試験を受けさせてくれ!」
「どこで聞いたのか知らんがダメだ」
聞く耳を持たない態度で首を振る父ロン。このままではこの村で一生を終えると感じたギヌス。
「3日前父さんが夜中にこっそり会っていた女性の事を母さんに知らせて来ようと思う。」
「お、お前!なんでその事を!」
たまたま深夜トイレに行く途中見かけたギヌスだが確証はないが少ない可能性に賭けて鎌をかけた、少し返答に悩むロン。
「わかった試験を受ける事は認めよう」
勝ちを確信するギヌス。
「だが、うちにそんな金はない!」
(そうだ、うち貧乏じゃねぇ〜かぁ!)
***