ブロッコリーの森をぬけて
ふつうのトマトも好きです。
つらぬこうとねらう 銀の三ツ又槍をさけて
プチトマトはブロッコリーの森をぬける
くし切りにしたフルサイズのトマトは
きっと 夜空に高く浮かぶ三日月だから
うかつに手をのばして
崩れてさせでもしたらたまらないと
そこで あんたにねらいをつけてみた
だとしたら そのかんがえは それほど悪くはないはずだ
ドレッシングの雨に濡れたブロッコリーの森をぬけて
緑のへたをどこかに落としたプチトマトがころがる
あんたにも ほっぺかくちびるがあったなら
こんな赤色をしてたんだろうなっておもうと
ほっぺもくちびるもないまんまるが
愛らしくも 口惜しくなるから
紫のタマネギとキャベツがひそむ
ブロッコリーの森をぬけて プチトマトが
ボウルのそとまで ころがり出ることを
銀の三ツ又槍から 手放しで
指を咥えたまま見守ってやることなんて
そんなの ぼくにはできない
ころがる ころがる
つらぬこうとねらう 銀の三ツ又槍をさけて
ころがる ころがる
カリフラワーまじりのブロッコリーの森をぬけて
ボウルのそとまで ころがり出たって
あんたにとって ぼくから逃げ切れたことに
どれだけ意味があるんだか
テーブルのしたで
ひからびさせてやるつもりもないから
やっぱり このまま 見逃してやるわけにはいかない
あんたにも ほっぺかくちびるがあったならって
そうおもわせる 赤色のまんまるを
ぼくのくちびるへとはこぶべく
ついには 業を煮やしちゃって
片手に銀の三ツ又槍をかまえたまま
あいたもう片手で あんたをひょいとつまみあげると
やわらかいくちづけのあと そのまま くちにふくんで
ゆっくり かみしめれば
プチトマトはぼくのくちのなかで じゅんわりと
そのまんまるを くずしていくことだろう
「ブロッコリ」にしようかと思いましたが、「カリフラワ」にしたくなかったので「ー」をいれました。